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« シュツットガルト・バレエの2013/14シーズン | トップページ | ロイヤル・バレエとENBのダンサーの映像をiTunesでリリース/追記 »

2013/06/07

5/30 パリ・オペラ座バレエ 「天井桟敷の人々」Paris Opera Ballet "Les Enfants du Paradis"

http://www.tbs.co.jp/event/parisopera2013/

音楽:マルク・オリヴィエ・デュパン Marc-Olivier Dupin
振付:ジョゼ・マルティネス Jose Martinez
美術:エツィオ・トフォルッティ Ezio Toffolutti
衣装:アニエス・ルテステュ Agnes Letestu
照明:アンドレ・ディオ Andre Diot
指揮:ジャン・フランソワ・ヴェルディエ Jean-Francois Verdier
管弦楽:シアター・オーケストラ・トーキョー

キャスト

ガランス:イザベル・シアラヴォラ Isabelle Ciaravola
バチスト:マチュー・ガニオ Mathieu Ganio
フレデリック・ルメートル:カール・パケット Karl Paquette
ラスネール:バンジャマン・ペッシュ Benjamin Pech
ナタリー: レティシア・プジョル Laetitia Pujol
エルミーヌ夫人: カロリーヌ・バンス Caroline Bance
モントレー伯爵:クリストフ・デュケンヌ Christophe Duquenne
バレリーナ:オーレリア・ベレ Aurelia Bellet
デズデモーナ:シャルロット・ランソン Charlotte Ranson

マルセル・カルネ監督の映画を元にジョゼ・マルティネスが振り付けた「天井桟敷の人々」。パリで観た友人はあまり面白くなかったと言っていたし、NHKで放映された録画も観たけど、それほど惹かれなかった。チケット代が高かったので、1公演しか取らなかったし。ところが、さすがパリ・オペラ座バレエ人気は凄いということで、イザベルとマチュー主演日はチケットはソールドアウトで当日券もほとんど出なかったという。そして映像と生の舞台は別物ということで、実際に観たら大変楽しめて、もっとチケットを買えば良かったと思うほどだった。

開演前には、大道芸を披露するダンサーと、白塗りのダンサーが、ドラムの演奏に合わせて場内を盛り上げてくれると、気分はちょっとガルニエな感じ、舞台となる犯罪大通りにいたような気持ちになる。休憩時間には、「オテロ」の舞台を告知するチラシが天井から降ってきた。そして幕間には、クローク前の階段を使って、フレデリック・ルメートル(カール・パケット)扮するオテロと、シャルロット・ランソンが演じるデスデモーナのクライマックスがドラマティックに演じられるというのが心憎い。滑りそうな狭い階段で、美男美女が大熱演を繰り広げられてくれたのはまさに眼福。これを観る私たち観客も、まさに「天井桟敷の人々」として、彼らの姿を見守り、舞台に参加している気持ちになる。

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また、ロビーでは、白い仮面をつけた黒子さんたちが、2幕冒頭の舞台「ロベール・マケール」の告知の看板を持って、休憩時間が終わりそうになると客席に戻るようにと身振り手振りをしてくれるのも雰囲気を盛り上げてくれた。

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休憩時間中に席に戻ったら、舞台の上ではレッスンが行われていた。しかも指導をするのはジョゼ・マルティネス。このレッスンの演奏がいつの間にかピアノからオーケストラになったところで、「ロベール・マケール」の舞台へと移行していく展開はとても巧みだ。


作品としての「天井桟敷の人々」は、長大な映画の筋を追うことが中心になっていて、映画に忠実でありすぎるがゆえの段取りぽいところがあり、少し退屈なシーンがないわけではなかった。劇中劇のシーンが多すぎるようにも感じられた。しかし、冒頭の「犯罪大通り」のシーンの舞台上の再現はうまくいっていて、舞台に乗っている一人一人がそれぞれのキャラクターを持っており(キャスト表は細かく書かれており、モブシーンの登場人物それぞれに役名がついている)、きちんと演技して街の喧騒を表現していた。その中で佇む白塗りのパントマイム役者のバチスト。スリの疑いをかけられたガランスの窮地を救うためのバチスト(マチュー・ガニオ)のマイムが実に雄弁で、彼がパントマイム役者であるということに説得力があった。作品を通して、”舞台”といものに対する惜しみない愛情が伝わってくる。

この作品の最大の魅力は、ガランス役のイザベル・シアラヴォラだ。映画でこの役を演じたアルレッティに似た面差しの彼女に当て振りされただけのことはある。「恋なんて簡単よ」と言いながらも、バチストに惹かれ、でも一歩を踏み出すことのできないファム・ファタルの揺れる心情。恋愛遍歴を重ねていく彼女の、華やかな美貌の裏に隠された寂しさ。何よりも雄弁に語る、驚異的な美脚と優雅なカーヴを描くつま先。圧倒的にグラマラスでありながら、一人の生身の女性を感じさせるイザベルの女優魂を見た。2幕で彼女の窮地を救った伯爵に囲われ、籠の鳥となった彼女の生気のない表情、バチストとの再会によって人生を取り戻したかのように見えたものの、彼の妻ナタリーと鉢合わせたことで、決意を込めて静かに去っていくところまで、この役を生きていた。ガランスが街の喧騒の中に消えていった映画をなぞるように、客席の中へ歩き去っていく演出も効果的。テレビ放映では、ガランスはバチストと顔を合わせることなく去っていくのに、この舞台では、ガランスとバチストがオーケストラピットをはさんで対峙し、見つめ合ってから彼女が去っていったように見えたのだが、これは演出の変更だったのだろうか。私の席が1階サイド右側だったため、2幕での劇場のボックス席に座っている設定のガランスの姿が見られなかったのは残念。

心優しく、イノセントで純情なバチストを演じたマチュー・ガニオも好演。中でも、ようやく二人で初めて夜を共にした時の、苦悩の混じったソロはとても美しかった。ここをコンテンポラリー風味の踊りに仕上げたジョゼ・マルティネスの功績も大きい。クライマックスのパ・ド・ドゥも美しかった。涙ぐみながら、街の人々の中へと紛れ去っていくガランスを見つめる瞳の演技も見事。

泥棒ラスネール役のバンジャマン・ペッシュは胡散臭さを炸裂させて芸達者さを見せ、伯爵の舞踏会で見せたソロはシャープで喝采を浴びた。ガランスを囲いながらも想いが通じない伯爵を演じたクリストフ・デュケンヌの包容力とせつなさ。夫バチストがガランスと一緒にいるところを見てしまい、1幕の純真さとは打って変わって厳しい表情を見せるナタリー役のレティシア・プジョル。幕間の「オテロ」だけでなく、「ロベール・マケール」で踊り担当として大車輪の活躍を見せたカール・パケットは、憎めないプレイボーイのフレデリック・ルメートルがはまっていた。こうやってみると、エトワールを大勢投入した大変豪華なキャストである。

劇中劇というか、劇中バレエ「ロベール・マルケル」は、アニエス・ルテステュがデザインした、新聞紙をモチーフにしたチュチュがとてもファッショナブルだ。古典をベースにしたプロットレスの華やかな作品で、群舞が揃っていないのはご愛嬌。メーンのバレリーナ役を踊ったオーレリア・ベレはきちっとした古典のテクニックを見せてくれた。また、フロリモン・ロリュー、オーレリアン・ユッテ、グレゴリー・ドミニャックらしっかりした技術を持った男性ダンサーたちの見せ場もあって楽しい。作品の構成として、このような踊り中心のシーンを入れたのは、良いアクセントとなっていた。

このように、大変楽しめた舞台であったが、この作品の最大の魅力だったイザベル・シアラヴォラ、そして私は観られなかったが別キャストでガランス役を演じたアニエス・ルテステュが来シーズンは引退してしまうため、今後の上演はどうなっていくのかが少々気がかりである。バンジャマン・ペッシュ、クリストフ・デュケンヌも引退までの時間はさほど長くない。彼等に代われるエトワールやプルミエを育てていくことが、今後のパリ・オペラ座バレエの大きな課題だろう。いつか、ガルニエでこの作品を観ることができれば良いと思うのだが。

加えて、ノスタルジックさを感じさせる音楽もとても素敵だった。シアター・オーケストラ・トーキョーも好演し、またヴァイオリニスト、ピアニスト、コントラバス、コロネット、アコーディオン、パーカッション奏者を現地から連れてきたのも功を奏した。

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コメント

私は5月31日のアニエスとステファンを観てきました。
大人の魅力満開のアニエスはとても美しかったのですが、ステファンはバチストにしてはたくましすぎるような・・・。ちょっと無表情に見えるところもあり、この役はやっぱりマチューで見たかったなあというのが正直な感想です。
それにしても、カール・パケット大活躍ですよね。パリでの「ドン・キホーテ」も出ずっぱりだったし。
また、ジョゼの変わらぬ姿を見ることができたのもうれしかったです。
ここ数年で、「ヌレエフ世代」と呼ばれたダンサーがみんな引退してしまいます。
この後を担うのはだれなんでしょうか。個人的にはマチアス・エイマンくらいかなと思ってますが。
でも、女性ダンサーは・・・。正直ファンとしては不安です。

ショコラ・ショーさん、こんばんは。

アニエス&ステファンの日をご覧になったんですね!きっとアニエスも素敵だったでしょうね~観たかったな。このお値段だと、2回観るのはちょっと躊躇しますよね。実は6月1日の夜公演、当日券並んでみたのですが、S席しか残っていなくて、S席は買えないわと思って諦めたのです。

カールは本当に頼りがいがありますよね。彼は本当にタフで頑張っていますね。オテロの彼、鼻血が出るほど素敵でした。そしてジョゼも相変わらず優雅でしたね。

そうなんです、ヌレエフの子供たち世代が引退してしまうので、けっこうオペラ座ピンチです。マチアスはもちろん素晴らしいしこれから引っ張っていく存在になると思うけど、たしかに女性は…。プルミエ以下もちょっといまいちなんですよね。男子の方がもう少し有望な人が出てくるかなと思っているんだけど。

バレエ「天井桟敷の人々」POB
下記ご参考までに:

https://www.youtube.com/watch?v=uSsLAxIuPuQ

ハイパーリンクができないのでコピペでどうぞ。


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