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2013/08/24

8/22 「ディアナ・ヴィシニョーワ -華麗なる世界-」Bプロ The World of Diana Vishneva

プロローグ

基本的にはAプロと同じなのだけど、出演者が増えたので構成が少し変更に(そして一演目目に出演するエイマン、ユレルは登場せず)。真ん中に照らし出されたスポットライトに浮かび上がるヴィシニョーワ。彼女を中心に、トリオ、デュオと出演者たちがコンテンポラリー風味のパ・ド・ドゥを繰り広げたり、離散し集合する。逆光やスポットライトを巧みに使った照明の使い方が効果的でとてもスタイリッシュ。


「ドリーブ組曲」Delibes Suite
振付:ジョゼ・マルティネス 音楽:レオ・ドリーブ
メラニー・ユレル、マチアス・エイマン Melanie Hurel, Mathias Heymann

実はAプロの「コッペリア」と半分以上同じ音楽を使っているのだけど、振付はだいぶ違って、相当技巧的。逆向きマネージュをマチアスはきっかりこなしていたし、冒頭のものすごく高い跳躍、そして美しい足先とテクニック披露だけではない、エレガンスが備わっている。ピレット・ア・ラ・スゴンドで男性がスポッティング(顔のつけ方)を角度をずらして回転しているのは初めて観た。マチアスは怪我で観ないうちに随分と大人の男性へと成長したようで、身体に厚みが出てきたし、脚も長くてプロポーションが美しく成長し、かっこよくなっていた。女性の踊りも相当難しくて、足を替えてのフェアテや、方向転換のあるピケターンなどてんこ盛りなのだが、相当きっちり踊らないと、なんだかモタモタしてしまう。残念ながらユレルは少し不調だったようで、かなりもたついてしまっていた。

 
「レダと白鳥」Leda and the Swan
振付:ローラン・プティ 音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ
上野水香、イーゴリ・コルプ Mizuka Ueno, Igor Kolb

この興行主でプティ作品を上演するようになったのは最近のこと。それもすべて上野さん…。もう一演目「チーク・トゥ・チーク」もプティだし。ヴィシニョーワのガラには合わないのでは。個人的に、ヴィシニョーワとコールプが組んだ時に魅せる、個性の強い者同士ならではのケミストリーが好きなので、もっとこの二人が共演したところを観たかった。さて、イーゴリ・コールプにはこの役は大変よく似合っている。彼の動物的なまでにしなやかな腕の使い方、独特の妖しさ、空気感の作り出し方がなんとも魅力的で惑わされる。上野さんは、前髪を下ろしたヘアスタイルが子供っぽく見えて、この役柄には合わない。


「タランテラ」Tarantella
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク
アシュレイ・ボーダー、ホアキン・デ・ルース Ashley Bouder, Joaquin De Luz

このガラで一躍評価が上がったのは、このペアではないだろうか。「タランテラ」はこの1年ちょっとで観るのは3回目なのだが、さすがバランシンのカンパニーの二人、音楽性が抜きん出ている。一つ一つの音にきっちりと合わせた踊りは気持ち良い。デ・ルースの跳躍はダイナミックで、やんちゃでユーモラスなところを見せながら、小柄な体からあっと言わせるような跳躍を見せてくれる。タンバリンの音もバシっと合っていて小気味よい。ボーダーも音への合わせ方が完璧で、チャーミングで余裕綽々。本家ならではのプライドを見せてもらった。


「精霊の踊り」Dance of the Blessed Spirits
振付:フレデリック・アシュトン 音楽:クリストフ・ヴィリバルト・グルック
デヴィッド・ホールバーグ David Hallberg

アシュトンがアンソニー・ダウエルのために振り付け、そのダウエルにホールバーグが指導されたというソロ。グルックの「オルフェオとエウリディーチェ」の中のフルートのメロディアスな音楽。幕が開くと暗い舞台の上の台に、まるで彫刻のようなホールバーグが立っている。上半身裸に白いタイツ姿の彼は、ギリシャ神話に出てくる神のような姿。美しいつま先を駆使したバットゥリー、背中のやわらかさが発揮されたアラベスクやソテ。しかしもっとも特徴的なのは、まるで翼のように交互にはためかせる腕の使い方だろう。横を向いて脚を伸ばし座るところは、「アポロ」を彷彿させる。ここので神々しいホールバーグの存在感は人間を超越している。コールプに続いて今日2番目の人ならざる存在。


「真夏の夜の夢」A Midsummer Night's Dream
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フェリックス・メンデルスゾーン
エレーヌ・ブシェ、ティアゴ・ボァディン 
Héléne Bouchet, Thiago Bordin

この作品は全幕を観ていないのだけど、結婚式のシーンのようで、ブシェ、ボァディンとも純白の衣装、ブシェは丈の長めのデコラティブなドレスで、Aプロで生やしていた髭をさっぱりと剃ったボァディンはフロックコートで王子様のよう。振付はノイマイヤーにしてはとてもクラシカルで、男性のクラシック・テクニックの見せ場もふんだんにある。ボァディンがクラシックもこんなにきっちりと踊ることができるのは発見。個人的に、身体を低くしたりフレックスの足先を多用しているノイマイヤーの振付が苦手なので、こういう作品なら観ていて苦にならないし、音楽的な動きで目に快い。ぜひ全幕を観て見たいと思った。


「カルメン」Carmen
振付:アルベルト・アロンソ 音楽:ジョルジュ・ビゼー/ロディオン・シチェドリン
ディアナ・ヴィシニョーワ、マルセロ・ゴメス、イーゴリ・コルプ
後藤晴雄、奈良春夏、東京バレエ団
Diana Vishneva, Marcelo Gomes, Igor Kolb
The Tokyo Ballet

ガラ仕様に若干短縮したようで、アロンソ版「カルメン」の私の苦手なパートが省略されていたのは良かった。あでやかでエキセントリックで獰猛で不遜なカルメンは、ヴィシニョーワにとってはこれ以上のはまり役はないと思われる位鮮烈で、カルメンの魂が取り憑いたような一挙一動に惚れ惚れした。真っ赤で、ところどころ透けるミニドレスに脚を大股に開いてポワントで立ちはだかる姿がここまで様になるとは。ズバッと突き刺さるポワント、グランド・スゴンドで天井に突き刺さる足先。マルセロのホセは純情で、とにかくカルメン一直線。いつでも従順にカルメンに従う。最後にカルメンを刺し殺してしまう時ですら、彼女を抱き寄せる優しさにはぐっと来た。ボリショイ仕様のてんとう虫のような衣装はさすがに着ていなかった!カルメンを高々と掲げるリフトは実に見事だったし、彼女を狂おしいほど崇拝しているのがよく伝わってくる。コールプのエスカミーリョは、とことんすかしていて、振り切れるほどいかしていた。特に彼が跳躍しながら闘牛の身振りをするところの切れ味にはしびれた。鮮烈。やはりヴィシニョーワに対抗するにはこれくらいかぶいてくれないと。運命役の奈良さんも、全身タイツが細身の体にぴったりしていて、ラインも綺麗だしいい動きをしていた。これは役者が揃った見事なパフォーマンスだが、やはりヴィシニョーワという強烈なバレリーナの、鮮やかで強い生命力が鍵だった。


「眠れる森の美女」より 第3幕のパ・ド・ドゥ The Sleeping Beauty
振付:ルドルフ・ヌレエフ/マリウス・プティパ 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
メラニー・ユレル、マチアス・エイマン Melanie Hurel, Mathias Heymann

マチアス、踊りそのものは王子らしく素晴らしいのだけど、踊っている最中ニコリともせずに終始浮かない表情だったのがとても気になった。ソロはのびのびしていて美しく、特にクペ・ジュテ・アンレールのマネージュには高さがあったし、伸びたつま先もきれいでオペラ座ならではの優雅さはあったのだけど、パ・ド・ドゥではややぎくしゃくしていた印象があって、パートナーシップは今ひとつ。ユレルはやはり不調のようだったが、不調ながらもきっちりまとめるところはさすが。


「チーク・トゥ・チーク」 Cheek to Cheek
振付:ローラン・プティ 音楽:アーヴィング・バーリン
上野水香、ルイジ・ボニーノ
Mizuka Ueno, Luigi Bonino

繰り返しになるけど、なぜヴィシニョーワのガラにこの演目を入れなければならなかったのかが不思議だった。プティはヴィシニョーワとさほど縁のある振付家ではなかったし。Bプロは終演時間が10時半近くとなり、電車の都合で途中で退席する人の姿も散見された。少し演目を減らしたほうが良かったのでは。「チーク・トゥ・チーク」は、同じルイジ・ボニーノと、草刈民代が踊るのを観たことがあるのだが、プティと密接なつながりがあった草刈さんの方がエスプリと大人の魅力があって素敵だったと思う。上野さんは、ヒールの靴で踊るのに慣れていないようで、前日は靴が脱げてしまったとのことだし、この日も踊りにくそうだった。また、致命的に音感が悪いのも災いしている。ボニーノは、60歳を過ぎている年齢を思えば驚異的によく動いていて軽快で魅力があり、彼を観ている分には楽しい。


「ナウ・アンド・ゼン」Now and Then
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:モーリス・ラヴェル
エレーヌ・ブシェ、ティアゴ・ボァディン Héléne Bouchet, Thiago Bordin

レスリングのグレコローマン、って感じの赤いレオタードのボァディンの衣装に一瞬引いた。ブシェはユニタードを着ると驚異的に脚が長く美脚なのがわかるけど(何しろ、カーテンコールで並んだらボァディンと脚の長さが同じ)、その分、胴が短いこともあってウェストが太く感じられた。と、衣装には疑問点があるものの、ラヴェルのピアノ協奏曲に振りつけられたこの作品は、プロットレスながらもドラマティックで複雑なパートナーリング、高度なリフトもあって魅力的だった。特に後半にかけても息もつかせぬ盛り上がりには目が吸い寄せられたし、ブシェの長いだけでなく物語を語っているような脚からも目が離せなかった。


「パリの炎」 The Flames of Paris
振付:ワシリー・ワイノーネン 音楽:ボリス・アサフィエフ
アシュレイ・ボーダー、ホアキン・デ・ルース
Ashley Bouder, Joaquin De Luz

「パリの炎」はポピュラーなガラ演目で、超絶技巧を披露したパフォーマンスは今までも数多く観ているが、ここでは正統派ながらも高いテクニックに裏付けられた演技を観ることができた。Aプロの「ドン・キホーテ」を怪我で降板し、しかもベテランのホアキン・デ・ルースだが、深いプリエからの爆発的な跳躍は、小細工なしだがダイナミックかつ正確なもの。コーダの斜めになりながらきりもみ状態でトゥール・アンレールを見せて綺麗に着地するのは、正しい技術がなければ決してできないもの。そしてアシュレイ・ボーダーは、男性ダンサーの専売特許であるはずのトゥール・アンレール(空中2回転)を見せてくれるし、ダブルを織り交ぜたグラン・フェッテも安定感抜群、しかも音に見事に寄り添っていて、テクニシャンぶりを見せてくれた。NYCBのダンサーといえども、バランシン作品だけでなく、クラシックをアカデミックに踊ることができることを証明した。


「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ Die Kameliendame
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
ディアナ・ヴィシニョーワ、マルセロ・ゴメス Diana Vishneva, Marcelo Gomes
ピアノ演奏:菊池洋子 Pianist: Yoko Kikuchi

ヴィシニョーワのマルグリットは、病身を押してアルマンの元を訪ねていくのだが、私は病気でこんなにも死にそうなの、と猛烈にアピールしているようだった。余命幾ばくもないのに来てあげたのよ、と叫んでいるかのよう。彼女は強靭な身体能力の持ち主なので、身体は実によく動いているのだが、あまりにも身体が雄弁すぎて、感情表現が大げさなように感じられた。濃厚な表現力を持っているのだが、それが独りよがりで、自己完結をしてしまっていて、悲劇のヒロインである自分に酔っているように見受けられたのだ。マルセロのアルマンは、そんな中でもマルグリットに一途な愛を捧げていて、そのひたむきさには心を打たれた。マルグリットの外套の匂いを愛おしそうに嗅いだり、逆に怒りを露に投げ捨てたりするアルマン役が多い中、当初の彼は少し淡白なようだったが、一片の憎しみも葛藤もなく、どんどん彼女への気持ちは熱くなり、燃え上がっていく。マルセロのリフトの見事さは特筆ものであり、彼の信頼できるサポートゆえ、ヴィシニョーワはますます思い切りの良いポーズを取っていきそれは鮮烈な形を描くのだが、それでも彼女のアルマンへの想いは伝わってこず、彼の、まるで飼い犬のように忠実な姿は切なく感じられた。二人とも踊りとしては見事なパフォーマンスだったし、最後の倒れ込むところで荒い息遣いが聞こえて、全身全霊を傾けて踊りきったことが感じられたものの、これは、少なくともノイマイヤーの「椿姫」ではない、と感じてしまった。菊池洋子さんによるピアノの演奏は、とてもレベルが高く、音楽だけ聴いても満足できたに違いない。

エンディング
Aプロとほぼ同じだったが、メンバーが増えたために少々変更となったところも。アルゼンチン・タンゴ、バンドネオンの音に乗せて、女性ダンサーたち、男性ダンサーたちが登場し、そしてペアごとに短いパ・ド・ドゥを見せてくれる。ソロを踊ったホールバーグは、美しいグランジュッテ。ルイジ・ボニーノが出てこない、と思ったら最後にタキシード姿で颯爽と登場。女性ダンサーたちは私物と思われるレオタード、男性ダンサーたちはTシャツにタイツやショートパンツ、ジャージなどカジュアルめだったので、ボニーノがやけにかっこよく感じられた。マルセロ・ゴメスのこのオープニングとエンディングを加えて統一感を作るのはとても良いアイディアだと感じた。

Bプロも大変充実した内容。中でも、やはり真ん中に上演された「カルメン」で、艶やかに、大胆に、まばゆい輝きを放つヴィシニョーワの魅力を堪能できたのが良かった。一つ一つの作品もクオリティが高く楽しめて、ダンサーのレベルも一部を除いて粒ぞろいだったので、今後もぜひ続けて欲しい企画である。できれば、ヴィシニョーワとコールプの組み合わせをもっと観たい。

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