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2013/11/17

11/16 新国立劇場バレエ団「バレエ・リュス ストラヴィンスキーイーヴニング」

新国立劇場バレエ団のシーズン・オープニング作品は、「バレエ・リュス ストラヴィンスキーイーヴニング」。「火の鳥」「アポロ」「結婚」という、バレエ・リュスの作品の中でもストラヴィンスキーが作曲を手がけた3つの傑作が並んだ。中でも、「結婚」はカンパニー初演であり、まためったに日本では上演されない作品であるということで、貴重な上演だった。(10年以上前に東京バレエ団が上演)

シーズン初めに、バレエ・リュスのトリプルビルを持ってきたというところに、デヴィッド・ビントレーの強い矜持を感じる。世界的に通用するカンパニーとなるには、このような新しい古典を上演しなければならないし、バレエ・リュスの精神からダンサーも観客も学ぶところはほんとうに多い。合唱団も持っている新国立劇場ならではの、音楽的にも高度で総合芸術としての舞台が実現できるというのも、意義が大きい。

http://www.atre.jp/13russes/

指揮:クーン・カッセル
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

「火の鳥」
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
衣装:ナタリア・ゴンチャローワ

火の鳥 小野絢子
イワン王子 山本隆之
王女ツァレヴナ 寺田亜沙子
カスチェイ マイレン・トレウバエフ

「火の鳥」のみ今回は再演だが、小野さんの火の鳥を観るのは初めて。小柄な彼女が、存在感の大きな火の鳥役が似合うかどうか、見る前は少し不安だったけどそれは無用だった。確かに小さいのだが、手足の使い方は大きくしなやか。軽やかで大きなジュッテは飛翔する鳥そのもの。そして細かい腕や手先の動きもとても繊細かつ動物的で、人ならざる者という感じが非常によく出ていた。目力もとても強い。舞台の上で放つ輝きは尋常では無いほどだった。イワン王子の山本さんは、ベテランならではの安定したサポートと演技の上手さ。今シーズンからオノラブルダンサーとなり、出番が減ってしまうと思われるが、彼の演技はもっともっと観たい。可憐な王女寺田さんと、12人の乙女たち。彼女たちの一糸乱れぬ踊り、りんごの投げ方もとても堂々としていて落とす人もいなかった。カスチェイ役のマイレンは、はまり役。本当に楽しそうに魔王を演じていて、憎々しげに眉を上げる演技や指先の使い方、腰の曲げ方、そして卵を割るときの慌てっぷりまで、実に役者である。カーテンコールでの小野さんとの掛け合いもユーモラスだった。ストラヴィンスキーの奔放なメロディに乗せて、様々な姿をした物の怪たちが出てくるモブシーンもこなれていて、お伽話っぽさを盛り立てる。

それにしても、「火の鳥」という演目は、いかにもバレエ・リュスらしい、音楽、踊り、美術の見事な融合である。ラストシーンでのナタリア・ゴンチャローワによるロシア的なのにモダンでもある背景幕が登場し、印象的な荘重な旋律が聞こえてくると、こんなディズニーっぽいストーリーなのに得も知れずジーンとくる。


「アポロ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

アポロ 福岡雄大
テレプシコール 小野絢子
カリオペ 寺田亜沙子
ポリヒムニア 長田佳世
レト 湯川麻美子

日本人がアポロ役を演じるのを観るのは初めてなのだが、福岡さんは堂々としていて風格があり、細かい足さばきも美しくてよかった。テレプシコール、カリオペ、ポリヒムニア役の3人も実力者を取り揃えていて、息もよく合っており、バランシンの新古典主義的で彫刻的な振付をものにしていた。中でも、この直前に火の鳥役を演じていた小野さんはひときわ表現力が豊かで、伸びやかで美しかった。今回は、レトからアポロが産み落とされるところから、アポロと美神たちが丘を登っていくラストまでの完全版を上演しており、レトを演じた湯川さんの演技力、出産の時の苦悶までも表現したパートにも感銘を受けた。85年経った今でも、バランシンは古くて新しい。古典的でありながら斬新で、何回も観たあとですら、目を瞠る瞬間が幾つもあると感じさせられた。


「結婚」
振付:ブロニスラヴァ・ニジンスカ
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
装置・衣装:ナタリア・ゴンチャローワ

花嫁:本島美和                   
花婿:小口邦明 
花嫁の父 マイレン・トレウバエフ
花嫁の母 千歳美香子
花婿の父 輪島拓也
花婿の母 堀口純

友人 古川和則、奥田花純、丸尾孝子、大和雅美、貝川鐵夫、清水裕三郎
ソリスト歌手:前川依子(ソプラノ)、佐々木昌子(アルト)、二階谷洋介(テノール)、塩入功司(バス)

今回最も楽しみにしていた作品。映像でしか観たことはないのだが、とにかくすべてが大好きなのだ。ピアノ4台、打楽器、そして独唱と合唱による斬新な音楽がまず最高に美しい。白と茶で統一された衣装、構築的で独創的な振付。ロシアの農村における結婚式、そこには祝祭性よりも、結婚の喜びよりも、少年少女時代との別れ、両親との別れという痛み、労働力として期待されるという待ち受ける現実、そんな中でも芽生えてくる愛情という陰影深いテーマが、この作品が振り付けられた当時はなんと革命的なものだったんだろうと考えさせられる。そんなテーマなのに、紛れもないハイ・アートであり、芸術、バレエにおけるイノベーションでもある。ニジンスカという人は天才で、フェミニストで、モダニストだった。間違いなく20世紀最大の傑作。象徴的な、花嫁の友人達が花嫁の長いお下げを持って、頭を積み上げていくシーンのかっこ良さと言ったら、もううっとりしてしまう。

無表情な人々によって淡々と、厳粛に行わる結婚の儀式、抑えた表情の中に、なんとも言えない悲しみ、痛みが漂ってくる。花嫁役の本島さんは、ほとんど踊らない役だが、髪を白い布に包んだ姿でも輝くばかりの美しさ、その美しさの中の虚ろな表情が痛ましい。そしてもうひとつの主役は、群舞。中でも6番ポジションでずっとパドブレし続ける女性コール・ドの統一性が、まるでマスゲームのようで、儀式性を盛り上げる。アクセントとなる、古川さん、奥田さんのソロは、振付も独特で土着的なのにスタイリッシュでしびれた。群舞のフォーメーションの変化に伴って生まれる後半の高揚感を味わうのは、まさに至福の時だった。

コール・ド・バレエの高い実力とともに、合唱やソリストの素晴らしさ、クーン・カッセルの指揮ぶりも見事だった。ピアノ4台の演奏も良かったのだが、オーケストラ・ピットに配置され、蓋を閉じた状態で演奏されると、ピアノの音の響きがやや弱く感じられてしまったのが残念な点だった。この素晴らしい舞台の再演を、ぜひとも遠くない将来に期待したい。この公演を見逃してしまうことは、大きな損失である。バレエ団の宝として持ち続けてほしい。

それから、プログラムには、ソリストの名前しか載っていないのが非常に残念であった。「結婚」にしても「火の鳥」にしても、コール・ド・バレエの持つ役割が非常に大きいので、必ず出演者全員の名前を載せてほしいと切に思う。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
私も16日の公演、観てきました。
「火の鳥」観たさでチケットをとったのですが、すべての演目が素晴らしかったです!

火の鳥の小野さんの目力はすごくて、ひきつけられました。
強さと妖艶さ、とても魅力的な火の鳥でした。
米沢さんの「火の鳥」も観る予定ですが、どんな風に演じるか楽しみです。

「結婚」の群舞のフォーメーション、とても面白いと思いました。
「火の鳥」にしても、「結婚」にしても、ソリストのみならす、コールドも力のある新国立のダンサー達だからこそ、観る側も安心して、集中して作品を楽しめるんですよね。
新国立、ますます好きになりました。

今シーズンのプログラム、本当に楽しみなものが盛りだくさんで、嬉しいです。
ビントレーさん、今シーズンで終わりですが、来シーズン以降も、魅力的なプログラムに挑戦してもらいたいです。

こんにちは。私は15日に観ました。火の鳥とカリオペの米沢さんのポジションの正確さに感嘆!コールドのレベルの高さに感動!東フィルも頑張っていました。実は新国バレエは初見(実家から徒歩圏内というのに。。。)とても若いカンパニーという印象を持ちました。ビントレー監督のもとで、きっとずいぶんと伸びたのだと思います。これからも意欲的なプログラムを組んで欲しいなあと思います。

ashitaさんこんにちは。

私も、土曜日のほか日曜日にも観てきました。土曜日は1階席、日曜日は3階席と見る場所が違っていたのが、また面白かったです。上から観ると、フォーメーションの変化が観られるのが良かったです。小野さんの火の鳥も素晴らしかったですが、米沢さんの火の鳥も、とても存在感が強くて素敵でしたね。

仰るとおり、「火の鳥」にしても「結婚」にしても、コール・ドの実力が高い新国立劇場バレエ団ならではの完成度の高さがありましたね、ソリストだけでなくてカンパニー全体のレベルの高さが問われる作品でした。
私も、改めてこのバレエ団は素晴らしいな~応援したいなと思ったのでした。

本当に、ビントレーさんの功績は大きかったと思いますが、彼が帰国されてしまってからも、彼の路線を受け継いでこのような魅力的なプログラムに挑戦して欲しいですね。

junさん、こんにちは。

米沢唯さん、素晴らしいダンサーですよね、今や小野さんと並んで新国立劇場バレエ団の2大プリマに成長した感じがします。技術がしっかりしているし、表現力もあって。コール・ド・バレエも世界有数の素晴らしさだと思います。音楽のレベルも高くて、多分バレエの演奏では東フィルはかなり優秀なのではないかと思います。ぜひ今後とも足を運んであげてくださいね。
特に今回のバレエ・リュスプログラムは最高でした!

こんにちは。
米沢さんの火の鳥も、本当に素敵でした。
王子に捕らえられての場面は小野さんの火の鳥、王子を助けに現れた場面は米沢さんの火の鳥が個人的には好きでした。
米沢さんの火の鳥は、「王子を助けるために頑張るわ!」という正義の味方的な印象があって、温かみのある役作りだったような気がします。

ashitaさん、こんにちは。

そうなんです、私も、小野さんも素晴らしかったけど、米沢さんの火の鳥のほうが温かみがあってどちらかと言えば好みだったかな、って思ったんですよね。優しさと気高さを感じさせました。いずれにしても、米沢さん、小野さんとトップクラスの女性ダンサーがいるこのバレエ団は素晴らしいと思いました!

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