8/9 森山開次×ひびのこづえ×川瀬浩介 「LIVE BONE」/追記(TV放映)
森山開次×ひびのこづえ×川瀬浩介「LIVE BONE」
振付・出演:森山開次 美術・衣装:ひびのこづえ 音楽:川瀬浩介
出演:美木マサオ、笠井晴子、安藤尚之、柳雄斗
8月11日(日)12時開演/17時開演
※受付開始は開演の45分前から、開場は開演の30分前
森山開次さんが、アーティストのひびのこづえさん、作曲家の川瀬浩介さんが組んだ公演。2004年から2009年までNHK教育テレビで放映された『からだであそぼ』の伝説コーナー「踊る内臓」を発展させて、全天候型で上演されてきたパフォーマンスが、劇場版となって青山スパイラルホールに登場。低いところにあるマットを敷いたような四角いステージの四方を客席がぐるりと取り囲み、一番前の席は座布団席で舞台と同じ高さ。非常に親密な空間。
http://livebone.kaijimoriyama.com/
今までうまく言葉にできなくて、森山さんの舞台はたくさん観てきたのにあまり舞台の感想を書いていなかった。でも、この作品はとーっても楽しくて観ていて思わずニコニコしちゃった。子供向けの番組「からだであそぼ」から発展しているので、もちろん子供が観てもすごく楽しいと思う。客席から笑いが絶えなかった。ダンスミーツアート&解剖学、といった感じなのだけど、生きることや、自分の体のことも考えさせる深遠なテーマと、ユーモアが絶妙にブレンドされている。
恐竜の頭蓋骨をかぶり、長い背骨を背負った森山さんが登場。ほっそりした体を白いシースルーレースのボディスーツに身を包んでいる。このレースは、血管や神経を象徴させているのかも。そんな小道具をかぶっているのに、四角くて四方を客席に囲まれた舞台の上を縦横無尽に敏捷に駆け回る森山さん。歌が楽しい。「コツ、コツ、コツ…」というリズムのような声から始まり、「ボーン」とか「ホネ」「肋骨」「肩甲骨」といった言葉がポップに飛び交って、ダンスを観ながら、全身の骨の名前を覚えることができるというありがたさ。天井からぶら下がっているオブジェ。なんだろう、と思ったらそれを森山さんが引っ張って落とす。一つ一つが内臓の形をしているのがわかる。一つ一つの内臓オブジェを着たり身につけたりして、その内蔵のテーマソングに合わせて楽しげに、しなやかに踊る森山さん。内臓オブジェを観客に渡したりと、ときには客席いじりもしながら。胆嚢は頭にかぶったり、膀胱はスカートのように履いたり、大腸は腰に巻いたり、心臓は首から下げたり。ひびのさんが制作した内臓オブジェはどれも面白い形をしているんだけど、緑色の胆嚢とか、脳とか、真っ赤な心臓は特にインパクト強し。
休憩時間のあいだも、二人の男性ダンサーが、内臓オブジェを片付けつつ、まるでコントのように舞台で動き回っていた。先ほどの森山さんと同じような白いシースルーレースのボディスーツだけど、頭まで覆われていてまるでモジモジくん。しかもひとりは太っていてお腹がタプタプ!
この男性ダンサー二人に加え、同じ衣装の男性ダンサーと女性ダンサー、そして今度は黒のシースルーレースの森山さんが、目、鼻、口という顔のパーツで遊び始める。お互いに目や鼻などを投げっこするのだからとってもシュールな光景だけど、でも間の取り方が絶妙なのでクスクス笑える。唇をこれまたスカートのように着ちゃったり、頭に鼻をはめちゃったり。太った男性ダンサーも、あの体のラインがぴったり出る衣装でお腹を揺らして踊る!
やがて、膜を象徴させる、白い大きな布がはためきながら出現し、森山さんの姿はすっかりその布に包み込まれ、男女一人ずつのダンサーによってまるでミイラのように包まれて立ったままの姿に。男性と女性のパ・ド・ドゥ。特に笠井晴子さんは、体のラインや踊りも美しく、表現力も豊かで素敵なダンサーだった。ミイラ状の布をほどいて再び出現した森山さん、今度は、血液を象徴させたのか、空気の泡や神経が入って浮かぶ生体を思わせるような巨大なオブジェを引っ張り出してきた。これがものすごく美しく、そして客席の通路を通過しなから客にも当たってしまうくらい大きい。このヴィジュアル効果が圧巻なのとともに、普通の劇場とは違ったこの会場の空間をよく考えて作られていた。
ラストは、森山さんのソロダンス。この1時間半の舞台、ほぼ出ずっぱりだったにもかかわらず、美しく跳躍したり地を這ったり、鋭くしなやかで目を奪われるような彼の動きは華麗そのもの。ほっそりとしていて、やや小柄な森山さんの圧倒的なカリスマ性。一挙一動から目が離せない。生の躍動そのものだった。このダンスは、生の讃歌なのだと感じた。というか魂に響いた。
大人から子供まで楽しめる、楽しくてアーティスティックで圧巻のパフォーマンス、まだ2公演あるので、ぜひご覧ください。特に小学生は安い料金で楽しめるし、学校の自由研究の題材にもなるかもしれない。
◆料金:
SS席(最前列桟敷席)一般:前売6000円 当日6500円 小学生:前売当日2000円
S席(椅子席)一般:前売5500円 当日6000円 小学生:前売当日1500円
◆当日券:
各回開演の45分前からスパイラルホール受付にて販売
追記:9月27日(金)23:30~日本テレビ「未来シアター」にて、森山開次xひびのこづえ「LIVE BONE劇場版」上演までのドキュメントを放映するとのことで、告知が会場でありました。
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コメント
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今回観にいけなかったので、感想を読むことが出来て嬉しいです。森山さんも大貫さんのように20歳超えてからダンスを始めたんですよね。とても信じられないくらい驚異的な身体能力!きっとすごい努力なさったのだと思います。そうそう、以前BSでやってた「曼荼羅の宇宙」というドキュメンタリーでの、禅寺へ向う山登りの映像、剣呑な山道をひょいひょい登っていく森山さんを見て、母と2人で「ダンサーってすごいね」と感心したのを思い出しました。
丁度今日(8月12日月曜日)、静岡新聞の夕刊のコラム「窓辺」の執筆がひびのさんで、この舞台の衣装についても触れていたので興味深く読むことが出来ました。(残念ながら、ネット上ではまだ今日の窓辺の記事は載ってないみたいです)
この演目、是非声援して欲しいですね!
投稿: おロシア人 | 2013/08/12 17:47
おロシア人さん、こんにちは。
お久しぶりです!前田バレエの公演の感想を興味深く拝読しました~。サニーちゃんとマイレンの活躍ぶりがわかって嬉しかったです。
そうそう、森山さんもダンスを始められたのが遅くて、音楽座ミュージカルが発端だったんですよね。音楽座好きだったので懐かしい~(今もあるけど)ほんと、始められたのが遅いのに、ものすごい表現力で驚かされます。私も曼荼羅の宇宙のドキュメンタリーを見ました!今回の発見としては、意外と森山さんって小柄だったんだってことです。ひびのさんの衣装もキュートでした!
そうそう、書き忘れたのですが、テレビ番組を放映するんですよ。9月27日(金)23:30~日本テレビ「未来シアター」にて、森山開次xひびのこづえ「LIVE BONE劇場版」上演までのドキュメントを放映するそうなんです。静岡でも見られるんじゃないかしら?
投稿: naomi | 2013/08/12 22:44