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2013/11/24

「ロマンティック・バレエの世界 妖精になったバレリーナ」展

ニューオータニ美術館で開催されている「ロマンティック・バレエの世界 妖精になったバレリーナ」に行ってきました。

http://www.newotani.co.jp/group/museum/exhibition/201311_ballet/index.html

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約90点の図版、楽譜、台本、そしてダンサーからの書簡などはすべて兵庫県立芸術文化センター 薄井憲二バレエ・コレクションからの出展。さらに、井上バレエ団の『ラ・シルフィード』『松葉杖の悪魔』の衣装、神戸ファッション美術館所蔵の19世紀の靴も展示してあった。兵庫の薄井コレクションは、膨大なコレクションから小出しに展示することが多く、今回のような大きなスペースで展示されることはめったにないということで、貴重な機会だった。

今回は、ちょうど、舞踊研究家で兵庫県立芸術文化センターのキュレイターである芳賀直子さんとこの美術館の学芸員太田美喜子さんのギャラリートークも聴いたのだが、このトークが、様々な裏話をはさんだ、大変興味深いものだった。

今でも時々上演される『パ・ド・カトル』は、カルロッタ・グリジ、マリー・タリオーニ、ファニー・チェリート、ルシル・グラーンの4人の人気バレリーナが共演したことでとても有名な作品だけれども、当時同じくらいの人気を誇ったファニー・エルスラーは踊っていない。彼女はちょうどその時にはアメリカ巡業に行っていたからだそうだ。そして、この作品、実は6回しか上演されていないというから、驚きである。(現在踊られているのは、アントン・ドーリンが図版を参考に振りつけたもの)

ロマンティック・バレエの時代に中でも人気を博したマリー・タリオーニと、ファニー・エルスラーの二人を中心としたこの展覧会。タリオーニは「ラ・シルフィード」で知られるように妖精役、白いバレエが得意だった一方、エルスラーは地上的、情熱的な役を得意とした。そんな中でも、タリオーニが踊った「エスメラルダ」の版画なども今回は展示されている。

オリエンタル的な要素も、ロマンティック・バレエではポピュラーなモチーフで、「ル・ディアブル・ア・カトル」のようにオリエンタルとロマンティックが混ざった作品も人気があった。

エルスラーがカチュチャを踊って人気を得た『松葉杖の悪魔』(ジャン・コラーリ振付)のストーリーが面白い。瓶に閉じ込められた悪魔が、瓶から出してほしいと学生に頼み、お礼に3人の女性を紹介してあげるというもの。学生が結局選んだのはパキータという貧しい女性だったが、エルスラーが踊ったのは美しい踊り子フロリンダの方だった。この作品は井上バレエ団が復刻して上演しているため、今回衣装が展示されている。色彩が鮮やかで、スペイン的な印象のある衣装だ。

さらに、エルスラーがカチュチャを踊っている様子の美しい陶器人形も展示されていた。繊細なレース状の陶器のドレスを着ているのだが、これは陶土にレースを巻きつけて焼くと、陶器がレース状になるというものだ。

「大理石の娘」は、大理石の彫刻に彫刻家が恋をして、彫刻が人間になるというストーリー。生きていないものが命を吹き込まれるというモチーフは、『コッペリア』や『ペトルーシュカ』『人形の精』などにも見られる。この作品の版画では、ファニー・チェリートとともに初演者のアルトゥール・サン・レオンが描かれているが、彼はもちろん「コッペリア」の振付家でもあるが、もともとヴァイオリニストだったので、ヴァイオリンを持って踊ることもあったそうだ。

しかしながら、テオフィール・ゴーティエなどは、舞台の上で男の赤くて太い首なんか見たくない、と言っていたとのことで、ロマンティック・バレエの時代には男性ダンサーは冷遇され、また女性が男性役を演じることも多かった。男性ダンサーの活躍が少なくて表現の幅が狭くなってしまったことが、ロマンティック・バレエの衰退の原因とも言えるようだ。1870年の「コッペリア」がロマンティック・バレエの最後の作品であるとされている。

あと大変興味深かったのが衣装の話。マリー・カマルゴが初めてチュチュを少し短くしたのだが、彼女が踊っている様子を描いた版画では、おなじ舞台に乗っている演奏者たちの視線が彼女の足首に集中していることが可笑しい。ギリシャ風のチュニックを初めて着たマリー・サレの肖像もあったが、それまでは、チュチュはすべてコルセットで締めあげられていたので踊る方も大変だったようだ。体を自由にするチュニックは、アンチバレエ的なものであり、後にイサドラ・ダンカンも着用していた。

1830年~40年代においては、貴族が普段はいている靴がまるでトウシューズのような形をしている時代があった。当時のポワントも展示されていたが、つま先はかがってあり、足先には綿が詰められていたようである。そして、その頃は、バレリーナが引退した際には彼女のポワントで熱心なファンがシャンパンを飲む、という習慣もあったそうだ。

1840年代に活躍したローラ・モンテスの版画もあった。彼女は、スパイダーダンスという、蜘蛛を飲み込んでしまった時の踊りで人気を博し、エロティックな魅力があった。バイエルンのルードヴィヒ1世の愛人でもあったが、日本人の新聞記者、黒田礼二は「舞姫ローラ・モンテス」という小説を出版していてその本も展示されていた。

そして最後に、タリオーニ、エルスラーらの直筆の手紙や名刺が展示してあった。彼女たちは実にエレガントな文字で手紙を書いていたが、内容はチケットが取れました、といった他愛のないものが多いようだ。エルスラーの使った便箋など、とても繊細で美しい。

また、当時の楽譜やバレエ台本などもあり、その中には、表紙や挿絵に美しいバレリーナの版画が使われているケースもあった。バレエ台本は公演会場で販売されていたため、それを読んで予習したバレエファンも多かったようだ。


繊細なリトグラフ中心の美しい図版もさることながら、これらの図版から、当時のバレリーナの生態、バレエがどのように上演されていたのか、どんな人がファンだったのかといったことが伝わってきたのが、大変面白かった。当時任期のバレリーナたちは、容姿も可憐で美しく、顔が小さくてなで肩でウェストが細い、という現代の美意識にも近い姿をしている。ただ、腰を締めあげてポワントで踊っているので、脚が強くないといけなくて、脚は比較的太い。熱心なファンは、バレリーナが家に帰る時には自ら馬の代わりになって馬車を引いていたというからすごい。

19世紀の文化を知る上でも大変面白いこの展覧会、12月25日までの開催です。

開館時間 : 10:00~18:00(入館は17:30まで)
休 館 日 : 月曜日(但し12/23は開館)
入 館 料 : 一般¥800 高・大生¥500 小・中生¥300
           宿泊者無料、20名以上の団体は各¥100割引
主  催 : ニューオータニ美術館
後  援 : 公益社団法人 日本バレエ協会
協  力 : 兵庫県立芸術文化センター 薄井憲二バレエ・コレクション

芳賀さん、太田さんのギャラリートークはもう1回開催されます。トークが大変面白いので興味のある方はぜひ。
12月7日(土) 14:00~

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コメント

私も23日のギャラリートーク、伺いました!随分大勢熱心なお客様が集まっていましたね。監修の芳賀さんと学芸員の太田さんの丁寧な解説で、いろいろなことを気づかされ、バレエを見る以外にもこうした機会がもっともっとあるといいですね。バレエという趣味の窓から入って歴史を旅できるって本当に素晴らしいです。サン・レオンがヴァイオリニストだったこと、以前はピアノではなくヴァイオリンでレッスンしていたことなども面白いエピソードでした。タリオーニは手が長かったのを気にして手を胸の前で組んだり、頭上で丸く形作ったのが、やがてロマンティックバレエの定型の振付になって行ったなど、こぼれ話も興味深かったです。

ANGELLAさん、こんにちは。

23日のギャラリートークにいらしていたのですね!そうそう、これらの版画ももちろん素晴らしいのですが、バレエの歴史にまつわる様々なエピソードを知ることができて、より一層楽しめたし、今後バレエ作品を見るうえでも参考になることばかりでした。知識欲が刺激されていい機会でしたよね。私も、サン=レオンがヴァイオリニストだったことなどは知りませんでした。こういう面白いお話は、もっと聞けるチャンスがあるといいなと思います。国立新美術館で開催される来年のバレエ・リュス展は、芳賀さんの専門分野だから、またお話が聞けるといいな。

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