パリ・オペラ座バレエ「マーラー交響曲3番」(映画館上映)/追記(続映のお知らせ)
Troisième Symphonie de Gustav Mahler
「パリ・オペラ座へようこそ」のライブビューイングで、パリ・オペラ座バレエの「マーラー交響曲3番」(ジョン・ノイマイヤー振付)を観てきた。
http://www.opera-yokoso.com/program/index.html#p05
2013年4月18日(バスティーユ)
作曲 グスタフ・マーラー
振付 ジョン・ノイマイヤー
指揮 サイモン・ヒューヴェット
ジョン・ノイマイヤーは、この作品は振付家としてだけでなく、自分の人生の中でも非常に重要な位置を占めていると語っている。そもそもは、ジョン・クランコが急死した時に、彼の追悼のために何かを作って欲しいと依頼され、マーラーの交響曲3番の第4楽章が相応しいと考えたところから始まった。交響曲全体を聴いた時に、この作品を創りたいという願いが生まれたとのこと。この作品はストーリーはなく、音楽から呼び起こされた感情を基に創っている。まだ彼が振付家としての仕事を始めたばかりの頃で、大変苦労したとのこと。(1975年7月初演)
この作品は、実際に第4楽章がクランコの追悼式にて踊られ、マリシア・ハイデ、リチャード・クラガン、エゴン・マドセンというシュツットガルト・バレエの3人のスターのために創られた。作品の解説にも、クランコと彼のカンパニーに捧ぐ、とある。ノイマイヤーは、これらの3人のダンサーが、偉大な振付家であり芸術監督であったジョン・クランコを突然失い、死について思いめぐらし、そしてダンス自体を捨てようとも考えたけれども、再び力を合わせて作品を踊り続けるということを想像して創ったとのこと。
作品全体を通じて、カンパニーそのものが軸となるべきであり、特に主役というものは決めないことにした、しかし第4楽章だけは、3人のソリストを置くことにして、彼らにカンパニーを象徴させることにし、作品の中でも特別な瞬間としている。
本編が始まる前に、芸術監督のブリジット・ルフェーヴルがノイマイヤーにインタビューし、またリハーサルの様子も映し出された。ノイマイヤーは、上記にある通りの作品を振りつけた経緯を語るとともに、振付ける前には色々と下調べはしたものの、スタジオ入りした時にはそれらのことはすべて一旦忘れて、音楽を聴いて経験した感覚と提示されたイメージを元に、スタジオでダンサーと接するうちに作り上げていったと語った。カール・パケット、エレオノラ・アッバニャートのインタビューも。
第一楽章「昨日」 カール・パケット、マチアス・エイマン
主人公「男」は、カール・パケット。行進曲風の音楽に合わせての、大勢の男性ダンサーたちによる立体的な群舞。とても迫力があるけど、振付自体は組体操みたいで少し古臭く、あまり惹かれない。原初的な感じで、ちょっとベジャール風なイメージ。だが、マチアス・エイマンのソロは苦悩を表現しつつも力に満ちており、高い精神性をも感じさせるもので、魅力的だった。
第二楽章「夏」 メラニー・ユレル、ノルウェン・ダニエル、アレッシオ・カルボーネ、クリストフ・デュケンヌ
カールのところに、一人の女性、ノルウェン・ダニエルが入ってきて踊り始めると、群舞の女性たちも入ってくる。やがて彼女は、デュケンヌと踊リ始める。ユレル&カルボーネ、ダニエル&デュケンヌのふた組の男女によるパ・ド・ドゥを中心に展開する。4人とも派手なダンサーではないけど、テクニック的にはとても優れており、音楽をよく感じて踊っていた。青い背景の前で展開される、光に満ちて夏らしい、爽やかで生き生きとした場面。
第三楽章「秋」 ローラ・エケ、フロリアン・マニュネ、マチルド・フルステ、オーレリア・ベレ 他
こちらはかなり多くのダンサーが赤い衣装に身を包んで出演しているのだけど、中でも、フロリアン・、マニュネと踊るローラ・エケの美しいスタイルと長い脚による表現力が目を引いた。マチルド・フルステの存在感は鮮烈。
第四楽章「夜」 エレオノラ・アッバニャート、カール・パケット、ステファン・ビュリヨン
ニーチェの詩をもとにしている、クランコ追悼のシーン。暗い舞台の上、女性の歌声に乗せての3人の男女によるパ・ド・トロワ。エレオノラが振り向いたところから始まる。彼女の強い眼差しが印象的。冒頭のインタビューでも、ルフェーブルは彼女のことを「強いダンサー」と語っていたけど、白いレオタード一枚で女らしい外見の彼女から、芯の強さが伝わってきたし、ごまかしのきかないこの作品での表現力の鮮やかさを感じる。
第五楽章「天使」 イザベル・シアラヴォラ
女性歌手の声と共に、児童合唱が入る。赤いユニタード姿のイザベル・シアラヴォラが、眩しい笑顔で軽やかに踊っていて、まさに天使そのもの、天真爛漫で愛らしく輝きに満ちている。彼女の脚の長いことと言ったら。その分胴が短いので意外とウェストが太いことを発見してしまったけど、それでも、ユニタード姿でも雄弁に語りかける脚は素晴らしい。
第六楽章「愛が私に語ること」 イザベル・シアラヴォラ、カール・パケット、群舞
天使と「男」とのパ・ド・ドゥから始まる。このパ・ド・ドゥの美しいことといったら、もう。物語を排した作品ではあるけれども、まさに「愛が私に語ること」というタイトルがふさわしい。この二人が表現しているのは、「愛」を置いてほかはないだろう。音楽とともに圧倒的な美しさが押し寄せてきて、特にイザベル・シアラヴォラの慈愛に満ちた姿には思わずじわ~っと涙が溢れてきた。やがて50人もの大群舞が集まっていき、男性ダンサーがそれぞれ女性ダンサーをリフトしての圧倒的な高揚感のあるクライマックスへ。歩き去っていく天使。そして背中を向けたカールの後ろ姿に、人生の重みを感じた。
パリ管弦楽団による演奏も圧倒的に素晴らしく、大画面で観ることができて良かった作品。人間の様々な感情、愛、苦しみ、悲しみ、喜びなどがさまざまなところで溢れ出し、ダンサー一人ひとりの個性が感じられる。ずっと出ずっぱりのカール・パケットは、個性の強いダンサーではないが、それでも彼の人生の旅を表すような重みを感じさせるエモーションがあった。きっと主演する人によって、全く違った作品に感じられる作品なのだろう。ぜひDVDも発売して欲しいと思う。
Gustav Mahler's Third Symphony : Ballet de l'Opéra de Paris (初演時の映像なので出演者は異なります)
http://youtu.be/jbsDy7f2NN0
HAMBURG BALLETT - Dritte Sinfonie von Gustav Mahler
http://youtu.be/RTE37j-xwwo
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追記:Bunkamuraル・シネマにて『マーラー交響曲第3番』の再映が決定したとのことです。
◆「マーラー交響曲第3番」
上映期間:8/24(土)~8/30(金)
連日…16:45 (1日1回上映)
http://www.bunkamura.co.jp/cinema/
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再上映の情報、ありがとうございます。
ベジャール風のイメージ、というのは私も少し感じました。
ずいぶん前のことですが、パリ・オペラ座バレエ団の来日公演でベジャール振付の「第九」を見たことがあるのですが、この作品をみたときに、そのときの印象がちらりと思い浮かびました。
投稿: めめぺんぎん | 2013/08/17 21:49
めめぺんぎんさん、こんにちは。
ハンブルクでこの作品を見ている方たちからは、この映像の評価は厳しいようなのですが、私は観ていないだけに、パリオペも頑張るじゃん、と思ったのでした。再上映もできれば行ってみたいと思いました。
ベジャールの第九は観ていないのですが、来年東京バレエ団がBBLと合同で上演するようなんですよね。生で見たらきっとすごい迫力で圧倒されたのではないかと思います。
投稿: naomi | 2013/08/19 01:36