「ポリーナ」バスティアン・ヴィヴェス
BD書店賞、ACBD批評賞という二つの大きな賞を本国フランスで受賞した、グラフィックノベル(コミックス)「ポリーナ」。バレリーナを目指すロシアの女の子ポリーナを主人公に、恩師のボジンスキーとの交流、友人、恋人との関係を通して、バレエダンサーとして成長していく様を描いた作品です。
http://books.shopro.co.jp/?contents=9784796871952
6歳の時にロシアのバレエ・アカデミーの入学試験を受けたポリーナ・ウリノフ。入試では才能を認められ、飛び級で入学してボジンスキーという厳格な教師の教え子となる。
「ダンスは芸術だ。学ぶものではない。まずは芸術が君たちの血管の中に流れていなければならない。訓練はそれからだ」
「観客には君が表現しようとする感情以外のものは見えないんだ。君が優美に、軽やかに見せない限り、観客は君の姿から努力や必死さしか感じない」
「感情をこめろ。そしてそれを制御するんだ。私は感情をコントロールできないものには興味がない」
課外授業で厳しく指導されたポリーナは必死に耐えて食らいつき、恋愛などにも目もくれず、劇場付属のバレエ学校へと進むが、そこで壁にぶち当たる。新しい教師はボジンスキーのやり方を否定するのだった。そこでもこっそりとボジンスキーに教えを受けるポリーナだったが、劇場のやり方と合わず、同級生から何年も遅れを取ってしまう。このままでは進級できないと言われる始末。休暇期間にダンスフェスティバルに出かけて行ったポリーナは、そこでコンテンポラリーダンスの振付家ラブターに出会い、移籍を決意。ボジンスキーが彼女のために新作のソロを振付けたのに、それを振り切って行ったのだ。しかし一緒に移籍したボーイフレンドとの関係、怪我…彼女はここも去って一人ベルリンへ…。
日本のバレエ漫画と違って、モノクロのシンプルな絵柄はそぎ落とした感じだけど、バスティエの画力が優れているため、バレエを踊っているときのラインの美しさは目を引きます。静止した瞬間だけでなく、動いている途中の一点を切り取っての作画も美しい。そしてストーリーも、ポリーナの独白はほとんどなく、淡々とセリフで表情でストーリーは進んでいくのですが、その中で、バレエという芸術に身を捧げることの意味、芸術と自由、一人の少女の成長の物語がつづられていきます。中でもやはり印象的なのは師匠、ボジンスキーとの師弟愛。20年間もの間、厳しくも優しくポリーナを見守り、一度は背を向けられても教え子を応援していく彼の純粋な気持ちには心を打たれます。ラストのポリーナとボジンスキーとのダンスは、とても切なく美しいものでした。
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