バレエ・マンガ ~永遠なる美しさ~ (図録紹介)
2013年7月13日(土)~9月23日(月・祝)に京都国際マンガミュージアムにて開催中の「バレエ・マンガ ~永遠なる美しさ~」展。展覧会に行けるかどうかわからなかったので、先に図録だけ買っておきました。
http://www.kyotomm.jp/event/exh/ballet2013.php
(結局来週末に家人と京都に行くことになって、観られることになりました!嬉しい。展覧会の感想も後で書きます)
この図録ですが、非常に内容が充実していて、印刷も繊細なカラー図版が満載で大変美しいので、展覧会に行けない方にもぜひお勧めしたいです。展覧会自体は、残念ながら巡回展は行わないようなのです。
バレエ・マンガの源流(大正時代~昭和初期)
アンナ・パヴロワの来日が大正時代にあり、高畠華宵のバレエ抒情画などが描かれた。
バレエ・マンガの創世期(1950~1970年代)
この時代の少女マンガで最も人気のあったジャンルが、バレエマンガだった。1950年代にバレエマンガを描いた高橋真琴のインタビューも。彼の「のろわれたコッペリア」で初めて「トウシューズに画鋲」などが登場する。60年代には、学年誌にもバレエマンガが登場する。学年誌に連載されていた谷ゆき子の「バレエ星」では、バレエの修行のために滝に打たれる、という描写も登場。
バレエ・マンガの変革期(1970年代)
71年に山岸凉子の「アラベスク」が登場。当時スポ根マンガが人気を博していたが、より芸術性を追求し本格的なバレエを描くようになっていく。
バレエ・マンガの編成期(1970年代~現在)
深遠なドラマとしてのバレエマンガが次々と登場。そして少女向けの雑誌だけでなく、青年誌にも「昴」などのバレエマンガが連載されるようになり、バレエマンガというジャンルが広がっていく。
バレエ・マンガはどこへ行く?
バレエマンガの可能性。バレエファンである水野英子にインスピレーションを与えていくバレエ、バレエに自ら真剣に取り組んで踊っている魔夜峰央。
という構成になっています。
高橋真琴、牧美也子、上原きみ子、山岸凉子、有吉京子、萩尾望都、槇村さとるのインタビューも、それぞれが大変興味深く深い内容のものとなっています。それぞれが素晴らしい芸術家であり、バレエを本当によく理解し愛してマンガを描いてきたことが伝わってきます。山岸凉子さんのインタビューの中では、「テレプシコーラ」第三部の構想についても語られているので、期待が膨らみます。
また興味深いサブテーマとして、「バレエといじめ」「赤い靴」「白鳥の湖とバレエ」などについて掘り下げられています。さらに、「バレエのポーズを魅力的に描きたい」というところから少女マンガの技法は発達していったということ、さらに「バレリーナは努力してなれるお姫様」だったということが、バレエマンガが人気を集めた理由であるという藤本由香里さんの分析が大変興味深いです。本当に「滝に打たれて修行する」ということをやっていたバレエ団もあったそうです。(橘バレエ団(現・牧阿佐美バレエ団))
有名な少女マンガ家だけでなく、手塚治虫や楳図かずおなどの大家も、バレエマンガを書いていたことを知ることができたのも面白かったし、バレエマンガを描くための表現手法やテクニックの発展、画面構成についても分析がされています。
この展覧会の企画を京都マンガミュージアム持ち込んだ、バレエ史研究家の芳賀直子さんによる「バレエ・マンガとバレエ受容史」では、どのように日本にバレエが広がり、受け入れられ、それがマンガという表現に結びついてきたかという話も興味深いです。じつは、この「バレエ・マンガ」というのは、日本独特のもののようであり、欧州で発売されたバレエ・マンガは、ニジンスキーやアンナ・パヴロワの伝記的な内容のものしかなく、日本のようにオリジナルなストーリーで創造的に描かれたものはないという事実が面白い。欧米では、バレエという「ハイ・アート」と、マンガという「サブカルチャー」の接点がないようなのです。(「SWAN」などは海外でも人気があるようで、英語版、韓国語版などが出版されています)
巻末のバレエ・マンガと日本のバレエ受容の主なできごと年表、小学館発行の学年誌におけるバレエ・マンガ年表は資料として素晴らしいものです。
直接この展覧会とは関係ないのですが、男の子のためのバレエ雑誌「ダンシン」が創刊され、その中でスティーヴン・マックレーがマンガのキャラクターとして登場するバレエマンガ「バレエ・ヒーロー・ファンタジー ダンの冒険」の連載が始まったのは面白い動きです。青年誌にバレエマンガが連された例は上記「昴」のようにすでにあるのですが、年少の男の子向けヒーローもののバレエマンガは初めてのようですし、それを実在の海外のバレエダンサーが企画にまでタッチして描かれたというのがユニークなところです。海外からの注目も大きいようですし。そういう意味でも、「バレエマンガ」というジャンルにはまだ大きな可能性があると言えそうです。
京都国際マンガミュージアムのブログでは、展覧会の様子について写真などで紹介してくれています。
http://d.hatena.ne.jp/kyotomm/20130726/1374809090
また、この展覧会を訪れた、パリ・オペラ座バレエのカール・パケット、ヤン・サイズ、サブリナ・マレムが見学する様子も。
http://d.hatena.ne.jp/kyotomm/20130725/1374722849
読売新聞の記事
バレエ漫画の系譜に迫る パリ・オペラ座の団員も刺激
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20130902-OYT8T00463.htm
読売新聞の英語版の方がもう少し詳しい記事
http://the-japan-news.com/news/article/0000513027
![]() | バレエ・マンガ ~永遠なる美しさ~ 京都国際マンガミュージアム 太田出版 2013-07-05 売り上げランキング : 24355 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
![]() | アラベスク 完全版 第1部1 (MFコミックス) 山岸凉子 メディアファクトリー 2010-03-23 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
![]() | SWAN 白鳥 モスクワ編 1巻 有吉 京子 平凡社 2011-02-09 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
![]() | 舞姫 1―テレプシコーラ (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ) 山岸 凉子 メディアファクトリー 2001-06 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
« パリ・オペラ座バレエ「椿姫」のキャスト | トップページ | バレエCM映像いろいろ/追記 »
「バレエの本」カテゴリの記事
- 『トウシューズのすべて』富永明子著 発売されました。(2021.10.20)
- 「名作バレエ70鑑賞入門 物語とみどころがよくわかる」 渡辺真弓著(2020.10.05)
- 山本康介さん『英国バレエの世界』独占ロングインタビュー(2020.07.20)
- すべてのバレエ愛好家に捧ぐ 世界初の図鑑が11月発売!『バレエ大図鑑』(2019.10.12)
- 『吉田都 永遠のプリンシパル』(2019.08.04)



























コメント