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2014/10/12

10/11 K-BALLET COMPANY「カルメン」

http://www.k-ballet.co.jp/performances/2014carmen

ドン・ホセ:宮尾俊太郎
カルメン:佐々部佳代
エスカミーリョ:遅沢佑介
ミカエラ:浅野真由香
モラレス:伊坂文月
スニガ:スチュアート・キャシディ

演出・振付:熊川哲也
音楽:ジョルジュ・ビゼー
原台本:アンリ・メイヤック/リュドヴィク・アレヴィ(プロスペル・メリメの小説による)
舞台美術:ダニエル・オストリング
衣装:マーク・ブルーメンフェルド
照明:足立恒
指揮:福田一雄

K-BALLET COMPANYの15周年を記念して新制作された「カルメン」。以前、K-BALLET COMPANYはローラン・プティの「カルメン」を上演したことがあるのだが、今回は、プティ版のような変化球ではない。オペラの「カルメン」を忠実にバレエ化したような、オーソドックスな演出を熊川さんは心がけたという。

まず、目を引くのは、メトロポリタン・オペラで「ランメルモールのルチア」などを手掛けてきたダニエル・オストリングによる舞台装置。シンプルなのだが、スペインの強い光と乾いた大地を思わせるような、力強い大きな構造物が立っており、古典的でありながらモダンだ。日本の舞台ではないような、まさにどこか外国のオペラハウスでの公演を観ているような錯覚にとらわれるほどだ。舞台装置一つで物語に大きな説得力が加わるのだから、世界のトップの舞台美術家は違う。特にラストシーンでの装置がもたらすドラマティックな効果は実に見事であった。

K-BALLET COMPANYは、最近、ますますカンパニー全体のレベルが高くなっていることを実感する。冒頭に登場する衛兵たちを演じる男性ダンサーたちの踊りにはキレがあり、みな高いテクニックを備えている。工場の労働者たちや娼婦、町の人々などの女性ダンサーたちは、日本人でありながら、ラテンの雰囲気を出すのが上手くて、セクシーでパワフルだ。密輸業者、バンデリュロス(闘牛士たち)、大道芸人などの群舞、そしてソリストの見せ場がたっぷりあり、全体的に饒舌なダンスを通じて物語がスピーディに展開していくし、その群舞のレベルが高いので、楽しめる作品に仕上がっていた。

カルメンを演じる佐々部佳代さんを観るのは初めて。目を惹く華があるし、妖艶でありながらも誇り高さをも感じさせた。熊川さんが語ったことによれば、カルメンを演じるバレリーナには2タイプあって、魔性の女を演じられる演技派タイプと、バレエ作品なので踊りで観客を魅了するタイプがいるそうで、彼は、小手先の演技ではなく、彼の振付を踊れば自然とカルメンその人になるのが理想だと考えているとのこと。確かに佐々部さんは、大げさなところや取ってつけたような顔での演技というものではなくて、踊りを通してカルメンのキャラクターを表現できていたように感じられた。ダイナミックでしなやかな動きができるし、気高さの中に自然な色香があった。

ドン・ホセ役は宮尾俊太郎さん。長身でハンサムだけどやや線が細めで内向的なところが、いわばダメ男であるところのドン・ホセには合っているように感じられた。せっかくプロポーションはいいのだが、踊りの精度はもう少しあげてほしいところである。ただ、この役に気持ちはとても良く入っていて、特に最後、カルメンの心変わりに耐え切れず、苦悩のあげくに彼女を殺してしまうところに至る心理は上手く演じていて、思わず彼に同情してしまったほどだ。愛する女に裏切られ、愛憎の中で葛藤して混乱に陥り正気を失うまでの過程を細かく演じることができていて、良かった。

振付の中で、とても面白い工夫がされていたのが、1幕、逮捕されたカルメンが腕を紐で縛られているのだが、その紐の端をドン・ホセが持って、紐でつながった状態で踊るパ・ド・ドゥだ。二人の関係が変化していく様子もこのパ・ド・ドゥで物語ることができていて、とても効果的な演出になっていたと思う。一瞬その紐から手を放してしまった隙に、カルメンに逃げられてしまうところまで、とてもうまくできている。

目を引いたのはエルカミーリョ役の遅沢さん。外連味たっぷりの踊りが魅せてくれるし、テクニック的にはさすがに宮尾さんより2枚も3枚も上手。別の日には彼もドン・ホセを演じているというのでそれも観てみたい。終盤には、「ドン・キホーテ」のエスパーダさながらに闘牛士軍団を引き連れて、一瞬違うバレエを観ているのか、と思ったほどであった。小さな役であったけど、マヌエリータ役の山田蘭さんの悲痛なまでの美しさ、そして演技力はとても印象的だったし、狂言回しのように登場する娼婦役の湊まり恵さんもうまい。スニガ役のスチュアート・キャシディはさすがの重厚な存在感であった。また、清らかな浅野真由香さんのミカエラも強い印象を残した。

オーソドックスなつくりでありながら、ダンスでぐいぐいと話を進めていくスタイル、わかりやすい筋立て、そして舞台装置と相俟ってのドラマティックな効果もあって、だれでも楽しめるような作品に仕上がった「カルメン」であった。カンパニーは踊りのレベルも、演技力もとても高く、生きの良いダンサーがそろっていて充実ぶりがうかがえた。ぜひともお勧めしたいバレエの舞台である。

熊川さんのドン・ホセも観たかったけど、彼とロベルタ・マルケスが共演する公演はソールド・アウト。でも、それ以外のキャストでも間違いなく楽しめることでしょう。

こちらはプティ版のカルメン

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