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« ユニバーサル・バレエ2014年1月来日公演 | トップページ | NYCB(ニューヨークシティバレエ)来日公演のキャスト発表 »

2013/10/13

10/5,6 シュツットガルト・バレエ「オテロ」Stuttgart Ballet "Othello"

OTHELLO
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2349/othello/

Othello04juli13_028Foto: Stuttgarter Ballett

CHOREOGRAPHY AND PRODUCTION
John Neumeier

MUSIC
Nana Vasconcelos, Arvo Pärt, Alfred Schnittke u.a.

WORLD PREMIERE
27. Januar 1985, Hamburg Ballett

PREMIERE AT THE STUTTGART BALLET
24. April 2008

CONDUCTOR
Wolfgang Heinz

ORCHESTRA
Staatsorchester Stuttgart


OTHELLO Jason Reilly
DESDEMONA| Alicia Amatriain
JAGO Marijn Rademaker
EMILIA Myriam Simon
CASSIO Alexander Jones

BRABANTIO Nikolay Godunov
BIANCA Alessandra Tognoloni
DER WILDE KRIEGER Arman Zazyan

LA PRIMAVERA Elizabeth Wisenberg
Maria Batman
Julie Marquet


1985年にハンブルグ・バレエで初演された「オテロ」は、2008年にシュツットガルト・バレエでの初演が行われた。今年シュツットガルト・バレエのレパートリーに帰ってきたとともに、ハンブルク・バレエでも今シーズン久しぶりに再演が行われた。ちょうど同時期にハンブルクでも上演されていたのだが、そちらの公演を観に行った友人によると、シュツットガルトとだいぶ演出を変更していたところがあったという。具体的にはイアーゴが登場するときにはスーツを着用していたのと、スマートフォンを持って写真を撮影する場面が登場するといったところが挙げられる。

27年前の作品であるからして、少々古臭さは否めない部分がある。音楽は、シュトニケのConcerto Grosso No.1、Naná Vasconcelosによるブラジル音楽、そしてアルヴォ・ペルト(ガラでもよく上演されるパ・ド・ドゥは「鏡の中の鏡」、2幕のデスデモーナ殺害に至るまでのシーンは「タブラ・ラサ」の美しくリリカルなメロディ)。 口タブラなども使っているVasconcelosのエキゾチックな音楽は、オテロのルーツであるアフリカ的な熱気を盛り上げるとともに、オテロらの関係について噂をする人々の声をも象徴させているようだが、センスが古い印象を与える。衣装も、ルネッサンス的な美しさのあるデスデーモナやプリマヴェーラの長く柔らかい白い服は素敵なのだが、兵士たちの迷彩服などの衣装やイアーゴの黄色いシャツなどは、現代風ではあるものの古さを感じてしまう。兵士たちやイアーゴが大きな声を張り上げることで暴力性を強調する演出も、当時としては斬新だったかもしれないのだが、今としてはどうなのか。

だが、全体の構成や舞台装置の使い方の巧みさは、さすがのノイマイヤー・マジックである。特に、同時進行的に、ポリフォニックに進んでいくめくるめく展開は、見事なものだ。オーケストラピットを潰して舞台が客席に大きく張り出しているため、客席と舞台の距離が非常に近い上、客席前方の扉からダンサーが出入りするため、観客は舞台の真っただ中に自分たちがいるような感覚に襲われる。1幕では演奏は録音されたものが大部分だったが、2幕では、舞台後方のテントの上に指揮者と弦楽器の小編成が出現する。この後方のテントが、ある時は軍の司令本部、ある時はキプロスへと旅立つ帆船、またある時はデスデモーナとオテロの寝室として機能している。ダンスの種類も様々で、静かで美しいパ・ド・ドゥがあったと思えば、兵士たちによるダイナミックでアクロバィックな群舞、モダンダンス的なオテロのソロ、そしてエロティックなモブシーンまでヴァラエティに富んでいるのだが、一つ一つのシーンがばらばらな印象を与えず、統一した世界観を保ち続けていて、心理的な悲劇を盛り上げる。この作劇手法が、やがて、「ニジンスキー」など後期のノイマイヤー作品へと昇華していったのがわかる。

ヴェネチア。Nana Vasconcelosのリズミカルな音楽に乗って、叫び声をあげながら入ってくる兵士たち、舞台の淵を平均台を渡るようにバランスを取りながら歩いてくる白い服のイアーゴは美しい姿をしている。白いドレスのデスデモーナと、浅黒いオテロはお互いに引き寄せられるように出会う。彼らの分身として現れる、小花が散らされたドレスの、ボッティチェルリ的な美女プリマヴェーラと、全身を黒く塗って顔は赤く塗っている裸のワイルドな戦士。オテロも、デスデモーナも、お互いをこれらの移し身として見ている。華奢だが、強靭な身体能力を持つアリシア・アマトリアンは、イノセンスの中にエキセントリックさを隠し持っているようだ。ジェイソンのダイナミックで虎のようにしなやかな踊りには思わず目を瞠るとともに、彼の誇り高さをも感じさせる。

「鏡の中の鏡」のパ・ド・ドゥ。ガラでもおなじみのシーンだが、派手な動きはなくどこか厳かで静謐で情感が漂い、デスデモーナのまるで聖母のような、いつくしむような優しい感情があふれているのだが、同時に後の悲劇を予感させるものとなっている。ノイマイヤーは、ハンカチのモチーフを使うのがとても巧みだ。最初はオテロの腰のまわりに巻かれたハンカチがほどかれてデスデモーナの腰に巻かれる。同時にジェイソン・レイリーの気高さと野性を同居させた、セクシーな肢体に目も吸い寄せられる。ハンカチーフのモチーフはのちにもたびたび登場する。

次のシーンでは、ヴェネチアのカーニバルでの鈴を鳴らしながらの踊りで、仮面をかぶって赤いドレスを着た女装した男性が、黒い仮面をつけた男と、兵士たちとともに、官能的に、そして奔放に踊る。悪魔的で非常に色っぽいこの踊り手はのちに仮面を外し、実はイアーゴであったことが明かされる。

嫉妬でオテロに対する憎しみを増幅されるイアーゴ。天使のように美しく少年の面ざしを残したマライン・ラドマーカーが、次第に感情を高ぶらせ、脚を高く蹴り上げ、跳躍したと思ったら地を這い、地面に口づけをし、叫ぶ様子には天然の悪意が感じられ、強烈なインパクトがある。妻であるエミリアをそそのかし、オテロを陥れる謀略を進めるのだが、その際に1,2,3とオランダ語で叫ぶ。(「オテロ」では、イアーゴ役とエミリア役はそれぞれの母国語でせりふを言う。オランダ人のラドマーカーはオランダ語で、フランス系カナダ人のミリアム・サイモンはフランス語で)狂気がみなぎってくる様子は凄まじく、エミリアに対してはDVとしか思えないようなサディスティックで暴力的なアプローチを行い、ついに彼女は加担することになってしまう。自分が望む地位を手に入れられなかったからオテロを陥れたのではない、もはや理由のない憎しみがそこにはある。イアーゴの声も、少年のようにやや高い声であることが、さらに空恐ろしい。この場面の緊張感たるや、あまりにも鮮烈であり、そこで彼に取り込まれてしまうエミリアを演じるミリアムも、恐怖におののき服従してしまう受けの演技が見事である。


2幕、寝室から出てくるオテロは不安におののいている。副官キャッシオが加わっての踊り。すらっとして清潔感のある若いアレクサンダー・ジョーンズは、端正でアカデミックに跳躍し回転する。そしてイアーゴは、デスデモーナとキャッシオが不貞を働いていることをオテロに信じ込ませようとする。執拗に疑惑を吹き込むイアーゴ。彼のオテロに対する強い執着と憎悪は、もはやゆがんだ愛の発露に見えてくる。ジェイソンとマラインは背格好も近いこともあり、ユニゾンで踊る丁々発止の緊張感が凄まじい。オテロは膨れ上がった疑念のために正常な判断力を失う。彼の妄想の中では、デスデモーナとキャッシオが二人の寝室で愛を交わしている。ヴェネチアの人々が肉欲の宴を繰り広げ、プリマヴェーラも妖しく体をくねらす。エロスの女神のようなビアンカを女王のように捧げ持つ兵士たち。ハンカチーフを自分の首に巻きつけ、首を絞める真似をしてエミリアを再び脅すイアーゴ。そしてハンカチーフを証拠に、イアーゴはデスデモーナの不貞をオテロに伝える。何も知らないデスデモーナは、なぜ彼が彼女を疑っているのか分からず苦悩する。

アルヴォ・ペルトの「タブラ・ラサ」の不安感を盛り上げながらも、絶望的に美しい旋律が鳴り響く。猜疑心のとりこになったオテロが、デスデモーナと繰り広げる悲劇的な長い長いパ・ド・ドゥ。高々とデスデモーナを持ち上げて、愛と憎しみ、苦悶を表出させるオテロ。プリマヴェーラがその姿を見つめているが、やがて倒れる。そして走り回っていた黒い戦士も。ついにデスデモーナを殺してしまう。彼女の死体を前に茫然としているオテロの前にイアーゴが現れるが嘲笑しながら去っていく。一方エミリアはこの結末に混乱し、激しく心乱され悔恨の念に責められる。オテロは、ハンカチーフを自らの首に巻いて自害する。


オテロ、デスデモーナ、イアーゴ、エミリアの演技合戦、複雑に展開していく心理劇にずっと緊張感を強いられて、終わった時にはどっと疲れてしまうほどの舞台だった。特に後半は息詰まる展開となっている。中でも、ノイマイヤーはオテロとイアーゴの間のホモエロティックなまでの愛憎に焦点を当てた。強く誇り高いムーア人の将軍の中にある不安と疑念。その疑念を巧みに突き、またエミリアを支配してオテロを陥れるイアーゴ、美しい外見に潜む悪魔と、その一方でオテロに抱くゆがんだ愛。オテロとイアーゴが同等のレベルの演技者でなければ生まれない化学作用が、この舞台にはあった。アリシア・アマトリアンの透明感と儚さ、一方での天使のような奔放さ。ミリアム・サイモンの、支配されることに喜びを抱くような被虐性。役者がそろったシュツットガルト・バレエならではの舞台だった。また、粒ぞろいの男性群舞のクオリティが、この作品の持つ暴力性と官能性を増幅させていたことは言うまでもない。

こちらは、ハンブルク・バレエでの「オテロ」のトレーラー。
http://youtu.be/rlZ97I7wI44

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コメント

すてきなレポート、ありがとうございます。
こういった作品が日本で見られるのはいつの日か・・・。
主演のふたり、写真を見ているだけで「オテロ」と「デスデモーナ」ですね。
シュツットガルト・バレエ、今世界でいちばん!といっていいくらい、充実しているのではないでしょうか。
次回の来日公演が楽しみです。

ショコラ・ショーさん、こんばんは。

オテロは大昔にハンブルク・バレエの来日公演で上演されたことがあったようなんですが、最近はハンブルク・バレエも来日しなくなってしまいました…。やはり海外に行かないと見られないかな、と思って観に行ったのです。
ジェイソンは本当にはまり役でしたね~。ハンブルクでも上演されているけど、オテロ役は彼が一番合っているような気がします。アリシアも、引き出しが多い人でいつもすごいなって思います。シュツットガルト・バレエは確かにすごく今は充実していると思います!特に男性ダンサーについては。

こんにちは naomiさん

いつも楽しく読ませて頂いておりますが、今回の詳細なレポートは特に有難うございます。

私は7月に、J.Reilly、A.Amatriain、E.MaKie、S.J.Kang、D.Camargoで、"Othello"を初めて見ました。
しかし、同時進行的に各所での出来事や心理状態が踊られたり、また原作(原訳)ではあまり出てこないBiancaやLa Primavera が多く登場しエロティック表現が多かったり、またEmiliaがDV的サディスティックに描写されたりと、(原訳やオペラの"Othello"とは大分違っていて)複雑過ぎてよく解りませんでした。
今回これを読ませて頂き、「そういうことなのか」と大分内容がスッキリし、ありがたく思っております。

ところで、出演者のA.Amatriain、E.MaKieはこの後すぐに"Onegin"を踊り(bravi)、またnaomiさんがご覧になったボリショイで公演するわけで、その体力・精神力はすごいですね!!

またnaomiさんも取り上げていた、John Neumeierの「舞台後方のテントの上の小編成オーケストラ」「ハンカチのモチーフを使った踊り(鏡の中の鏡)」ですが、今月見た"Liliom""Romeo und Julia"でも同じようなものがあり,大変興味深かったです。
"Liliom"では、ピットにはオーケストラピットが普通に入り、かつ舞台後方に二階を組みそこにビックジャズバンドが入り圧倒的にスイングしてました。("Liliom""も初めてでしたがプログラムに英語でシノプシスがあったのでなんとかなりました。Hamburgは。)
"Romeo und Julia"では、ジュリエットのバスタオルを使っての登場も大変新鮮でしたが、これもハンカチの延長でしょうか。

主演はHelene Bouchetでしたが、相手はT.Bordinではなく共に若手の方でした。(怪我でもしたのでしょうか?ご存知ですか?)
この二人は以前からそのエレガントでワイルドな所が大好きだったので残念でした。(そういえば8月の”ディアナ・ヴィシニョーワ Aプロ”で「"Othello" 鏡の中の鏡」を披露していましたよね!)

John Neumeierの"Romeo und Julia"はCapulet家の三角関係が色濃く描かれていて、もうひとつの物語を観ているようで、この緊張感は大変面白かったです。
来年、東京バレエ団で公演あるようですが、主役の二人の他にこの三人も、それが無理ならせめてMercutioだけでも是非一緒に来て欲しいです。(マチネのA.Riabko、ソワレのC.Jungの共に機知にとんだ力溢れる精悍なMercutioに魅了されました。)
J.Neumeierはヴィシニョーワ公演の時に来ていましたが、この際バレエ団全体で来日公演して欲しいものです。

内容があらぬ方向へ飛んでしまって申し訳ありません。
またいろいろなレポート楽しみにしています。                     uzume

uzumeさん、こんにちは。

7月にシュツットガルトで「オテロ」をご覧になったんですね。この作品、おっしゃる通り同時多発的にいろいろなことが起きているので、1度見ただけでは全体像が把握しづらいんですよね。かなり複雑な作品ですし。おっしゃる通り、かなり暴力的なところ、性的なところもあるし。私も、この後、昔の映像(ハンブルク・バレエ、ジジ・ハイアットなど当時の初演キャストによるもの。YouTubeにも全編アップされています)を見直してみました。
7月の上演は、イアーゴ役が当初マライン・ラドマーカーの予定だったのが、病気で降板してエヴァン・マッキーに変更になったようです。

また、「リリオム」の感想もありがとうございます。こちらは、来年のハンブルク・バレエのアメリカツアーでも上演される予定なのですが、きっとアメリカ人が見てもわかりやすいのではないかという気はしました。観ていませんが、いつかは観てみたい作品です。DVD用に収録されたという話を聞いているので、発売されるとよいなと思います。ハンブルク・バレエも、バレエ団としての来日がしばらく実現していませんが、今のトップダンサーが元気なうちに来てほしいと思います。

ティアゴ・ボァディンは、10月の「オテロ」も降板していて、ケガではなく病気だと聞いています。大事でなければ良いのですが。「ロミオとジュリエット」は何年か前に、デンマーク・ロイヤル・バレエが来日公演で上演していたのを観たのですが、良い作品だったと思いました。ノイマイヤーがまだ若い時の作品だったようですよね。来年の東京バレエ団での公演、エレーヌ・ブシェとティアゴ・ボァディンがゲストで来るので、これは楽しみです。確かに、マキューシオも大きな役割を担っているし、リアブコもユングも素晴らしいダンサーなので来てくれるといいのですが。

ノイマイヤーは、ハンブルク・バレエの芸術監督の契約を2019年まで延長したので、まだしばらく活躍を続けてくれるのではないかと思います。

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