ABTミスティ・コープランドの自伝が映画化
すでにあちこちで取り上げられている話題ですが、ABTのソリスト、ミスティ・コープランドが出演したスポールウェアブランド、アンダー・アーマーのCMが大反響を呼んでいます。公開後2週間余りで、すでに550万回もの再生数を記録しています。
バレエを始めた年齢が13歳と遅く、筋肉質で胸が大きい体型はバレリーナ向きではないので、バレエ学校への入学を許可しないというナレーションがついています。それでも、一流バレエ団でバレリーナになる夢をかなえた彼女は、Twitterで3万人以上のフォロワー数がおり、大変な人気を誇っています。
アフリカ系のミスティ(両親とも黒人のハーフ)は、結婚と出産を繰り返しボーイフレンドの間を渡り歩く母親のもと、貧しい家庭に生まれました。バレエを始めて8か月で「くるみ割り人形」のクララ役を演じるなど早くに才能を見いだされました。そこで彼女を育てたバレエ教師と実の母との間に親権争いも起きるといった事件もありましたが、18歳でABTに入団。2007年にはソリストに昇進します。(ABTにおいて、彼女は最初の黒人ソリストとする報道が多いのですが、実際には、1980年代には2人の黒人女性ソリストがいました)
ミスティ・コープランドが一躍有名になったのは、2009年にスーパースターのプリンスが彼のプロモーションビデオ「Crimson and Clover」に彼女を起用したのがきっかけでした。2010年と2011年の彼のコンサートツアーでも、数公演彼女は出演しています。それ以降も、T-Mobile、コーチ、ドクターペッパーのCMにも出演しました。
そして2014年3月に出版された自伝「Life In Motion: An Unlikely Ballerina」が話題となり、これが映画化されることが発表されました。
http://deadline.com/2014/08/misty-copeland-life-in-motion-new-line-movie-biopic-819569/
ニューラインシネマが映画化権を獲得し、クリスティーナ・リッチやサミュエル・L・ジャクソンが出演した映画「ブラック・スネーク・モーン」プロデューサーのステファニー・アレインと脚本家のレノア・クレッターが脚本家を行います。オフスプリング・エンターテインメントのAdam Shankman、Jennifer Gibgot と Phil Sandhausが製作を担当します。
ミスティ・コープランドは、来月、ABTのオーストラリア公演で、「白鳥の湖」のオデット/オディール役を初めて踊ります。ABTの歴史では、アフリカ系のダンサーがこの役を踊るのは初めてです。ほかのバレエ団では、例えばヒューストン・バレエのローレン・アンダーソン、アフリカ系ではないですがトリニダード出身のセリーヌ・ギッテンス(バーミンガム・ロイヤル・バレエ)などが白鳥を踊っています。
このように、ロールモデルとして注目されているミスティですが、一方で、本業のバレエよりも、自己宣伝の方が目立っているという批判が本国のバレエファンから出ていることも記さなければなりません。アフリカ系のバレリーナでも、ほっそりとしていてクラシック・バレエ向きの体形のダンサーもいますが、ミスティは、フォトジェニックで魅力的なものの、筋肉質なのでオデット向けのラインではないと言われています。また、テクニック的にも弱い部分があり、ABTの中でもまだ白鳥を踊っていない加治屋百合子さんやサラ・レーンなどを先にデビューさせるべきではなかったのか、という声もあります。
しかしながら、バレエに不利な条件を持ち、また恵まれているとは言えない境遇から努力して今の地位をつかんだ彼女は、多くの人々を勇気づける存在であり、今後もきっと活躍し、注目を集めることでしょう。
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