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2013/10/16

10/14 東京バレエ団「ジゼル」 The Tokyo Ballet "Giselle" with David Hallberg

2013年10月14日
「ジゼル」/東京文化会館
http://www.nbs.or.jp/stages/1310_giselle/index.html

◆主な配役◆

ジゼル:吉岡美佳
アルブレヒト:デヴィッド・ホールバーグ
ヒラリオン:柄本弾

【第1幕】

バチルド姫:高木綾
公爵:高岸直樹
ウィルフリード:森川茉央
ジゼルの母:橘静子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):
乾友子-岸本秀雄、吉川留衣-杉山優一、
川島麻実子-梅澤紘貴、河谷まりあ-入戸野伊織

ジゼルの友人(パ・ド・シス):
渡辺理恵、矢島まい、小川ふみ、伝田陽美、二瓶加奈子、政本絵美

【第2幕】

ミルタ:奈良春夏
ドゥ・ウィリ:矢島まい、川島麻実子

指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

デヴィッド・ホールバーグをゲストに迎えての「ジゼル」。ちょうど今ボリショイ・バレエで「オネーギン」を上演しているので、なんでホールバーグは出演しないのかな、と思っていたら、日本に来ていたので出演できなかったのだった。

ホールバーグの持ち味としては、なんといってもその貴公子ぶりにある。容姿もさることながら、長くて絶妙なカーヴを描く脚と綺麗に出た甲は比類のない美しさ。たたずまいひとつにも品の良さが漂い、一挙一動がエレガントで、最初から下々の者とは別格なのが伺える。貴族的な風貌から、ジゼルのことは完全に遊びだったという演じ方をすると思いきや、そうではなく、真面目な人柄が伝わってくるかのように普通にジゼルを愛している青年に見えた。難を言えば、彼の演技は全体的に薄味なので、ジゼルとの感情の交わりが、彼女の狂乱シーンになるまでは見えづらかったことくらいだろうか。しかしこれだけ美しかったら、ほぼ文句のつけようはない。サポートはそれほど上手い方ではないけれども(2幕のリフトは不安定なところも)、ソロの美しさは当代最高のうちに入り、ミルタに踊らされる時の細かいブリゼの足先の美しさや、ふわりとしたグランジュッテ、完璧なアンドゥオールとクラシックバレエの美しさを存分に見せてくれる。ヴァリエーションも、ボリショイにいる割にはそれほどマニエリズムに流れず、アカデミックで古典的な美を見せてくれた。(ボリショイでの彼の指導に当たっているのは、アレクサンドル・ヴェトロフだとのこと)百合の花束を持ってジゼルの墓参りへと歩んでいく、そのマント姿の麗しさは言うまでもない。

怪我が長引いていた吉岡さんは、今回完全に復活したようだった。彼女のジゼルは以前見たときも、その儚さと透明感に感銘を受けたのだったが、今回も、とても繊細で、向こうが透けて見えそうなほどの透明感を持った病弱で薄幸な少女に見えた。少し大人っぽくはあるけれど、とても内気で触れば壊れそうで、すぐにあの世に呼ばれてしまいそうなジゼル。年齢的に、もう観られる期間は長くないのかなと思っていたのだが、今回観る限りではまだ当分踊れそうだし、大きなミスもなかった。長く細い肢体を生かしたアラベスク、柔らかく1幕からウィリっぽい腕の使い方は彼女ならではの表現。狂乱のシーンの壊れ方はすごかった。最近は、ジゼルの狂乱のシーンは静かに壊れていって、あまり乱れることなく死んでいくことが多いのだが、吉岡さんの場合、最初は幸せだった時代を思い起こして微笑んでいたりしたものの、途中から歯止めが利かなくなって、明らかに狂ってしまって壊れた人形のようになっていって死に至るというドラマティックな演じ方をしていて、鮮烈な印象を残した。それが決して大げさではなく、愛を失った衝撃のあまり狂って死んでしまったというのがきちんと伝わってきたのはさすがだ。その彼女の壊れ方を見て、それまで理性をある程度保っていたホールバーグのアルブレヒトも動転し、どうしていいのか分からずすがりつくも追い払われる、その混乱した様子が演じられたため、ずしんと来るドラマティックなシーンに仕上がった。

東京バレエ団は、しばらく観ないうちに退団した団員がたくさん出て、舞台を観てもおなじみのダンサーが見られないのでちょっとさみしく思った。そのためか、1幕については随分と平坦な印象となってしまって盛り上がりに欠けてしまった。ヒラリオン役の柄本弾さんは長身でホールバーグと釣り合いが取れており、普通のまっすぐな若い男性として等身大の演技をしており、木村和夫さんの濃厚な名人芸には及ばないが好感が持てる役作り。一方、特筆すべきは2幕の群舞で、ウィリについては文字通り一糸乱れぬ統一されたコール・ドとなっていて見事だった。特にアラベスクで左右から交差するシーンはよく揃っていて脚が下がってしまい人もおらず、非常にハイレベルでぞっとさせらるほど。ただし、ミルタの奈良さんやドゥ・ウィリについては、これといった欠点もない代わりに、威厳はあまり感じられず印象が弱い。

二幕のパ・ド・ドゥについては、とても美しく、またホールバーグの誠実さが伝わってきて実に目の保養にはなったけれども、もう少しジゼルとアルブレヒトの間に通いあう感情が見えても良かったのではないかと感じた。だが、最後の別れのシーンは忘れ難い印象を残してくれた。アルブレヒトが助かって、ジゼルはお墓の中へと消えていく。アルブレヒトは彼女の姿をずっと目で追い、手に触れながら、ついには手が離れてしまう。その離れてしまった手の先を彼が見つめると、そこにはおそらく天へと上って行ったジゼルの魂があったのだろう。そのように、完全に死んでしまっても今なお繋がり続ける心、愛を感じさせて、美しくも感動的な幕切れだった。このエンディングが見事だったので、今回の公演はとても素晴らしいものになったと思う。今後のホールバーグの成長ぶりが楽しみとなるとともに、吉岡さんももう少し現役を続けて、また感動的な舞台を届けてほしいと願った。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。吉岡さんのジゼル見に行けなくて残念でした。
ここ1年くらいの東京バレエ団の大量退団、皆様どこに行ってしまったのでしょう・・・。

小出さんが退団した今、斎藤さん、吉岡さんに次ぐジゼルは
誰になるのでしょうね・・・。
2009年のフォーゲルのを見ましたが、水香さんはジゼル向きじゃない感じがしました。
渡辺さん、沖さんあたりが台頭してくるのでしょうか。
川島さん、二階堂さんはいずれミルタを踊るような気がします。

meiさん、こんばんは。

確かに東京バレエ団は最近退団する方が非常に多くて、かなりメンバーが入れ替わりましたね。理由は伺い知れませんが…。水香さんは本来はミルタ向きであって、ジゼルは役として合っていない気がします。

おっしゃる通り、渡辺さんなどはとてもジゼルが似合いそうですし、沖さんもいずれやるかもしれませんね。コール・ドのレベルは本当に高いカンパニーですし、みなさん容姿もプロポーションも整っていてとてもきれいなので、うまく世代交代が行われることを期待したいです。

細かいところまで全く同じ感想だったのでびっくりしました。

こんにちは。
ホールバーグと吉岡さんのジゼル、良かったですね!
naomiさんのおっしゃるとおり、ホールバーグは「容姿もさることながら、長くて絶妙なカーヴを描く脚と綺麗に出た甲は比類のない美しさ」 です。
テクニックの名称はわからないけれども、今回は足さばきの素敵さに目がいきました。
感情の表し方は控え目で、「体全体」でというより、「微妙な表情の変化」で表現していたと思いました。確かに終わりが何とも言えない余韻があり、この舞台、「観られて良かった」の決め手だったかも。
吉岡さんも私のイメージするジゼルそのもので、良かったです。ただ一幕狂乱の場面、私には少し控え目で勢いが足りないと感じたのですが、もしかしたらそれは表情をよく見たいとオペラグラスにかじりついていたからかも知れません。(三階席だったもので…)バレエを観るのって、難しい。すべてを見届けたいという欲求を持つことは、贅沢なことですかね。
ウィリの群舞はさすがの出来で、東バは外しませんね。

ashitaさん、こんにちは。

ホールバーグって、バレエを始めたのが13歳と遅かったんですよね。でもこの間、YouTubeで16歳の彼がパリオペラ座学校のオーディションを受けた時の映像を見たのですが、この時点でものすごくキレイでした。才能がある人は始めるのが遅くても頭角を現すんですね。
細かい足技はブリぜでしょうかね、足先は本当に美しいです。

オペラグラスをどれくらい使うかって悩みどころですね。今回友達に8列目の真ん中という良い席を取ってもらったので、この場面はオペラグラスなしでみました。でも使いたくなりますね。最近は控え目な人が多い感じがします。

こんにちは。ルンキナ&ホールバーグの白鳥以来、ホールバーグのファンになりました。おからがどうのこうの言っているので、息抜きに来日したのではないかと心配でしたが14日は十分に楽しめました。彼は本当に美しいですね。終末であらい息遣いが聞こえたときは、生と死の違いを実感しました。東京バレエ団の皆さん(の一部)も素晴らしかったと思います。オケも予想以上によかったです。細かいことを言い出したらきりがないですものね。ジゼルの昇天バージョンは2度目でした。個人的には土の中に戻るバージョンが好きなのですが、昇天した方が救いがあって後味が良いような気もします。ルンキナ&ホールバーグのジゼルを見てみたい気がしますが、もう無理かもしれませんね。

えりさん、こんにちは。

ホールバーグのおからツイートはなかなか面白かったですよね。私の周りではおから王子というあだ名がついたくらいです(笑)。ルンキナとホールバーグの白鳥ってことは浜松ですね!彼はすごく誠実に踊っているという印象があります。あれだけ美形なのにプレイボーイっぽくみえないし。今回の終わり方はおっしゃる通り希望が見えましたね。
演奏もよかったですよね。オフジャニコフさんの指揮が良かったのだと思います。
ルンキナとホールバーグは並びも美しくて素敵でしょうが、彼女はボリショイには戻れないかもしれませんね…。

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