「SHOKO 美しく、強く。バレリーナを生きる」
SHOKO(中村祥子)さんの本「SHOKO 美しく、強く。バレリーナを生きる」が発売されているので、読んでみました。
SWAN MAGAZINEでの連載をベースにしていますが、連載では掲載されていなかった記事も多数あります。何よりも、ふんだんに掲載されている写真が大変美しいのです。ベルリン国立バレエ時代の舞台写真が中心ですが、このバレエ団の写真を撮影されているEnrico Nawrath , Maria Helena Buckleyの両氏とも、非常にアーティスティックな写真を撮影されていて、特にEnrico Nawrath 氏のモノクロ写真はとてもドラマティックで雰囲気が素敵なのです。二人とも、Facebookで自身のページを持っているので、興味を持たれた方はぜひ。
また、この本のために吉田多麻希さんが撮り下ろした、SHOKOさんのマタニティ写真も掲載されています。お腹がだんだん大きくなる様子が撮影されていて、神秘的なものを感じます。背中からSHOKOさんを捉えたショットでは、筋肉質な肉体の美しさを実感できます。可愛らしい少女時代の写真なども載っています。
そして、本の内容なのですが、バレリーナを目指した少女時代のことから、現在までを綴ったもので、特にこれからプロのダンサーを目指す若い人にとっては参考になりそうです。ローザンヌ国際コンクールでスカラシップを得てジョン・クランコスクールに留学。シュツットガルト・バレエ、ウィーン国立バレエを経てベルリン国立バレエではプリンシパルに、という軌跡は順風満帆に思えます。西洋人にも負けない長身と恵まれたプロポーションも然り。しかし、その中でもO脚などのコンプレックスを抱え、また契約を更新してもらえないなど、いくつかの挫折や苦悩もありました。ダンサーにつきものの怪我についても。SHOKOさんの、かなり等身大の姿が綴られています。
また、今までの様々な人々との出会い、振付家のレナート・ツァネラ、バレリーナのマーガレット・イルマン、そしてウラジーミル・マラーホフ、熊川哲也、ロベルト・ボッレなどなどとのエピソードも興味深いです。
今まで踊ってきたいろいろな役についての話も語られています。「白鳥の湖」などの古典作品だけでなく、フォーサイス、プレルジョカージュ、ドゥアトなど現代作品をどのように踊ってきたか、という話は、これからダンサーを目指す人にとってコンテンポラリーが踊れることが重要になっているため、非常に参考になることでしょう。自分への意識を深く持てること、挑戦し続けるということが、自分のためにもなるし、表現を行っていく上で大切だというのは、バレエだけでなく、生きていく上のヒントとしても示唆に富んでいます。
正直SHOKOさんは、私にとってはダンサーとしては特に好みではないのですが、この本を通して伝わってくる彼女の姿は非常に魅力的で、一人の女性としてとても素敵な方だとというのが伝わってきます。大変努力し、苦労してきて夢をつかんだ女性の姿を多面的に捉えたこの本は、バレエに興味がそれほどなくても面白く読めると思います。
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