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2014年7月

2014/07/31

エトワール・ガラ2014が開幕しました

素晴らしかったです~。まずはとにかく、ハンブルグ・バレエのシルヴィア・アッツオーニとアレクサンドル・リアブコによる「マーラー交響曲三番」と「アルルの女」が凄すぎました。これを観ただけでチケット代の元が取れたと言えるほどです。「マーラー交響曲三番」ではあまりの美しさに涙が止まらなくなったほどです。また、リアブコのフレデリの狂気のほとばしり方も凄かった。ハンブルグにまた観に行きたい!って思いました。ハンブルグ・バレエ、来日熱望です。

それと、最後の「イン・ザ・ナイト」が美しかったですね。世界で一番美しい脚の持ち主であるイザベル・シアラヴォラと、バンジャマン・ペッシュのパートナーシップは、エレガントで優雅そのもの。2番目のペア、ドロテ・ジルベールとマチュー・ガニオは華やかでグラマラス、3番目のローラ・エケとエルヴェ・モローも良く似合うペアで、エルヴェの大きな踊りには思わずうっとりです。金子三勇士さんのピアノ演奏もとても素敵でした。

同じく金子さんがピアノ演奏をした、「月の光」は、イリ・ブベニチェク振付による世界初演のソロ。エルヴェ・モローの長い腕、長い脚を存分に生かした動きは雄弁でしなやかで、月の光と音楽と一体化して、何とも言えない美しい幻のようでした。

詳しい感想はまた後日書きますが、とにかく良い公演でしたので、チケット買っていない方もぜひ!当日券もあるそうです。

http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/14_gala/index.html

フジテレビのニュース映像では、名古屋公演の舞台映像と、東北、仙台でのダンサーたちによる被災地レッスンの映像を観ることができます。
http://youtu.be/aCM6_Gsnw7M

マチュー・ガニオのインタビュー記事(朝日新聞)
http://astand.asahi.com/entertainment/starfile/ASG7Q4TG4G7QUEHF00Q.html?iref=com_fbox_u06

パリ・オペラ座のダンサー、福島の子供たちを指導 Paris ballet stars give master class to Fukushima students
http://youtu.be/0AsvOvbJ6GY

2014/07/30

シルヴィ・ギエムが2015年に引退?

英国で発行されているバレエ雑誌「Dance Europe」。
http://www.danceeurope.net/

この雑誌は、英語版の記事のうち一つの記事だけ、長野由紀さんによって日本語に翻訳されてネット上でもPDFで読むことができます。最新号では、先日行われたニコラ・ル・リッシュの引退公演を読むことができます。つい先日だったのに、もう誌面になっているのは早いですね。

http://www.danceeurope.net/sites/default/files/J_187.pdf

ニコラの引退公演についての記事もとても読み応えがあってファン必読、なのですがとても気になる記述がありました。

「ギエムは、今のうちに観ておくことをお勧めする。終演後のパーティで彼女は私に、2015年にロンドン、パリ、東京で引退公演を行い舞台から退くことを考えていると語った。」(エマ・コールダー記者)

2015年といったらもう来年の話ですよね…。ということは、すでにそういう決意をシルヴィがしているということなのだと思います。彼女も来年には50歳になります。ニコラの引退公演での「アパルトマン」はネット中継はされませんでしたが、とても素晴らしかったとのことです。

まずは、来月の東京バレエ団50周年記念ガラでシルヴィが踊る「ボレロ」は必見でしょうね。

「ロイヤルエレガンスの夕べ」ラウラ・モレラのサイン会/オニール八菜さんのサイン会

8月8日~10日に開催されるガラ「ロイヤル・エレガンスの夕べ」。
http://www.royalelegancenight.com/

この公演にあわせ、卒業生の多くがロイヤル・バレエ団へと進む名門バレエ学校、ロイヤルバレエスクールが舞台のノベル『ロイヤルバレエスクール・ダイアリー』とのコラボ企画として、ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、ラウラ・モレーラのサイン会が開催されます。

ロイヤル・バレエ団でも数少ないロウアースクールからのロイヤルバレエスクール出身者で、現在はロイヤル・バレエ団のトップ・ダンサーのひとりとして活躍するラウラ。彼女を間近で目にすることができる貴重な機会となるはずです。なお、当日はサイン会終了後にラウラさんによる英国ロイヤルバレエ流・トウシューズのケアの仕方やリボンの結び方の簡単なデモンストレーションもあるとのことです。

http://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-South-Store/20140718124957.html

 日 時|2014年8月6日(水)
      15:00~(開場14:30)
 会 場|紀伊國屋書店新宿南店7階サザンシアター
             
 参加方法|参加には整理券が必要です。

 【店頭受付】8月1日(金)より、紀伊國屋書店新宿南店2階カウンターで『ロイヤルバレエスクール・ダイアリー』(駒草出版)1巻~6巻(最新刊)いずれかをお買い上げのお客様に整理券を配布いたします。

 【電話受付】8月1日(金)午前10時より、お電話でもご予約をお受けいたします。

*********
ヴァルナ国際コンクールで銀賞を受賞した、パリ・オペラ座バレエ団コリフェのオニール八菜(ハンナ・オニール)さん。

そのオニール八菜さんは2014年秋より、チャコットのキャラクターモデルに起用されるそうです。その彼女がチャコット渋谷本店に緊急来店。ヴァルナ国際バレエコンクールの模様や、パリ・オペラ座で過ごす日々のことなど、報告会を行います。またとないこの機会、ぜひお見逃しなく!

http://www.chacott-jp.com/j/topics/detail1921

日 時 2014年8月2日(土)12:00〜13:00
場 所 チャコット渋谷本店 4階
参加資格 報告会・サイン会とも先着100名さままで

当日11:00より1階にて整理券を配布いたします。
これ以前の順番待ちはお受けいたしかねますので、ご了承くださいませ。

※着席は50席までとなります。お立見となる場合がございますのであらかじめご了承ください。
※サインは以下のものに限定させていただきます。
1)パリ・オペラ座関連グッズ
(DVD、プログラムや劇場グッズ、ダンサー掲載雑誌・書籍)
2)当日チャコットでお買上げいただいた商品(シューズ類を除く)
3)ご自身にてご用意いただく色紙(チャコットで販売するものも含む)

お問合せ:電話番号03-3476-1311 チャコット渋谷本店

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2014/07/29

ヴァルナ国際コンクール、オニール八菜さん、みこフォガディさんが銀賞

7月26,27日に決勝が行われた第26回ヴァルナ国際コンクール。その結果が28日に発表されました。

ヴァルナ国際コンクールのFacebook
https://www.facebook.com/pages/International-Ballet-Competition-Varna/444071619046404?fref=photo

まだ公式サイトには発表されていません。
http://www.varna-ibc.org/site/?page_id=1706


【シニアグループ】

グランプリ 受賞者なし


<女性ダンサー>

金賞 受賞者なし

銀賞 オニール八菜(フランス、パリ・オペラ座バレエ)
Ye Lim Choi (韓国)

銅賞 Sara Renda, (イタリア)
Hee Sun Kim (韓国)


<男性ダンサー>

金賞 受賞者なし

銀賞 Dae Han Na (韓国)

銅賞 Jeremy-Loup Quer (フランス、パリ・オペラ座バレエ)
Hugo Marchand (フランス、パリ・オペラ座バレエ)


【ジュニアグループ】

特別に傑出したダンサーに贈られる賞
Soo Bin Lee(韓国)

<女性ダンサー>

金賞 Seo Hoo Yun (韓国)

銀賞 みこ・フォガティ (スイス)

銅賞 Ralica Ilieva (ブルガリア)

<男性ダンサー>

金賞 Yue Shi (中国)

銀賞 Joon Hyuk Jun (韓国)

銅賞 Mykola Gorodiskii (ウクライナ)
Georgi Smilevski (ロシア)


【特別賞】

若い才能のための"Emil Dimitrov"賞

Soo Bin Lee (韓国)

ブルガリアのソフィア・オペラ劇場バレエへの主役でのゲスト出演を与える特別賞
Soo Bin Lee (韓国)
Hugo Marchand, (フランス)


というわけで、シニア部門はグランプリなし、金賞なしですが銀賞に日本人の母を持つパリ・オペラ座バレエのオニール八菜(ニュージーランド出身)さんが輝きました。また、ジュニア部門では、やはり日本人の母を持つみこフォガティさんが銀賞に。

パリ・オペラ座バレエのジェレミー・ルー・ケールとユーゴ・マルシャンがシニア部門男性銅賞を受賞しました。また、ジュニア部門グランプリを始め、8つもの賞を受賞している韓国人ダンサーの躍進ぶりには大変驚かされます。

なお、パリ・オペラ座では2004年にマチルド・フルステが金賞でジョシュア・オファルトが銀賞、また過去にはシルヴィ・ギエム、パトリック・デュポン、オーレリー・デュポン(92年ジュニア部門金賞)らが受賞しています。


オニールさんは、決勝ではジェレミー・ルー・ケールと「ドン・キホーテ」とウェイン・マクレガーの作品"Genus" を踊ったようですね。古典と現代作品の両方で強みを発揮していたようですが、特にキトリ役でのグラン・フェッテが素晴らしかったようです。フォガティさんは、オディールを踊ったようです。

群舞にいてもその美しさとゴージャスな存在感で目を引く存在のオニールさんは、将来のスター候補として間違いありません。ますますの躍進を期待したいところです。

ピッツバーグ・バレエ・シアター所属の中野吉章さん、大阪府の松尾芽生さんは、ファイナリストとなりましたが受賞はなりませんでした。

バルナ国際バレエコン、八菜オニールさんら入賞
http://digital.asahi.com/articles/ASG7V4FSVG7VUCVL005.html

バルナ国際バレエ:オニール八菜さん最高賞…女子シニア
http://mainichi.jp/select/news/20140729k0000m040093000c.html
(こっそり追記:この毎日新聞の記事、ネット版には載っていませんが、誌面の方では私のオニールさんについてのコメントがちょっと載っています)


近年のコンクールの隆盛ぶりについては、朝日新聞のインタビューで熊川哲也さんが苦言を呈しています。会員登録が必要ですが、大変興味深いのでぜひご一読を。登録は無料でできます。

(インタビュー)バレエ、日本の立ち位置 バレエダンサー・振付家、熊川哲也さん
http://www.asahi.com/articles/DA3S11265458.html

「そもそも芸術というものは、スポーツとは本質的に異なり、順位があってはいけない世界です。コンクールの成績に一喜一憂しすぎるのは、真の意味でバレエを根付かせるうえで、弊害になりかねないと思います」

一方で熊川さんが、こう語られているのも、コンクールで成功への扉が開いた先駆者ならではの発言です。

「各国の猛者との闘いに、強い心臓で臨んだ経験こそが、ダンサーを舞台で輝かせる。それに、そうした人間ならば、仮に負けてもそこから必ず何かを学びとる。コンクールで闘うという経験は、舞台人として立つためのトレーニングにもなり得ます」

2014/07/28

エトワール・ガラの出演者による東北チャリティレッスン

エトワール・ガラの出演者による東北チャリティレッスンが7月26日、27日に仙台市、福島市、石巻市で行われました。

様々なメディアがこのチャリティレッスンを紹介しています。

被災の子に世界のレッスン 仏オペラ座のバレエダンサー(朝日新聞)
http://digital.asahi.com/articles/ASG7V4H91G7VUGTB00C.html

パリオペラ座バレエ福島で指導 (NHK、映像も観られます)
http://www.nhk.or.jp/lnews/fukushima/6053077321.html

世界の一流ダンサー 2スクール生指導
http://www.minpo.jp/news/detail/2014072717102

実は私も今回、ボランティアでこのレッスンのいくつかに行ってまいりました。その模様は追ってお伝えしていければと思います。ダンサーたちの熱い思いと、予定時間を大幅にオーバーしても続ける、とても丁寧な指導には心を打たれました。目をキラキラさせながら、憧れのダンサーに近づかれたり、指導のために身体を触られて緊張している子たちの姿も印象的でした。

この経験は、子供たちにとって一生思い出に残る、心の糧になることだろうなと思いました。

遠い国から、時間がたっても日本の被災者のことを想い続けるダンサーたちが踊るエトワール・ガラ、ぜひ足を運んでいただければと思います。30日から始まります。

http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/14_gala/index.html

キャスト変更もありプログラムはかなり変わりましたが、最終的なプログラムもアップされております。
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/14_gala/topics/20140725.html

2014/07/26

ヴァルナ国際コンクールのファイナリスト

ヴァルナ国際コンクールのセカンド・ラウンドが行われ、その結果ファイナリストが発表されています。

http://www.varna-ibc.org/site/?page_id=1710&lang=en

ジュニア部門10人、シニア部門14人がファイナルに進みます。

国別では以下の結果です。

1) Bulgaria: 3
2) China: 1
3) France: 3
4) Italy: 1
5) Japan: 2
6) Korea: 9
7) Russia 3
8) Ukraine 1
9) Switzerland: 1

韓国から9人もファイナリストが出たのは凄いですね。開催国ブルガリアからも3人。日本からはジュニアのMei Matsuoさんと、シニアの中野 吉章さん。パリ・オペラ座のオニール八菜さん、ユーゴ・クリストフ・ジャン・マルシャン、ジェレミー・ルー・ケールの3人も残っています。

また日本でおなじみのダンサーでは、ミコ・フォガティ、そしてユニバーサル・バレエの団員で何回も来日しているカン・ミヌも決勝に進出しています。

ロシアのゲオルギー・スミレフスキーは、モスクワ音楽劇場プリンシパルのゲオルギー・スミレフスキーの息子さんだったような?(うろ覚えなので自信がない)モスクワ舞踊アカデミー(ボリショイ・アカデミー)の学生です。


ファイナルは、26日~27日に開催され、29日に最終結果が発表されます。

Mykola Gorodiskii 男 Junior Ukraine

Georgi Smilevski 男 Junior Russia

Soo Bin Lee 女 Junior Korea

Gi Eun Nam 女 Junior Korea

Mei Matsuo 女 Junior Japan

Joon Hyuk Jun 男 Junior Korea

Ralica Ilieva 女 Junior Bulgaria

Seo Hoo Yun 女 Junior Korea

Yue Shi 男 Junior China

Miko Margarita Fogarty 女 Junior Switzerland

Hannah O’Neil 女 Senior France オニール八菜

Dae Han Na 男 Senior Korea

Hee Sun Kim 女 Senior Korea

Oleg Rogachev 男 Senior Russia

Jeremy-Loup Quer 男 Senior France

Yoshiaki Nakano 男 Senior Japan 中野 吉章

Doychin Dochev 男 Senior Bulgaria

Svetlana Svinko 女 Senior Russia

Su Ji Ki 女 Senior Korea

Sara Renda 女 Senior Italy

Venera Hristova 女 Senior Bulgaria

Min Woo Kang 男 Senior Korea

Ye Lim Choi 女 Senior Korea

Hugo Christophe Jean Marchand 男 Senior

2014/07/24

ボリショイ・バレエ来日公演のサマーキャンペーン

今年11~12月に来日公演が予定されているボリショイ・バレエ。
http://www.japanarts.co.jp/bolshoi2014/index.html

その来日公演のうち、

「白鳥の湖」
11月26日(水)13:00(オルガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン主演)、
同日19:00(アンナ・ニクーリナ、ルスラン・スグヴォルツォフ主演)、

「ラ・バヤデール」
12月4日(木)12:00(アンナ・ニクリーナ、ミハエル・ロブーヒン、クリスティナ・クレトワ主演)、
同日18:30(オルガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン、エカテリーナ・クリサノワ主演)

この4公演が、ジャパンアーツのサマー・キャンペーンの一環として、期間限定で割引となっています。
http://www.japanarts.co.jp/s_campaign2014/

S席17000円、A席13000円とかなりの割引きです。
7月26日~8月10日まで。WEB限定、ジャパン・アーツぴあネット会員の登録が必要。


現在、ボリショイ・バレエはニューヨークのリンカーンセンター、デヴィッド・コッホ・シアターで公演を行っております。大変な人気でチケットは全公演ソールドアウト、しかも、残り少ないチケットは残席状況に応じて300ドル以上の高い値段で取引されているほどです。

ニューヨーク公演では、「白鳥の湖」、「ドン・キホーテ」、「スパルタクス」を上演中です。その中で、オルガ・スミルノワの踊ったオデット、オディールは大絶賛を浴びており、辛口で有名なNew York Timesのアラステア・マコーリー氏も褒めております。(ちなみに、マコーリー氏、初日のザハロワとホールバーグの日に関してはかなり厳しい感想を述べていました) また、アンナ・ニクーリナのオデットもなかなか好評だったようです。

http://www.nytimes.com/2014/07/23/arts/dance/bolshoi-ballets-swan-lake-at-lincoln-center-festival.html?ref=arts&_r=0

これは、ロシアのテレビが取り上げたボリショイ・バレエのNY公演の映像です。芸術監督のフィーリンのほか、ロドキン、ニクーリナ、スミルノワのインタビュー映像があります。
http://youtu.be/Kji6W1kE-Lk

そのスミルノワの白鳥、ニキヤがこのお値段で観られるのは、相当お得なことだと思いますので、気になる方はこの機会に買い求められると良いかと思います。私はスミルノワの「ラ・バヤデール」は定価で買ってしまいましたが。

ボリショイ・バレエ2014年来日公演 PR動画
http://youtu.be/VJ8NNC81hG0


最近やっとですが、ジャパンアーツを設立された中藤泰雄氏の「音楽を仕事にして -日本の聴衆に、この感動を伝えたい- 」を読んだのですが、大変面白い本でした。まったく畑違いの仕事をしていた彼が、ひょんなことから音楽家を招聘する仕事に携わることになり、数々の一流カンパニー、アーティストを招聘する事務所へと育てあげた経緯が語られています。

音楽を専門的に勉強してきたわけではない彼が、一音楽ファンとして良いものを伝えたいという一心で仕事に取組み、多くの大物の信頼を得ていくようすがわかります。それはひとえに、音楽やバレエに対する情熱とアーティストへの尊敬の念でした。クリスチャン・ツィメルマン、ユーリ・バシュメット、エフゲニー・キーシン、ニーナ・アナニアシヴィリらからのメッセージも掲載され、これらのアーティスト、さらにはワレリー・ゲルギエフ、アントニオ・ガデス、プラシド・ドミンゴらとの出会いも語られていて、アーティストではないけれど芸術に携わる人の矜持が感じられました。

そして、この本の中で、「良い公演のチケットをより安く提供したい」という中藤さんの気持ちも書かれています。ギャラが高すぎると感じたアーティストについては、値下げ交渉も行っているそうです。

ボリショイ劇場でのボリショイ・バレエの「白鳥の湖」は12000ルーブルもするそうです。(1ルーブルは約3円)。劇場オーケストラを帯同してのボリショイ・バレエの来日公演のチケット代は、決して高くないということですね。

音楽を仕事にして -日本の聴衆に、この感動を伝えたい-音楽を仕事にして -日本の聴衆に、この感動を伝えたい-
中藤 泰雄

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アンヘル・コレーラがペンシルヴァニア・バレエの芸術監督に就任

自らのカンパニー、バルセロナ・バレエ(コレーラ・バレエ)を解散したアンヘル・コレーラ。元ABTの看板プリンシパルだった彼の、今後の動向が注目されていましたが、ペンシルヴァニア・バレエの芸術監督に就任することが発表されました。

Pennsylvania Ballet Trustees Appoint Ángel Corella as Artistic Director
http://www.paballet.org/pennsylvania-ballet-trustees-appoint-%C3%A1ngel-corella-artistic-director

http://www.prweb.com/releases/2014/07/prweb12038612.htm

ペンシルヴァニア・バレエは、芸術監督を19年間務めたロイ・カイザーが退任することが決まっており、理事会はケネディ・センターの総裁であるマイケル・カイザーに後任を選ぶ作業を依頼。30人の候補者の中から7人を面接し、最終的にコレーラに決定したものです。

「彼の情熱と知性、多彩で才能あふれるカンパニーが何ができるかということについてのヴィジョン、彼にインスピレーションを与えるバレエや振付家の幅広さ、そういった要素により、彼を後継者にすべきという結論に至りました」とのことです。アンヘルは9月に芸術監督に就任します。

1963年にバランシンの弟子であるBarbara Weisbergerによってフィラデルフィアに設立されたペンシルヴァニア・バレエは、バランシンはじめ古典から現代作品まで幅広い分野のバレエを上演してきました。アンヘルの姉であるカルメン・コレーラもABTに移籍する前に所属していたカンパニーです。

こちらは、アンヘル・コレーラがバルセロナ・バレエを設立して育てて行こうとする様子を撮影したドキュメンタリー映画の予告編です。残念ながら、映画はまだ完成していません。
http://www.dancemedia.com/v/1528

苦労続きだったアンヘル・コレーラですが、今までの経験をもとに、素晴らしいカンパニーを築き上げられますように。

2014/07/22

『SHOKO 美しく、強く。バレリーナを生きる』発売記念 SHOKOトーク&サイン会開催

ベルリン国立バレエのプリンシパル、およびK-Ballet Companyのゲストプリンシパルとして活躍してきたSHOKOこと中村祥子さん。ハンガリー国立バレエに移籍して新しい一歩を踏み出したところです。

そのSHOKOさんが、表現者としての自らを磨き続ける、その半生をこのたび一冊の本にまとめ、7月25日に平凡社より出版する運びとなりました。これまでの歩み、バレエに対する熱い想い、プロフェッショナルとしての哲学、などを真摯に語った文章に加え、臨場感あふれる舞台やリハーサル、少女時代のプライベートショット、そして…未公開のマタニティ写真も加えた読み応え・見応えたっぷりの一冊だそうです。

http://www.chacott-jp.com/j/topics/detail1898

SHOKOさんは、多くのバレエ少女の憧れとして、ロールモデルとして存在し、また実際に海外で頑張るバレリーナの卵さんたちも支援されているということです。

そのSHOKOさんがはるばる来日し、チャコット渋谷店にてトークイベントを行います。
出来上がったばかりの本のページを誰よりも早くめくり、SHOKOさんとじかに触れ合える、二度とない機会です。ぜひ、お見逃しなく。

●日 時:2014年7月26日(土)13:30より
●場 所:チャコット渋谷本店 4階
●内 容:
1)SHOKOトークイベント
本書を創るにあたってのSHOKOの想い、そして現在の活動などについて伺います。お集まりの皆さまからの質疑応答タイムも設けます。

2)サイン会
『SHOKO 美しく、強く。バレリーナを生きる』をお買い上げの方に、SHOKOがその場でサインを行います。
本書は、イベント会場及びチャコット渋谷本店地下一階の書籍売り場にて25日よりお買い求めいただけます。
サイン会に参加ご希望の方には、お買い上げ時に整理券を差し上げますのでそちらをお持ちの上、4階イベント会場へお越しくださいませ。
なお、サイン会参加人数は、先着100名様とさせていただきます。

3)質問募集(7月24日締切)
チャコットWebサイト メールフォーム、チャコット公式ツィッター、チャコットDance Cube Face BookページにてSHOKOへの質問を受け付けます。
回答は後日、チャコットWebサイトに掲載!みなさんふるってご参加ください。
※内容によってはお答えできない場合もございますのであらかじめご了承ください。

▼メールフォーム
件名に「SHOKOさんへ質問」とお書きください。
https://www.chacott-jp.com/j/contact/inquiry/homepage/
▼公式Twitter
@Chacott_jp宛に、ハッシュタグ【 #SHOKOさんへ質問 】を付けてツイートしてください!
https://twitter.com/Chacott_jp
▼Dance Cube Face Bookページ
投稿へのコメント、またはメッセージでお送りください。
https://www.facebook.com/Chacott.DanceCube


ハンガリー国立バレエ団がどのようなバレエ団なのかご存じない方のために、ちょうどよい記事が「ダンサーの宝箱」にアップされています。SHOKOさんの同僚、藤井彩嘉さんのインタビューが掲載されています。http://odoritai.exblog.jp/22558384/

写真もたくさん載っており、劇場の美しさには圧倒されます。藤井さんも、オペラ座の内装の美しさに感激したことが入団を決めた一番の理由だそうです。SHOKOさんの写真も一枚載っています。(日本人団員は現在4人だそうです)

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7/20 アリーナ・コジョカル ドリームプロジェクト

2012年の第一回に続いてのアリーナ・コジョカルドリームプロジェクト。この公演ではコジョカルの強い意向のもと、期間中に会場内に東日本大震災被災者支援のために義捐金箱を設置するとともにチャリティオークションも実施していた。オークションの収益は、全額を東日本大震災・津波遺児への支援金としてあしなが育英会に寄付するとのこと。

http://nbs.or.jp/stages/1407_Cojocaru/index.html

コジョカルは、「Hospice of Hope」という、故国ルーマニアでのホスピスのためのチャリティ公演を行っているなど、かなりこのような社会的な活動に力を入れているようだ。


◆第1部◆

「オープニング」
振付:ペタル・ミラー=アッシュモール 音楽:アレクサンドル・グラズノフ
アリーナ・コジョカル
オヴィデュー・マテイ・ヤンク、ロベルト・エナシェ、堀内尚平、クリスティアン・プレダ、ルーカス・キャンベル

ルーマニア国立バレエの5人の男性ダンサーたちは黒いシャツとパンツでスタイリッシュに決めて、星がキラキラひかる中、チュチュ姿のコジョカルはとても美しい。


「眠れる森の美女」より グラン・パ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ 音楽:ピョートル・I. チャイコフスキー
ローレン・カスバートソン、ワディム・ムンダギロフ

ローレンもワディムもとても美しく、ソロの時には動きがのびやかで綺麗なのだが、パートナーリングがあまりうまくいっていなかった。特にアダージオでのフィッシュダイブがもたついたのが気になった。ローレンは相変わらず控えめながらも気品にあふれてイングリッシュローズさながら。ワディムもマネージュが高速で良く伸びたつま先も美しいのだが、十分合わせる時間がなかったのかもしれない。


「HETのための2つの小品」
振付:ハンス・ファン・マーネン 音楽:エリッキ=スヴェン・トゥール、アルヴォ・ペルト
ユルギータ・ドロニナ、イサック・エルナンデス

楽しみにしていたファン・マネン作品。男性のシースルー衣装がセクシーなこの作品は、以前、シュツットガルト・バレエの50周年記念ガラでアリシア・アマトリアンとマライン・ラドマーカーが踊ったのを観たことがある。前半のスピーディーさと、後半の叙情性が対をなしている。リリカルなのに、わざと外してユーモラスに作った部分があるのがファン・マーネンらしい。ストーリーはないのだが、男女の間の濃密な駆け引き、距離感、息遣いが伝わってきていてどきどきしてしまう。ユルギータ・ドロニナは実演に接するのが初めてなのだが、高い身体能力、小柄ながらも美しい肢体、そして一つ一つの動きにドラマ性を込められて内面の深みを感じさせて素晴らしい。イサック・エルナンデスはまだ若いようでほっそりとしていて官能性は薄いけれども、動きは美しく大いなる可能性を感じさせてくれた。


「エスメラルダ」
振付:マリウス・プティパ 音楽:チェーザレ・プーニ
日高世菜、ダヴィッド・チェンツェミエック

ヨハン・コボーがバレエ団初めてのプリンシパルに指名したという日高さん。長い手脚でプロポーションに恵まれ、ワガノワ出身者ならではの上半身の使い方の美しさ。タンバリンを叩く脚の高く上がること。柔軟性に優れていながらも軸がしっかりしているので安定感も抜群だし、ピルエットはきれいにトリプルが決まり、グランフェッテもスピードはゆっくりめだけどとても正確。今現在でも素晴らしいけど将来、どこまで育つのかとても楽しみ。ロイヤルから移籍したチェンツェミエックは、脚はきれいだしノーブルさを感じさせてくれるけど着地が決まらないなど、ちょっと不安定だった。


「ラプソディー」より
振付:フレデリック・アシュトン 音楽:セルゲイ・ラフマニノフ
吉田都、スティーヴン・マックレー

ロイヤル・バレエのモスクワ公演でも、スティーヴン・マックレーの踊る「ラプソディ」は大絶賛を浴び、バリシニコフの再来だと大評判だったそうだが、この演目での彼は本当に凄かった。最初はガラ向けのアレンジとして、マックレーのソロから始まったが、とにかくすさまじいヴィルトゥオーゾぶり。まるで悪魔に魂を売って踊りの才能を授けられた人のよう。超絶技巧を音楽通りに決めていく。吉田都さんが登場する。二人ともたぐいまれなる豊かな音楽性の持ち主で、性質は違っているように思えるのに一緒に踊るとピタッと合う不思議さ。都さんの細かいパドブレ、ふわっとした腕の動きはエレガントそのものなのに、サポートつきピルエットはものすごい速さでありながらも、音楽にぴったりと寄り添っている。凄いものを観たという思いとともに、観る者すべてを幸福感で包んでしまう都さんは、バレエ界の至宝そのもの。(最近、宣伝文句に至宝って言葉を乱発しすぎだと思うのだが、都さんにこそこの言葉はふさわしい)


〈本日の特別プログラム〉 「5つのタンゴ」よりソロ
振付:ハンス・ファン・マーネン 音楽:アストル・ピアソラ
イサック・エルナンデス

この日はスペシャルプログラムとして一つ加わったので、ファン・マーネン作品を二つ観られてとてもうれしかった。ピアソラのタンゴに合わせて、黒い衣装のエルナンデスが踊るソロ。とてもセクシーでスタイリッシュ、タンゴ的な要素がありながらも動きはクラシックバレエが基本。若豹のような細身でしなやかなエルナンデスにはぴったりだった。
(これは、同じオランダ国立バレエのヴィットー・マッツェオが踊ったもの)
http://youtu.be/4mqfSFskFyA


「リリオム」より ベンチのパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:ミシェル・ルグラン
アリーナ・コジョカル、カーステン・ユング

ノイマイヤーの2012年の作品「リリオム」の最初のほう、ジュリーとリリオムが出会う場面のパ・ド・ドゥ。ノイマイヤー作品の一部を取り出してガラで上演するのはなかなか難しく、初めて観る人にとっては意味が分かりづらいところもあった。が、純粋無垢なジュリー、心優しいけど粗暴なリリオムのキャラクターづけははっきりわかるのは、さすが初演キャストによるものだけのことはある。コジョカルは、ノイマイヤーの舞踊語彙をしっかりと自分のものにしており、彼独特のフレックスの足先の使い方や上半身の動きも巧みで、ノイマイヤーダンサーになりきっていた。今の彼女にとっては、古典よりはノイマイヤー作品のほうがずっと向いているように思えた。

カースティン・ユングの演技力の高さは言うまでもなく、不器用な二人の心が少しずつ近づき寄り添っていくのが伝わってきた。ラスト、ベンチの上で膝枕するシーンは愛らしいし、ミシェル・ルグランの音楽もノスタルジックな雰囲気を作り上げるのに役立っていた。ぜひとも全幕を観てみたい作品。(そのためには、ここしばらく来日していないハンブルグ・バレエに来日してほしいところ)


◆第2部◆

「白鳥の湖」 第2幕より
振付:レフ・イワーノフ 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
アリーナ・コジョカル、ヨハン・コボー
東京バレエ団

昨年のロイヤル・バレエの来日公演で予定されていたコジョカルとコボーの「白鳥の湖」が、コジョカルの怪我のためにキャンセルになってしまったための埋め合わせだった。が、残念ながらコジョカルは、オデット向きではない。小柄なダンサーでもオデットが似合う人はいるのだが、腕が短く筋肉質の彼女には、オデットの悲劇性はあまり表現できていないように感じられてしまった。ただ、コボー王子の腕に抱かれているコジョカルの表情には、今まで感じられなかった生身の女の部分が観られたのは興味深い。東京バレエ団の出演者たちの細かいキャストがわからなかったのは残念だが、四羽の白鳥の揃いっぷりは実に見事で、これだけよく揃っている四羽を観たのは久しぶりだった。

◆第3部◆

「海賊」 ディヴェルティスマン
振付:マリウス・プティパ 音楽:リッカルド・ドリゴ
アリーナ・コジョカル、ユルギータ・ドロニナ、日高世菜、ローレン・カスバートソン
ヨハン・コボー、スティーヴン・マックレー、ダヴィッド・チェンツェミエック、
ワディム・ムンタギロフ、イサック・エルナンデス

ガラ公演のお祭りらしい構成でとても楽しかった。ベースになっているのは、ENBで上演されているアンナ・マリー・ホームズ版だろうか(ほぼ同じ版は、ABTでも上演されている) まずは、コジョカルとコボーによる寝室のパ・ド・ドゥ。サポート巧者のコボーによる見事なサポートで、コンラッドとメドーラの甘いパ・ド・ドゥが展開する。次に、奴隷のパ・ド・ドゥということで、マックレーとドロニナによるランケデムとメドゥーラの踊り。マックレーは2年くらい前にABTでランケデム役でゲスト出演しているので、この役もお手のもの。奴隷商人らしい狡猾で強欲な感じも良く出しており、またトゥール・ザン・レールとグリッサードの連続技や柔らかいジャンプ、さらには背中を地面に向けた高いクペ・ジュッテ・アン・トゥールナンや540などのダイナミックなテクニックも見せてくれた。ドロニナは、ここではクラシックテクニックの確かさを見せてくれて、グランフェッテは少し左にずれたもののダブルも入れてきれいに回った。

日高さんはピルエットの美しいオダリスクの第三ヴァリエーション、カスバートソンはメドーラのヴァリエーションを見せてくれて、チェンツェミエックはコンラッドのヴァリエーション。そして、コジョカル、ムンタギロフ、エルナンデスによる2幕のパ・ド・トロワ。ムンタギロフのマネージュが、今まで観たことがないような超絶技巧を織り込んだもので、片脚をルティレの位置にしながらのアティチュード・アン・レールっていうのだろうか、大技を入れてくれた。それに比べたらエルナンデスのアリは少々地味目だったが、彼もテクニックは非常にしっかりとしていた。コジョカルのヴァリエーションは、ガムザッティが踊っているもの。最初のエカルテでのグランド・スゴンドのバランスが凄かった。

コーダでは、まずはコジョカルがバランスのくっきりとしたイタリアン・フェッテを見せて、それから女性陣が全員登場してのグラン・フェッテ合戦。そして男性陣によるピルエット・ア・ラ・スゴンド合戦というお約束ながらとても盛り上がるフィナーレとなった。


Aプロの白眉は何と言っても都さんとマックレーによる「ラプソディ」だったが、オランダ国立バレエの二人、日高さん、「リリオム」もとても印象に残ったし、最後の「海賊」はエンターテインメント性たっぷりだったし、全体的に良い公演だった。Bプロの方も楽しみである。

「5つのタンゴ」収録

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2014/07/21

6/2、3 シュツットガルト・バレエ「Wayfarers」

6月の2日、3日に行われたシュツットガルト・バレエのミックスプロ、「Wayfarers」を観てきました。

これは、エドワード・クルグ振付の「No Men's Land」、デミス・ヴォルピの「Aftermath」という二つの世界初演新作と、ベジャールの「さすらう若者の歌」の3作品のトリプルビル。2つの新作は、音楽もこれらの作品のために委嘱して新たに作曲し、「No Men's Land」は全員男性、「Aftermath」は全員女性の出演者。シュツットガルト・バレエのレパートリーにはいくつかの柱があるのだが、クランコ作品、20世紀の作品、古典の他に、新作を上演することが重要な柱の一つとなっている。毎年、新作を何本も制作するパワーはこのカンパニーならではだ。

http://www.stuttgarter-ballett.de/spielplan/2014-06-02/fahrende-gesellen/

「No Men's Land」
振付:エドワード・クルグ
音楽: Milko Lazar「Ballet Suite for Cello and Orchestra in 5 Movements」
出演:ブレント・パロリン、ルイス・シュテーンズ、アレクサンダー・ジョーンズ、ダニエル・カマルゴ、デヴィッド・ムーア、コンスタンチン・アレン、ジェシー・フレイザー、ロバート・ロビンソン、オズカン・エイク

マッテオ・クロッカード=ヴィラ、ローランド・ハヴリカ、エドゥアルド・ボリアーニ、クレメンス・フロリッヒ、アレクサンダー・マッゴワン、ルドヴィコ・ペイス、ファビオ・アドリシオ、ロジャー・クアドラド、セドリック・ルップ、ノアン・アルヴェス・デ・サウズ※、マルティ・フェルナンデス・ペイザ※

エドワード・クルグは、アリーナ・コジョカルドリームプロジェクトでも踊られる「レイディオ・アンド・ジュリエット」の振付でも知られる、スロヴェニアのマリボール劇場の芸術監督。シュツットガルト・バレエのために振付けられた作品としては3作品目。音楽も、この作品のために作曲されたもので、ブラスを使ったジャズ的な音は攻撃性を感じさせるものの、途中に挿入されたリリカルで美しいチェロのソロも印象的だ。

21人の男性ダンサーが出演。上半身裸、紺色のパンツの上にニーソックスを履いている。登場シーンでは全員が一列に並んで一斉にユニゾンに動く。ブレント・パロリンの、ちょっと奇妙にゆがんだソロ。その次には9人の男性ダンサーが、かわるがわる、ペア、トリオ、4人などでの踊りを繰り広げる。天井から、いくつもの軍用コートが吊りさげられているのが下りてくる。ダンサーたちは、これらのコートにしがみつき、まるで首つりをしているのかのようなイメージ。その中を、顔を袋で覆われ、ポワントを手に履いた男性が這いずり回る。若く小柄なルイス・シュテーズの奔放なソロ。そして最後には、ペアになった男性ダンサーたちがお互い向き合い、格闘ゲームのように戦い合ったりお互いを高々とリフトしたり。最後には座っている一人のダンサーを、数人のダンサーたちが囲み、一人は彼の方の上にまたがり、脚の間から座っているダンサーの腕を持ち上げることで、性的な要素を暗示する。

戦争、暴力性を強く感じさせる作品だが、男性ダンサーが充実しているシュツットガルト・バレエならではの力強い作品。今シーズン限りでこのバレエ団を離れ、ナショナル・バレエ・オブ・カナダに移籍するブレント・パロリンが繊細さを秘めた中での存在感、雄弁な表現力を見せてくれた。

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「さすらう若者の歌」Lieder eines fahrenden Gesellen

振付:モーリス・ベジャール
音楽:グスタブ・マーラー
出演:ジェイソン・レイリー、エヴァン・マッキー
バリトン:Julian Orilishausen

新作2本に挟まれた現代の古典ともいうべき作品。71年にヌレエフのために振付けられたこの作品は、76年にはシュツットガルト・バレエでも上演され、リチャード・クラガンとエゴン・マドセンが踊った。ジョルジュ・ドンとリード・アンダーソンが共演したこともあったという。43年前の作品ということもあり、衣装などに古めかしさは否めないが、日本でも様々なダンサーが何回か踊っているのでおなじみの作品。

ヌレエフ財団のサイト
http://www.nureyev.org/rudolf-nureyev-main-roles-ballets/songs-of-a-wayfarer-bejart-rudolf-nureyev

今回、初めて、この作品の歌詞を読んでみた。マーラー自身の体験が大きく反映されていると言われている。「Wayfarer」というのは、若者、というよりは、「マイスター(親方)」の称号を取得するために、ドイツ語圏を広く渡り歩いた職人のことを指しているとのこと。親方について旅して回った職人の若者が、最後に彼のもとを旅立っていくというのがモチーフである。また、マーラー自身の失恋の経験をもとに、胸をナイフで刺されるような辛い、恋人との別れも綴られている。

ヌレエフが演じた、薄いブルーの衣装の若者役を演じていたのはジェイソン・レイリー。彼の生命力に満ちて若々しい雰囲気はこの役によく合っていた。柔らかいプリエ、生き生きとしたマネージュ、イノセントな雰囲気。人生に対する希望に溢れていた若者はやがて痛みを知り、苦悩し、死の世界も垣間見る。そして師に導かれて、新しい世界へと旅立っていく。そして、「運命」とも呼ばれる、赤い衣装の彼の師を演じたのがエヴァン・マッキー。この公演が、彼のシュツットガルト・バレエでの最後の舞台となった。愛する弟子にまず人生の喜び、そして次に苦しみを見せた師は、最後に彼の運命を示し旅立ちへと導いていく。カリスマ性に溢れ、最初は慈愛に満ちて優しく見守り包み込みながらも試練を与えていく運命に相応しく、一挙一動がアカデミックで美しく知性に満ちた存在感のエヴァン。弟子と師との心の交流がしみじみと感じられていく。エヴァンは、この歌詞、自分を育ててくれたバレエ団との別れと旅立ち、そして自身の境遇に非常にマッチしていて特別なものであると感じたとのこと。

二つの青い眼、
愛しい人のが、
私をこの
広い世界へと追いやった。
さあ、私は最愛の地に別れを告げなければ。
おお、青い眼よ、なぜ私を見つめたりしたんだ?
いま私にあるのは、永遠の苦しみと嘆きだ。

私は旅立った、静かな夜に、
暗い荒れ野をすっぽりと包む夜に。
惜別を私に告げる者などいないが—さらばだ。
私の仲間は愛と苦しみだった。
 (Wikipedia より引用)

青春の歓びに満ちた第2楽章、荒々しく苦悩があふれる第3楽章との対比も鮮やかだった。独唱を行ったJulian Orilishausenの若々しくも哀感のある声も美しく響いた。舞台正面、観客に手を伸ばしながらも去っていくジェイソン、そして彼の手を引いて奥へと連れていくエヴァンの後ろ姿には悲しみが漂っていた。この時点で彼はすでに涙ぐんでいるのが分かった。

週の真ん中の平日、トリプルビルの中の真ん中の演目、そして全幕ですらないしクランコ作品でもない。最後の公演がこんな形となったのは、正直言ってトッププリンシパルのフェアウェルとしてはあまり良い対応ではなかったと感じた。しかしカーテンコールでジェイソンとエヴァンが抱き合ったのち、客席からはいくつもの花束が投げ込まれ、リード・アンダーソンと、ジョン・クランコスクールの校長タデウス・マタッチが舞台に上がり、クランコ・ソサエティからの大きな花かごを贈って、彼を見送った。アンダーソンも泣いていた。

シュツットガルト・バレエ、この4年間でバレエ団を去る/去ったプリンシパルの数が非常に多い。名前を挙げていくと、ダグラス・リー、ブリジット・ブライナー、ウィリアム・ムーア、カーチャ・ヴュンシュ、エリザベス・メイソン、アレクサンドル・ザイツェフ、エヴァン・マッキー、マリア・アイシュヴァルト、そしてフィリップ・バランキエヴィッチの9人だ。加えて、スージン・カンもすでに韓国国立バレエの芸術監督に就任していて、ほとんどシュツットガルトでは踊っていない。ということで急速に世代交代が進んでいるわけだが、優れた若いダンサーもたくさんいるものの、経験豊かなダンサーがほとんど残っていないため、正直、このバレエ団は今後大丈夫なのか、という気がしてしまう。エヴァンは移籍するのだが、マリア・アイシュヴァルトも、そして明日さよなら公演を迎えるフィリップ・バランキエヴィッチも、まだまだ引退するには早いダンサーたちだ。彼らはバレエ団には残らないで、フリーとして他で活動を続けるのだが、彼らの経験を受け継ぐようなことをしていないのが、非常に気になる。

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「Aftermath」
振付:デミス・ヴォルピ
音楽:Michael Gordon
出演:エリサ・バデネス

昨シーズン「クラバート」で大成功をおさめ、ドイツ・ダンス賞「未来」を受賞した若手専属振付家のデミス・ヴォルピの作品。「No Mens Land」と対をなすように、こちらは女性ダンサーばかり25人が登場する。一人のアーティストが周囲の無理解や圧力と戦い抜く物語だ。

一人の女性ダンサー(エリサ・バデネス)が、圧倒的な柔軟性を見せつける、苦悩に満ちた長いソロを踊る。振付自体も非常に個性的で、首や肩の動きなど上半身を雄弁に使ってもがいている様子を見せる。バデネスの圧倒的な柔軟性、強靭さが迫ってくる。彼女は、まずは5人の女性ダンサーたちに囲まれている。彼女たちは顔と髪を白く塗り、目の周りは真黒で無表情、グレーの服を着てポワントを履いてずっとポワントの上で立っている。この女性たちの人数は増殖して、やがて24人になり、フォーメーションも整列したものから円環と変化していく。この女性たちの軍団が、ヒロインを取り囲むように迫ってきて、それはまるで現代版の「ジゼル」のウィリたちのようだ。彼女たちは、ヒロインの声を、表現を取り上げようとしているのだ。ヒロインの動きは激しくなり、まるで「春の祭典」の選ばれし乙女のように垂直に何度も飛び上がったかと思うと、深いプリエで地面へと近づく。

この作品のために作曲された音楽は、パーカッションの激しいリズムが印象的だ。だが、楽器としてもっとも有効に機能しているのは、女たちのポワントがパドブレするときに鳴る床の音。ヒロインは、やがて女たちの群れの中に飲み込まれていく。女たちも舞台上を去るが、舞台の袖からはずっと激しいポワント音が鳴り響いている。そして空となった舞台。不意にポワントの音が鳴りやみ、静寂。

女性群舞の使い方、ポワントを効果音として使ったアイディア、そして斬新な舞踊語彙。デミス・ヴォルピという若い天才の溢れる才能に震撼した。打ちのめされるようなインパクトがあって凄まじい。また、常に舞台の上にいてソロを踊り続けるヒロイン役を踊ったエリサ・バデネスの身体能力と目を吸い寄せられるような表現力にも恐れ入った。この作品のファースト・キャストはヒョジュン・カン、セカンド・キャストはアリシア・アマトリアン。いずれもテクニックに優れた強い女性ダンサーたちだ。

おそらく、シュツットガルト・バレエは今の現状ではクランコ作品を引き継いでいくよりも、このような現代作品の新作を踊っていく方向性に進んでいくのではないかと感じた。優れた新作次々とを生み出していき、現代的な作品に求められる強さを持った若いダンサーたちを育てていく、そういうカンパニーになったのだと思う。いずれにしても、デミス・ヴォルピは凄い。来シーズンも、彼の新作があるというので、とても楽しみである。

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英文レビューはこちら
http://bachtrack.com/review-stuttgart-ballet-wayfarers-june-2014

ヴァルナ国際コンクール開催中

第26回ヴァルナ国際バレエコンクールが現在開催中です。

http://www.varna-ibc.org/site/

7月15日~19日 第一ラウンド
21日~24日 第二ラウンド
26日~27日 第三ラウンド(決勝)
29日 授賞式、受賞者によるガラ公演
30日 「スーパーガラコンサート」

審査員は以下のリンクで
http://www.varna-ibc.org/site/?page_id=1319&lang=en

審査員長はウラジーミル・ワシーリエフ、審査員の中には、森下洋子さん、マキシミリアーノ・グエラ、シリル・アタナソフらの名前があります。

そして、第二ラウンドに進出したダンサーたちの名前は以下のリンクで
http://www.varna-ibc.org/site/?page_id=1708&lang=en

ジュニアは13人、シニアが31人進みました。
国別では韓国が11人、ロシアが10人、そして日本は5人ですが、留学しているバレエ学校の関係で、日本人でもほかの国の名前で出場している方もいます。

なじみのある名前の方も何人かいます。パリ・オペラ座のオニール八菜さん、そしてミコ・フォガティ。また、ルーマニア国立バレエに所属している奥野凛さん、ライプチヒ・バレエの佐々木まどかさんの名前もあります。ジェレミー・ルー・ケール、ユーゴ・マルシャンもオペラ座の団員です。

シニア部門  26歳以下 (1988年7月15日~1995年7月14日生まれ)
ジュニア部門  15歳~19歳 (1995年7月15日~1999年7月14日生まれ)


Salome Figueiredo de Santana 女 Junior Belgium

Ralica Ilieva 女 Junior Bulgaria

Venera Hristova 女 Senior Bulgaria

Doychin Dochev 男 Senior Bulgaria

Yue ShiMale 男 Junior China

Hannah O’Neil 女 Senior France オニール八菜

Hugo Christophe Jean Marchand 男 Senior

Jeremy-Loup Quer 男 Senior France

Madoka Sasaki 女 Senior Germany 佐々木 まどか

Sara Renda 女 Senior Italy

Mei Matsuo 女 Junior Japan

Sakura Oka 女 Junior Japan

Ayaka Okubo 女 Senior Japan 大久保彩香

Rin Okuno 女 Senior Japan 奥野凛

Yoshiaki Nakano 男 Senior Japan 中野 吉章

Gi Eun Nam 女 Junior Korea

Seo Hoo Yun 女 Junior Korea

Soo Bin Lee 女 Junior Korea

Joon Hyuk Jun 男 Junior Korea

Hee Sun Kim 女 Senior Korea

Hye-Ju Go 女 Senior Korea

So Yeong Jang 女 Senior Korea

Su Ji Ki 女 Senior Korea

Ye Lim Choi 女 Senior Korea

Dae Han Na 男 Senior Korea

Min Woo Kang 男 Senior Korea

Eliezer Solieh Samudio Marin 男 Senior Panama

Noellie Denise Coutisson 女 Senior Romania

Alena Ledyakh 女 Junior Russia

Georgi Smilevski 男 Junior Russia

Anna Germizeeva 女 Senior Russia

Marina Kudryashova 女 Senior Russia

Svetlana Svinko 女 Senior Russia

Ivan Oskorbin 男 Senior Russia

Konstantin Alexentsev 男 Senior Russia

Mario Vitale Labrador 男 Senior Russia

Oleg Rogachev 男 Senior Russia

Saryal Afanasev 男 Senior Russia

Jessica Overton 女 Senior South Africa

James Fraser 男 Senior South Africa

Miko Margarita Fogarty 女 Junior Switzerland

Mykola Gorodiskii 男 Junior Ukraine

Kaya Celeste Aman 女 Senior USA

Lauren Marie Baznik 女 Senior USA

なお、決勝、ガラの模様はネットで生中継で視聴することができます。(26,27,29,20日)
http://tv.bnt.bg/bntworld/

2014/07/19

「ロイヤル・エレガンスの夕べ」キャスト変更

ロイヤル・バレエとバーミンガム・ロイヤル・バレエのダンサーを招いてのガラ公演「ロイヤル・エレガンスの夕べ」。

残念ながら平野亮一さんが怪我をしてしまったため降板しました。代役として出演するのは、ロイヤル・バレエのファースト・ソリスト、ベネット・ガートサイドです。

http://www.royalelegancenight.com/

ベネット・ガートサイドは、「マイヤリング」のルドルフ皇太子を始め(これは観ることができたのですが素晴らしかったです)、「ロミオとジュリエット」のティボルト役など、様々な役で活躍しています。

キャスト変更に伴い、演目の変更もありました。

「ロミオとジュリエット」→「コンツェルト」(振付:ケネス・マクミラン、出演:佐久間奈緒/ベネット・ガートサイド)
「レイヴン・ガール」→「瀕死の白鳥」(振付:ミハイル・フォーキン、出演:サラ・ラム)
「アスフォデルの花畑」(出演者のみ変更:佐久間奈緒/ベネット・ガートサイド)

http://youtu.be/-FnuNgE5k_c

日本青年館ホール (神宮外苑)

2014年8月8日(金) 19:00開演 *ロビー開場は各開演の45分前
8月9日(土) 13:30開演
8月10日(日) 13:30開演
チケット料金(税込)

S席¥13,800 A席¥11,800 *未就学児童入場不可

予定演目(3日間共通)

「真夏の夜の夢」よりパ・ド・ドゥ(オベロンとタイターニアのパ・ド・ドゥ)

振付:フレデリック・アシュトン
出演:ラウラ・モレーラ/ツァオ・チー

「レクイエム」よりソロとパ・ド・ドゥ

振付:ケネス・マクミラン
出演:崔由姫/ネマイア・キッシュ

「エニグマ変奏曲」よりトロイトのソロ *日本初演

振付:フレデリック・アシュトン
出演:リカルド・セルヴェラ

「コンツェルト」

振付:ケネス・マクミラン
出演:佐久間奈緒/ベネット・ガートサイド

「眠れる森の美女」より第3幕のパ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ
出演:サラ・ラム/スティーヴン・マックレー

「ルーム・オブ・クックス (Room of Cooks)」 *日本初演

振付:アシュリー・ペイジ
出演:ラウラ・モレーラ/リカルド・セルヴェラ/ネマイア・キッシュ

メタモルフォシス:ティツィアーノ 2012 「トレスパス」 よりパ・ド・ドゥ
*日本初演

振付:クリストファー・ウィールドン、アラステア・マリオット
出演:サラ・ラム/スティーヴン・マックレー

「エリート・シンコペイションズ」よりスウィート・ハート

振付:ケネス・マクミラン
出演:崔由姫/リカルド・セルヴェラ

「アスフォデルの花畑」より第2楽章

振付:リアム・スカーレット
出演:ラウラ・モレーラ/ベネット・ガートサイド

「ディアナとアクティオン」

振付:A・ワガノワ改訂(マリウス・プティパより)
出演:佐久間奈緒/ツァオ・チー

「瀕死の白鳥」

振付:ミハイル・フォーキン
出演:サラ・ラム

「Rotaryrotatory(ぐるぐる回る)」*世界初演

振付:クリスティン・マクナリー
出演:崔由姫

「QUIZAS(キサス)」 *日本初演

振付:ウィリアム・タケット
出演:ラウラ・モレーラ/リカルド・セルヴェラ

「チャルダッシュ」 *日本初演

振付:スティーヴン・マックレー
出演:スティーヴン・マックレー


今回も日本初演作品が5作品もあるので、大変楽しみです!リアム・スカーレット、アシュリー・ペイジ、クリストファー・ウィールダン、クリスティン・マクナリー、ウィリアム・タケットとロイヤル・バレエらしい振付家の作品がそろいました。そしてスティーヴン・マックレーのタップ作品ももちろん楽しみです。

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2014/07/18

牧阿佐美バレヱ団「白鳥の湖」にコンダウーロワとアスケロフがゲスト出演

10月18日、19日に行われる牧阿佐美バレヱ団の「白鳥の湖」に、マリインスキー・バレエのプリンシパル、エカテリーナ・コンダウーロワとファースト・ソリストのティムール・アスケロフがゲスト出演するとのことです。

http://www.ambt.jp/perform.html#haku

2014年10月18日(土)17:00
2014年10月19日(日)15:00
会場:ゆうぽうとホール(五反田)

指揮:デヴィッド・ガルフォース
演奏:東京ニューシティ管弦楽団
チケット発売 7月30日(水)

出 演
オデット/オディール:
エカテリーナ・コンダウーロワ Yekaterina Kondaurova
ジーグフリード王子:
ティムール・アスケロフ Timur Askerov (マリインスキー・バレエ)
スタッフ
演出・振付、総監督:
三谷恭三(プティパ/イワノフ、テリー・ウエストモーランド版に基づく)
作曲:P.I.チャイコフスキー
美術:ボブ・リングウッド
料 金 S席 11,000円 A席 8,600円 B席 6,400円 C席 4,300円(全席指定・税込)  A席ペア15,000円(バレヱ団事務局のみ取扱い)

エカテリーナ・コンダウーロワは、ここしばらく怪我で出演しておらず、8月のマリインスキー・バレエのロンドン公演もすべて降板してしまっていますが、10月には回復しているだろうということですね。この二人で踊られた「白鳥の湖」は3Dで収録され、映画館で上映されたのち、NHKでも放映されたのでご覧になった方も多いかと思います。コンダウーロワの白鳥が日本で観られるのは貴重な機会ですね。

なお、マリインスキー・バレエでは、7月13、14日の「ラ・バヤデール」を映画館で生中継で上映しました。こちらも、DVD用に収録されているようですので、観られる機会があるかもしれません。ヴィクトリア・テリョーシキナがニキヤ、ウラジーミル・シクリャーロフがソロルです。指揮はゲルギエフの予定でしたが、土壇場で違う指揮者になったとのこと。

2014/07/17

ENB(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)の昇進・入団情報

ENB(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)の昇進が発表されています。

http://blog.ballet.org.uk/english-national-ballet-announces-promotions-new-joiners/

カルロス・アコスタの甥でもあるヨナ・アコスタがプリンシパルに昇進しました。彼は最近では、ハンブルグ・バレエの「ニジンスキー・ガラ」にアリーナ・コジョカルとともに出演し、大好評でした。

先日のジャクソン国際コンクールで金賞を受賞した加瀬栞さんは、ファースト・ソリストに昇進しました。7月23-27日、加瀬さんはヨナ・アコスタと共演し「コッペリア」に主演する予定です。

また、団内コンクール「Emerging Dancer 2014」で優勝したジュノール・ソーザもファースト・ソリストに昇進。加瀬さんは、このコンクールで2011年に優勝しています。

クセーニャ・オフジャニックがソリストに、そして猿橋賢さんとAlison McWhinney(やはり「Emerging Dancer 2014」で優勝)がファースト・アーティストに昇進しました。

入団者としては、ボストン・バレエのソリストであるAlejandro Virellesがプリンシパルとして入団、同じくボストン・バレエのヨーコ・カレガリとAdriana Lizard(ボルドー・バレエ)、Sarah Kundi(バレエ・ブラック)、さらに、今年のローザンヌ国際コンクールで入賞し、コンテンポラリー賞も受賞したボリショイ・アカデミー出身のアフリカ系アメリカ人プレシャス・アダムズも入団します。また、イングリッシュ・ナショナル・バレエスクールを卒業する Isabella Brouwers と Jin Hao Zhangも入団。

加瀬さん、猿橋さんと日本人の活躍も目立っていますね。タマラ・ロホ芸術監督の下で、ますます注目されるバレエ団となっているようです。

追記:加瀬栞さんのインタビュー記事。英語ですが興味深い内容です。「コッペリア」は全幕初主演なんだそうです。(くるみ割り人形の金平糖の精の経験はありますが、金平糖の精の出番は少ないため) また、ジャクソン国際コンクールの決勝では「海賊」のメドーラ、金平糖の精、そしてコンテンポラリー作品を踊ったとのこと。将来踊りたい役は「マノン」だそうです。ロイヤル・バレエの来日公演でダーシー・バッセルが踊ったマノンを観て、英国に留学することを決めたとのこと。ロイヤルバレエスクール時代の、ワディム・ムンタギロフとの写真も載っています。
http://dancetabs.com/2014/07/shiori-kase-first-soloist-english-national-ballet/

7/5、7 パリ・オペラ座バレエ「ダンシズ・アット・ア・ギャザリング」「プシュケー」

DANCES AT A GATHERING ダンシズ・アット・ア・ギャザリング


Robbins - Ratmansky 投稿者 operadeparis

Frédéric Chopin Music
Jerome Robbins Choreography
Joe Eula Costumes
Jennifer Tipton Lights 

Pianiste : Ryoko Hisayama

7/5
PINK Amandine Albisson
PURPLE Valentine Colasante
YELLOW Nolwenn Daniel
GREEN Sabrina Mallem
BLUE Christelle Granier
BROWN Mathieu Ganio
PURPLE Audric Bezard
GREEN Pierre Arthur Raveau
RED BRICK François Alu
BLUE    Nicolas Paul

7/7
PINK Amandine Albisson
PURPLE Laura Hecquet
YELLOW Heloise Bourdon
GREEN Aurélie Dupont
BLUE  Laurene Levy
BROWN Josua HOFFALT
PURPLE Audric Bezard
GREEN Pierre Arthur Raveau
RED BRICK Daniel Stokes
BLUE  Christophe Duquenne


PSYCHE プシュケー


Psyché - Alexei Ratmansky - Laetitia Pujol et... 投稿者 operadeparis

César Franck Music (symphonic poem for orchestra and chorus)
Alexei Ratmansky Choreography (Opéra national de Paris, 2011)
Karen Kilimnik Sets
Adeline André Costumes
Madjid Hakimi Lights

PSYCHE Diana Vishneva
EROS Evan McKie
VENUS Stéphanie Romberg
THE TWO SISTERS Charlotte Ranson , Laurence Laffon


http://www.operadeparis.fr/saison-2013-2014/ballet/robbins-ratmansky

パリ・オペラ座バレエの「ダンシズ・アット・ア・ギャザリング/プシュケー」のダブルビルと、「ノートルダム・ド・パリ」を観にパリに行ってきました。パリは非常にお天気が悪くて寒く、あまり観光も買い物もできず、劇場通い、美術館通い(ドリス・ヴァン・ノッテン展とビル・ヴィオラ展が素晴らしかったです)、そして現地の友人何人かと食事していてあっという間でした。あまりパリに行ってきた実感がないというか…。

「ダンシズ・アット・ア・ギャザリング」

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ショパンのピアノに乗せて、10人の男女の恋模様や駆け引きが描かれる軽妙な作品。特筆すべきは、ピアノを担当された久山亮子さんの演奏の素晴らしさ。輪郭がくっきりとしていて強弱がはっきりしていてとても正確。ダンサーにとってもとても踊りやすかったのではないだろうか。彼女のピアノによって、踊りが音楽の視覚化であるのがより明確になって非常に効果的だったと感じた。1時間ほどあるこの作品をずっと弾きっぱなしというのも、大変な力量が求められたのではないかと思われる。

5日のキャストでは、まずはイエローのノルウェン・ダニエルの音楽性、軽やかさが目を引いた。ベテランでどちらかと言えば地味なダンサーではあるのだけど、理想的なオペラ座スタイルで、彼女の踊りには歓びが感じられて素敵だとしみじみ感じいった。そして後半に登場するグリーンのサブリナ・マレム。途中で滑って転んでしまうというアクシデントはあったものの、難なく立て直した。この役に求められる大人っぽさ、エスプリが感じられて、目が離せなくなるほど魅惑的だった。

一番最初に登場するブラウン・ボーイのマチュー・ガニオはソロで踊っているときには美しいのだけど、サポートがやや弱く感じられてしまった。この作品、女性ダンサーをそれぞれ投げてキャッチするシーンなどがあるのだけど、それを担当するガニオ、ラヴォー、ポールともあまりガッチリキャッチをできていなかったような。それに対して、7日にオペラ座団員として最後の出演をしたクリストフ・デュケンヌはこの点がとにかく素晴らしい。パートナーリングの素晴らしさで良く知られた彼は、非常に難しいリフトやキャッチを難なく決めていた。彼もいぶし銀のようなダンサーなのだが、信頼性が高く、きちっとしたクラシックバレエを踊ることができて、バレエ団には欠かせない存在だったので、引退が惜しまれる。

ピンクのアマンディーヌ・アルビッソンは非常に大柄だが、テクニックは確実で長い手足は伸びやか、サポートされている姿も美しい。モーヴのヴァランティーヌ・コラサントは、ほかのダンサーと比べると明らかに太めで精彩に欠けた。レッドブリックのフランソワ・アリュは跳躍力は素晴らしく、まるで羽が生えているかのようなのだが、やはり彼の場合も体型に恵まれないのが、容姿の揃っているオペラ座ではやや苦しいところである。パープルのオドリック・ベザールは、5日は昼にバスティーユで「ノートルダム・ド・パリ」のフロロ役を踊ってきて夜はガルニエへの出演。でも微塵の疲れも見せずパワフルで男らしいダイナミズムを見せてくれた。

7日は、ブラウン・ボーイのジョシュア・オファルトの胸のすくような踊りにすっかり魅せられた。歌っているかのような軽やかさ、美しく伸びたつま先、伸びやかなライン、音楽を体で楽器のように表現できる能力、この日の主役は完全に彼だった。モーヴのローラ・エケも美しく、5日の同じ役を踊ったダンサーとは段違いの繊細な表現力を持っていた。グリーンのオーレリー・デュポンはさすがの貫録で魅せる。レッドブリックのダニエル・ストークスも健闘していた。この作品の中では小さな役ではあるが、ブルーのクリストフ・デュケンヌの安定感、彼がいると舞台全体が締まる。

そして最後に、カーテンコールで、この日が最後となったクリストフ・デュケンヌへ惜しみない拍手が送られた。特別のセレモニーはなく、彼の衣装の色に合わせた花束が一つ客席から投げ込まれただけだったが、舞台上は彼一人となり、いつまでも拍手は鳴りやまなかった。派手なダンサーではなかったが、クラシック・バレエの美しさを知り尽くしており、演技力もあって「椿姫」のデ・グリュー役では大きな感動を与えてもらった。パートナーリングの上手さも光っていた。そして踊りから伝わってくる、誠実で謙虚な人柄。エトワールにはなれなかったが、観客に愛されたダンサーとして長く記憶されることだろう。スタンディングオベーションの中、微笑みながら涙ぐんでいた彼の姿が忘れられない。これからは、オペラ座学校の教師として後進を育ててくれるという。

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収録された映像をこちらで観ることができます。
http://culturebox.francetvinfo.fr/live/danse/danse-classique/dances-at-a-gathering-de-jerome-robbins-au-palais-garnier-158519

「プシュケー」

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この作品、2年半前に初演された時にも3キャストで観ていて、私は結構楽しんだのだが、意外と評判がよろしくないのであった。ラトマンスキーが初めてパリ・オペラ座に振付けた作品であって、ストーリーは毒にも薬にもならならい神話、デザインもラトマンスキーらしい諧謔的な趣味のものであって賛否が分かれたようである。当初出演を予定されていたエトワールが次々と降板し、ゲスト出演する予定のディアナ・ヴィシニョーワの相手役がなかなか決まらなかった。初日を前にようやく決まったヴィシニョーワの相手役はエヴァン・マッキー。ところが、彼はラトマンスキーの作品を踊ったこともなければ、ヴィシニョーワの相手を務めたこともなかった。リハーサル期間もわずか一週間、通し稽古ができたのは初日の当日だったという。

初演からは西風役のダンサーの衣装がかなり変更となり、主役およびヴィーナスの衣装も変更となっていたのだが、このペアに限っては主役の衣装は初演の時のものを使用。プシュケーの姉妹たちや群舞の女性たちの花びらのような色鮮やかな衣装はなかなかキュートだし、ファンタジックな舞台美術もセンスが悪くないと思う。大傑作とはいいがたい作品ではあるが、おとぎ話的なファンタジックさがあって可愛らしい雰囲気がある。

前回の上演では、オーレリ・デュポン、ドロテ・ジルベール、クレールマリ・オスタと一流のエトワールが主演したのを見たわけだが、それでも、ヴィシニョーワがタイトルロールを踊るのを観て、主役が違うとこれだけ作品が違って見えるのに驚いた。ヴィシニョーワは強靭なのに柔らかく雄弁な動きで、プシュケーの心の移り変わり、キスによって目覚めて恋に落ちていく様子を実にこまやかに表現していって、作品を大幅にドラマティックに作り上げていった。特にしなやかな上半身の動き、恋の歓びを描き上げる腕の表現は圧倒的であった。清らかなのに官能的、まさに妖精そのものだ。森の中に取り残された時の寄る辺なさ、エロスに再び会えた時の歓び。一時は何を踊ってもヴィシニョーワだった彼女だが、今やその域は脱して演技力にも深みを身につけけつつある。

一方、エヴァンのエロスは、ヴィシニョーワと非常によくバランスの取れた踊り。ロシア式のメソッドで踊っているので、彼女ととてもよく合っているのであった。プシュケーとエロスのパ・ド・ドゥは、ラトマンスキーらしい、必ずしもクラシックバレエ的ではない舞踊語彙が使われ、ミュージカル的な自由な要素、オフバランスなど難しいところもあり、サポートも複雑な部分が多々見られるが、非常に滑らかにスムーズに行われ、圧倒的なヴィシニョーワの柔軟性をうまく生かしたパートナーリングも見られて目に快かった。プシュケーは人間の娘だがエロスはヴィーナスの息子で神々の一人で、長身で長く美しい肢体のエヴァンには神々しさがあったし、柔らかいプリエ、美しいアラベスクにも神様らしいカリスマ性を感じさせてくれた。彫刻にもなっているプシュケーとエロスの象徴的なキスのシーンも見事に再現されていた。

ヴィーナス役のステファニー・ロンベールには迫力があり、強烈な存在感があった。いたずらっ子の姉妹たち、シャーロット・ランソンとローレンス・ラフォンはキュートで奔放。4人の西風たちは舞台の狂言回し的な存在で、エロスを持ち上げることも。シモン・ヴァラストロの頑張りが印象的だった。優れた主役が舞台全体のクオリティをあげて、それが群舞全体にも波及効果を上げることができて、とても楽しめる舞台になったと思う。セザール・フランクの美しい音楽には、合唱も使用されて、神秘的な雰囲気をより盛り上げてくれた。全体のリハーサルが一度しかできなかったのが少し残念だったが、回数を重ねればアンサンブルもきっともっと一体感があったことだろう。

収録された映像をこちらで観ることができます。(別キャスト)
http://culturebox.francetvinfo.fr/live/danse/danse-classique/psyche-dalexei-ratmansky-au-palais-garnier-158521

2014/07/16

7/14 “第2回グラン・ガラ・コンサート~私たちはひとつ!!~”

キエフ・バレエのリーディング・ソリストである田北志のぶさんの呼びかけに応じて、ロシア・バレエ界を中心としたトップダンサーが集結した復興祈念チャリティ・ガラ、昨年に引き続いての2回目が行われました。

http://www.ints.co.jp/grand-gala2014/index.htm

震災から3年が経ち、どんどん報道が減って行っている今、遠い国にいるダンサーたちが日本のことを忘れないでいてくれることに感謝しなければなりません。特に田北さんが所属しているキエフ・バレエは、ウクライナでの争乱の影響を受けて大変なことになっているようです。警官隊と市民との衝突で銃声が鳴り響く中でもバレエ公演を行った、そんな苦境にある国から、日本のために来てくれるのは本当に素晴らしいことです。

残念ながらエレーナ・エフセーエワが直前に体調不良で降板してしまったので、若干の演目変更がありました。


【第1部】
「赤と黒」よりパ・ド・ドゥ(振付/ウヴェ・ショルツ)
(エカテリーナ・マルコフスカヤ/アレクサンドル・ザイツェフ)

スタンダールの小説「赤と黒」を原作とするウヴェ・ショルツの作品で、観るのは初めて。今回上演されたのは、全三幕の作品のうちの2幕の寝室の場面から。音楽はベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」。天幕のついたベッドのセットもあり、ドラマティックで複雑なパ・ド・ドゥが踊られた。ザイツェフは若々しく情熱的で、マルコフスカヤは可憐。機会があれば全幕を観てみたい作品となった。

ごく一部だけどYouTubeに動画有(今回とは別の場面、ライプチヒ・バレエの映像のようです)
http://youtu.be/tWGkEsKgXhk


「パリの炎」よりパ・ド・ドゥ
(オレーサ・シャイタ-ノワ/ブルックリン・マック)

オレーサ・シャイタ-ノワは、2013年にバレエ学校を卒業してキエフ・バレエに入団したばかりの若いバレリーナで今回が初来日という。モスクワ国際コンクールでジュニアの部2位など様々なコンクールの受賞歴があるだけあって、テクニックに優れていた。前回のガラにも出演したブルックリン・マックも、ヴァルナ国際コンクールの金賞受賞者。跳躍が大変高いのだけど、テクニックのゴリ押しではなくて、クラシックバレエらしい気品も備えているのが彼の魅力だ。


Beginning」(振付/ウラジーミル・ワルナワ)
(イーゴリ・コルプ)
音楽:エリック・サティ(グノシェンヌ第一番)

ルネ・マルグリットの絵画「人の子」をモチーフに振付けられた作品。スモークが立ち上る中、コールプが青いリンゴを口にくわえ、それを落とすところから始まる。マグリットらしいシュールレアリスム的な夢幻の世界が展開する。コールプの動きは精緻で、緩急の差も見事、コントロールが隅々まで利いていて表現者としての実力を改めて実感させられる。オフバランスを使った現代的な語彙と、クラシックテクニックの融合が素晴らしい。

http://youtu.be/wwK2RDGceOM


La rose malade(薔薇の死)」(振付/ローラン・プティ)
(田北 志のぶ/ニキータ・スハルコフ)

ローラン・プティがマイヤ・プリセツカヤのために振付けた作品で、最近ではボリショイ・マリインスキー合同ガラでウリヤーナ・ロパートキナも踊っている美しい作品。マーラーの「アダージェット」を使い、ウィリアム・ブレイクの詩に触発されたという。田北さんは腕が非常に長くて使い方も雄弁で花弁を思わせるような繊細さで美しく、背中も非常に柔らかい。薔薇色のドレスも良く似合っていて官能的だった。パートナーのニキータ・スハルコフは若いダンサーだけど容姿が美しく、二人の見た目のパランスも良い。めくるめくような陶酔感を感じさせるリフトを多用した振付、薔薇のむせ返るような匂いに包まれる思いがした。青年のキスによって、薔薇が萎れ命を失っていく様子も鮮やかに描かれた。


レ・ブルジョワ」(振付/ベン・ファン・コーウェンベルグ)
(アレクサンドル・ザイツェフ)

おなじみの演目だけど、踊り手が変わると違う作品になるのが面白い。メガネをかけたザイツェフは、やさぐれたサラリーマンなのだけど、彼らしい愛嬌に、ヨレっとしたくたびれ加減も絶妙で、なんともキュートなブルジョワ像を見せてくれた。


「ラ・バヤデール」第三幕よりパ・ド・ドゥ
(マリア・アラシュ/ルスラン・スクヴォルツォフ)

ボリショイのプリンシパルらしい圧倒的なスターオーラの持ち主であるこの二人、堂々とした存在感を見せてくれた。「影の王国」だがコール・ドがないので少々ぶつ切り感があったが、ヴェールを使ったパ・ド・ドゥなどの見せ場はしっかりと見せて、「影の王国」パートのかなりの部分を踊ってくれた。アラシュには凛とした気品があり、きっちりとしたクラシックのテクニックは言うまでもなく、ヴェールを使った回転などの難しいシーンも難なく美しく決めてくれた。スクヴォルツォフも、ソロルらしい雰囲気をよく出していた。コーダがドゥーブル・アッサンブレではなくてちょっと変形したジュッテ・アントルラッセだったのが不思議といえば不思議だったけれども、冬のボリショイ・バレエ来日公演の「ラ・バヤデール」が楽しみになった。この二人は、「ラ・バヤデール」には出演予定ではないのが残念。


【第2部】
「エスメラルダ」よりパ・ド・ドゥ
(オレーサ・シャイターノワ/ニキータ・スハルコフ)

見目麗しいキエフ・バレエの二人のソリストによる「エスメラルダ」。シャイターノワはここでも強靭なテクニックを見せてくれた。非常に柔軟性に優れていて、タンバリンのソロでは跳躍しながら身体を反らせて後ろ足で手に持ったタンバリンを叩いて見せたり。全体的にタンバリンの音は小さめではあったけど、高い身体能力を見せてくれた。また、グラン・フェッテも、2回に1回ダブルかトリプルを見せてくれて、安定していた。スハルコフは、マネージュする様子がとても速くて脚も綺麗に伸びて美しい。有望な若手ダンサーを観ることができてとても良かった。


As above, So below」ソロ(振付/エドワード・ライアン)
(ブルックリン・マック)

元NYCBで台湾出身のエドワード・リアンの作品で、仏教の「万物照応の原理」に基づいているという。全体は20数分の作品。ブルックリン・マックは、テクニックを要求される古典だけでなく、このようなコンテンポラリーでもしっかり表現できる内面を持っているのがよくわかる。跳躍などはほとんどないけれども、なめらかで饒舌な動きには思わず魅せられる。

こちらで、この作品は全編観られます。(振付家のチャンネルより)
http://vimeo.com/channels/478037/54202461


「Come Neve al Sole(太陽に降り注ぐ雪のように)」(振付/ローランド・アレシオ)
(エカテリーナ・マルコフスカヤ/アレクサンドル・ザイツェフ)

こちらは、世界バレエフェスティバルや、アレッサンドラ・フェリのさよなら公演での上演でもおなじみの作品。ローランド・アレッシオは、シュツットガルト・バレエのバレエマスター。ピンク色の伸縮性のあるTシャツを着た二人が、ちょっとオフビートでユーモアと哀愁を漂わせて踊る。ザイツェフの持つ独特のニュアンスが、この軽妙な作品を味わいものにしていた。


「黄金時代」よりリタとボリスのアダージョ(振付/ユーリ・グリゴローヴィチ)
(マリア・アラシュ/ルスラン・スクヴォルツォフ)

なかなか日本では観られない、ボリショイらしい作品を持ってきてくれて大感謝。ショスタコーヴィッチのピアノコンチェルトに乗せて、アクロバティックなリフトが展開する。「ラ・バヤデール」では若干サポートのミスが見受けられたのだが、こちらの方は、スクヴォルツォフ、頑張った。非常に複雑なサポートが次から次へと展開するのだが、どれもとても滑らかで、流れるようでお見事。圧倒的なパフォーマンスだった。「黄金時代」は映画館中継される予定だったのに、なぜか途中で「マルコ・スパーダ」に代わってしまって見られなくなってしまった作品。いつか全幕を観てみたい。


「シェヘラザード」よりパ・ド・ドゥ
(田北 志のぶ/イーゴリ・コルプ)

コールプの黄金の奴隷、凄かった。途中滑って転倒するアクシデントはあったものの、押し寄せるような熱情と何かに急き立てられているような欲望を剥き出しにしていて、それでいて、従順なだけではない、腹に一物を持っているかのような奴隷。パンサーのようにしなやかで獣そのもので、危険極まりない。このガラは全体的に充実していたのだけど、やはり白眉はここだったと言えるし、コールプ一代の当たり役と言える。田北さんのゾベイダも官能的でエキゾチックで美しいのだが、清潔感を漂わせていた。高貴な愛妾が、奴隷によってめくるめく狂乱の宴に陥れられてとろけるように溶けていくような感じ。彼女のほっそりとしていて柔軟で表現力豊かな肉体の魅力が発揮されていて、観たことがないような新しい鮮烈なゾベイダ像を見せてくれた。「シェヘラザード」を一緒に踊るのは初めてとのことだったが、絶妙なケミストリーが働いて、忘れがたいパフォーマンスとなった。


「ダイアナとアクティオン」より
(ブルックリン・マックと全員)

エフセーエワが出演できなくなったことになり、ブルックリンのヴァリエーションからスタート。ここでも彼の高い跳躍と柔らかい背中を使った超絶技巧が観られた。決めの540も弾丸シュートのようでお見事。他のダンサーたちもこの作品の一部を踊るのかと思ったら、そうではなくて、ガラによくある出演者たちが少しずつ踊りを見せてくれるフィナーレ形式。

フィナーレ 「花は咲く」
(全員)
前回同様、出演者たちが花を持って客席に降りて行って、花束を配って歩いた。このガラならではの、温かくアットホームな感覚がとてもほほえましい。芸術監督のアラ・ラゴダ(キエフ・バレエ バレエミストレス)も舞台上に上がった。

キエフ・バレエで初めての日本人ダンサーとして、長年日本とウクライナの懸け橋となり活躍してきた田北さんを始め、ロシア・バレエ界を代表するダンサーたち、そしてこれから期待できる新鋭ダンサーも観ることができた素晴らしいガラ公演だった。作品も、古典から、ウヴェ・ショルツ、エドワード・リヤン、そしてグリゴローヴィッチとバラエティに富んでクオリティも高く、とても見ごたえがあった。チケット代のうち1000円は被災地復興のために寄付されるという。このような優れた企画は、今後もぜひ続けてほしいと願っている。

2014/07/15

クリスティーナ・シャプランとオクサーナ・ボンダレワがマリインスキー・バレエに移籍

ワガノワ・バレエ学校を2011年にトップの成績で卒業したものの、マリインスキー・バレエには入団せずモスクワ音楽劇場に入団して活躍していたクリスティーナ・シャプラン。今年1月にはミハイロフスキー・バレエに移籍しました。

少し前から、彼女と、ワガノワ・バレエ学校の芸術監督の座を追われてミハイロフスキー・バレエ入りしていたアルティナイ・アスィルムラートワがミハイロフスキーバレエを退団したのでは、という情報が飛び交っていましたが、どうやら正式に決着がついたようです。

ロシアのメディアに、シャプラン、そしてもう一人、ミハイロフスキーバレエのファースト・ソリスト(2009年入団)で昨年のモスクワ国際コンクールで金賞を受賞したオクサーナ・ボンダレワも移籍することが発表されました。

http://konkretno.ru/o_visokom/69930-dve-baleriny-mixajlovskogo-teatra-pereshli-v-marinku.html

そして、クリスティーナ・シャプランは早くも、マリインスキー・バレエのロンドン公演「アポロ/真夏の夜の夢」に出演することが発表されています。(8月8日、9日)
http://www.roh.org.uk/productions/apollo-a-midsummer-nights-dream-by-various

なお、マリインスキー・バレエのロンドン公演は、エカテリーナ・コンダウーロワの怪我、マリア・シリンキナの産休などでかなりキャスト変更が発生しています。
http://www.roh.org.uk/about/mariinsky

クリスティーナ・シャプランは、来年1月のミハイロフスキー・バレエの来日公演に出演する予定でしたが、この移籍により、日本では今回観られないかもしれませんね。
http://www.koransha.com/ballet/mikhailovsky_ballet2015/

2014/07/14

Noism2 夏の特別公演2014『RAFT』

なかなか観た舞台の感想が追い付かなくなってしまっているこの頃ですが、先月観たNoismの「カルメン」は、強烈な作品でした。まだこれから良くなる余地も感じつつも、舞台づくりの達人としての金森穣さんの才能、そして素晴らしいダンサーたちのパフォーマンスを楽しみました。

さて、この「カルメン」にも出演したのが、りゅーとぴあ所属の研修生カンパニーNoism2。新潟、信濃川に臨む空中庭園において夏の特別公演を行います。

Noism2夏の特別公演2014『RAFT』

[演出振付]山田勇気 
[出演]Noism2   

[芸術監督]金森穣

[日時]2014年7月18日(金)・19日(土)・20日(日)19:30開演 *全3回公演
※18日(金)回は前売りチケット完売!

[受付時間]19:00~19:25
[集合場所]りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈2階共通ロビー・クローク前〉
[入場料]1,000円(全席自由) チケット好評発売中
[チケット申込み・お問い合わせ]
りゅーとぴあチケット専用ダイヤルTel: 025-224-5521(11:00~19:00/休館日を除く)

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劇場を飛び出し、野外での特別公演

劇場を飛び出し、さまざまな場所でサイトスペシフィックな作品を発表してきた「Noism2 夏の特別公演」も今回で 3 回目。新作『RAFT』は、白山公園の「空中庭園」を会場に野外公演として開催します。信濃川の雄大な流れと、
刻々と過ぎる時間を背景に、山田勇気の新作を上演します。室内の劇場では体験することのできない、作品と空間との一期一会の瞬間を体感いただけます。


様々なイベント出演を経て成長した、研修生

2013 年 9 月より開始した 10th シーズンから Noism2 専属振付家兼リハーサル監督に山田勇気が就任、現在 20~25 歳のプロを目指す研修生 8 名が在籍しています。今シーズンは山田勇気のもと、新潟市内各地で開催されたイベントや公演に出演し、さまざまな場所で踊ることで経験を積んだ Noism2 のメンバーたち。
今シーズン締めくくりとなる本公演では、どのように成長した姿を観せてくれるのか、ご期待ください。

演出・振付の山田勇気さんの言葉が面白いです。

「身体は筏(いかだ)だ」。どこで思いついたかも定かでない、この言葉だけをたよりに歩き続けていた時、りゅーとぴあすぐ近くの空中庭園に、まさに筏のような場所を見つけました。 ここしかないと思い、作品名を筏、ゴムボートなどの意味をもつ「RAFT」としました。 この時点で作品の中身は何も決まっていませんでしたが、場所と作品名「RAFT」を定めただけで、出来る予感に包まれてしまった私、、、さて身体は、どのように出現してくるのか。

新潟は東京からは少しありますが、とても面白そうな公演です。しかもチケット代は格安。新潟に住んでいる方が羨ましいですね。こんな素晴らしいレジデント・カンパニーを持つことができて!いつか私も新潟まで旅してNoismを観に行けたらいいな、と思います。

2014/07/13

ボリショイ・バレエ新作「じゃじゃ馬ならし」

ボリショイ・バレエは7月4日にジャン・クリストフ・マイヨー振付の新作「じゃじゃ馬ならし」を初演しました。

http://www.bolsho.ru/en/performances/714/

舞台映像とマイヨー、ウリン総裁のインタビュー映像
http://youtu.be/VvR8SHf2l8o

メイキング映像
http://youtu.be/5YnTWqLszJg

初日のキャストは、以下の通りです。

Katharina Ekaterina Krysanova

Petruchio Vladislav Lantratov

Bianca Olga Smirnova

Lucentio Semyon Chudin

Hortensio Igor Tsvirko

Gremio Vyacheslav Lopatin

The Widow Yulia Grebenshchikova

Baptista Artemy Belyakov

The Housekeeper Anna Tikhomirova

Grumio Georgy Gusev


友人のフランス人ジャーナリストが、創造のプロセスと初日を観たのですが、とにかく大成功を収めたようです。まぎれもなくマイヨーらしい作品でありながら、ボリショイ・バレエのダンサーの持つ高度なクラシック・バレエのテクニックをふんだんに盛り込んだ、楽しい作品に仕上がったとのこと。音楽はショスタコーヴィチの映画音楽など様々な曲を使用しています。残念ながら、初日は西側のジャーナリストは彼女ひとりしかおらず、プログラムを執筆した彼女はレビューを書かないので英語のレビューは載りません。が、ボリショイ・バレエは今年はモンテカルロでの公演でこの「じゃじゃ馬ならし」を上演するそうなので、その時にはきっとたくさんの報道がありそうだとのことです。ベルニス・コピエテルスも振付指導で参加しています。

タス通信の記事(映像つき)
http://en.itar-tass.com/non-political/739018

映像で観る限りでも、非常に面白そうな作品です。来日公演で観るのは難しいかもしれませんが、ボリショイのライブビューイングなどで観られたらうれしいな、と思いました。

2014/07/12

「パトリック・ド・バナ&フレンズ」ガラでルグリとゲランが共演

振付家のパトリック・ド・バナが主催するガラ公演「“Baiser Vole”~パトリック・ド・バナ&フレンズ」が8月8、9日に上海の上海大劇院で開催されます。

http://www.shanghaidaily.com/feature/travel/Bolshoi-star-to-grace-stage/shdaily.shtml

このガラ公演、出演者が非常に豪華で、上記の記事にあるようにスヴェトラーナ・ザハロワ、そしてマニュエル・ルグリ、イザベル・ゲラン、マリア・アイシュヴァルト、フリーデマン・フォーゲル、マシュー・ゴールディング、アンナ・ツィガンコワらが出演します。

中でも注目されるのは、パリ・オペラ座のエトワールだったイザベル・ゲラン(2001年に引退)が復帰すること。“The Farewell Waltz”と題されたド・バナの作品で、ゲランはマニュエル・ルグリと共演します。現在53歳でニューヨークに在住している彼女ですが、ポワントで踊るとのことです。また、ルグリとゲランは、「ル・パルク」も踊る予定です。

ザハロワは、平山素子さんの作品「Rev­el­a­tion」と、ド・バナが振付け、彼と共演する新作 「Digital Love」を踊るそうです。

公演の概要、上演作品などはここにあります。
http://www.culture.sh.cn/english/product.asp?id=15072

2014/07/10

ニコラ・ル・リッシュのアデュー公演中継/アーカイヴ

7月9日にニコラ・ル・リッシュのアデュー公演が行われました。この公演はインターネットで生中継されましたが、この映像は現在もアーカイヴとして視聴できます。いつまで観られるかわからないので、お早目に。

http://concert.arte.tv/fr/soiree-exceptionnelle-nicolas-le-riche-lopera-de-paris

実は私は7・4-8までパリに行っていたのですが、残念ながらこの公演のチケットは買えなかったので、帰国後そのままリアルタイムで視聴しました。

Roland Petit Les Forains (The Entertainer(旅芸人)) (Enter Showmen)
Avec : l'école de danse de l'Opéra National de Paris


David Lichine Bal des cadets (Solo small drum)
Avec : l'école de danse de l'Opéra National de Paris


Rudolf Nureyev Raymonda 「ライモンダ」 (Act II, Dance Arabic)
Avec :
Raymonda - Dorothée Gilbert
Abderam - Stéphane Bullion
Henriette - Sae Eun Park
Clémence - Séverine Westermann
Bernard - Pierre-Arthur Raveau
Bérenger - Axel Ibot
Les Sarrasins - Aubane Philbert, Allister Madin
Les Espagnols - Daphné Gestin, Yann Saïz


Vaslav Nijinsky 's Afternoon of a Faun 「牧神の午後」
Avec :
Le Faune - Jérémie Bélingard
La Grande Nymphe - Eve Grinsztajn
Les Six nymphes - Juliette Gernez, Peggy Dursort, Claire Gandolfi, Sophie Mayoux, Caroline Osmont, Gwenaëlle Vauthier


Roland Petit Le Jeune Homme et la Mort 「若者と死」
Avec :
La Mort - Eleonora Abbagnato
Le Jeune-homme - Nicolas Le Riche


Mats Ek Apartment 「アパルトマン」 ("The Door" Pas de deux)
Appartement
Avec : Sylvie Guillem, Nicolas Le Riche


Nicolas Le Riche Caligula 「カリギュラ」 (Caligula and Incitatus)
Avec :
Caligula - Mathieu Ganio
Incitatus - Audric Bezard


Maurice Béjart Bolero 「ボレロ」
Avec : Nicolas Le Riche (soliste), Josua Hoffalt, Karl Paquette

残念ながらギエムとの「アパルトマン」はギエムの希望により中継はされなかったようですが、彼女自身はカーテンコールに登場しています。

やはり圧倒的に素晴らしかったのが「若者と死」と「ボレロ」でした。「若者と死」のニコラ、とても引退するとは思えない、浮かび上がるように高くて力強く鋭い跳躍、苦悩に満ちた演技、圧倒的なものでした。ローラン・プティ作品では定評のあるエレオノラ・アバニャートの死も、邪悪で容赦なく凄かったです。

「ボレロ」のニコラは、雄大で力強く、カリスマ性に溢れていました。カーテンコールでほかのダンサーと並ぶと実はそこまで大柄ではないのがわかりますが、円卓の上の彼は本当に大きいんですよね。しかも、最後まで涙はなく、満ち足りた幸せそうな表情でした。リズムのソリスト、カール・パケットとジョシュア・オファルトも美しく、男性に対して使う表現ではないのですが花を添えた感じです。

ニコラが振付けた「カリギュラ」、怪我で出演できなかったマチアス・エイマンに代わって馬を踊ったオドリック・ベザールが表現力豊かでとても魅力的で、良かったです。

「ライモンダ」では、産休に入っていたドロテ・ジルベールが舞台に復帰した姿も見られました。

長く続いたカーテンコールも感動的で、クロード・ベッシーも登場。最後はクレールマリ・オスタと、二人のとても可愛らしい娘さんまで出てきました。とても和やかなカーテンの裏の様子まで見せてくれたのがとても嬉しかったです。ニコラの温かい人柄が伝わってくる素敵なフィナーレでした。

フランスではテレビ放映もされるそうですが、ぜひ日本のテレビでも放映してほしいですよね。

それにしても、まだまだ完璧に踊れて圧倒的なスターオーラに溢れているニコラが引退しなければならず、しかもオペラ座内にポストが用意されていないということを考えると非常に残念な思いがします。ヌレエフ時代の最後のダンサーである彼のアデューとともに、一つの時代が終わってしまったことを実感します。

彼は今後もダンサーとしての活動を続け、11月にはシャンゼリゼ劇場での公演も予定されています。
http://www.theatrechampselysees.fr/danse/danse/carte-blanche-a-nicolas-le-riche?from_calendar=1

ここでは、ニコラのカリスマ性あふれる舞台写真10選を見ることができます。
http://culturebox.francetvinfo.fr/scenes/danse/les-10-images-inoubliables-de-nicolas-le-riche-a-lopera-de-paris-158637

これは、フェアウェル・ガラの舞台写真
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.909247275755722.1073741860.111926215487836&type=1

ニューヨークタイムズでのレビュー。
http://www.nytimes.com/2014/07/11/arts/dance/nicolas-le-riche-ends-career-at-paris-opera-ballet.html

Telegraph紙のレビュー
http://www.telegraph.co.uk/culture/theatre/dance/10959169/Nicolas-Le-Riche-farewell-gala-Opera-Garnier-Paris-A-truly-marvellous-dancer.html

この記事によれば、このアーカイヴは3か月間は視聴可能なのだそうです。

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2014/07/04

ロイヤル・バレエの昇進発表

ロイヤル・バレエの昇進、入団、退団が発表されました。

http://www.roh.org.uk/news/promotions-joiners-and-leavers-at-the-royal-ballet

高田茜さんとヴァレンティノ・ズケッティがファーストソリストに、フランチェスカ・ヘイワード、ヤスミン・ナジ、トリスタン・ダイヤー、フェルナンド・モンターニョがソリストに、そしてファーストアーティストにはアクリ瑠嘉さん、Jacqueline Clark, Elsa Godard, Gemma Pitchley-Gale, Nicol Edmonds, Kevin Emerton, Marcelino Sambe
が昇進します。

17年間在籍したソリストの蔵健太さんが退団するのは残念ですが、下記にあるようにロイヤル・バレエ・スクールの教師となります。マクミラン版「春の祭典」に主演し将来を期待されていたクローディア・ディーンは引退するとのことです。

また、バーミンガムロイヤルバレエから、佐々木万璃子さんが移籍します。

みなさんおめでとうございます!

なお、蔵健太さんは、元バーミンガム・ロイヤルバレエ プリンシパルのキャロル・アン・ミラー共々、ロイヤルバレエスクールのホワイトロッジにあるロウワースクールの教師に就任します。

また、イングリッシュ・ナショナル・バレエのプリンシパルを引退したダリア・クリメントヴァは、ロイヤルバレエスクールのアッパースクールの教師に就任するということです。

http://www.royalballetschool.org.uk/2014/07/new-teachers/

2014/07/03

ブリヂストン美術館「描かれたチャイナドレス」展

日本人の描いた油絵の中での、中国服を着た女性像ばかりをあつめたユニークな企画展「描かれたチャイナドレス展」のブロガーナイトに呼んでいただいたので、参加してきました。

http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

展示会場の画像は特別に主催者の許可を得て撮影したものです。

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昨年8月から8か月という異例の短さの準備期間でしたが、それでも約30点を集めることができました。1910年代から40年代にかけての作品群です。実は、6~70年前の日本では、意外と日本人がチャイナドレスを着ているというのが一般的であり、村松梢風(村松友視の祖父でもある作家)の文章にも登場します。1933年ごろは、日本人の半数が和服を着用していた時代でしたが、その頃が中国服ブームの頂点でした。

藤島武二の「匂い」について解説するブリヂストン美術館学芸部長の貝塚さん

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「匂い」は帝展に出展された作品。藤島武二はパリ、ローマに留学して帰国しました。そのため、イタリア、フランスから見た東洋という視点を持っており、日本から見た朝鮮半島や中国を観るまなざしも、その視点を適用しています。藤島は、60点もの中国服を収集しており、これらを日本人モデルに着せて作品を描いたとのことです。

また、彼はイタリア・ルネッサンスの絵画に憧れ、真横からの肖像画を描きました。古代のメダルやコインなどは横顔を描いたものが多く、その人の個性を最も表すことができるのは横顔だと彼は感じました。「東洋振り」や「女の横顔」などがその代表的な作品です。彼はイタリア・ルネッサンスに憧れを抱いており、ルーブル美術館にあるピサネルロの作品の模写なども残されています。

「女の横顔」のモデルは、竹久夢二の恋人であった佐々木カ子ヨ(お葉)。「日本人には横顔の美しいモデルは少ない」と藤島は嘆いていましたが、お葉の横顔は美しく、彼はもう一枚、彼女をモデルにした「芳惠」(本展には未出展)も描いています。

関東大震災に罹災し、30歳と若くして亡くなった久米民十郎。早世したために、あまり知られてなかったが、留学時代にアーネスト・ヘミングウェイと交流していており、関東大震災の時には彼の安否を気遣っていたそうです。弟の権九郎は建築家として成功し、久米建築事務所(現在の久米設計)を設立した。この「支那の踊り」は摩訶不思議な曲線で描かれた鮮烈な作品。87年ぶりに永青文庫の倉庫から発見されたとのことです。

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(「支那の踊り」は左から二番目の作品)

矢田清四郎の「支那服の少女」(撮影禁止作品)は東京芸術大学の卒業制作で、少女がとても愛らしい。彼は小林萬吾に師事したそうで、やはり中国服の作品を制作した小林の影響を受けたようである。(小林萬吾の「銀屏の前」という作品も今回出展されている)

三岸好太郎の「支那の少女」は、どこか幻想的な雰囲気のある作品。彼の唯一の海外旅行が上海旅行だったそうで、大きな転機だったそうです。当時の上海はヨーロッパを思わせる街で、特に外灘や租界は異国情緒がありました。上海はヨーロッパに船で行く際の最初の寄港地であり、ヨーロッパに行けない人にとって、ヨーロッパの香りを感じさせる場所だったようです。

小出楢重の「周秋蘭立像」は、現在も大阪のリーガロイヤルホテルのメインラウンジに飾られている作品で、彼が亡くなった後、未亡人はこのホテルでこの作品を見るためにお茶を飲みに行っていたそうです。彼は口ぐせのように「支那服を描きたい」と言っており、中国人のダンサーをモデルに描いたとのことです。

(右端が「周秋蘭立像」)
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児島虎次郎の「中国の少女」は京劇の女優が普段着をしている姿を描いたものです。そして「西湖の画舫」は、南京の情景を描いたもの。「画舫」とは屋形船のことで、音曲を楽しむ催しが開かれていました。児島虎次郎はパリで作品を多く出品し、極めて東洋的なモチーフをパリに送り込みました。

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梅原龍三郎は、4年間に6回も北京を訪れています。数か月滞在し、北京飯店の508号室で作品を描きました。ここで描かれた中国人の姉妹の作品は非常に印象的で、今回出展されたもののの他3点、彼女たちを描いた作品があったということです。

そして、この展覧会のインスピレーションのもととなったのが、安井曽太郎の「金蓉」。細川護立が発注した作品で、普段から中国服を着ていた小田切峯子という女性がモデルとなっています。「金蓉」とは彼女のニックネームでした。直線と曲線のバランスが絶妙で、1930年代日本美術の代表作ともいえる傑作です。

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最後に、藤田嗣治の「力士と病児」という、これまた大変インパクトのある作品がありました。力士と言っても実際には大道芸人なのだそうです。藤田は30年代に北京に滞在しましたが、その後作風が変わりました。日本人から見た中国、ヨーロッパから見た日本という二つの視線を使って描かれた作品です。秋田県立美術館にも同系統の作品があります。

会場には、アンティークの華やかなチャイナドレスも6点飾られ、それぞれ年代別の流行の違いを見せてくれました。真っ赤に塗られた壁も美しい会場です。
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中国文化への憧れ、ヨーロッパで学び取ったものをどうやって日本に持ち込んだのか、エキゾチックなまなざしを感じることができて、とても素敵な展覧会でした。


休館日 月曜日
開館時間 10:00〜18:00(毎週金曜日は20:00まで)

※7/7(月)、7/14(月)、祝日の月曜日は開館します。
※入館は閉館の30分前まで。
※上記の開館時間も不測の事態の際は変更する場合があります。
※最新情報は公式Pおよびハローダイヤル(03-5777-8600)でご確認ください。
住所ブリヂストン美術館 〒104-0031 東京都中央区京橋1丁目10番1号

2014/07/02

ウラジーミル・マラーホフのさよなら公演からの映像

6月14日にベルリン国立バレエでさよなら公演を行ったウラジーミル・マラーホフ。公演のリハーサル映像、インタビュー、そして本番の映像を映したテレビ番組の映像をここで観ることができます。番組はドイツ語ですが、言葉がわからなくても楽しめます。

http://www.dw.de/malakhovs-abschied-aus-berlin/av-17743294

東京バレエ団のサイトにも、マラーホフのフェアウェル公演のレポート記事が載っていますね。
http://www.thetokyoballet.com/news/?id=513

マラーホフは8月中旬に東京バレエ団創立50周年〈祝祭ガラ〉のために来日し、アーティスティック・アドバイザーとして本格始動するそうです。

こんなDVDも発売されますね!

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クロアチア、ボスニア他旅行記(その6)ドブロヴニク

クロアチアで一番の人気観光地といえば、ドブロヴニク。「アドリア海の真珠」と評され、旧市街は1979年に世界遺産に登録されました。歴史的に海洋貿易によって栄えた都市で、中世のヴェネチア主権下のラグーサ共和国はアマルフィ、ピサ、ジェノヴァ、ヴェネツィアなどと共に5つの海洋共和国に数えられていたそうです。19世紀初頭までは、このラグーザ共和国は隆盛を極めており、その後ナポレオンの支配を経てオーストリア=ハンガリー帝国の一部となり、そして第一次世界大戦後はユーゴスラビアの一部となるものの、独立心旺盛で誇り高い都市だったとのことです。しかし、戦争の傷跡は少しですが残っている場所でもあります。

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旧市街をぐるっと取り巻く城壁は1900mの長さがあり、高さは20メートルですが階段でのアップダウンもかなりあります。城壁の上は一方通行ながら歩けるようになっていて、山側からスタートし、海沿いまで回って一周。旧市街の中、そしてアドリア海やそこに浮かぶロクルム島、ヨットハーバーそして海岸にある要塞などを見下ろすことができる絶景を堪能できます。

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途中にはカフェ、土産物店などもあります。一周してだいたい1時間半くらいでしょうか。ドブロヴニクに行ったら、まずはこの城壁歩きは絶対に欠かせません。晴天率の高いドブロヴニクですが、たまたまあまり天気は良くなかったものの、雨に降られることはなく、青い海とオレンジ色の屋根と素晴らしい風景を楽しみました。また、城壁の上から、この旧市街に住んでいる人々の営みも垣間見ることができたのも楽しかったです。

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ピレ門近くのフランシスコ会修道院。ロマネスク様式の回廊が美しい。いろんな国の旗をデザインしたポスターが張ってあって、日本の旗があるところを見てみたら「清子」というサインが。各国の要人のサインが並べてあって、清子とは、黒田清子さんのことだった。教会は様々な宝物が展示してあったのだけど、驚いたのは、壁の二か所にわたって大きな穴があって、91年からの戦争でミサイルが貫通していたとのこと。

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さて、このフランシスコ会修道院の回廊の脇には、「マラ・ブラチャ」という薬局があります。14世紀に創設された、ヨーロッパでも3番目に古い薬局とのこと。この薬局が有名なのは、700年前から伝わるレシピに基づいた化粧品やハーブティーなどを売っているから。特にラヴェンダーやローズ、ローズマリーなどを使ったクリームや化粧水は人気があって、日本のテレビ、雑誌やガイドブックにも必ず取り上げられています。(日本の雑誌の切り抜きも言えば見せてくれるし、試供品もある)とても香りがよく、天然成分しか使っていない上に値段も手ごろなので、もちろん買って帰りました。

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プラツァ通りという大通りがメーンストリートとなっていて、そこから路地がたくさん分かれ、土産物、食べ物などいろいろなお店があります。観光客に交じって修道女なども歩いていて、中世と現代が混じった風景は不思議だけど素敵。そしてドブロヴニクといえば、猫もたくさんいます。野良猫でも人馴れしていて可愛いコがたくさんいました。そして教会もいくつもあります。聖母被昇天の大聖堂の主祭壇には、ティッツィアーノが15世紀に描いたゴージャスな「聖母被昇天」があります。

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オルランド像と聖ヴラホ教会
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プラツァ通りの行き止まりあたりには、ルジャ広場、ドブロヴニクの守護聖人、聖ヴラホを祀った聖ヴラホ教会があります。この教会は憧れの結婚式場だそうで、ちょうど訪れたのが金曜日ということもあって、夕方には新郎新婦の姿や、結婚式に参列する着飾った若者たちを見ることができました。聖ヴラホ教会の前には、オルランド像があります。ドブロヴニクでは自由の象徴として1418年に制作された、美しい騎士の像です。

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そしてこのルジャ広場にあるスポンザ宮殿、アーチの美しい建物ですが、そこで小さな展覧会をやっていました。ドブロヴニクはユーゴ紛争で1991年にユーゴスラビア人民軍によって攻撃され包囲され、114人が死亡しました。その亡くなった人たちの顔写真、遺品、そして攻撃された時の映像などが上映されていました。亡くなった人たちがみな若い人ばかりだったのがとても痛ましかったです。城壁なども甚大な被害を受けたそうです。そのため一度は危機にさらされた世界遺産リストにも挙げられましたが、見事に復旧したというわけです。

また昼頃まではマーケットも開かれていて、ラヴェンダーのグッズ、クロアチア名物の刺繍、野菜や果物、様々なモノが売られていました。添乗員さんに教えてもらったのですが、塩、干しイチジクのアーモンド詰めをサラミ状にしたもの、ハーブなどを売っているお店では、日本語が流暢な女性が商品を売っていて、思わずハーブとオレンジで香りづけされた塩を買い求めました。このお店です。http://www.opg-sardi.com/en/index.html

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昼食を食べたら、とても騒がしくて何事か、と思ったらこの日は高校生が終業式の日ということでした。学校が終わるということで、卒業したり夏休みに入る子供たちが、音楽を大音量でかけたり、羽目を外して街中で踊ったりしているのです。Tシャツに思い思いに落書きをしたり、盛り上がっていました。

午後は、ケーブルカーに乗ってスルジ山を上ります。スルジ山から旧市街を見下ろすと、目の前には絶景が広がっているのです。シーズンオフの今でもかなり人気があって結構並びます。運よく、海側の場所に立つことができ、見下ろすと、旧市街の全貌が徐々に広がっていきます。頂上には、ナポレオンが贈ったという大きな十字架があり、展望台で旧市街を一望できます。お天気はそれほどよくなかったものの、それでも視界は良く開けていました。できれば戦争資料館も観に行きたかったけど時間が無くなってしまい。

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旧市街に戻り、食事の時間までお買い物。ザグレブに本店がある、アロマティカというアロマやバスグッズのお店。日本人観光客にも人気があるようです。私はバスソルトとハーブティを買ったのですが、エッセンシャルオイルやマッサージオイルなども人気があるそう。ここのパッケージのデザインも可愛いです。

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レストランがある旧港付近も、観光船などが発着するところで雰囲気があります。ラグーサ共和国時代には各国の商船でにぎわったそう。

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多くの人が歩いて磨かれ光に反射する石畳が美しい夜も、ドブロヴニクは美しいそうですが、ホテルに戻らなくてはならないのでバスに乗り込みました。途中、橋があるところがドブロヴニクを遠くから見渡せるということで、運転手のマリオさんが止めてくれました。夕刻の淡い光の中の旧市街や、海を進んでいくクルーザーの姿も、また違った感じで素敵でした。ドブロヴニク、またいつか訪れたい。今度は晴れるといいな。


2014/07/01

ABTの昇格情報、イザベラ・ボイルストンがプリンシパルに

ABTの昇進情報がNew York Timesで発表されました。

Isabella Boylston Promoted to Principal Dancer at American Ballet Theater
http://artsbeat.blogs.nytimes.com/2014/06/30/isabella-boylston-promoted-to-principal-dancer-at-american-ballet-theater/?smid=nytimesarts

イザベラ・ボイルストンがプリンシパルに昇進

クリスティーン・シェフチェンコデヴォン・トゥッシャージョゼフ・ゴラックロマン・ザービンがソリストに昇進とのことです。


イザベラ・ボイルストンの昇進は、ちょっと議論を呼びそうですが、「白鳥の湖」のオデット・オディールを踊るなど、明らかにケヴィン・マッケンジーのお気に入りダンサーでありました。2010年にブノワ賞にノミネートされています。マリインスキー国際フェスティバルでは、「ラ・バヤデール」のガムザッティを踊っています。

ジョゼフ・ゴラックは、「くるみ割り人形」や「シンデレラ」、「コッペリア」などに主演。2005年のYAGPで金メダル、2006年のYAGPでグランプリを受賞し、2011年のエリック・ブルーン・プライズも受賞しています。容姿も端麗で、間違いなく時代のスター候補です。

クリスティーン・シェフチェンコは、ウクライナ出身で新体操でオリンピックを目指していました。ジャクソン国際コンクール、モスクワ国際コンクールでの受賞歴があります。来日公演でも、ラトマンスキー振付「ピアノ・コンチェルト」のソリストとして活躍していました。

デヴォン・トゥッシャーは、「ジゼル」のミルタ役、「白鳥の湖」のパ・ド・トロワや大きな白鳥などで活躍している、長身の美しいダンサーです。

ロマン・ザービンは、ロシア出身。プリンシパル・キャラクター・アーティストという地位がABTにあれば必ずその位にあるであろう、キャラクターロールでの演技が素晴らしいダンサーです。若いうちから「海賊」のパシャ、「ラ・バヤデール」の大僧正、「ロミオとジュリエット」のキャピュレット、「マノン」のムッシュGM、「ドン・キホーテ」のドン・キホーテなどの役をこなし、見事な演技力を発揮してABTに無くてはならない存在となっていました。


ABTは相変わらず主役ダンサーの怪我でキャスティングが綱渡り状態のようです。現在もホールバーグ、そしてゲストですがコジョカルが怪我をして降板しています。
(コジョカルの怪我はそれほど深刻ではないようなので、「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」には間に合いそうです。ホールバーグも、全治2,3週間ということで、ボリショイのNY公演や東京バレエ団へのゲストには支障はなさそうです)

特にソリストレベルを強化して、内部のダンサーが代役を務められるような体制を組まないと、今後ABTは厳しいでしょうね。

厚地康雄さんがバーミンガムロイヤルバレエのソリストに昇進

バーミンガム・ロイヤル・バレエから来シーズンの昇格と入団の発表がありました。

http://brb.org.uk/Announcements-2014.html

<昇進>

Samara Downs is promoted from Soloist to First Soloist

Delia Mathews is promoted from First Artist to Soloist

Yasuo Atsuji is promoted from First Artist to Soloist

William Bracewell is promoted from First Artist to Soloist

Kit Holder is promoted from First Artist to Soloist

Ruth Brill is promoted from Artist to First Artist

Brandon Lawrence is promoted from Artist to First Artist


<入団>The following dancers will join the company:

Alexander Bird from St. Ives, graduate of the Royal Ballet School, will join as an Artist
Edivaldo Souza da Silva from Brazil, graduate of the Royal Ballet School, will join as an Artist
Sofia Rubio Robles from Gran Canaria, will join as an Artist from Dutch National Ballet Junior Company
Daria Stanciulescu from Romania, will join as an Artist from Ballet Zurich
Maki Sekuzu from Japan, graduate of Elmhurst School for Dance, will join as an Artist on a one-year maternity cover contract

今シーズンバーミンガムロイヤルバレエに復帰した厚地康雄さんは、「くるみ割り人形」と「パゴダの王子」に主演し、見事に昇進を決めました。素晴らしいですね。

また、エルムハーストスクールを卒業したMaki Sekuzuさんが、産休中のダンサーの代替として、1年間の契約を結んで入団しました。

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