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2014/01/05

12/21(夜) 新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」

今年のバレエ納めは、新国立劇場バレエ団の「くるみ割り人形」。やはり「くるみ割り人形」はチケットが売れるようで、ほとんどの公演がソールドアウトとなったとのこと。ホワイエにはサンタクロースの姿をした研修生が雰囲気を盛り上げ、クリスマスツリーの前で記念撮影したり、子供用のネイルアートサービスをしたりとサービスも素晴らしい。とても賑やかで華やか、素敵な雰囲気に包まれてた。しかし、肝心の振り付けと演出が残念なのが、現行の牧版「くるみ割り人形」なのであった。衣装や舞台装置はとても洗練されていて、お金がかかっている雰囲気もあるのだが。

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http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/13nutcracker/

金平糖の精       長田佳世
王子           マイレン・トレウバエフ
クララ          加藤朋子
ドロッセルマイヤー  山本隆之
雪の女王        堀口 純

(第1幕)
シュタルバウム    貝川鐵夫
シュタルバウム夫人 湯川麻美子
フリッツ         高橋一輝
ハレーキン       原 健太
コロンビーヌ      石山紗央理
トロル          福田圭吾

(第2幕)
ねずみの王様    小柴冨久修
くるみ割り人形    小野寺 雄
スペイン        湯川麻美子  古川和則
アラビア        本島美和  貝川鐵夫
中国          竹田仁美  江本拓
トレパック       八幡顕光  福田圭吾  高橋一輝
葦の精        堀口 純  細田千晶  奥田花純
花のワルツ     丸尾孝子  川口 藍  小村美沙  中田実里
            輪島拓也  田中俊太朗 林田翔平 原 健太 小柴富久修 宝満直也

初演時に観たときの自分の感想を読み返してみたら、あまりにもぼろくそに酷評して笑ってしまったのだが、この版の演出はドラマツルギーに致命的な欠陥がある。現代の東京・新宿に生きるクララがなぜ19世紀のドイツにタイムスリップするのか、合理的な説明がない。現代の描写がとても薄っぺらいのも残念だ。今の時代だったら、ガラケーではなくスマホをいじっているのが普通だろう。

クララはクリスマスの日に一人ぼっちのかわいそうな女の子なのに、タイムスリップした先でも、せっかく王子様が現われてもいつの間にか彼のパートナーは雪の女王に代わってしまい、彼女はぽつんと二人が踊るのを観ているだけ。それは2幕のディベルティスマンにも引き継がれ、各国の踊りが踊られている間も、彼女は下手前方にある椅子に腰かけて、踊りを観ているだけなのだ。まるでお仕置きのために座らされているみたい。ドロッセルマイヤーの役割があまり大きくなくて、2幕では終わりを除いてほとんど登場しないし、彼女の相手をしてくれる人はほとんどいない。なので、クララの寂しい気持ちは最後まで解消されない。いくら、最後にドロッセルマイヤーがサンタクロースに変身して橇で飛んで行っても、彼女への贈り物は何もなかったのだ。クララやハンス・ペーターが各国の踊りに参加したり、クララとドロッセルマイヤーが芝居で絡むピーター・ライト版の「くるみ割り人形」が、どれほど魅力的な作品だったのか改めて実感した。

1幕のシュタルバウム家のパーティは、なぜか子供がほとんどいなくて大人ばかり。衣装はシックで美しいのだけど、子役はフリッツくらいしかいないものだから、どうも活気に欠けるし非常に退屈である。もともと「くるみ割り人形」は1幕はあまり面白くない作品という欠点があるのに、その欠点を解消しようという意識が感じられない演出である。

振付そのものもあまり感心できるポイントがない。雪のシーンで雪の女王に王子を奪われる可哀想なクララ。花のワルツの振り付けは、上の階から見てもフォーメーションが単調だし、花の精がぴょんぴょん跳ねていたりで、クラシックバレエらしくない。衣装もクラシックチュチュではないし。アラビアといいつつ、まったくアラビアではなくてエジプト、バックにスフィンクスが現われたり。葦笛は3人の女性ダンサーのグランフェッテ合戦で、あの音楽の典雅な雰囲気はみじんもなくて発表会のよう。金平糖のパ・ド・ドゥだって、大きなリフトもなく中途半端に終わってしまうのだ。

もうデヴィッド・ビントレー芸術監督時代は今年の6月で終わってしまうけれども、次期芸術監督の大原永子さんには、ぜひ改訂した「くるみ割り人形」を上演してほしいと思う。せっかくの素晴らしいダンサーたちの無駄遣いだし、子供たちでお客さんは大入り満員になるけれど、そうであるからこそ、もっと幸せな気持ちになる「くるみ割り人形」にしてほしいのだ。スターダンサーズ・バレエ団が従来上演していたピーター・ライト版「くるみ割り人形」から、鈴木稔さん演出の「くるみ割り人形」に変更した。鈴木版の「くるみ」もオリジナリティがあって大変評判が良いのだが(未見)、ぜひとも新国立劇場バレエ団ではライト版に変更してほしいと思う。

プロダクションの不出来さはさておき、ダンサーのレベルは非常に高かった。クララ役は上記に述べたように、実際に踊る場面が少な目で、1幕終わりのくるみ割りの王子と踊るパ・ド・ドゥくらいなのがもったいないのだが、加藤さんはとても柔らかでなめらかな踊りを見せてくれた。雪の女王の堀口さん、偶然私が観た2009年の時と同じ役だったのだが、確実に進歩を見せている。女王らしい威厳と統率力があり、長い肢体をしなやかに操っていた。

金平糖の精の長田さん、出番は最後のグラン・パ・ド・ドゥくらいで少ないのだが、スーパーアンドゥオールの持ち主だけあって、正確でアカデミックな踊り。しかもキラキラと輝き、見事な音楽性を見せて、穏やかながらも暖かいオーラに思わずじんわりと涙が出てきた。ポールド・ブラはエレガントで、回転も安定していて音楽そのものとなっていた。アラベスクはくっきりと美しい。王子のマイレンは、言うまでもなく見事なサポートぶりで、実に息の合ったふたり。マイレンのヴァリエーションも、いかにもワガノワ出身者らしい古典バレエの美をしっかりと見せた折り目正しいもの。ロシアンなクラシックテクニックの持ち主によるパ・ド・ドゥには打ちのめされるような幸福感があった。このペアで、もっとたくさん古典作品が観たいとしみじみ思った。

ディヴェルティスマンは、それぞれとても完成度が高かったのだが、なかでも、身体能力抜群の3人が踊ったトレパックは出色。真ん中の八幡さんの跳躍の高さ、ぶれなくていつまでも続く回転。それに負けじと弾む福田さんと高橋さん。気持ちよかった。葦笛は、前述のとおり3人の回転合戦なので振り付けとしては面白みに欠けたけれども、3人のグランフェッテがぴったりと合っていて、完璧だった。本島さんの妖艶さは、アラビアにとても似合っていた。

そして、新国立劇場バレエ団の誇り、コール・ド・バレエ。雪にしても、花のワルツにしても、精緻に整っていて美しく、揃ってはいるけど揃えることに命を懸けているわけではなく生き生きとしていて、一人一人の息遣いが感じられる。踊る喜びが感じられていて、ここでもまた圧倒的な多幸感に満たされた。

終演後は、ファンサービスとして主演キャストによる握手会が行われた。小さな子たちもプリマや王子に会えて大喜び。さらにネズミさんたちが手を振って見送ってくれた。新国立劇場バレエ団のFacebookによれば、ネズミの中には小野絢子さんもいたという。


このバレエ団のみなさんは、本当にファンを大事にしてくれて、いとおしい存在だ。それだけに、今度はもっと楽しいプロダクションを採用してほしいと切に願うのである。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

>今度はもっと楽しいプロダクションを採用してほしいと切に願うのである。

naomiさんのおっしゃる通りです!

くるみ全幕で一番のポイントは「幸福感」だと思います。
近年、クララ(マーシャ)が孤児院だったり、なんだったり、かんだったり、
いろいろな解釈がありますが、やはり普遍的な部分では「幸福感」を伝える作品だと、
思うのは私だけなのでしょうか???

私が子供の頃はくるみの帰りは、駅までの道で踊りだしちゃうくらい、
「脳内お花畑状態」だったなぁ(笑)

micoさん、こんにちは。

そうなんですよ、くるみ割り人形で大切なのは幸福感です。途中でちょっと怖いシーンがあったり(ヌレエフ版はそうですよね)、孤児院とか戦争とが出てきてもいいと思うのですが、少なくとも2幕終盤から幕切れは圧倒的な多幸感に包まれたいと思います。

「脳内お花畑」わかります♪何しろ音楽が圧倒的に美しくて高揚感がありますものね~!

こんにちは。
二年前、私もnaomiさんとまったく同じ感想を持ったので、遅いながらコメントさせていただきました。
バレエ教室の先輩が出演するということで(しかもクララです!!)楽しみにしていったのですが、愕然として劇場を後にする結果となってしまいました。

クララとくるみ割り人形の感動的なパ・ド・ドゥのシーンはほぼ記憶にありません。スフィンクスの背景にはぎょとしました、あんなに曲の活かされてない花のワルツは初めて見ました。クララの乗るそりは、素敵じゃありませんでした。
そして何より、ストーリーの分からなさ…ドロッセルマイヤーがサンタさんに変わるのも、青い顔の人が登場するのも、私はいただけませんでした。
私は、ストーリー性が高く、感動的でかつ楽しい、ピーター・ライト版のDVDを見て育ち、バレエの虜となりました。だからこそ、余計に苦い経験となってしまいました。

そして、私が観に行った日は学校公演だったので制服を着たバレエを観るのは初めてとおぼしき人たちがたくさんいました。これがバレエだと思われて「やっぱりつまんない」、なんて思われたら悔しい…と思ったのが正直なところです。そう思ってしまうような舞台でした。

きっと、人それぞれ好きなバレエの形があります。
でも、どんな作品でも、どんなヴァージョンでもバレエは素晴らしい!と(特に初めて観た人に)思ってもらえるような舞台が創られるべきだと思います。
バレエはエキサイティングな面もあり、人を成長させてくれる面もある素晴らしい芸術だと(ダンサーにとっても、観る側にとっても)観るたびに思います。

話がまとまらず、しかも長くなってしまいごめんなさい。
naomiさんのレビュー楽しみにしてます!!

りーずさん、こんにちは。

先輩の方がクララ役で出演されていたんですね!素敵~。

本当におっしゃる通りなんですよね。。。ストーリーがよくわからないのが最大の欠点ですよね。花のワルツも音楽が全然生きていないし。ピーター・ライト版はプロダクションも美しいし、ストーリー性が高くて楽しくて幸せな気持ちになれるのに。

そうそう、学校公演で初めて観るバレエ、初めて観るくるみで、バレエって面白くないって思われてしまったら本当に悲しいです。

特にくるみ割り人形は、小さなお子さんや初心者が観るわけだから、バレエは素晴らしい、美しい、幸せだと感じさせてほしいものです。やはり自分を別の世界に連れて行ってほしいと思って、安くはないお金を払って劇場に足を運ぶわけですから。

そう、バレエの魅力を本当に多くの人に知ってほしいと思います!

今後ともよろしくお願いいたしますね♪

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