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« 「ロマンティック・バレエの世界 妖精になったバレリーナ」展 | トップページ | オハッド・ナハリンのドキュメンタリー映画「Mr.GAGA」製作費募集中 »

2013/11/25

10/21 シュツットガルト・バレエ「オテロ」 Othello Stuttgart Ballet

http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/othello/

OTHELLO Constantine Allen
DESDEMONA Elisa Badenes
JAGO Evan McKie
EMILIA Anna Osadcenko
CASSIO David Moore

BRABANTIO Petros Terteryan
BIANCA Alessandra Tongnoloni
DER WILDE KRIEGER Roland Havlica

LA PRIMAVERA Katarzyna Kozielska
Heather MacIsaac
Paula Rezende

CHOREOGRAPHY AND PRODUCTION John Neumeier
MUSIC Nana Vasconcelos, Arvo Pärt, Alfred Schnittke u.a.,
WORLD PREMIERE 27. Januar 1985, Hamburg Ballett
PREMIERE AT THE STUTTGART BALLET 24. April 2008
CONDUCTOR James Tuggle

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Photo: Stuttgarter Ballett

この日のキャストは、初役が3人。オテロ役のコンスタンティン・アレン、デスデモーナ役のエリサ・バデネス、そしてキャッシオ役のデヴィッド・ムーアと若手ダンサーを中心にしていた。中でも、オテロ役のコンスタンティンは、入団2年目、20歳という若さであり、ドゥミ・ソリストの彼は全幕作品の主役を踊るのも初めてだった。少し浅黒い肌、ほっそりとしていて長身。身長190cmのエヴァン・マッキーと並んで同じくらいの高さだ。

言うまでもなく、オテロ役は大変難しい役だ。ヴェネツィア共和国のムーア人将軍オテロのカリスマ性と誇り高さを体現しなければならない一方で、愛する妻に疑念を持ち、ついには殺してしまうまでの心の揺れ動きと苦悩をも表現する必要がある。また、デスデモーナとのパ・ド・ドゥも、リフトが多くてパートナーリングがとても複雑だ。コンスタンティンのような若くて経験の少ないダンサーを、このような難役にキャストすることは大きな賭けであったと思う。しかも、パートナーであるデスデモーナ役も、やはりまだ若く初役のエリサ・バデネスが演じているのだ。だが、この大胆なキャスティングは見事に成功し、昨年ジョンクランコスクールを卒業して入団したばかりのコンスタンティンは、公演終了後2階級昇格、最年少プリンシパルに来シーズンからなることが決定した。

コンスタンティンのオテロはとても若いが、賢く切れ者である印象があり、将軍という設定にも説得力があった。幼さを残した甘い顔立ちの持ち主の彼だが、それが、彼の若き秀才というイメージも与え、一方でその若さ、そして未熟さゆえイアーゴの奸計にはまって最愛の妻への猜疑心を募らせてしまうというストーリーにも説得力を与えている。デスデモーナとの出会いでは、虎のようにしなやかに踊り、最初のパ・ド・ドゥではひたむきな愛と、神々しいほどの清らかさを感じさせて心に染み入るようだった。それに対して、終幕のパ・ド・ドゥでは、心が引き裂かれ、苦悶し、精神的に崩壊して妻を手にかけてしまう姿があまりにも痛ましかった。輝かしいコンクール入賞歴を誇るコンスタンティンは、テクニックも鮮やかで、トリプルトゥールザンレールも見せてしまうほどの驚くべき跳躍力を見せ、難しいリフトやサポートも滑らかにこなし、末恐ろしいところを見せてくれた。技術だけでなく、演技力も備えたコンスタンティンは、将来のスターの一人となることだろう。最後のパ・ド・ドゥでは、あまりの苦しみに涙も涸れるのではないかというほど涙を流れるままにしていた彼の姿に、心を打たれた。見事なデビューだった。

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一足先に最年少プリンシパルとなったエリサ・バデネスは、小柄で少女らしいかわいらしい容姿。天真爛漫で奔放さがあるけれども、アリシア・アマトリアンが演じた時ほどのエキセントリックさは感じさせず、あくまでもイノセントで純粋な存在。彼女もとてもテクニックが強く、このような演劇性の高い作品は初めてだったので、まだこれから表現は深められることだろう。コンスタンティンとは若いペアなので、少し青春ドラマのような爽やかさと痛切さを体現していて、良いデビューを飾ることができた。今まではキトリやオデット、じゃじゃ馬ならしのビアンカやオネーギンのオルガのような、技術中心の役が多かったが、今後はジュリエットなどよりドラマティックな役に挑戦して、シュツットガルトらしいドラマティック・バレリーナへの成長が期待される。

そしてもう一つの重要な役、イアーゴにはエヴァン・マッキー。もともとオネーギンなど、ダークな役も似合う人だけど、今回は明らかな悪役である。マライン・ラドマーカーのイアーゴは、あまり理由もなく天然の悪意をオテロに対して抱いていて、もともと黒天使のような人って感じなのだが、エヴァンは、最初は感じの良い人物として登場するものの、少しずつオテロに対しての反感を募らせていき、可愛さあまって憎さ百倍という感じに増幅していっている。オテロに対する感情があまりにも膨れ上がっていって、これはもはや彼に対する愛なのだと思えるほどだ。このイアーゴは、オテロのことが好きだったのにデスデモーナと結婚し、さらに自分ではなくキャッシオを副官に取り立てた彼が許せないと感じたのだろう。印象的なソロでは、長い脚を高く蹴り上げる様子も恐ろしいほどエキセントリックで激しく、地面にキスする姿からも愛憎のもつれが感じられる。イアーゴが妻エミリアを脅迫してこの奸計に引き入れるところでは、イアーゴは1,2,3と数字を数えて叫ぶ。カナダ人のエヴァンは英語で数えるのだが、とてもよく通るいい声をしていて、この人はきっと舞台俳優としても成功するだろうと思わせた。その強迫シーンのすさまじい緊張感と暴力性。何しろ自分の妻を突き飛ばし蹴るなどのドメスティック・バイオレンスが炸裂するわけなのだが、心底ぞっとさせられた。かつてのロシア・バレエでよく見られた「不和のパ・ド・ドゥ」のモチーフが、イアーゴとエミリアのパ・ド・ドゥで使われていたことも大変興味深い。

イアーゴといえば、1幕で仮面をかぶって正体を隠し、女装し踊るところも印象的なのだが、長身ながら細身のエヴァンはドレス姿もよく似合い、異形の美しさを見せてくれる。この役は、相当演じる人を選ぶようで、ノイマイヤーはシュツットガルト・バレエでは二人しか役を許可しなかったとのことだ。

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Photo: Stuttgarter Ballett

ハンブルグ・バレエで「オテロ」を再演した時には、イアーゴはスーツ姿で登場し、スマホを片手にしていたとのこと。ラストシーンでは、デスデモーナの遺体にスマホを向けて写真を撮影することまでして、イアーゴという人物の残忍性を表現したそうだ。だが、エヴァンが演じたイアーゴは、デスデモーナをオテロが殺してしまって呆然とする姿を目にしても、にやりと笑って去っていく姿だけでぞっとさせるものがあり、これぞアンチヒーローだった。

エミリアを演じたアンナ・オサチェンコも、普段の彼女とは印象の違う演技派ぶりを見せた。彼女の演じるエミリアは、イアーゴとは共依存の関係で、足蹴にされ脅され悪事に加担させられても、そのことに快感すら覚えてしまっている。強圧的なイアーゴに怯えてびくびくしながらも、その中にある被虐的な歓びをも表現したアンナの演技力には恐れ入った。数を数える場面では、彼女はロシア語で叫んでいた。デスデモーナに接する態度でも、何かを隠している負い目を常に感じさせており、それが最後にデスデモーナの亡骸を目の前にしてその罪悪感に押しつぶされる姿に説得力を与えていた。

主要登場人物4人の火花散る演技も素晴らしかったが、忘れてはならないのがアンサンブルのクオリティの高さ。シュツットガルト・バレエの誇る若く長身で技術も備えた男性ダンサーたちが演じる兵士たちがあってこそ、観客はこの作品の世界に浸ることができる。しなやかで官能的な女神プリマヴェーラたちの駆け抜ける姿。デスデモーナが夢見たオテロの分身、ワイルドな戦士のエネルギッシュさ。エロスを体現するビアンカ。このような濃密な舞台は、ハンブルグ・バレエとシュツットガルト・バレエでしか表現できないだろう。

こちらは、ハンブルグ・バレエが上演した時の映像(公式チャンネルより)
http://youtu.be/1tqFFiGsxfU

おまけ。コンスタンティン・アレンがコンクール「タンツオリンプ」に出場して優勝した時の「グラン・パ・クラシック」の動画。脚が長い!
http://youtu.be/GBdYo9ItvGk

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

naomiさま、こんにちわ。
素晴らしい舞台だったことが、naomiさまの文章からいきいきと伝わってきて、
今すぐにもドイツに飛んでいきた~い!気分になりました。
ほんとに素敵なレポートをありがとうございます。
シュツットガルト・バレエ団の来日が待ち遠しくてしかたありません。

ショコラ・ショーさん、こんにちは。

オテロは、作品としては古いところもあるのですが、ダンサーの踊りと演技力の両方が観られる作品で、充実期にあるカンパニーで観ることができて本当にラッキーです。

ずいぶん昔に、ハンブルグ・バレエが来日公演に「オテロ」を持ってきたのですよね。それも、初演キャストのガマル・ゴウダとジジ・ハイアットで。観られた方は本当に幸運だと思います。

シュツットガルト・バレエはたぶん次の来日は2015年になるかと思います。ちょっと先ですが楽しみですね!

ガマル・グーダだと思っていたら(世界バレエフェスティバルのプログラムにそのように書いてあったから!)ガマル・ゴウダなのですね。知りませんでした。考えてみたらGoudaをグーダと読ませるならフランス語系の規則ですよね。

ジジ・ハイヤットとガマル・ゴウダの「オテロ」!忘れられません。
最近Jason Reilly と Alicia Amatriainの「オテロ」の写真を見て、ジジ・ハイヤットとガマル・ゴウダの「オテロ」を思い出していました。

前から気になっているのですが、ドイツで活躍していたバレリーナのなかで実に潔く引退される方が目立ちませんか?ジジ・ハイヤットがそうでした。「バレエより大切なことができた」っておっしゃっていたように記憶しています。(ハイヤットは、いまアメリカでバレエ教室をやっておられるそうです。未確認情報ですが)ユリア・クレマーだったか、イゾルテ・レンドヴァイだったかも、子育てに専念したいというような理由で引退されたのではなかったでしょうか?

ちょうちょさん、こんにちは。

もしかしたら、ガマル・グーダのほうが正しいかもしれません。ガマルさん、アーキタンツの講師として今来日されているようで、そこでガマル・ゴウダという表記になっていました。
http://architanz.exblog.jp/18982906/
お元気そうでよかったです。ジジ・ハイヤットとガマル・ゴウダの「オテロ」は全編がYTにアップされていますよね。本当に素晴らしいですよね。

ジジ・ハイヤットは、つい最近ハンブルグ・バレエ学校の校長になりました。
http://www.hamburgballett.de/e/staff.htm
それまではアメリカにいたようなのですが、2007年だったかな、ハンブルグに行ったときに客席で姿を見かけました。イズール・レンドヴァイは、確かに子育てに専念するために引退されたかと思います。(現在は、やはりどこかの州のバレエ団のバレエミストレスをしているようです)
最近では、シュツットガルト・バレエのプリンシパルだったエリザベル・メイソンが先シーズン末に退団し、アメリカのバレエ団に移籍したものの、そこもすぐやめて引退したようです。彼女はまだ若いはずです。
けっこう燃え尽きるのが早い人も多いようです。

そうですか~。ありがとうございます。ジジ・ハイヤットがハンブルグバレエ学校の校長に!よかったです。「校長になるべき人」が校長になってますね!(性格悪いですか?)

また、読み方の話ですが、ある雑誌には「イズール・レンドヴァイ」と書かれ、別の出版社の雑誌には「イゾルテ・ランドヴェ」と書かれていました。
確かスペルは、「Yseult Lendvai 」ですが、フランス語系の読み方なら「イズール・ランドヴェ」、ドイツ語の規則にしたがって読むなら多分「イゾルテ・レンドヴァイ」です。
つまり「イズール・レンドヴァイ」はファースト・ネームをフランス語系、苗字をドイツ語系の規則。
いっぽう「イゾルテ・ランドヴェ」はファーストネームをドイツ語系(多分)、苗字をフランス語は規則で、カタカナ化していると思います。
雑誌の編集者には悪いけれど滑稽です。笑


ちょうちょさん、こんばんは。

意地悪くないです、おっしゃる通りだと思います!

Yseult Lendvaiの読み方、難しいですよね。彼女はフランス人のはずなので、イズール・ランドヴェが正解でしょうか?今はご主人のロバート・コンが芸術監督を務める、ドイツのアウグスブルグ・バレエで教えているようですね。
http://www.augsburger-allgemeine.de/kultur/Ehemalige-Primaballerina-trainiert-Augsburger-Ballett-id7401991.html

確かに、雑誌の表記と招聘元の表記が相違しているケースは多いですよね。正しく統一されればいいんでしょうが。。。

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