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2014/05/01

ロイヤル・バレエ「冬物語」映画館中継

ロイヤル・バレエの恒例の映画館中継、今回はクリストファー・ウィールダンが手掛けた新作「冬物語」でした。

http://www.theatus-culture.com/roh/movie/

http://www.roh.org.uk/productions/the-winters-tale-by-christopher-wheeldon

Choreography Christopher Wheeldon
Music Joby Talbot
Designs Bob Crowley
Lighting design Natasha Katz
Silk Effects Designer Basil Twist
Projection Designer Daniel Brodie

LEONTES EDWARD WATSON
HERMIONE LAUREN CUTHBERTSON
PERDITA SARAH LAMB
FLORIZEL STEVEN McRAE
PAULINA ZENAIDA YANOWSKY
POLIXENES FEDERICO BONELLI

ANTIGONUS BENNET GARTSIDE
MAMILLIUS JOE PARKER
STEWARD THOMAS WHITEHEAD
FATHER SHEPHARD GARY AVIS
BROTHER CLOWN VALENTINO ZUCCHETTI
YOUNG SHEPHERDESS BEATRIZ STIX-BRUNELL

キャスト表、英文あらすじはこちら
http://static.roh.org.uk/showings/the-winters-tale-2014/en.pdf

ウィリアム・シェイクスピアの原作を、クリストファー・ウィールダンがバレエ化。この物語がバレエになったのは初めてのととだったそう。音楽は、「不思議の国のアリス」の音楽も手掛けたジョビー・タルボットに委嘱。2011年からプロダクションに入ったそうです。「アリス」と同じく、ナショナル・バレエ・オブ・カナダとの共同制作。

主要キャストにプリンシパル6人を並べた大変豪華なキャスト。シェイクスピア作品のバレエ化とあって、ロイヤル・バレエならではの演劇性の高さを表現できるダンサーを揃え、演技的にはとても見ごたえがあった。特にシチリアの王レオンテスを演じたエドワード・ワトソンは熱演。身重の妻ハーマイオーニと親友、ボヘミア王ポリクシニーズの不倫を疑い、嫉妬心や猜疑心に苛まれて狂気に陥り、息子マミリアス、そして妻を死に至らしめ、生まれたばかりの赤ん坊パーディタを捨てさせるほどの怒りを見せる。ワトソンは、表情の演技だけでなく、人並み外れた柔軟な肢体を生かして、その煩悩を歪んだ体の動きで表現して圧巻だった。フェデリコ・ボネッリ演じるポリクシニーズとのパ・ド・ドゥは二人の友情を示すように美しく、この二人の間には友情以上の感情が流れていて、それゆえに、ハーマイオーニが間に入ることによってそのバランスが崩れてしまったのではないかと思わせるものがあった。

そしてハーマイオーニとの三角関係を暗示するかのようなパ・ド・トロワも、象徴性を感じさせるものだった。レオンテスの妄想をそのまま踊りとして表現したレオンテスとハーマイオーニの妖しいパ・ド・ドゥ、それを見ながら苦悶し嫉妬心をたぎらせるワトソンの演技は、少々やり過ぎな印象はあるものの、強烈なインパクトがあった。ハーマイオーニの不倫を疑い、お腹の大きな彼女に暴力的に迫るレオンテスの姿は非常に残酷である。気高く優雅で、「あまりの美しさに嫉妬心を起こさずにはいられない」ハーマイオーニを演じたローレン・カスバートソンも好演。さらに、ハーマイオーニを庇護する家長のポーライナを演じたゼナイダ・ヤノウスキーの落ち着いて存在感があり雄弁な踊りも素晴らしかった。1幕は、バレエというよりは、ポイント、ポイントにバレエを使った演劇に近い印象があった。

しかしながら、2幕以降この作品は急速に失速してしまう。16年後、美しく成長したパーディタと、彼女に恋するフロリゼル王子を中心にボヘミアで展開するのだが、この幕では祝祭的な踊りが中心。ところが、肝心の踊りの振付の出来があまりよろしくない。羊飼いたちの牧歌的なカーニバルの群舞の構成も、ペルディータとフロリゼルのパ・ド・ドゥも印象にほとんど残らない。パ・ド・ドゥについては、マクミランの振付を引用して、それに不自然な現代的な色付けをしたもので美しくない。羊飼いたちが民族衣装的にスカートを着用しているのも、踊りの輪郭がはっきりと見えない。ウィールダンの問題は、彼の振付は起伏に乏しく、同じテンションで進んでいくため、観る側が途中から退屈してしまうことがある。静と動の使い方、余白の使い方がなくてクライマックスが続くので疲れてしまう。

そして3幕に至っては非常に短く、ポーライナとレオンテス、銅像から人間になったハーマイオーニとレオンテスのパ・ド・ドゥがあるものの、こちらもインパクトに欠ける。この「銅像が人間になっていく」という表現一つとっても、あまりにもそのまんまで、もう少し工夫ができただろうに、と感じさせた。パーディタが自分の娘だとレオンテスが気が付くときの描写もごくあっさりとしたものだった。この幕では、16年もの間ハーマイオーニをかくまい続けたポーライナの母親のような深い愛と強さを見せつけたゼナイダ・ヤノウスキーの表現力が圧倒的で、実はこの物語のカギを握っていたのはポーライナだったことを改めて印象付けるものであったが、振付としてはかなり弱いと思われる。

フロリゼル王子のスティーヴン・マックレーは軽やかで弾むような踊りを、切れ味鋭いテクニックで存分に見せてくれるし、サラ・ラムの愛らしく清らかなパーディータも魅力的だったし二人の息も良く合っている。フェデリコ・ボネッリのむせ返るような色男ぶりを見ると、これはレオンテスも妻との関係を疑ってしまうだろうなと思うし、レオンテス自体がポリクシニーズに惹かれてしまっていたのかもとも思うほどだ。キャストはこれ以上のものを望むべくないほど充実している。

1幕のシンプルな洗練とシルクの幕を上手く使った様子、2幕のおとぎ話的な世界観を感じさせる大きな木の前で色彩豊かな世界とプロダクションデザインは想像力を掻き立てるものである。2幕の羊飼いたち、そしてパーディタの衣装を除けば、衣装デザインも美しく、特に1幕でのレオンテスとポリクシニーズの長いコートの裾が翻る様子はセクシーでスタイリッシュだった。だが、あまりにも物語そのままをストレートにバレエ化し、創意工夫がない演出と振付は成功しているとは言いがたい。

もう一つの問題点は音楽。「不思議の国のアリス」も弱点は音楽にあった。一つ一つの旋律はよく聴けば魅力的だったし、珍しい楽器を使用した2幕、3幕の音楽はエキゾチックで悪くない。この楽器の演奏家たちにも衣装を着けさせて舞台上に配置したのもアイディアとしては良い。だけど、あまりにぎっしりと詰まってオーケストレーションの派手な音楽は、聴いていてとても疲れるし、振付け同様メリハリがない上に心に残る旋律がなかった。物語バレエだからライトモチーフを使えば良かったのにとも感じたし、映画の劇伴音楽的だったようにも感じられた。

そういった点で、不満はいろいろある作品ではあるが、とにかく主要キャストのダンサーたちの高い演劇性、踊りを通してキャラクターを表現する能力の高さには改めてロイヤル・バレエの底力を見た気がする。ダンサーの魅力を観るにはいい作品だった。

言葉のないバレエの世界で、物語バレエを作るというのは一筋縄ではいかないものであると実感。同じシェイクスピアの「オテロ」を見事にバレエ化したノイマイヤーの素晴らしさを改めて感じた。

幕間映像(ウィールダン、タルボット、ワトソンのインタビュー、リハーサル映像)
http://youtu.be/_FiX98Nsxxs

サラ・ラム、ウィールダンのインタビューと2幕のリハーサル映像。スティーヴン・マックレーの「宮島」Tシャツが笑えます。
http://youtu.be/CNh2kHhY29Q

私が読んでいる原作はこちら。

冬物語―シェイクスピア全集〈18〉 (ちくま文庫)冬物語―シェイクスピア全集〈18〉 (ちくま文庫)
W. シェイクスピア William Shakespeare

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コメント

「宮島」のTシャツどころか!

https://twitter.com/_stevenmcrae/status/460838450808500224/photo/1
Steven McRae ‏@_stevenmcrae
#PrincePreparations Hydration's crucial! I mix up Pocari Sweat from Japan to drink during shows #ROHTale @pocariID pic.twitter.com/64k9QbifNO

そんなに好きなら送ってあげようかな。


@さん、こんにちは。

スティーヴン・マックレーのポカリスエットTwitter、見ました!誰か日本のファンの方でも彼に差し入れしたんでしょうかね? ポカリスエットに限らず、アミノバイタルなども人気があるようです。それから、エアーサロンパスとかアンメルツヨコヨコなども、ダンサーには人気があるようですね。こういう日本製品は、確かに差し入れしたら喜んでくれると思います!

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