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2014/09/02

シディ・ラルビ・シェルカウイ + ダミアン・ジャレ「BABEL(words)」

シディ・ラルビ・シェルカウイといえば、森山未來が主演した「TeZukA」、首藤康之が出演した「アポクリフ」、アクラム・カーンとコラボレートした「ゼロ度」、パリ・オペラ座に振付けた「ボレロ」そして映画「アンナ・カレーニナ」など様々な作品を手掛けている。

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提供:創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会
photo: Yoshisato Komaki

が、今回の「バベル」、実は事前の予想を大幅に裏切り、上記の作品とはかなり違った雰囲気がありつつ、非常にユニークで刺激的で、そして面白い作品だった。コンテンポラリーダンスというと難解な印象があるし、坂本龍一が選んで札幌国際芸術祭に招聘したということもあって、ハイブロウな作品なのかな、と思っていたら、思いがけず笑える部分があったり、知的な部分をくすぐりつつも全体的には非常にわかりやすく、誰が観ても楽しめる総合芸術だった。

まず、アントニー・ゴームリーによる舞台装置が秀逸。軽量の金属でできた、足場のような立方体が組まれていて、舞台奥の少し高いところにはミュージシャンが。この金属製の立方体が、出演者の手で動かされ、題名通りのバベルの塔になったかと思えば、出演者を隔てる小部屋にもなり、境界線となり、またジャングルジムや物干し、さらには移民局か、それとも空港のゲートなのか、といった形にも変化する。シンプルで洗練されていて、まさにセンス・オブ・ワンダー。

舞台上で演奏される音楽も作品と一体化していて、新しさと懐かしさが同居していて美しく、見事だ。ミュージシャンは演奏するだけでなくて出演者として動いて見せることもあり、阿部一成さんは上月一臣さんと漫才のような掛け合いをするし、拭き掃除したり、洗濯物を干したりしていたエプロン姿のおばさんは、哀愁を帯びた深みのある歌声を聞かせてくれたクリスティーン・ルブテ。民族音楽的な雰囲気が漂うが、般若心経の読経なども音楽として使われる。音楽そのものが、作品の中で進化していく様子もうかがえる。最初はややシンプルだった中世音楽に、弦楽器、笛、歌などが入っていくのだ。音楽は、中世イタリア音楽を専門とする音楽家二名とインドのタブラ、ハーモニウム(手動フイゴオルガン)奏者二名と太鼓、篠笛、能管、胡弓、歌などを担当する吉井 盛悟さん(もしくは阿部 一成さん)の五人で構成されているとのこと。

テーマは、異文化間のコミュニケーション。神にとどけと巨大な塔を築いた人間達が、神の怒りを買い、もう二度とはかりごとができないようにと、神は人間の言葉を混乱させて互いに通じないようにしたという逸話に基づいている。この作品のために10を越える国からダンサーやミュージシャンが集まったそうで、実際、様々な言語が舞台上を飛び交う。特に前半はセリフが多く、ダンス作品というよりは、ライブ・パフォーミングアートというのに近いように感じられたけど、とにかくライブ感がすごい。

http://youtu.be/GhTQ86gY3qk

冒頭で美しいマイムを見せながら言葉のないコミュニケーションの伝達について語るは、アンドロイドのマヨン。長身金髪でまさにサイボーグ的な美女。そんな美女をいじりからかうのが、小柄な日本人二人で、日本語で漫談を繰り広げるのだから可笑しい。蛇口をひねったらポンジュース、なんてネタが出てくるけど、これは今回の日本公演だけでなく、世界各地の上演でも登場するというのだから振るっている。

英語の優位性を一人の男性が滔々と述べると、ほかの出演者が、スペイン語、イタリア語、フランス語の素晴らしさを反論のように語るのだけど、その言葉をわからなくても、なんとなく何を言っているのかわかるようなベタな単語をまくし立てているのでわかっちゃうのも面白い。その一方で、一人の女性に求愛するようにまとわりつく(毛深い)男性がいるのだが、この二人の気持ちは最後まで通い合わない。このあたりのシークエンスを観ると、シェルカウイの作品って、スタイルは全く違うのに、ピナ・バウシュ的な部分があるように感じられた。一人一人の演者の人生が透けて見えるし、タンツテアター的な、感情のぶつかり合いがダンスになっていくところが特に。

この舞台には、まるでおもちゃ箱のように様々なスタイルのダンスが登場するのだけど、一見バラバラなように見えて、その配置が実に見事だし、作品全体の構成も巧みでぞくぞくするほど興奮する。少林寺拳法、ヒップホップ、バレエのパ・ド・ドゥ的な動き。圧巻なのは、後半、出演ダンサーたちほぼ全員が一つの塊のようになって、ゆっくりと踊る美しくも禍々しいシーン。合体ロボットのようにダンサーたちが組み合わさって、モンスターが登場するようなイメージも鮮烈だ。いろんなダンスのスタイルを取り入れながらも、観たことがないようなダンスへと作り上げるシェルカウイのクリエイティビティは凄い。

脳が動きを伝達する仕組みについて語ったりと、テクストの内容は非常に知的なのに、そんな難しいことは理解できなくても、作品自体がエンターテインメント性にも溢れているので、幅広い観客層、ダンスなんて観たことがない人や音楽、アートが好きな人、コメディが好きな人までアピールする、とっても楽しい作品だった。実際、客席では笑いもたくさん上がっていたし、最後はものすごいスタンディングオベーション。この週末はあちこちでダンスやバレエ公演が行われていて、足を運べなかった人も多いと思うが、世界40都市以上で上演されてきたという人気も良くわかる傑作。ぜひ再演を期待したい。

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http://www.promax.co.jp/babel_words/index_all.html

http://www.east-man.be/en/14/20/Babelwords

 振 付:シディ・ラルビ・シェルカウイ(Sidi Larbi Cherkaoui)
     ダミアン・ジャレ(Damien Jalet)
 
 舞台装置デザイン:アントニー・ゴームリー
 
 出演(ダンサー):ナヴァラ・チャウダリ(Navala Chaudhari)
          サンドラ・デルガディジョ(Sandra Delgadillo)
          ウルリカ・キン・スウェンソン(Ulrika Kinn Svensson)
          クリスティーン・ルブテ(Christine Leboutte)
          ピアー・リーチ(Peae Leach)
          ダミアン・フルニエ(Damien Fournier)
          ヘルダー・ダ・シルバ・シーブラ(Helder da Silva Saebra)
          ジェイムス・オハラ(James O'Hara)
          ジョン・フィリップ・ファシスロトム(Jon Filip Fahlstrom)
          上月 一臣(Kazutomi Kozuki)
          モハメド・ベナジ・エイリアス・ベン・フューリー
          (Mohamed Benaji alias Ben Fury)
          フランシス・ドゥシャルム(Francis Ducharme)
          ダリル・E. ウッズ(Darry E.Woods)
 出演(ミュージシャン): 吉井 盛悟(Shogo Yoshii)*8/30, 31出演
           阿部 一成(Kazunari Abe)*8/29 出演
           パトリツィア・ボヴィ(Patrizia Bovi)
           マハブーブ・ハーン(Mahabub Khan)
           サッタル・ハーン(Sattar Khan)
           ガブリエル・ミラクル(Gabriele Miracle)

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