NBAバレエ団「トリプル・ビル」リハーサル見学と公演情報
NBAバレエ団は、6月21日、22日に「ガチョーク賛歌」、「葉は色褪せて」、「ブルッフ ヴァイオリン協奏曲 第1番」の3作品で構成された「トリプル・ビル」を上演します。
http://nbaballet.org/performance/2014/triplebill/index.html
この3作品は、いずれも1970~80 年代にアメリカン・バレエ・シアターにより初演された名作ですが、日本では、ABTの来日公演などのガラで上演された程度で、上演機会が少ない作品ばかりです。「ガチョーク賛歌」「ブルッフヴァイオリン協奏曲 第1番」は日本のバレエ団として全部を上演するのは本邦初です。
「ガチョーク賛歌」Great Galloping Gottschalk
音楽:ルイス・モレウ・ガチョーク
振付:リン・テイラー・コーベット
19世紀の作曲家・ピアニストであるアメリカ・ニューオリンズ出身のガチョークのピアノ曲から6曲を選び、リン・テイラー・コーベットがコンテンポラリー作品として創りました。
「葉は色褪せて」The Leaves Are Fading
音楽:アンソニー・ドヴォルザーク
振付: アントニー・チューダー
葉の生い茂る晩夏の林に一人の女性がやって来る。そこで若い男女のカップル達を見て、彼女はかつて幸せだった時を思い起こす。チューダー晩年のロマンティックな作品。
「ブルッフ ヴァイオリン協奏曲 第1番」Bruch: Violin Concerto No.1
音楽:マックス・ブルッフ
振付:クラーク・ティペット
ヴァイオリンソロ:浅井千裕
38歳の若さでこの世を去った元ABTプリンシパルのクラーク・ティペットによる作品。クラシックバレエをベースに多彩なステップやリフト、複雑なコール・ド・バレエのパターン織り込んだコンテンポラリーにも視点を置いた華やかな作品。
今回、所沢のNBAバレエ団のスタジオにて、「ガチョーク賛歌」の公開リハーサルを見学させていただきました。振付のリン・テイラー・コーベット氏が来日してのリハーサルです。公演まであと3週間ありますが、衣装をつけてのリハーサルは、すでに完成度がとても高く、それぞれのダンサーも張り切っていて生き生きと表現力豊かに踊っています。ストーリーはありませんが、ロマンティックなパ・ド・ドゥ「ある詩人の死」は美しく、「トーナメントギャロップ」では3人の女性がユーモラスに溌剌と踊り、「バナナツリー」では身体能力の高い男性二人が掛け合いをするようにきびきびと軽やかに回転や跳躍したり、最後には華やかな群舞ありの、とても音楽性が豊かでカラフルで楽しい作品です。誰が観ても楽しめること請け合いの、愛すべきバレエでした。
同時上演の「葉は色あせて」では、かつてこの作品の名演で知られ、現在はチューダー財団で活動している元ABTプリンシパルのアマンダ・マッケロー、ジョン・ガードナーを振付指導に招いています。さらに、やはりABTで活躍したサンドラ・ブラウン、デヴィッド・リチャードソン(チューダー財団)も振付指導のために来日しています。しっかりと指導を受けた、本格的でドラマティックな上演となっていることでしょう。非常に楽しみです。
2012年にNBAバレエ団の芸術監督に就任した久保綋一さんにお話も伺いました。バレエというと、どうしてもチャイコフスキーの三大バレエの上演が中心となり、そのような作品のほうが観客動員もしやすいわけですが、今回のように意欲的な演目を上演することで、バレエの新しい魅力を知ってほしいという気概に溢れておられました。古典ですと、主役やソリスト以外は群舞となりますが、今回のトリプルビルですと、一人ひとりのダンサーがそれぞれに活躍し輝ける場を持てることになります。また、実際に作品を伝えて行っている指導者たちと接することで、ダンサーたちは成長できます。
最初のうちは、日本で良く知られていない演目ということもあり、なかなかお客さんを呼び込むのは大変なところもありますが、バレエ団の立地している所沢の地元に密着した活動を行うこともしています。今回のような公開リハーサル、そして先日は、「バレエふれあい感謝祭」として、ローザンヌ国際コンクールで1位となった二山治雄さんを招いてのイベントを行いました(二山さんは、NBAコンクールの高校生男子の部でも一位でした)。さらに、バレエ団の女性団員が「NBAガールズ」として地元のFM局にレギュラー出演して、地域の人々に開かれたバレエ団を目指しています。
「バレエふれあい感謝祭」の模様
http://balletnavi.jp/article/pickup/20140424-2523/
久保綋一さんは、モスクワ国際バレエコンクールで受賞したのち、アメリカのコロラド・バレエで20年間プリンシパルとして活躍した輝かしいキャリアの持ち主です。熊川哲也さん、岩田守弘さんとほぼ同世代。日本では、アメリカと比較してまだまだダンサーの地位が低い、生活が成り立たない、怪我した場合の補償がないなどの問題点があります。ダンサーの地位や待遇の向上のためにも頑張る使命がある、と意気込みを語ってくれました。
実際、NBAバレエ団のレパートリーや個性的な取り組みに魅力を感じ、最近、他のバレエ団で活躍してきたダンサーの加入が増えています。元東京バレエ団の井上良太さん、元新国立劇場バレエ団の泊陽平さんなどです。
さらに、今年の10月には、マイケル・ピンク振付「ドラキュラ」の初演が控えています。この作品は、ノーザン・バレエで初演されて人気を博し、ワシントン・バレエ、アトランタ・バレエなど世界中のバレエ団で上演されている、シアトリカルな要素の強いエンターテインメント作品です。今回のNBAバレエ団の上演では、「ドリアン・グレイ」で話題を呼んだ大貫勇輔さんをゲストに招きます。大貫勇輔さんは、今回が初めての本格的なバレエ作品への主演となります。ハロウィンの時期ということもあり、話題となること間違いありません。
また、来年には、アルヴィン・エイリー振付作品なども予定されており、NBAバレエ団の積極的な取り組みには目を離せなくなりそうです。
公演名: 『トリプルビル』
日時:
6月21日(土)開場18:00/開演18:30
6月22日(日)開場14:30/開演15:00
チケット料金:
S席:¥8,000 A席:¥6,000 B席:¥3,000
ペアS席:¥15,000
ペアA席:¥11,000
一部学生席(1,500円)あり
インターネットチケット購入はこちら
会場:メルパルクホール
アマンダ・マッケローとジョン・ガードナーのインタビューとリハーサル映像
http://youtu.be/cyY0xxbI_iE
芸術監督:久保綋一
バレエマスター : ジョン・ガードナー デビット・リチャードソン
バレエミストレス: アマンダ・マッケロー サンドラ・ブラウン リン・テイラー・コーベット 野田美礼
舞台監督: 千葉翔太郎 照明: ㈱オー/山本高久
音響: 相馬保之
構成: 西 優一 榎本晴夫 久保栄治 制作: 小林研一
主催: NPO法人NBAバレエ団
協賛: チャコット(株)、サントリーフーズ(株)
後援: 所沢商工会議所、FM NACK5
助成: 文化庁文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)
このABTのDVDに、「葉は色あせて」(アマンダ・マッケロー、ジョン・ガードナー出演)、「ブルッフ・ヴァイオリン・コンチェルト1番」(イーサン・スティーフェル、アンヘル・コレーラ、ジュリー・ケントら出演)が収録されています。廃盤ですが、全盛期のABTを知るにはもってこいの、大好きな一枚です。
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コメント
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naomiさん、おはようございます。
NBAのトリプルビル、チラシを見て気になっていました。
naomiさんが紹介してくれているアメリカン・バレエ・シアターのDVD「American Ballet Theatre Now - Variety and Virtuosity」、Import版ではありませんが持っていて、見ています。
それで今回のトリプルビルのチラシに目がとまったのですよ。
毎週、東京に遠征もキツいなあと、思いとどまっていました。
うーん、公演にとても行きたくなってきました。
投稿: ashita | 2014/05/31 08:33
ashitaさん、こんにちは。
「American Ballet Theatre Now - Variety and Virtuosity」持っていらっしゃるんですね。新書館から国内盤でVHSで出ていましたよね。このあたりのABTで上演されていた演目、というのが魅力的です。なかなか日本では観られない作品ばかりですものね。
この時期、確かに公演が多いんですよね~。同じ週末にNoismのカルメンもあるので(カルメンは兵庫でもありますが)土日と忙しくなりそうです!
投稿: naomi | 2014/05/31 10:26
こんにちは。
私が持っている「American Ballet Theatre Now - Variety and Virtuosity」は、2011年のABTの日本公演の時に会場で購入したDVDです。
全幕もののパ・ド・ドゥに惹かれて購入したのですが、収録されている全部の作品が素晴らしくて、大満足でした。
Noismのカルメン、私も観る予定です。
投稿: ashita | 2014/05/31 20:08
ashitaさん、こんにちは。
ABTの来日公演の時に売っていたんですね!今は廃盤になってしまったので買っておいて良かったですね。ABTの黄金時代のスターたちが出ているし楽しい映像ですよね。マラーホフの出ているレマンゾ、アンヘル・コレーラとパロマ・ヘレーラのドン・キホーテ、ホセ・カレーニョとスーザン・ジャフィの黒鳥と大好きなパフォーマンスが揃っているので繰り返し観ています。
投稿: naomi | 2014/06/02 06:23