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2013年6月

2013/06/21

ボリショイ・バレエ2013/14シーズン

ボリショイ・バレエの来シーズンが発表されていました。

http://www.bolshoi.ru/r/6D5270C4-3317-476D-99FD-954604FE7251/238_season.pdf (ロシア語)

カンパニー初演はノイマイヤーの「椿姫」、ラコットの「マルコ・スパーダ」、そして世界初演の新作として、ジャン・クリストフ・マイヨー振り付けの「じゃじゃ馬ならし」を上演します。リバイバルはグリゴローヴィッチの「黄金時代」。

また、ツアーは、今年11月にシンガポール(「白鳥の湖」)、来年1月のパリ(ラトマンスキー「Lost Illusions(幻滅)」、5月のワシントン・ケネディセンター「ジゼル」のほか、7月にニューヨーク公演(「スパルタクス」「白鳥の湖」「ドン・キホーテ」)が予定されてます。来年12月の日本公演は、「白鳥の湖」「ドン・キホーテ」「ラ・バヤデール」が予定されているとのことです。

日本公演はやはり白鳥は外せないんですね…。

追記:上記プレスリリースの英語版もアップされていました。
http://www.bolshoi.ru/r/_content/5a60090af507dd7f43e2b27cfedcbf0a/season-238-eng.pdf

なお、映画館等でのライブ中継演目としては、
「スパルタクス」
「ジュエルズ」
「Lost Illusions」(ラトマンスキー振付のバルザック原作「幻滅」)
「黄金時代」
の4作品が予定されています。

さらに、ボリショイ劇場でのゲスト公演としては、9月にパリ・オペラ座バレエ「パキータ」、10月にモンテカルロ・バレエ「アルトロ・カント」、6月にロイヤル・バレエ「マノン」「レイヴン・ガール」/「DGV」が予定されています。

2013/06/19

「マノン」レスコー役、「マイヤリング」ルドルフ役初演のデヴィッド・ウォール逝去

マクミランの「マノン」レスコー役、「マイヤリング」ルドルフ役を初演した、元英国ロイヤル・バレエのプリンシパルで、ENBでバレエ・マスターを務めていたデヴィッド・ウォールが逝去しました。享年67歳。

Ballet dancer David Wall dies aged 67
http://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-22963499

Ballet dancer David Wall dies of cancer aged 67
http://www.independent.co.uk/arts-entertainment/classical/news/ballet-dancer-david-wall-dies-of-cancer-aged-67-8664497.html

David Wall obituary
http://www.guardian.co.uk/stage/2013/jun/19/david-wall

ロイヤル・オペラハウスのオフィシャル(ケヴィン・オヘアの追悼文つき)
http://www.roh.org.uk/news/former-royal-ballet-principal-david-wall-dies

21歳でロイヤル・バレエ史上最年少のプリンシパルとなったデヴィッド・ウォールは、マーゴ・フォンテーンのパートナーも多く務めました。彼の「マノン」レスコー役は、アンソニー・ダウエルのデ・グリュー役とともにDVD化されています。

84年に引退後は、ロイヤル・アカデミーのアソシエイト・ディレクターを経て、ENBのバレエ・マスターに就任し、マクミラン作品の振付指導では、世界中のバレエ団で活躍していました。指導者として、多くのダンサーたちに愛されてきており、特にダリア・クリメントヴァは彼を師として敬愛し、今日の彼女の「白鳥の湖」公演を彼に捧げるとしています。また、タマラ・ロホもENBの芸術監督として、追悼の意を表しています。

ロンドン、テート・ブリテン美術館の近くには、彼の跳躍する美しい姿の像が設置されています。
http://www.londonremembers.com/memorials/dancer-statue

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ご冥福をお祈りします。

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モスクワ国際バレエコンクールで、畑戸利江子さんが3位に入賞

現在最終審査が行われている第12回モスクワ国際バレエコンクール。ジュニア部門の発表が現在行われているようなのですが(まだ他の入賞者の名前は発表されていないようです)、15歳の畑戸利江子さんがジュニアのデュエット部門3位に入賞したとのことです。おめでとうございます。

http://www.47news.jp/CN/201306/CN2013061801002811.html

【モスクワ共同】モスクワのボリショイ劇場で開催された第12回モスクワ国際バレエコンクールで18日、女性ジュニア部門(14~18歳)デュエットに参加した日本の畑戸利江子さん(15)=愛知県岩倉市=が3位に入賞した。

 同コンクールは1969年から4年ごとに開催。ローザンヌ国際バレエコンクールなどと並ぶ世界有数のバレエコンクールとして知られる。

 ジュニア部門には57人が参加。畑戸さんは、ロシア人の男性パートナーと予選を勝ち抜き最終選考に残っていた。

15歳・畑戸利江子さんが3位入賞…モスクワ国際バレエコンクール
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20130619-OHT1T00058.htm

こちらではパフォーマンスの写真が見られます。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130619-00000006-jijp-int.view-000#contents-body

http://www.minpo.jp/globalnews/detail/2013061801002811 (畑戸さんの写真入り)

http://www.kahoku.co.jp/news/2013/06/2013061801002811.htm

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2013061990012032.html
中日新聞の記事はもう少し詳しくて、畑戸さんは「ドン・キホーテ」のヴァリエーションを踊ったとのことです。


2次審査の結果までは、オフィシャルサイトで発表されています。(後で最終結果を更新しますね)
http://moscowballetcompetition.com/en/node/28

追記:上記リンクでジュニア部門の受賞者が発表されています。
Juniors Girls
First prize: Miko Fogarty (Switzerland), Ksenia Ryzhkova (Russia) , Elvina Ibraimova (Russia)
Second Prize: Gisele Bethea (United States), Olesia Shaitanova (Ukraine)
Third Prize: Maria Theresa Beck (USA), Katherine Higgins (United States), Rieko Hatato (Japan)
Diploma: Paula Alves (Brazil), Amanda Gomes (Brazil)

Boys
First prize: Timofejs Andrijasenko (Latvia)
Second prize: He Taiyu (China), Shi Yue (China)
Third prize: Luan Batista (Brazil), Mykola Gorodiskii (Ukraine)
Diploma: Alexei Seliverstov (Russia), Yuri Mastrangeli (Italy)

ジュニア部門の1位にミコ・フォガティ、3位には畑戸利江子さん、ローザンヌのファイナリストでYAGPでブロンズ、ヘルシンキ国際コンクール3位のキャサリン・ヒギンスが入賞しています。


折しも、ミコ・フォガティが登場する映画、「ファースト・ポジション」のブルーレイが今届いたところです。今日発売。

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シニア部門の受賞者も発表されていました。
http://www.bolshoi.ru/about/press/articles/2013/2625/

http://vmdaily.ru/news/2013/06/19/na-baletnom-nebosvode-zazhglis-novie-zvezdi-201256.html

SENIOR GROUP
SOLOISTS ソロ部門
1位、ゴールドメダル David Zaleev (Russie)カザン歌劇場バレエ
2位、シルバーメダル Elizaveta Kruteleva (Russie)ボリショイ・バレエ, Igor Tsvirko (Russie) ボリショイ・バレエ
3位、ブロンズメダルAnastasia Limenko (Russia) モスクワ音楽劇場 Ernest Latypov (Kyrgyzstan)マリインスキー・バレエ

パ・ド・ドゥ部門
1位、ゴールドメダル Oksana Bondareva (Russia) ミハイロフスキー・バレエ, Timur Askerov (Azerbaïdjan)マリインスキー・バレエ
2位、シルバーメダル Tatiana Bolotova (Russia)モスクワ国立バレエ, Oksana Skorik (Russia)マリインスキー・バレエ, Artem Pizhov (Russia) モスクワ国立バレエ
3位、ブロンズメダルAnastasia Soboleva (Russia)ボリショイ・バレエ, Diana Kosyreva (Russia)モスクワ音楽劇場, Nikita Soukhoroukov (Ukraine)キエフクラシックバレエ

Honorary Diploma 奨励賞
Ajgerim Beketaeva (Kazakhstan)
Eun Won Lee (Korea)
Elizaveta Chebykina (Ukraine) キエフ・バレエ
Elizabeth Cheprasova (Russia) キエフ・バレエ
Margarita Schreiner (Russia, Bolshoi Theatre) ボリショイ・バレエ
Georgy Gusev (Russia, Bolshoi Theatre) ボリショイ・バレエ
Alexei Popov (Russie) マリインスキー・バレエ
Alexander Omelchenko モスクワ音楽劇場
Eldar Sarsembayev (Kazakhstan)
Sol Jon Han (Korea)

6/20(木)の「ワールドWAVEトゥナイト」、特集に【ウィーン国立バレエ団・日本人夫婦ダンサーの挑戦】

6/20(木)22:00~NHK-BS1の「ワールドWAVEトゥナイト」、特集に、
【ウィーン国立バレエ団・日本人夫婦ダンサーの挑戦 ほか】とありました。

http://www.nhk.or.jp/worldnews/programs.html(番組表)

http://www.nhk.or.jp/worldwave/(番組ホームページ)

ウィーン国立バレエの橋本清香さんと、木本全優さんが取り上げられているものと思われます。どれくらいの長さになるかわかりませんが、楽しみですね!

ついでなので、6月29日に開かれるヌレエフ・ガラの準備をしているウィーン国立バレエのリハーサル&ヌレエフについて語る芸術監督マニュエル・ルグリのインタビュー動画を紹介しておきます。ルグリのインタビューは英語で、彼が体を動かしながら指導する様子も見られます。ルグリとリハーサルする橋本さんのリハーサルの様子も。ヌレエフ・ガラでは、「シルヴィア」でルグリとオーレリー・デュポンが踊ります。

http://vimeo.com/68388131

Nurejew Gala 2013 Probenvideo from DelbeauFilm on Vimeo.

2013/06/16

SWAN MAGAZINE 2013年夏号 Vol.32

SWAN MAGAZINE 2013年夏号が発売されました。

http://www.heibonsha.co.jp/swanmagazine/

巻頭連載「パリ・オペラ座 エトワールに夢中!」Vol.16は ステファン・ビュリオンです。

昨年夏には世界バレエフェスティバルで来日し、先日のオペラ来日公演「天井桟敷の人々」でもバチスト役で主演して活躍した彼。派手な存在ではありませんが、怪我での降板も少なく、長身を活かして大柄なバレリーナもしっかりサポートできる、頼りがいのある一人。年間に60回もの舞台をこなす働き者です。「ラ・バヤデール」でエトワールに任命された時には、偶然にも客席に両親が来ていたという幸運に見舞われました。大病を克服し、地道な努力で今の地位を掴んだ彼は、インタビューからも堅実で真面目な性格が伺えます。ファッションピープルではないので、特に好きなブランドもないとのこと。技術だけでなくバレエの姿勢によっても、若い人たちの手本になりたいと語って、地に足のついた様子が伺えます。

[特集]没後20周年「ヌレエフとパリ・オペラ座」

[現地ルポ]
パリ・オペラ座バレエ
「ルドルフ・ヌレエフへのオマージュ」 文・土屋裕子

天才舞踊家ヌレエフとパリ・オペラ座
文・渡辺真弓 写真・瀬戸秀美

ヌレエフ来日記録/ヌレエル年譜

[フォトアルバム]

パリ・オペラ座とヌレエフ作品8

[Special Interview]
ローラン・イレール〈ヌレエフの思い出を語る〉 文・加納雪乃

今年はルドルフ・ヌレエフの没後20周年、生誕75周年ということで、様々なイベントが開催されています。サンフランシスコではヌレエフ展、パリ・オペラ座バレエの「ヌレエフへのオマージュ」ガラ、先日パレ・デ・コングレで開催された「ヌレエフ&フレンズ」ガラ、ボルドー・バレエ団がヌレエフの誕生日である3月17日をはさんで記念の公演を開催、そしてウィーン国立バレエがパリのシャトレ座「ダンスの夏」に来演するなど。

ヌレエフを、主にパリ・オペラ座バレエ団との関わりという視点で語り、彼の足跡を追うとともに、彼の振り付けた作品の写真を多く掲載。また、「ヌレエフの子供」世代を代表する存在、現メートル・ド・バレエのローラン・イレールのインタビューも。ヌレエフからの、「ローラン、幕が開くとき、ダンサーの目には炎が宿っていなくてはいけないんだよ」という言葉が大変印象的です。


パリの新スポット「ノエラ・ポントワ展」

ガルニエ近くにオープンした新スポット「エレファン・パナム」。元オペラ座ダンサーのファニー・フィアットが開いたダンス&アートの複合スペースです。ここで開催された、エトワール、ノエラ・ポントワ展のレポートが大変充実しています。見に行きたかったな、としみじみ思ってしまいました。


パリ・オペラ座バレエ学校の四季[春-夏] 創立300年を祝う
文・土屋裕子

パリ・オペラ座学校創立300周年記念ガラの模様がレポートされています。記念ガラ公演(こちらは今月末にNHK-BSプレミアムで放映されますね)と、ボリショイ・バレエ学校、ロイヤル・バレエ学校、ナショナル・バレエ・オブ・カナダスクール、ハンブルク・バレエ学校、ジョン・クランコ・スクール、デンマーク・ロイヤル・バレエスクールが参加した公演の模様が大変興味深いです。


[連載 バレエ漫画 第15話]SWAN モスクワ編 有吉京子
SWAN モスクワ編の第15話では、「アグリー・ダック」の成功により、真澄はシュツットガルト・バレエからソリストのオファーを受けます。一方でレオンは真澄に「一緒にハンブルクに行かないか?」と誘います。エドについて行ってNYからベジャール・バレエ団に移ったファニーの葛藤を目の当たりにして、思い悩む真澄…。次回が待ち遠しいですね。


なお、この誌面でも告知がありましたが、京都国際マンガミュージアムにて、7月13日~9月23日まで「バレエ・マンガ~永遠なる美しさ」が開催されます。
http://www.kyotomm.jp/event/exh/ballet2013.php
バレエ・マンガを描いた代表的な作家12名の作品を中心にした展覧会です。原画を中心としたおよそ120点の額装品、当時の貴重な雑誌資料などが2会期に分けて公開されます。また、兵庫県立芸術文化センターの薄井憲二バレエ・コレクションより借用したバレエにまつわる資料や、有馬龍子バレエ団・京都バレエ専門学校より実際の公演で使用した衣裳や公演映像なども同時に展示されます。高橋真琴、山岸凉子、有吉京子、萩尾望都、槇村さとるなどの原画など貴重な資料が出典されます。もちろん「SWAN」の原画も。開催期間に京都まで見に行きたい!

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2013/06/15

CM2本、タマラ・ロホと吉田都さん

バレリーナが出演したCM、最近多く見かけますよね。ポリーナ・セミオノワが出演しているユニクロのエアリズムのCMはご覧になった方が多いと思います。

タマラ・ロホがトヨタのレクサスの海外向けCMに出演しています。

http://youtu.be/rlYVhDKCbqY

モノクロのスタイリッシュな映像で、タマラ・ロホのスピードと強靭さをクルマに重ねていて、実にかっこいいです。

追記:メイキングとインタビュー映像もあります。
http://youtu.be/3fHSkrtTvJM


そして別ヴァージョンCMも。(ENBの加瀬栞さんが出演しています)
http://youtu.be/KbL0UQPwjdg


一方、エステティック、ソシエのCMに出演しているのは吉田都さん。

http://youtu.be/L8g9YdN94qk

美しさの象徴であるとともに、エステを受けたときの極上の気分を、都さんは軽やかで繊細な動きで表現しています。

都さんをフィーチャーしたスペシャルコンテンツも。インタビューで、バレエに対する想いや、美の秘訣を語っています。
http://www.socie.jp/forever_beauty/

レクチャー「フランスにおけるコンテンポラリー・ダンスの変遷」

ジャン=マルク・アドルフ氏(フランス「ムーヴマン」編集発行人) アンティスティチュ・フランセ 6月9日

6月15日、16日に彩の国さいたま芸術劇場にて上演される、マギー・マラン「Salvesーサルヴス」に関連しての講演会。大変学びの多いレクチャーであった。関連する映像も多く紹介された。


「70年代にフランスにコンテンポラリーダンスが出現した時には、アメリカからの影響が大きかった。マース・カニンガムや、フランスに住んだアメリカ人、例えばカロリン・カールソンや、初めてコンテンポラリー・ダンスの学校(アンジェの国立コンテンポラリー・ダンス・センター)を作ったアルウィン・ニコライ(Alwin Nikolais)など。この学校からは、フィリップ・ドゥクフレ(Philippe Decouflé)も育った。さらに、アフリカからの影響も少しあった(Eisa Wolliaston) さらに、80年代にAIDSで亡くなった矢野英征(1943-88)も影響を与えた」

ジャン=マルク・アドルフ氏がコンテンポラリー・ダンスの批評家となった経緯は大変興味深い。もともとジャーナリストとして働いていた彼は、仕事をしているうちに書きたいという気持ちが削がれてしまって、何を書きたいのかわからなくなった。そんな時に友人に誘われ、モンペリエで初めてダンスの公演を観た。ジャッキー・カタネルの「デュオ」という自閉症の少女の動作をダンスにしたものを観て動転し、それから彼の生活も仕事も変わってしまった。ダンスについて書き始めたのだった。ダンスの中に自分自身の何かを認める感覚は、80年代に多くの人が感じたのだった。

その頃、彼はモンペリエに住んでいたので、たくさんの舞台を観ることができた。モンペリエは、ドミニク・バグエのカンパニーの本拠地であり、またダンス・フェスティバルがあったのだ。81年のジャン=クロード・ガロッタの作品「ユリシーズ」では、歓喜に襲われた観客たちが、共同体となって感情を共有した。そんな最初の振付家がガロッタだった。

Cher Ulysse - choreography Gallotta
http://youtu.be/CFZlPtiyotU

ガロッタは、グルノーブルに住んでいたのだが、劇場に迎えられていなかったので、自宅のガレージで作品を作っていた。彼はアートスクール出身で、ダンスの教育を受けていない。マース・カニンガムのアイディアを引用してきて組み合わせての創作を行っている。

そもそもフランスでコンテンポラリーダンスの起源となったのは、1968年の5月革命がきっかけだった。この革命は、政治的な抗議だけではなかった。両親が生きてきた生活、生き方から脱出したいという若者の欲求、とりわけ、恋愛関係の身体の自由に対するアクセスを彼らは求めていた。このような抗議活動は政治的には結実しなかったが、フランス社会を徐々に変えていったのだった。ガロッタはじめ、コンテンポラリー・ダンスの振付家は、バニョレの振付コンクールの第一回、68年に受賞していて、奇妙な一致を見せている。

同じ1968年5月革命の頃、パリ・オペラ座バレエにいたダンサー、モダンダンスの振付家、ダンスの批評家たちが、従来とは違ったダンス政策を求めるためにマニフェストを書いて、美的、そして政治的な種を蒔いたが、それは10年以上かかって花開いた。78年のバニョレ・コンクールがようやく新しい才能を発見する場になった。

<80年代>

そして81年にミッテラン大統領が就任するという政治的な事件が起きた。ジャック・ラングが文科省の大臣に就任した。彼の推進力を元に、新しい振付家を育てる機運が高まった。ドミニク・バグエがモンペリエに住み着いたのは1981年のこと。そして国立振付センター(CCN)がフランス全土に20箇所開設され、仕事のツールをアーティストに与えた。恒常的なスタジオ、予算が与えられ、ダンサーに給料が支払われるようになった。制度が整いクリエーションの環境がでいた。この動きは何者に求められなくなり、溢れ出るような空気、多大な喜びの感情jが生まれた。

83年からは経済の引き締め、ビジネスの方に力が注がれるようになったが、81年から83年のあいだには、イマジネーションが権力から力を奪取するのでは、という雰囲気があった。その頃、ダンスはユートピア的な進歩を続けた。それは、単に美的なものではなく、社会における身体の解放、社会的な身体をダンスが解放するというものであった。

ここで、ドミニク・バグエの「天使の飛躍(Le Saut de l'ange)」のコメンタリー付きの映像を紹介。この作品は、クリスチャン・ボルダンスキ(Christian Boltanski)という造形芸術家と創ったもので、シャルル・ピクがコメントを入れながら映した。
http://www.numeridanse.tv/fr/catalog?mediaRef=MEDIA090807155006079

フィクションにならないように工夫されながら、振り付けの三角ピラミッドなどのグラフィックな形、構造を抜粋を作るにあたって、全体を絵画になるように編集するようにとバグエが指示したものである。ここには、ダンスや演劇でななく、映画、甲斐が、造形芸術を元に作品を作っていくという意図がある。映画は、より多くの観客にアクセスする手段として、ここから「ビデオダンス」が生まれて流行していく。これらはテレビで上映され、ダンスを広く知らしめることになる。

Joëlle BouvierとRégis Obadiatによる「寝室」(La Chambre)
http://youtu.be/LcaUak0jc4g

これは表現主義的な雰囲気があり、モノクロで撮影されて幻想的である。

また、ダニエル・ラリューはプールの中で撮影された「ウォータープルーフ」という作品を作った。レジーヌ・ショピノート(Regine Chopinot)は、"LE DEFILE"でジャン=ポール・ゴルティエと組んでファッションの世界をダンスにした。

http://youtu.be/0Ax4fOVyUM4

フィリップ・ドゥクフレは「Codex」で、時間との戯れを、映画は舞台とは違ったふうに行うことができることを見せた。
http://youtu.be/Y1VlkBLA7vY

マチルド・モニエ(Mathilde Monnier)と ジャン=フランソワ・デュロール(Jean-François Duroure)は「Extasis」(1985)で、80年代パノラマの最後を飾った。無頓着さ、歓び、若さ、ファンタジー。ミュージカルやキャバレーの雰囲気を持ち、クルト・ヴァイルの音楽を使っている。
http://youtu.be/0g8Ne9d78yk

ちなみに、マチルド・モニエは「Pudique acide / Extasis」で11月に来日公演を行う予定。さいたま芸術劇場、あいちトリエンナーレ2013、ArtTheater dB 神戸で公演を行います。
http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/mathilde-monnier/

<90年代>

90年代になると、反転が起こったかのようにフランス・ダンス界も80年代とは異なってきた。この時期に起こったパラダイム変化は、政治的なものであった。もはやユートピアの時代ではない。社会全体を変革することはできないという空気が出てきた。

また、80年代終わりから90年代には、AIDSが出現して人間を揺り動かした。93年にドミニク・バグエは、AIDSによって亡くなった。ダンスの共同体そのものが、身体の自由という可能性から逆に攻撃されることになった。若いアーティストたちは、意識的に、今までと同じものを作ることはできない、80年代と同じものを作ることはできないと考えるようになった。

ジャン=マルク・アドルフ氏は、94年よりパリのバスティーユ劇場で働き、7年間プログラミング・ディレクラーとして若いアーティストを発掘して育てた。ジェローム・ベル(Jérôme Bel)が友人として電話してきて作品を見て欲しいというので、彼の初振付作品「作者に与えられた名前」を見たが、これはダンスではなかった。この作品をディジョンのフェスティバルで上演したところ、最初にいた20人の観客で最後まで残っていたのは、二人、アドルフ氏と劇場のディレクターだけだった。バスティーユ劇場でも、15人しか観客が集まらなかった。彼の次の作品「ジェローム・ベル」は、5人のダンサーが全裸で、舞台装置はなく電球1個の照明、歌手が舞台上で「春の祭典」をハミングするのが音楽という作品で、「未確認物体」「実験作すぎる」とディレクターに言われ、「5年後なら上演する」と言われたが、「上演しないなら辞める」ということで上演したら、3回の公演は満員となった。

ル・モンド紙のジャーナリストは、ダンスの動きのないダンス作品を「ノン・ダンス」というコンセプトを作って呼んだ。

80年代と違って、スペクタクル性、演劇性を排して、身体そのものを動きの手段として発見しようという方向性へと移行していった。裸の身体は、センセーションを狙ったものではなく、あるがままの身体を露呈したもの、として再発見された。また、アーティストの何人かは、自分自身が知らなかった時代にインスピレーションを求めて、ジャドソン・チャーチ派やトリシャ・ブラウンなど、50,60年代のアーティストやムーブメントを探っていった。コンテンポラリー・アートへ近づきたいと、造形美術家との共同作業をしたアーティストもいた。日本における”具体”運動に対しても、90年代のアーティストは興味を持っていた。

アラン・ビュファール(Alain Buffard)は、「Good Boy」というソロで、ヌードを使った直接的なかたちでAIDSを描いた。
http://youtu.be/qfCKXZkg214
また、彼は「INtime / EXtime MORE et encore」でも裸の身体を使っている。
http://youtu.be/NYTJpHeVVeQ

ボリス・シャルマッツ(Boris Charmatz)は、MAGMAという作品で、何が共同体、集団を作っているのかを提起するために、ヌードを使った。無音で同じシークエンスが10分間続く作品である。
https://vimeo.com/24181813

今でも、「ダンス」という形が残っているダンスはある。たとえば、アンジェラン・プレルジョカージュの作品など。そして一方で、コンテンポラリー・ダンスとヒップホップが交差するという形式も出てきた。サーカスと交差したNouveau Cirque(ヌーヴォー・シルク)も出現した。

ジャン=マルク・アドルフ氏は、マース・カニンガムやピナ・バウシュのように長期的に続いていないと偉大なアーティストとは言えないと考えている。しかも、長期的な中に、革新的なものを入れていかないとならないと。自分自身のスタイルをカリカチュアしているようではいけない。アーティストは一人だけで仕事をしているわけではなく、倫理的な責任、社会的な責任を負っている。

マギー・マランは、まさにその点では偉大なアーティストである。30年前に作品を発表し始めたところから、作品から作品へと新しくなっていった。彼女の作品には多様な時期があり、演劇な作品から絵画的な作品まで変容している。特に「デュルプス」から「サルヴス」にかけてはそうだ。また、政治的に参加していることも重要である。マランの作品は、美的な質、倫理的な質が高い。彼女はクラシックバレエを経てきている人なので、「サンドリヨン」では、リヨン・オペラ座のダンサーが持っているクラシックバレエの技術を使って、振り付けており、幅が広い。脚を上げなくても、動きが美しく、動きがそれ自体で語ることができる。

リヨン・オペラ座バレエ「サンドリヨン」(シンデレラ)
http://youtu.be/jc6mD40ZUwk

カンパニーは、ダンスのレパートリーを繰り返すだけでなく、新作を作らないといけないし、既にあるレパートリーを取り返さなければならない。パリ・オペラ座バレエも、美術館であっても、絶えず新しい作品を入れて、見せ方を変えていかなければならない。

アドルフ氏は、サルコジ政権のあいだはフランス国外で、フランスを公に代表することは拒絶してきた。サルコジが「国民アイデンティティ賞」なるものを創設したことに抗議してのこと。フランスの素晴らしさは、外国人に対するホスピタリティがあることにあると考えているからだ。マース・カニンガムに制作資金を提供したことも。ピナ・バウシュが「税金を使っているなら出て行け」という市民の声に屈せずにヴッタパールにとどまることができたのも、パリ市からの援助があったからである。山海塾、天児牛大も、テアトル・ラ・ヴィルが資金を提供したのでフランスで活動することができているし、勅使川原三郎も、バニョレ振付コンクールで賞を取り、アドルフ氏の劇場で紹介したことによって、日本で知られるようになった。パリで彼の作品を観た朝日新聞の記者が取り上げて、FAXが紙切れになるほど問い合わせが殺到したのだった。カルロッタ池田もパリで活躍している。最近では、アフリカ出身のアーティストも活躍している。どの国から来ようと、才能のあるアーティストに場を与えるというホスピタリティが、フランスの良さである。日本にも、このような仕組みがあってしかるべきである。パリだけでなく、ボルドー、トゥルーズ、ストラスブールでも優れたダンスを観ることができるのは素晴らしい。

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2013/06/12

デヴィッド・ホールバーグのショートフィルム

最近ではファッション界でも活躍しているデヴィッド・ホールバーグ。VOGUEでアニー・リーボヴィッツに撮影されたり、ダンスをフィーチャーしたCR Fashion Bookのページを飾ったりしています。

最新の彼のプロジェクトは、LVMHグループによるウェブサイトNOWNESSでのショートフィルム。ABTのスタジオに入り、フォームアップし、マルセロ・ゴメスの振り付けた作品を踊る彼の姿が撮影されています。クローズアップが多いので、彼の美しい足先が見られない時が時々あるのが残念ですが、それでも、彼のエレガンスと内面を充分堪能できるものです。

http://www.nowness.com/day/2013/6/11/3093/hallberg-at-work?ecid=soc1268

Hallberg at Work on Nowness.com

いくつかの写真は、このDance Magazineのサイトでも見ることができます。
http://www.dancemagazine.com/blogs/dance-glance/5194

怪我で8ヶ月ほど舞台に立つことができなかったデヴィッドですが、無事にABTのMETシーズンのオープニングガラで復活し、「オネーギン」「ロミオとジュリエット」などに出演しました。10月の東京での「ジゼル」へのゲスト出演も楽しみですね。


CR Fashion Bookのサイトに掲載されているデヴィッド・ホールバーグの写真
http://crfashionbook.com/post/46593553657/white-tights-not-included-david-hallberg-the


NOWNESSでは、NYCBのプリンシパル、ジェイニー・テイラーがクロエの衣装を着て、注目の若手振付家ジャスティン・ペックの作品をジャスティンと踊る美しい映像もアップしています。

http://www.nowness.com/day/2011/4/16/1377/janie-taylor-for-chloe?icid=NownessLoves_1_3093

Janie Taylor for Chloé on Nowness.com

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とてもスタイリッシュなデヴィッド・ホールバーグの他、表紙にはセルゲイ・ポルーニン、またマリ=アニエス・ジロ(インタビューつき)、ミスティ・コープランドほかABTのダンサーなども登場しています。けっこう分厚くてびっくり。

追記:もう一本、デヴィッド・ホールバーグの映像がアップされていたので、ご紹介します。
http://youtu.be/16WnJhypdhA

これは、ボリショイ・バレエなどのバレエ映像を映画館に配給するBallet in Cinemaのプロモーション用の映像です。

2013/06/11

イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)の2013/14シーズン

タマラ・ロホが芸術監督に就任して2シーズン目のENBの新シーズンが発表されました。

http://www.ballet.org.uk/news/news-archive/201314-season-announcement-press-conference-round/

アクラム・カーンも同席しての記者会見の詳細
http://dancetabs.com/2013/06/english-national-ballet-announces-2014-season-and-new-barbican-performances/

英国のバレエ団での全幕上演が初めてとなる「海賊」、そして注目の振付家3人-アクラム・カーン、ラッセル・マリファント、リアム・スカーレットによる新作ミックスプロなど大変意欲的なプログラムです。

2013/14 Season

Le Corsaire「海賊」 Anna-Marie Holmes
17 October – 30 November 2013, and 11 February – 15 Feb on tour
9 January – 19 January 2014, London Coliseum

ABTで上演されているのと同じアンナ・マリー・ホルムズ改訂版。カンパニー初演。


Nutcracker 「くるみ割り人形」 Wayne Eagling
20 – 23 November 2013, on tour
11 December – 5 January 2014, London Coliseum


Lest We Forget「Lest We Forget」 Akram Khan, Rusell Maliphant and Liam Scarlett
2 – 12 April 2014, Barbican Theatre

第一次世界大戦開戦100周年を記念して、3人の人気振付家が新作を振り付けます。ラッセル・マリファントとアクラム・カーンがクラシックバレエのカンパニーに新作を作るのは初めてとのこと。2012年に初演された、ジョージ・ウィリアムソン(アソシエイト・アーティスト)の「火の鳥」も併せて上演。バービカン・シアターでENBが公演を行うのは初めて。


My First Ballet: Coppélia 「マイ・ファースト・コッペリア」 George Williamson
5 – 25 May 2014, Peacock Theatre, London and on tour
(Theatre Severn, Shrewsbury / Peacock Theatre London / Manchester Palace Theatre / Assembly Hall, Royal Tunbridge Wells / Waterside Aylesbury / Churchill Bromley)

「眠れる森の美女」「シンデレラ」に続く子供向けの「マイ・ファースト…」シリーズの最新作。


Choreographics
Dates tbc 2014

若手振付家育成のための公演。今まではENBの団員のみだったが、今回からカンパニー外の振付家の作品も受け付ける。


Emerging Dancer 2014「エマージング・ダンサー」
Dates tbc 2014

ENBの優秀な若手ダンサーを選ぶコンクール

Romeo & Juliet「ロミオとジュリエット」 Derek Deane
11-22 June 2014, Royal Albert Hall

タマラ・ロホとカルロス・アコスタの共演も行われます。


Coppélia「コッペリア」Ronald Hynd.
23 – 27 July 2014, London Coliseum

ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団とパリ・オペラ座バレエの来日公演

彩の国さいたま芸術劇場の小冊子「ダンス・プログラム2013-14」によると、ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団が2014年3月に来日公演が決定したとあります。チケット発売は11月予定。

そして、ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団の本拠地サイトには、ツアーの予定が記されていました。
http://www.pina-bausch.de/pina40/internationale-gastspiele.php

2014年3月20日、21日、22日、23日、さいたま芸術劇場で「コンタクトホーフ」とあります。映画「ピナ・バウシュと夢の教室」に出てきた「コンタクトホーフ」が観られるのは本当に嬉しいし、楽しみですね。


ところで、今日送られてきたチラシの中には、パリ・オペラ座バレエの来日公演「ドン・キホーテ」と「椿姫」がありました。日程は以下のとおりです。出演者、料金等の詳細は2013年9月頃発表とのこと。

「ドン・キホーテ」3月13日(木)6:30、14日(金)6:30、15日(土)1:30、6:30 16日(日)3:00
「椿姫」3月20日(木)6:30、21日(金・祝)1:30、22日(土)1:30、6:30、23日(日)3:00

「椿姫」と「コンタクトホーフ」は見事に重なっていますね。


ついでに、新国立劇場バレエ団の日程も重なっています。

新国立劇場バレエ団「シンフォニー・イン・3ムーヴメンツ」「大フーガ」ジェシカ・ラング新作
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/30000076_ballet.html
3月18日(火)7:00、3月19日(水)7:00、21日(金・祝)2:00、22日(土)2:00、23日(日)2:00

というわけで、今から皆さん、日程の調整は気をつけましょう!

2013/06/09

バットシェバ舞踊団の「Deca Dance」がARTEで視聴可

バットシェバ舞踊団の、オハッド・ナハリン振付作品集「Deca Dance」がARTE Live webで全編視聴することができます。

1990年以降のナハリンの代表的な作品を集めた作品集です。冒頭に登場するのは、ナハリンの作品の中でも最も有名な「マイナス16」の抜粋です。これは世界中で様々なバレエ団やカンパニーによって踊られていますが、何回観てもとても面白いですね。また、さいたまでも上演された「MAX」も観ることができます。

http://liveweb.arte.tv/fr/video/Ohad_Naharin_Batsheva_Dance_Company_Deca_Dance/





ボリショイ・バレエが、ツィスカリーゼを解雇

セルゲイ・フィーリン襲撃事件に関し、彼が酸で襲撃されたのは疑わしい、公表された怪我の写真も偽物だと主張し、また容疑者の1人パーヴェル・ドミトリチェンコを擁護してきた、ボリショイのトップスター、ニコライ・ツィスカリーゼが、劇場との契約を今月末で打ち切ると通告されました。ボリショイの広報官が発表しています。
Bolshoi Ballet dismisses world star Nikolai Tsiskaridze
http://www.theartsdesk.com/dance/bolshoi-ballet-dismisses-world-star-nikolai-tsiskaridze

ボリショイでプリンシパル・ダンサーとして、そして人気のある教師として活躍してきたツィスカリーゼですが、両方の契約が切られることになります。

今シーズン、彼の出番は13回と少なく、うち6回はロットバルト役でした。また当初出演を予定されていた夏のボリショイのロンドン公演への出演もキャンセルされ、教え子たちには、彼を離れるようにとの劇場の勧告もありました。そのため、予想されていた事態ではあります。

しかしロシアでは大変人気が高く、またテレビなどメディアの露出頻度も高い彼なので、今後メディアでの反撃も予想されます。

一方、フィーリンは先日ドイツで18回目の手術を受けたとのことで、治療も予断を許さない状態にあるようです。早く回復されますように。


追記:上記The Arts Deskの記事も執筆したIsmene Brown氏のブログが、大変細かく事件を追っています。英語ですが、ロシア語からの翻訳もたくさん載せていて情報も早いです。最新のエントリでは、このツィスカリーゼ解雇の件について詳細が載っています。
http://www.ismeneb.com/Blog/

最近、こちらのブログ記事で、フィーリンがファンに向けたメッセージを紹介していました。月曜日に、彼の妻マリア・プローヴィッチのFacebookに掲載されたものです。
http://www.ismeneb.com/Blog/Entries/2013/6/6_Filins_cry_from_Facebook.html

その中で、フィーリンは18回目の目の手術を受け、それは5時間近くにも渡るもので、麻酔が切れた時にはものすごい痛みを感じたそうです。友人たちに、その暖かさ、心配してくれたこと、心を向けてくれたこと、辛抱強さ、支援、真の友情と愛に深く感謝しているとのことです。これが彼にとって最も重要で必須の薬であると。彼らに向けて深々と頭を下げるとともに、希望を持ち続けて信じ続けると。

6/11追記
いくつか報道が出ていますので、リンクを張ります。

AFP 露ボリショイ、トップダンサー解雇 監督襲撃事件で経営陣批判 (日本語)
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2949293/10880976

New York Times
Bolshoi Ballet Drops Star Who Faulted Leadership
http://www.nytimes.com/2013/06/10/arts/dance/bolshoi-ends-contract-with-star-dancer-tsiskaridze.html

ロイター通信
Ballet star says he is being hounded out of Russia's Bolshoi
http://www.reuters.com/article/2013/06/09/entertainment-us-russia-bolshoi-idUSBRE95806V20130609

2013/06/08

マリインスキー・バレエ「白鳥の湖」映画館で6/23に日本全国で上映

マリインスキー・バレエ「白鳥の湖」の3D生中継が、6月6日に行われました。サンクトペテルスブルグの冬宮でのロシアバレエ誕生275年を記念し、「白鳥の湖」のスペシャルパフォーマンスです。

ロサンゼルス・タイムズの記事
http://www.latimes.com/entertainment/arts/culture/la-et-cm-swan-lake-3d-20130605,0,5782023.story

バレエでは世界初となる3Dでの生中継は、世界50ヶ国の映画館1200館で放映されました。このプロジェクトを進めているのは、イギリス、アメリカ、ロシアの専門家からなる国際チームで、中継監督を務めるのは元バレエ・ダンサーで世界のバレエを知り尽くしたロス・マクギボン氏です。ロス・マクギボンは、自身元ロイヤル・バレエのダンサーであり、ヌレエフと同じステージにたった経験も持ちます。この数年、映画館で上映されるバレエ作品の監督として活躍しており、最近ではマシュー・ボーンの3D映像作品も手がけています。

ジェームズ・キャメロンとヴィンス・ペースのプロダクションであるキャメロン・ペース・グループ3Dが、アカデミー賞を受賞の「アバター」、「ライフ・オブ・パイ」で使用された同じ技術を使って今回3D制作が行われました。

http://youtu.be/r_sWa8iIiCE

マリインスキー劇場では、8台の3Dカメラセットを設置するために多くの席がストールから取り払われました。カメラ2セットは舞台左と右袖に設置、3セットは観客席内に置かれました。また、頭上からのダンサーたちの動きを撮影するための特機も設置されました。

また、オーケストラピットにもカメラは設置され、マリインスキー劇場の総督であり芸術監督であり、世界で最も高名な指揮者の一人であるマエストロ ヴァレリー・ゲルギエフの指揮をする姿を撮影しました。

マリインスキー劇場は、デジタル技術の導入において、ロシアの劇場の中でもトップクラスです。最初のインターネット中継も1999年にここで、最初のバレエの3D録画も2010年4月に行われました。この3Dの演目は「ジゼル」(オシポワ、サラファーノフ主演)で、2011年12月には「くるみ割り人形」(ソーモワ、シクリャーロフ主演)も録画されました。どちらも世界中の映画館500館で公開されました。

“3Dにはマジックがあります。劇場から全世界の映画館への3D生中継と聴いて”すごい!“と思いました。世界初の3D生中継 –勇気のいる、未知のとてもリスキーなイベントです。新しい世界を切り開くパイオニアとなった気分です。“とヴァレリー・ゲルギエフは語っています。

そして、6月23日(日)に全国の映画館へディレイ中継を行うことが決定しており、現在チケットが発売中です。日本では2Dですが、最新のテクノロジーを駆使した映像が映画館の大スクリーンで見られるのは、とても楽しみですね。

http://www.liveviewing.jp/contents/079_mariinsky.html

<上演作品>
 ■白鳥の湖
 作 曲:ピョートル・チャイコフスキー 
振 付:マリウス・プティパ、レフ・イワノフ
 指揮者:ワレリー・ゲルギエフ
 主 演:エカテリーナ・コンダウーロワ、テイムール・アスケロフ
 開催日 : 2013年6月23日(日)16:00開演
 会 場 : 全国の映画館

北海道 札幌市 ディノスシネマズ札幌劇場 011-221-3802
宮城県 仙台市 MOVIX仙台 022-304-3700
東京都 港区 TOHOシネマズ  六本木ヒルズ 03-5775-6090
       渋谷区 TOHOシネマズ 渋谷 03-5489-4210
       豊島区 シネマサンシャイン池袋 03-3982-6388
神奈川県 川崎市 TOHOシネマズ 川崎 044-230-1122
       海老名市 TOHOシネマズ 海老名 046-292-4620
千葉県 千葉市 シネプレックス幕張 043-213-3000
       市川市 TOHOシネマズ 市川コルトンプラザ 047-314-0055
埼玉県 越谷市 イオンシネマ越谷レイクタウン 048-990-3660
栃木県 宇都宮市 TOHOシネマズ 宇都宮 028-613-5151
群馬県 伊勢崎市 プレビ劇場ISESAKI 0270-63-8787
静岡県 浜松市 TOHOシネマズ 浜松 053-413-6666
愛知県 名古屋市 109シネマズ名古屋 052-541-3109
       安城市 安城コロナシネマワールド 0566-74-9311
石川県 金沢市 金沢コロナシネマワールド 076-266-5774
富山県 富山市 TOHOシネマズ ファボーレ富山 076-466-1700
大阪府 大阪市 TOHOシネマズ 梅田 06-6316-1312
       大阪市 TOHOシネマズ なんば06-6633-1040
京都府 京都市 TOHOシネマズ 二条 075-813-2410
兵庫県 西宮市 TOHOシネマズ 西宮OS 0798-62-1040
       神戸市 109シネマズHAT神戸 0570-011-109
岡山県 岡山市 TOHOシネマズ 岡南 086-261-9051
広島県 広島市 109シネマズ広島 0570-002-109
愛媛県 松山市 シネマサンシャイン衣山 089-911-0066
福岡県 福岡市 TOHOシネマズ 天神 092-762-6666
       福岡市 ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13 092-272-2222
長崎県 長崎市 TOHOシネマズ 長崎 095-848-1400
熊本県 熊本市 シネプレックス熊本 096-375-6330

料 金 : 全席指定 ¥3,500(税込み)
チケット :
6月1日(土)12:00 ~ 6月21日(金)12:00
イープラス http://eplus.jp/mariinsky-lv/ (PC、モバイル共通)
または、全国のファミリーマート店内のFamiポートにて
※先着順での受付となりますので、予定枚数に達し次第、受付終了となります。
お問合せ:イープラス 0570-07-5050(10:00~18:00)オペレーター対応

オフィシャル・サイト http://www.mariinskycinema.com/

くわしいキャスト表
http://www.mariinskycinema.com/assets/cast-list2.pdf

オデット/オディール エカテリーナ・コンダウーロワ
ジークフリート王子 ティムール・アスケロフ
ロットバルト アンドレイ・エルマコフ
パ・ド・トロワ エカテリーナ・イワニコワ、ナデジダ・バトーエワ、ザンダー・パリッシュ
道化 ヴァシリー・トカチェンコ

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ロイヤル・バレエとENBのダンサーの映像をiTunesでリリース/追記

「Genesis」というタイトルのバレエ作品集映像が、iTunesなどを通じて7月1日より販売されるようになります。

出演しているのは、アリーナ・コジョカル、サラ・ラム、スティーヴン・マックレー(以上ロイヤル・バレエ)、ダリア・クリメントヴァ、ワディム・ムンタギロフ、高橋絵里奈、Esteban Berlanga(以上イングリッシュ・ナショナル・バレエ)。

http://www.thestage.co.uk/news/2013/06/digital-organisation-launches-to-film-new-dance-commissions/

ロイヤル・バレエ、デンマーク・ロイヤル・バレエなどに振りつけていてローレンス・オリヴィエ賞も受賞している人気振付家のキム・ブランドストラップ、元ロイヤル・バレエで現在はオランダ国立バレエの団員、同バレエ団などに振付作品を提供しているエルンスト・マイズナーらの作品を踊ります。8作品で、すべてオリジナル、ソロ及びパ・ド・ドゥが収録されています。映像の監督は、キム・ブランドストラップとロイヤル・バレエのファースト・ソリスト、ベネット・ガートサイド。

作品の映像はロイヤル・バレエ・スクールのスタジオで撮影され、映画「アメージング・スパイダーマン」や「プロメテウス」で使われたのと同じ最新のテクノロジーを使用しています。

映像は15ポンドでiTunesでダウンロード販売されます。まずは、日本で7月1日から購入できるようになるとのことです。

この企画を製作したクリスタル・バレエは、ダンスの新しい可能性を切り拓くプロジェクト。芸術監督は、元ロイヤル・バレエのダンサー、ヘンリー・セント・クレア。既存の作品ではなく、この企画のために新しい作品をコミッションして収録することにしたとのこと。バレエを観るために高いお金を払う代わりに、安い価格で家で高品質のものをダウンロードしていつでも見られるようにするという趣向です。また、注目されるのが、一番最初にこれが販売される国が日本であるということで、日本のバレエファンの熱心さを見て、日本から始めることにしたとのこと。今後、年に1作品はリリースしていきたいとのことです。

コジョカル、マックレー、ムンタギロフらスターダンサーの、新作を踊る姿が見られるこのプロジェクト、注目したいと思います。続報はまたアップデートします。


なお、日本のiTunesではまだ実現していないのですが、「ラ・バヤデール」「不思議の国のアリス」などロイヤル・バレエの舞台映像やオランダ国立バレエの「ドン・キホーテ」などは、英国のiTunesストアなどで販売されています。今後、このような映像リリースも増えてくるものと思われます。映画館でのバレエ鑑賞、タブレットやスマートフォンでのバレエ鑑賞など、バレエを観る手段が多様化していくのは良いことですよね。

******
予告編映像がアップされましたので、ご紹介します。また、新たにヨハン・コボーも出演者として加わることになりました。
http://youtu.be/q8b_iBXRDEU

2013/06/07

5/30 パリ・オペラ座バレエ 「天井桟敷の人々」Paris Opera Ballet "Les Enfants du Paradis"

http://www.tbs.co.jp/event/parisopera2013/

音楽:マルク・オリヴィエ・デュパン Marc-Olivier Dupin
振付:ジョゼ・マルティネス Jose Martinez
美術:エツィオ・トフォルッティ Ezio Toffolutti
衣装:アニエス・ルテステュ Agnes Letestu
照明:アンドレ・ディオ Andre Diot
指揮:ジャン・フランソワ・ヴェルディエ Jean-Francois Verdier
管弦楽:シアター・オーケストラ・トーキョー

キャスト

ガランス:イザベル・シアラヴォラ Isabelle Ciaravola
バチスト:マチュー・ガニオ Mathieu Ganio
フレデリック・ルメートル:カール・パケット Karl Paquette
ラスネール:バンジャマン・ペッシュ Benjamin Pech
ナタリー: レティシア・プジョル Laetitia Pujol
エルミーヌ夫人: カロリーヌ・バンス Caroline Bance
モントレー伯爵:クリストフ・デュケンヌ Christophe Duquenne
バレリーナ:オーレリア・ベレ Aurelia Bellet
デズデモーナ:シャルロット・ランソン Charlotte Ranson

マルセル・カルネ監督の映画を元にジョゼ・マルティネスが振り付けた「天井桟敷の人々」。パリで観た友人はあまり面白くなかったと言っていたし、NHKで放映された録画も観たけど、それほど惹かれなかった。チケット代が高かったので、1公演しか取らなかったし。ところが、さすがパリ・オペラ座バレエ人気は凄いということで、イザベルとマチュー主演日はチケットはソールドアウトで当日券もほとんど出なかったという。そして映像と生の舞台は別物ということで、実際に観たら大変楽しめて、もっとチケットを買えば良かったと思うほどだった。

開演前には、大道芸を披露するダンサーと、白塗りのダンサーが、ドラムの演奏に合わせて場内を盛り上げてくれると、気分はちょっとガルニエな感じ、舞台となる犯罪大通りにいたような気持ちになる。休憩時間には、「オテロ」の舞台を告知するチラシが天井から降ってきた。そして幕間には、クローク前の階段を使って、フレデリック・ルメートル(カール・パケット)扮するオテロと、シャルロット・ランソンが演じるデスデモーナのクライマックスがドラマティックに演じられるというのが心憎い。滑りそうな狭い階段で、美男美女が大熱演を繰り広げられてくれたのはまさに眼福。これを観る私たち観客も、まさに「天井桟敷の人々」として、彼らの姿を見守り、舞台に参加している気持ちになる。

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また、ロビーでは、白い仮面をつけた黒子さんたちが、2幕冒頭の舞台「ロベール・マケール」の告知の看板を持って、休憩時間が終わりそうになると客席に戻るようにと身振り手振りをしてくれるのも雰囲気を盛り上げてくれた。

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休憩時間中に席に戻ったら、舞台の上ではレッスンが行われていた。しかも指導をするのはジョゼ・マルティネス。このレッスンの演奏がいつの間にかピアノからオーケストラになったところで、「ロベール・マケール」の舞台へと移行していく展開はとても巧みだ。


作品としての「天井桟敷の人々」は、長大な映画の筋を追うことが中心になっていて、映画に忠実でありすぎるがゆえの段取りぽいところがあり、少し退屈なシーンがないわけではなかった。劇中劇のシーンが多すぎるようにも感じられた。しかし、冒頭の「犯罪大通り」のシーンの舞台上の再現はうまくいっていて、舞台に乗っている一人一人がそれぞれのキャラクターを持っており(キャスト表は細かく書かれており、モブシーンの登場人物それぞれに役名がついている)、きちんと演技して街の喧騒を表現していた。その中で佇む白塗りのパントマイム役者のバチスト。スリの疑いをかけられたガランスの窮地を救うためのバチスト(マチュー・ガニオ)のマイムが実に雄弁で、彼がパントマイム役者であるということに説得力があった。作品を通して、”舞台”といものに対する惜しみない愛情が伝わってくる。

この作品の最大の魅力は、ガランス役のイザベル・シアラヴォラだ。映画でこの役を演じたアルレッティに似た面差しの彼女に当て振りされただけのことはある。「恋なんて簡単よ」と言いながらも、バチストに惹かれ、でも一歩を踏み出すことのできないファム・ファタルの揺れる心情。恋愛遍歴を重ねていく彼女の、華やかな美貌の裏に隠された寂しさ。何よりも雄弁に語る、驚異的な美脚と優雅なカーヴを描くつま先。圧倒的にグラマラスでありながら、一人の生身の女性を感じさせるイザベルの女優魂を見た。2幕で彼女の窮地を救った伯爵に囲われ、籠の鳥となった彼女の生気のない表情、バチストとの再会によって人生を取り戻したかのように見えたものの、彼の妻ナタリーと鉢合わせたことで、決意を込めて静かに去っていくところまで、この役を生きていた。ガランスが街の喧騒の中に消えていった映画をなぞるように、客席の中へ歩き去っていく演出も効果的。テレビ放映では、ガランスはバチストと顔を合わせることなく去っていくのに、この舞台では、ガランスとバチストがオーケストラピットをはさんで対峙し、見つめ合ってから彼女が去っていったように見えたのだが、これは演出の変更だったのだろうか。私の席が1階サイド右側だったため、2幕での劇場のボックス席に座っている設定のガランスの姿が見られなかったのは残念。

心優しく、イノセントで純情なバチストを演じたマチュー・ガニオも好演。中でも、ようやく二人で初めて夜を共にした時の、苦悩の混じったソロはとても美しかった。ここをコンテンポラリー風味の踊りに仕上げたジョゼ・マルティネスの功績も大きい。クライマックスのパ・ド・ドゥも美しかった。涙ぐみながら、街の人々の中へと紛れ去っていくガランスを見つめる瞳の演技も見事。

泥棒ラスネール役のバンジャマン・ペッシュは胡散臭さを炸裂させて芸達者さを見せ、伯爵の舞踏会で見せたソロはシャープで喝采を浴びた。ガランスを囲いながらも想いが通じない伯爵を演じたクリストフ・デュケンヌの包容力とせつなさ。夫バチストがガランスと一緒にいるところを見てしまい、1幕の純真さとは打って変わって厳しい表情を見せるナタリー役のレティシア・プジョル。幕間の「オテロ」だけでなく、「ロベール・マケール」で踊り担当として大車輪の活躍を見せたカール・パケットは、憎めないプレイボーイのフレデリック・ルメートルがはまっていた。こうやってみると、エトワールを大勢投入した大変豪華なキャストである。

劇中劇というか、劇中バレエ「ロベール・マルケル」は、アニエス・ルテステュがデザインした、新聞紙をモチーフにしたチュチュがとてもファッショナブルだ。古典をベースにしたプロットレスの華やかな作品で、群舞が揃っていないのはご愛嬌。メーンのバレリーナ役を踊ったオーレリア・ベレはきちっとした古典のテクニックを見せてくれた。また、フロリモン・ロリュー、オーレリアン・ユッテ、グレゴリー・ドミニャックらしっかりした技術を持った男性ダンサーたちの見せ場もあって楽しい。作品の構成として、このような踊り中心のシーンを入れたのは、良いアクセントとなっていた。

このように、大変楽しめた舞台であったが、この作品の最大の魅力だったイザベル・シアラヴォラ、そして私は観られなかったが別キャストでガランス役を演じたアニエス・ルテステュが来シーズンは引退してしまうため、今後の上演はどうなっていくのかが少々気がかりである。バンジャマン・ペッシュ、クリストフ・デュケンヌも引退までの時間はさほど長くない。彼等に代われるエトワールやプルミエを育てていくことが、今後のパリ・オペラ座バレエの大きな課題だろう。いつか、ガルニエでこの作品を観ることができれば良いと思うのだが。

加えて、ノスタルジックさを感じさせる音楽もとても素敵だった。シアター・オーケストラ・トーキョーも好演し、またヴァイオリニスト、ピアニスト、コントラバス、コロネット、アコーディオン、パーカッション奏者を現地から連れてきたのも功を奏した。

2013/06/06

シュツットガルト・バレエの2013/14シーズン

メジャーなカンパニーのシーズン発表の最後が、シュツットガルト・バレエの2013/14シーズンです。

http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2013-14-season/

先シーズンは「ダンサー・イン・ザ・ダーク」と「クラバート」と全幕新作が2作品あったためか、今シーズンは全幕の新作は無し。ミックスプロで、デミス・ヴォルピ、マルコ・ゲッケ、エドワード・クラーグ、そして所属ダンサーであるカタリナ・コツィエルスカ、ロマン・ノヴィツキーとルイス・ステインズの作品が上演されます。ミックスプロに力を入れたシーズンと言えます。

Made In Germany
Black Breath (マルコ・ゲッケ)/Symph(カタリナ・コツィエルスカ)/Are You As Big As Me?(ロマン・ノヴィツキー)/Little Monsters(デミス・ヴォルピ)/Fanfare LX(ダグラス・リー)/カジミールの色(マウロ・ビゴンゼッティ)/エフィ(マルコ・ゲッケ)/モノ・リサ(イツァーク・ガリリ)/Das Siebte Blau(FINALE)(クリスチャン・シュプック)

Breaking Ground
マルコ・ゲッケの新作/フランク・ブリッジの主題による変奏曲(ファン・マーネン)/WorkWithinWork(ウィリアム・フォーサイス)カンパニー初演

Wayferers
エドワード・クラーグの新作/さすらう若者の歌(ベジャール)/デミス・ヴォルピの新作

Dance Lab
カタリナ・コツィエルスカの新作/ルイス・ステインズの新作)/Miniatures (ダグラス・リー)

Young Choreographers 2014 (若手振付家の夕べ)


全幕は、「じゃじゃ馬馴らし」(クランコ)、「クラバート」(ヴォルピ)、「オテロ」(ノイマイヤー)、「オルフェオとエウリディーチェ」(シュプック)、「ロミオとジュリエット」(クランコ)、「ジゼル」が上演されます。

クランコ作品が2作品しかないのはちょっと寂しいです。

恒例の屋外パブリックビューイング「バレエ・イン・ザ・パーク」は「ジゼル」(7月12日)とジョン・クランコ・スクール学校公演(7月13日)
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2013-14-season/ballet-in-the-park-2014/

そして、東京バレエ団がゲストとして、「ザ・カブキ」を上演します。6月7日、8日。
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2013-14-season/the-kabuki/

なお、来シーズンのツアーはこちらでは発表されていないのですが、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で「じゃじゃ馬ならし」と「Made in Germany」(ミックスプロ)を上演します。
http://www.sadlerswells.com/show/Stuttgart-Ballet-The-Taming-of-the-Shrew-Made-in-Germany
11月18日、19日「じゃじゃ馬馴らし」
11月22日、23日「Made In Germany」

ソリストのエリサ・バデネスダニエル・カマルゴがプリンシパルに昇進しました。二人ともとても若く、テクニックも抜群で次代のシュツットガルト・バレエを担うスターの誕生です。またデヴィッド・ムーアとロマン・ノヴィツキーがソリストに昇進しました。

追記:シュツットガルト・バレエのサイトにアップされている来シーズン案内(Eブック)によれば、森田愛海さんがハーフソリストに昇進しているようです。
http://www.stuttgarter-ballett.de/

また、プリンシパルのアレクサンドル・ザイツェフは引退し、エリザベス・メイソンはアメリカのタルサ・バレエに移籍します。

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2013/06/05

新国立劇場バレエ団のダンサー動静

新国立劇場バレエ団ダンサーの動静が、オフィシャルサイトで発表されていました。

http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/30000750.html

プリンシパルの山本隆之さんと川村真樹さんが、登録ダンサー(オノラブル・ダンサー(名誉ダンサー))となります。
また、ファース・トソリストの厚地康雄さんは退団し、バーミンガム・ロイヤルバレエに戻ることになりました。 厚地さんは、6月29日(土)2:00開演の「ドン・キホーテ」でのバジル役が、新国立劇場バレエ団における最後の出演となります。

新国立劇場バレエ団に97年から在籍し、レパートリーとするほとんど全ての作品で主演しており、名実ともに新国立劇場バレエ団のトップ・ダンサーだった山本さん。最近は、「シンデレラ」の義理の姉などキャラクターロールが多かったとは言え、コンテンポラリー作品が得意で平山素子さん振付「兵士の物語」での悪魔役などで光っていたので、登録ダンサーに移られることは寂しいです。

川村さんは、99年秋より在籍して、古典作品の主演を多く務めていました。しばらく出演がなかったのですが、「シンフォニー・イン・C」で復帰し、今月末には「ドン・キホーテ」のキトリ役で出演する予定です。

また、バーミンガム・ロイヤル・バレエを経て2010年より在籍していた厚地さん。長身に甘いマスクで人気のある彼は、「ジゼル」のアフブレヒト役や「シンデレラ」王子役など貴公子役がよく似合っていました。バーミンガムに戻ってしまうのは、日本にいるファンには残念ですが、デヴィッド・ビントレー監督のもとで経験を積み重ねて、さらにステップアップして欲しいと思います。日本でもたまには踊っていただきたいですよね。


ところで、新国立劇場は最近ようやくソーシャルメディアも使い始めたようで、Twitter, Facebook, YouTubeも使うようになりました。デヴィッド・ビントレー芸術監督の来シーズンレパートリーについてのコメント映像もあります。

http://youtu.be/Po22jpUlthU


米沢唯さん、厚地康雄さんが主演した「ジゼル」の新国立劇場バレエ団オフィシャルDVD BOOKSも、6月下旬に発売されます。
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/30000665.html

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2013/06/03

アリーナ・コジョカルとヨハン・コボーがロイヤル・バレエを今シーズン限りで退団

ロイヤル・バレエのオフィシャルサイトでアリーナ・コジョカルとヨハン・コボーの今シーズン限りの退団が発表されていました。

Alina Cojocaru and Johan Kobborg to leave The Royal Ballet at the end of 2012/13 season
http://www.roh.org.uk/news/alina-cojocaru-and-johan-kobborg-to-leave-the-royal-ballet-at-the-end-of-201213-season

アリーナ・コジョカルとヨハン・コボーがロイヤル・バレエを今シーズン限りで「ほかでの芸術的なキャリアを追求するために」退団するとのことです。ロイヤル・オペラハウスでのふたりの最後の出演は6月5日の「マイヤリング」(あさっての公演)で、来日公演、7月10日の「ロイヤル・ガラ」と7月12日の「白鳥の湖」には出演する予定です。

今後の予定については、二人とも踊りは続け、今後の計画についてはまもなく発表するとのことです。

*******
コジョカルは最近はロイヤルでの出演が減っており、ハンブルク・バレエおよびABTでのゲスト出演が増えていました。コボーはここ半年ほど怪我で舞台に立っておらず、また40歳という年齢もあって、引退が近いのではないかと言われていました。最近では、ロイヤル・ニュージーランド・バレエへ「ジゼル」を振りつけるなど、外での活躍が目立っていました。従って、コボーの退団は予想されていたことですが、まだ32歳と若くロイヤルのトップスターであるコジョカルの退団は誰も想像していなかったものだと思われます。来シーズンの「ドン・キホーテ」「ロミオとジュリエット」「ジゼル」などへの出演も決まっていましたが、それらの出演は白紙になったようです。

1999年にロイヤル・バレエに入団したコジョカルとコボーは、まさにロイヤル・バレエの黄金ペアとして、数々のパートナーシップで伝説を作ってきました。今後も彼らは踊り続けるとは言え、大きなショックです。


ロイヤル・バレエは、今シーズン限りで引退が決まっているリアン・ベンジャミン、マーラ・ガレアッツィに続きコジョカルとコボーというプリンシパルを失うことになります。先シーズンには、タマラ・ロホとセルゲイ・ポルーニンも退団しており、プリンシパルの数が大幅に減ることになります(男女7名ずつ)。来シーズンからナタリア・オシポワが入団するとはいえ、プリンシパルが不足しているのは明らかなので、昇格、および他のバレエ団からの移籍の可能性も高そうです。また、ソリストのブライアン・マロニーも今シーズン末に退団します。

今後のコジョカルの出演予定。

July 2013

3rd - Sleeping Beauty - ABT (Met) - (Cornejo)

10th - Gala - Royal Ballet/Tokyo Tour

12th - Swan Lake - Royal Ballet/Tokyo Tour - (Kobborg)

15-19 - Denmark Tour - (Kobborg)


June 2013

5th - Mayerling - Royal Ballet - (Kobborg)

21st - Swan Lake - ABT (Met) - (Cornejo)

25th - Liliom - Hamburg Ballet - (Jung)

30th - Nijinsky Gala - Hamburg Ballet


追記:Guardianの記事。こちらでは、もしかしたらコボーはどこかのバレエ団の芸術監督になるのでは?と推測しています。
http://www.guardian.co.uk/stage/2013/jun/03/royal-ballet-alina-cojocaru-johan-kobborg-leaving

New York Timesの記事。若干の間違い(コボーの移籍年、コジョカルの年齢など)があります。
http://artsbeat.blogs.nytimes.com/2013/06/03/two-principal-dancers-to-leave-royal-ballet/

さらに追記
ABTが発表しましたが、6月21日にコジョカルが出演を予定していた「白鳥の湖」は、コジョカルの怪我のため、オデット/オディール役がマリア・コチェトコワ(サンフランシスコ・バレエ)に代わりました。コジョカルの怪我の具合も気になります。
http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=439

追記
コジョカルとコボーのロイヤルオペラハウスでの最後の公演「マイヤリング」写真アルバムが、写真家/ロイヤルのダンサー アンドレイ・ウスペンスキのFacebookにアップされています。素晴らしい写真の数々をぜひご覧下さい。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.183548375142434.1073741833.110186705811935&type=1

こちらも同じウスペンスキの写真ですが、ロイヤル・オペラハウスのFacebookより
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.10151623947407579.1073741844.6597757578&type=1

5/25、26 「マラーホフの贈り物 ファイナル!」Bプロ

Vladimir Malakhov
Iana Salenko
Dinu Tamazlacaru
Maria Eichwald
Marijn Rademaker
Olga Smirnova
Semen Chudin

http://www.nbs.or.jp/stages/1305_malakhov/

「シンデレラ」
振付:ウラジーミル・マラーホフ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ

Aプロと同じ演目だけど、マラーホフのサポートが安定して、ぐっと見ごたえが出てきた。ヤーナのシンデレラに向けるマラーホフ王子の暖かく包み込むような愛情が伝わってくる。ヤーナがリフトされて、空中を歩くような脚の使い方が、とても柔らかくふわふわしていて愛らしく、幸福感を感じさせる。彼女の正確でクリアな踊りがとても映えて素敵だった。


「椿姫」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー

実はマリア・アイシュヴァルトってシュツットガルトではほとんどマルグリット役を踊っていなくて、先シーズンに上演した時も出る予定が、怪我で降板して出演しなかったため、この役は日本でしか踊っていないのではないかと思う。(シュツットガルトに移籍する前のミュンヘンでは演じていた)そして、マリアは全幕作品でマラインと組むことはほとんどない。このペアは、従って日本向けの組み合わせなのだけど、見ただけではそれがわからないところが素晴らしいし、マリアもこの役をしっかりと自分のものにして演じられているのは流石だ。無音の中、鏡の前で佇み、病で衰えてしまった己の姿を見て嘆くマルグリット。ここの無音で鏡の前に立ち尽くすシーンがとても長く感じられた。長椅子の上で身をそらすと、そこへ駆け込んでくるアルマン。コケティッシュに若い彼を翻弄する彼女だが、ストレートなアルマンの情熱の前に、その心も次第に溶けていき、最後の恋に賭けてみようかという気持ちになっていく心の変化を、マリアはわかりやすく、くっきりと見せていた。向こう見ずで、ちょっと怒りんぼうで、初々しくストレートな若いアルマン役はマラインの十八番。切れ味のある踊り、美しい足先と安定したリフト、加えて短いシーンでもドラマを感じさせてくれる演劇性の高さ。「椿姫」の3つのパ・ド・ドゥの中では、私はこの恋の始まりを見せてくれるここが一番好き。


「ジュエルズ」より"ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン

日本の観客の多くは、去年の夏にロパートキナが踊った「ダイヤモンド」の印象が強いため、若いダンサーにとってこの作品はなかなかハードルが高いものだと思われる。マリインスキーで使われているカリンスカの衣装ではなく、ボリショイ・バレエの初演のために、ヴァン・クリーフ・アンド・アーペルとコラボレーションして作られた衣装は、とてもきらびやかで輝いていた。スミルノワのダイヤモンドは、ダイヤモンドの原石といったところだった。長い腕を雄弁に使ってかなりドラマティックに演じており、確かに「ダイヤモンド」の振付の中には「白鳥の湖」のオデットの振付へのオマージュがあるのだが、オデットのようにスミルノワは踊っていた。しかも押し出しがとても強く、ちょっと高飛車なダイヤモンドだった。最後に跪いた男性が女性の手にキスするところで、思わず「黒鳥のパ・ド・ドゥ」のコーダの結びを思い出してしまうほどであった。それはそれで、大変ユニークな解釈だと思う。今年のブノワ賞を受賞したスミルノワだが、その対象作品の中には、この「ダイヤモンド」もあったので、高く評価されているのだろう。チュージンは立ち姿はノーブルで、着地音もとても静か。


「レ・ブルジョワ」
振付:ヴェン・ファン・コーウェンベルク 音楽:ジャック・ブレル
ディヌ・タマズラカル

これもAプロと同じプログラム。タマズラカルのブルジョワもとても良いのだけど、当初予定されていてなくなってしまった「ラ・シルフィード」も観てみたかった。回数を重ねて、演技はより味わいを増して、ライターを探す仕草がとてもコミカルで可笑しい。左右の脚を高く振り上げる跳躍もダイナミックで良かった。


「ライト・レイン」
振付:ジェラルド・アルピノ 音楽:ダグ・アダムズ
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ

エキゾチックでトランス状態に持って行かれそうな妖しげな繰り返される音楽に乗せて、白いユニタードのラカッラを、白いタイツ姿のディノが操るように動かす作品。ラカッラの驚異的に柔軟な肢体、長くしなる美しい脚、強いポワント、180度以上開く股関節を堪能した。思わず頭の中には「妖怪タコ人間」という言葉が浮かんだのはここだけの話。フィニッシュは、寝転がって開脚したディノの上に覆いかぶさったラカッラが同じく脚を広げ、まるで蓮の花かカーマスートラのようで官能的だと思ったら、そのラカッラをそのまま腕2本で持ち上げてしまうのだから、ディノは力持ちだ。まるで生けるギリシャ彫刻のような立派な肉体。赤と黒のスモークを使った効果も、まるで阿片窟のようで、密教的な雰囲気を盛り上げていて、面白かった。


「バレエ・インペリアル」
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ
東京バレエ団

「バレエ・インペリアル」、この演目に使われているチャイコフスキーのピアノコンチェルト2番はとても好きなのだけど、この作品を見ると必ず退屈で、長過ぎると思ってしまう。バランシンの作品の中でも、駄作の部類に入る方ではないかと。上野水香さんが怪我をして代わりにヤーナ・サレンコが踊った。彼女はこの日、3演目と大車輪の活躍ぶり。小柄なヤーナは、ともすれば群舞の中で埋もれてしまいがちだけど存在感はしっかりとしており、足運びはとてもくっきりと正確だった。マラーホフは重く、特に跳躍系はきつそうだったが、真ん中を踊るだけの輝きと貫禄、ムーヴメントの美しさがあって、目は思わず惹きつけられてしまう。東京バレエ団は、ソリストの奈良春夏さんには華があって踊りも大きくてとても良かったし、群舞はよく揃っていたが、バランシンらしい歯切れの良さがなくて湿り気を感じてしまったのと、かなり不揃いな男性ダンサーたちの質を高めて欲しいと感じた。


「ロミオとジュリエット」より第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメーカー

このペアがクランコ版「ロミオとジュリエット」のバルコニーのパ・ド・ドゥを踊るのは、前回の「マラーホフの贈り物」と世界バレエフェスティバルに続いて3回目。せっかくだったら別の演目、特にAプロで予定されていながら上演されなかった「伝説(Legende)」を観たかったけど、でもクランコの「ロミオとジュリエット」は大好きな演目。ただ、このガラ仕様のバルコニーはおそらくマクミラン版の使い回しのセットのようなので、この版の特徴である、別れ際の懸垂キスが見られないのが残念。

マリア・アイシュヴァルトのジュリエットは、初々しい。特に後半の、キスをされた陶酔感のあまり、パドブレで後ずさりしながら後ろへ倒れていくところが可愛らしい。リフトされているポーズもとてもきれい。初恋の歓び、高鳴る胸の鼓動が聞こえてくるようだ。クランコ版の振付はシンプルで、音楽的で、優しさにあふれている。特にバルコニーから一段ずつ、ジュリエットをロミオが抱きかかえて下ろしていくところが素敵。肩載せリフトや逆さまリフトはあっても、敢えて難しくしたところや複雑さがないところがいい。リフトなどサポートの上手さ、スムーズさについてマラインは完璧だし、伸びやかなランベルセ、ダイナミックなトゥールザンレールや大きなカンブレからのゆったりとした腕の使い方などの緩急の差も、熱い恋心を伝える。実はマラインはAプロとBプロの間に風邪をひいてしまって体調が良くなかったとのことだが、25日に1回着地ですこしずれた以外は、そのような様子は微塵も感じさせなかった。26日には無事体調も戻ったようである。次のシュツットガルト・バレエの来日公演は、ぜひ「ロミオとジュリエット」と「オネーギン」でお願いしたい。


「タランテラ」
振付:ジョージ・バランシン 音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク
ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル

ヤーナとディヌの明るくキレの良い踊りに合ったプログラム。キュートなヤーナがタンバリンを持って、左右に背中を反らせながらジャンプするコケティッシュなエスプリの効かせ方も小気味よいし、ポワントでの深い2番プリエで足の甲をしならせるところもきれい。スピーディな振り付けに二人ともよく乗っている(乗っているあまりヤーナはアクセサリーを飛ばしていた)し、息もすごくよく合っていて、ウキウキと楽しい気持ちになった。最後に下手に捌けていくときのディヌのキスと、驚いたように去っていくヤーナが可愛くて。このペアは、このガラで魅力を十分発揮したと思うけど、特にこれは観る人を幸せにする演目。休憩の前に長い「バレエ・インペリアル」を踊ったヤーナの、疲れを全く感じさせない体力には脱帽した。


「椿姫」より第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:フレデリック・ショパン
ピアノ:青柳 晋
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ

青柳晋さんのピアノ演奏には思わず聞き惚れた。Aプロの菊池洋子さんも良かったし、今回の「マラーホフの贈り物」では良いピアニストを起用してくれたことで、ガラのクオリティがとても上がったと感じた。「椿姫」2幕のパ・ド・ドゥは、マルグリットとアルマンが愛に満ちた幸せで穏やかな日々を送る様子を描いてい。その幸福が長くは続かないこと、いつかは終わりが来ることを判っているマルグリットの悲しみの中に秘められた、だからこそ今を精一杯慈しもうという気持ち、そして刹那の恋の儚さ、胸を締め付けるような想いを感じさせて欲しい。このペアは、実生活上もカップルであるということもあるが、お互いに夢中でストレートに愛情をあふれさせていて、そのような切なさを感じないのが惜しいところだ。「椿姫」のパ・ド・ドゥの例に漏れず、この場面もリフトが非常に多く、ラカッラはその柔軟で強靭な肢体を美しい形で保ったままサポートされていて、美しい曲線を描いていた。ディノはリフトは頑張っていたけど、時々荷物を運んでいるんじゃないんだから、と感じた。そして彼の感情表現はどうも一本調子で控えめすぎるため、同じ「椿姫」の別のシーンを踊ったシュツットガルトのペアには劣っているように見えてしまった。


「白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン

これもAプロと同じ演目。3回目、4回目となると、スミルノワも安定してきたようで、ベテランダンサーのような落ち着き、どや顔とも表現できる強く自信に満ちた眼差し、堂々とした存在感と押し出しの強さを発揮していた。腕の柔らかさよりも手先のひらひらしているところで表現しているのはやはり気になるが、迫力のあるオディールで、高く突き刺さるつま先も美しくグリゴローヴィチ版のヴァリエーションがよく似合っていた。グランフェッテはBプロでは無事に32回回りきったものの、後半少し不安定になってきたので、このあたりは磨いていってほしいところ。チュージンは、柔らかく音の静かな着地、スケールが大きく前脚が高く上がってスピード感のあるマネージュは見事だし、王子らしいノーブルな雰囲気があった。ただ若いスミルノワに迫力の面では負けていて存在感はやや薄い。


「ヴォヤージュ」
振付::レナート・ツァネラ 音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
ウラジーミル・マラーホフ

Aプロではマラーホフがふくらはぎに違和感を覚えたために踊らなかった「ヴォヤージュ」を、無事にBプロで観ることができたのは嬉しい。マラーホフのシグネチャーとも言える作品。一つの場所にとどまることなく、旅の日々が続き、孤独や葛藤に苛まれ、歓びと悲しみに満ちたダンサーの人生。それでも前を向いて歩き続け飛翔し続ける、そんなマラーホヅの思いが込められている。微笑みながら「バイバイ」と言っているかのように手を振る彼の姿には、思わず胸が締め付けられるように切なくなる。(余談だけど、東日本大震災で津波の被害にあった人が、知人が津波に流されながら、笑いながら手を振って消えていったのが忘れられないという逸話を思い出してしまって、涙が出てきてしまった)上半身裸に白いジャケットを羽織ったマラーホフ、確かに胴回りが太くなり身体も重くなって以前のキレはないが、その変化していった肉体をありのままに受け入れて、今の彼だからこそ表現できるダンサーの人生を体現しており、ひとつひとつのムーヴメントは相変わらず滑らかで美しかった。音のしないしなやかな跳躍、柔軟でエレガントな腕。まだまだ彼は旅の途中なのだと感じ、胸に染み渡るような入魂の踊りだった。

カーテンコールでは、マラーホフは、持ち前のその柔らかなジュッテを二回見せてくれた。観客へ両手を使って投げられるキス、心からの邪気のない笑顔を見ているだけで、彼の純粋な魂を感じて涙ぐんでしまう。「マラー保父の贈り物」という企画はこれで最後だけど、彼はダンサーを引退するわけではない。再び私たちの前で踊ってくれる日を心待ちにしたい。

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マラーホフの「ヴォヤージュ」、そしてルシア・ラカッラの踊りも見られます。

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