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« マリインスキー・バレエの2015年来日公演 | トップページ | 新国立劇場バレエ団2015/16シーズンオープニング作品、樋笠バレエ団にムハメドフ出演 »

2014/11/09

11/8 新国立劇場バレエ団「眠れる森の美女」

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/sleeping/

振付:ウェイン・イーグリング
指揮:ギャヴィン・サザーランド
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
装置:川口直次  
衣裳:トゥール・ヴァン・シャイク  
照明:沢田祐二
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

オーロラ:米沢唯 
デジレ:ワディム・ムンタギロフ
リラの精:瀬島五月 
カラボス:本島美和
6人の妖精:川島藍 堀口純 若生愛 五月女遥 奥田花純 柴山紗帆
4人の王子:井澤駿 田中俊太郎 池田武志 清水裕三郎
伯爵夫人:湯川麻美子 
ガリソン:マイレン・トレウバエフ
宝石:細田千晶 寺田亜沙子 堀口純 福岡雄大
長靴を履いた猫:江本拓 白い猫:若生愛
フロリナ王女:小野絢子 青い鳥:菅野英男
赤頭巾:五月女遥 狼:小口邦明 
親指トム:八幡顕光

新国立劇場バレエ団のシーズンは、新制作の「眠れる森の美女」で明けた。ウェイン・イーグリング版の特徴は、まずカラボスとリラという善悪の対決にスポットを当てたこと。プロローグはカラボスの前にゴンドラでリラの精が降りてくるところから始まる。プロローグのオーロラの誕生に現れるカラボスは、ポワントに黒のチュチュの美女で、あでやかな魅力を振りまきながら圧倒する。そしてもう一つの特徴は、2幕で王子がオーロラにくちづけた後の目覚めのパ・ド・ドゥの挿入。ピーター・ライト版の眠れる森の美女も目覚めのパ・ド・ドゥはあるが、こちらはよりロマンティックで、「ロミオとジュリエット」のバルコニーシーンを思わせる、甘美なもの。オーロラと王子の間に次第に気持ちが高まり合い愛が芽生える様子が描かれている。

後者のパ・ド・ドゥには、作品にドラマ性を加え、そして出会ったばかりの二人がいきなり結婚する、という不自然な設定にも説得力を持たせるという意味もあって効果的だった。思わず涙がこぼれてしまうほどの清冽な愛の歓びが語られていて、熱いキスで幕が下りるところは見事な演出。反面、カラボスについては、プロローグと一幕では大活躍するものの、2幕では意外とあっさりとリラの力に負けてしまい、大して王子を妨害しないうちにいつの間にか消えてしまうという尻すぼみの退場となってしまい、せっかくの魅力的なキャラクターが十分生きたとはいえない。リラの精のダンサーにオーラもカリスマ性もないうえ、衣装もカラボスの豪奢さとはバランスが悪く地味で、設定が生きてこなかった。

上演時間が休憩を含めると3時間半近くは長い。1幕の糸巻を使った女性たちが捕まったりするシーンが割愛されていたのは時間の短縮を狙ったのだろうが、2幕で不必要な村人の踊りが入ったり、プロローグの妖精のヴァリエーションが一人多かったりと冗長に感じられたところも多かった。もう少し刈り込む必要があるものだと思われる。

主役ペアの出来は文句なしで彼らを観るためだけに公演に足を運ぶ価値があった。米沢唯さんは、1幕の元気いっぱいの朗かで好奇心旺盛な初々しい姫、2幕での哀愁を秘めた姿、そして3幕では愛らしさを残しつつも凛とした気品を持ったプリンセスと変化を見せて行った。テクニックも安定しており、安心して観ていられる。ローズ・アダージオでは、手を上げるバランスの時間こそ短かったものの、微塵もぐらつくところはなくパーフェクトだった。音楽性も優れているし、3幕のヴァリエーションでも、ピルエットは3回転が標準、フェッテもきれいに回っていた。技術が強いのに誇示するところが微塵もなく、何も難しいことはやっていないように見せられるのが素晴らしく、これほどのレベルの高いオーロラは世界中探してもなかなかいない。欲を言えば、王子に対する愛をもっと見せてくれたら完璧だっただろう。

ワディム・ムンタギロフは、これぞ理想的な王子様だった。一挙一動がとてもエレガントでサポートには愛情深さを感じさせた。長身だがトゥール・ザン・レールの時には高さがあり、どの跳躍もきれいに5番に入る。ロシア人ならではのアカデミックさと、英国仕込みのドラマ性がある。米沢さんとの息もぴったり合っていて、安心して大胆なフィッシュダイブをすることができた。まだ若い彼なので、今後どのように成長していくのか楽しみである。カンパニーになじんで控えめなのも好感度が高い。ただ、惜しむらくは、この版は王子の見せ場が少ないのだ。2幕の最初の方、たとえばヌレエフ版だったらここは王子のソロなのに、という音楽のところで別のダンサーが踊っていたりする。ソロもあるにはあるのだが、それほど魅力的な振付ではないので、せっかくのワディムの無駄遣いのように思えてしまった。

本島美和さんのカラボスは、妖艶な魅力で周囲を圧倒させ、たくさんの手下を従えるのも納得のカリスマ性があった。あでやかな美貌で目力の強い彼女が、ポワントを突き刺し、顔をゆがませたり身をよじらせたりする姿には迫力があり、またソロの踊りにも演劇性が強く場面をすっかりさらってしまった。もっと彼女の活躍を観たかっただけに、2幕でのリラとの対決から退場に至るまでがあっさりしていたのがもったいない。一方、ゲストとしてリラ役で出演した瀬島さんは、技術は確かなのだが、本島カラボスに対抗できるだけの強さも包容力も感じさせず、影が薄すぎた。なぜこの役にゲストを起用したのか、疑問が残るところである。

プロローグの妖精のヴァリエーションで印象に残ったのは奥田花純さんくらいだったが、3幕の宝石の精を踊った3人の女性ダンサーはとても美しく、良いアンサンブルを作っていた。フロリナ王女の小野さんは、さすがの貫録とオーラの高さで、他のダンサーとは別格の華やかさがあった。フロリナという役の意味をよくとらえて、ドラマティックさも加え、さらに音感の良さ、軽やかさで大いなる喜びを観客にもたらせてくれた。別の日にはオーロラも踊るのでこちらも観てみたいものである。青い鳥の菅野さんは、跳躍はあまり高くなかったが、細かい動きもクリアに魅せる足先の美しさと、プロローグでこともなげにフロリナを肩に載せるサポートのうまさは光っていた。親指トムの八幡さんは、超絶技巧も鮮やかに、圧倒的な技術の高さとチャーミングさを見せ、彼にもぜひ青い鳥を踊ってほしいと感じさせた。このバレエ団、良いダンサーがたくさんいるのだが、キャスト表を見ると、実力は高いのに大した役を与えられていないダンサーもいるのが惜しまれる。

コール・ド・バレエの踊りは精度が高く、よく訓練されているしプロポーションも美しく、クオリティは高かった。が、振付がややバタバタしており、人数も多すぎて主役の動きを妨げるところがあった。男性群舞のクオリティも大変上がっていた。主役以外に舞台に立っている出演者が、ただそこに存在しているだけで、あまり役を演じている感じではなかったのが気になった。ビントレー時代には、立ち役も含めた出演者たちはそのあたり、ひじょうに気を使っていたのだが、そういったところが薄れたのは残念である。

衣装に問題が感じられたところが多い。プロローグの女性群舞は貴族なのにエプロンのような姿だし、2幕の幻影のシーンでのチュチュは、鮮やかな濃い緑でジャングルの中にいるよう。プロローグの妖精たちの衣装も、ティアラの石以外は皆同じなので見分けがつきにくい。カラボスの衣装はインパクトが強く、黒にグリーンが効いていてゴシックな魅力があったが、リラの精は色もデザインも中途半端で垢抜けず、加えて頭飾りがナイトキャップのようで、カラボスとのバランスが悪い。王様、女王様のプロローグ~1幕の衣装はまるでアメリカ国旗のようだった。舞台装置は非常に豪華で手が込んでおり、衣装と併せて予算もふんだんに使われているように感じられるが、衣装に関しては再考の余地があるだろう。

上演時間があまりに長い、不必要な踊りがあることについては、今後の再演の時にぜひ改訂を加えてほしいものである。そのほか課題はたくさんあるように見受けられるが、バレエ団の主要キャストについてはレベルが非常に高いのも確かであり、バレエ団の実力の高さは実感できるし、2幕最後のパ・ド・ドゥのドラマティックさなどもあって楽しめる公演であるのは間違いない。ただし、演劇性の低下など、不安要素も残しての幕開けとなった。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

naomiさん、こんにちは。
私も昨日11/8、新国立劇場バレエの「眠れる森の美女」を観てきました。
主役のお二人、パートナリングが素晴らしく安心感があり、とても微笑ましかった!
目覚めのパ・ド・ドゥは、しっとりと美しく、二人の心が少しずつ近づいていく感じが良く表現されていて、本当に感動しました。
米沢さんのオーロラ姫は一幕、初々しく、はにかむ感じが良く出ていて可愛いらしかったですね。
テクニックもいつもどおりの安定でした。
ムンタギロフのデジレ王子は、とても上品で優しげで、素敵の一言です。もう少し踊る場面があったら、更に良かったのにと思うのは、贅沢かしら!
コールドもいつもどおり、しっかりしており、安心して観ることが出来ました。
新国立劇場バレエは、公演回数が少ないからか、一公演に惜しみなくプリンシパルを投入してくれるので、嬉しいです!
舞台セットとコスチュームは童話の絵本ぽいかなと感じました。
色使いなど、芸術監督の要望、意見も入っていると思いますが、鑑賞対象をどちらかというと子供寄りに考えているのかも…。
新国立の「眠れる森の美女」は、クリスマスシーズン恒例の演目にするのも良いのでは?
どこのバレエ団も「胡桃割り人形」が多いですからね。
でも上演時間が長いので、子供仕様ではないかしら。
予断ですが、私の地元で『眠れる森の美女』第3幕「オーロラの結婚」ジェシカ・ラング『暗やみから解き放たれて』が上演される予定です。
残念ながら、チケットの売れ行きは芳しくないみたいです。
せっかくしっかり踊れる一流バレエ団を東京まで出かけることなく、生で観ることが出来る機会なのに。。。
バレエを習っている人のみならず、部活で新体操やモダンダンスをしている中学生や高校生にも是非とも観てもらいたいなあと思います。プロの凄さを間近で感じほしいです。

ashitaさん、こんにちは。

おっしゃる通り、ムンタギロフはおそらく直前に来たばかりのゲストとは思えないくらいパートナーリングが良かったですね。目覚めのパ・ド・ドゥはとても美しかったし、米沢唯さんも素晴らしかった!ムンタギロフ、本当に品があって、人柄の良さも伝わってきて素敵だったし、バレエも本当に美しい人なのでもっと見せ場が欲しかったというの、同感です。カンパニー全体のレベルも相変わらず高いですよね。

おっしゃる通り、特に今シーズンはWebサイトやチラシのデザインからしてもなんだか子供っぽくて、ちょっとな~と思うところがあります。上演時間が長いのは子供向けではないかもしれませんが、もっと短ければクリスマス時期にやるのも良いかもしれません。

地元でジェシカ・ラングのとても評判の良かった作品を上演するんですね!羨ましいです。ちょうど公演が集中する時期で観に行けませんでした。なかなか地方公演は毎回チケットを売るのに苦労しているようですね。観てもらえればクオリティの高さは実感してもらえるはずなので、もっと営業とか頑張ってほしいものですよね。東京での公演も、あまり宣伝に力が入っていなくて、TwitterとかFBもとても活用しているとはいえず…。眠り自体はチケットは売れていたけど、他の作品はどうでしょう。

こんにちは。
私もバレエ『眠れる森の美女』をみてきましたので、詳しご感想を興味深く読ませていただきました。。
私は小野絢子さんの舞台を観てきましたが、配役が分かると多少印章がが違って感ずるところがあるよようで、この舞台もみたくなりました。
久しぶりの『眠れる森の美女』でしたので、チャイコフスキーの音楽も踊りもよかったです。
私もブログに感想と舞台の魅力を整理してみましたので、詠んでいただけると嬉しい限りです。
差支えなければ、ブログにコメントをいただけると感謝致します。

dezireさん、こんにちは。

お返事遅くなってしまってごめんなさい。私も小野さんのオーロラ、観てみたかったです!
ブログの方も拝読しました。とても詳しく書かれていますね。後でコメントを付けていきますね。

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