デニス・マトヴィエンコがキエフ・バレエ芸術監督を解任される
キエフ・バレエの芸術監督に2011年11月に就任し、意欲的にバレエ団を率いてきたデニス・マトヴィエンコ。昨年末~今年1月の来日公演も高い評価を得ました。また、3月12日には、ニーナ・アナニアシヴィリをゲストに招いて、マカロワ版「ラ・バヤデール」を初演。ニーナがニキヤ、フィリピエワがガムザッティ、マトヴィエンコがソロル役という豪華なキャストでした。(ニーナが踊る最後のニキヤ役だったようです)
そのマトヴィエンコが、キエフ・バレエの芸術監督を解任されてしまいました。そして振付家・教師のAniko Rekhviashviliが芸術監督に就任したとのことです。
キエフ・バレエのオフィシャルサイトのアナウンス(ウクライナ語)
http://www.opera.com.ua/ua/novini/do-uvagi-zasobiv-masovoj-informacij.html
新聞記事(英語、見出しのみ)
http://www.kyivpost.com/guide/theaters/scandal-in-national-opera-world-famous-ballet-star-matvienko-fired-322989.html
詳しい経過については、Ballet Alertのフォーラムで読むことができます。
http://balletalert.invisionzone.com/index.php?/topic/37030-matvienko-fired-at-kiev-opera-ballet/#entry317674
2012年11月に契約更新の書類にサインして提出したマトヴィエンコでしたが、劇場の総裁がその書類に署名しておらず、そのため、契約自体が更新されていなかったとのことです。そして、10日前に、劇場のオフィシャルサイトの芸術監督のところから彼の名前が外されており、ソリストの欄にのみプロフィールが掲載されていたことに気がついたそうです。
マトヴィエンコのインタビューによれば、彼はウクライナのバレエのレベルを国際的なレベルに引き上げるために努力してきたそうです。仕事をしない振付家・教師を解任し、代わりに海外から教師を招こうとしたとのことです。しかし劇場の総裁が彼の仕事を気に入らず、結果的に彼は解任されてしまったようです。
劇場側は、彼は新作を上演していないことを解任の理由としていますが、実際には、上記のマカロワ版「ラ・バヤデール」はカンパニー初演であり、またそのほか、エドワード・クルーグのダブル・ビル(「レイディオ・アンド・ジュリエット」ほか)を初演しています。さらに、レイディオヘッドの曲を使った「レイディオ・アンド・ジュリエット」が録音された音源を使っていることも問題にされていて、アカデミックな劇場の雰囲気を壊すとしていますが、「ラ・バヤデール」はもちろんオーケストラ演奏つきで上演されているわけであり、これは難癖にしか過ぎません。マトヴィエンコ自身が振付をした作品が上演されていないので、彼は何もしていない、と解釈しているようです。
劇場のダンサーたちは、彼の解任に対して非常に怒っており、劇場の公式のFacebookやTwitterでも、そのことは表明されています。
ガラ「Kings of The Dance」を主催し、またオシポワやワシーリエフ、セミオノワ、ヴィシニョーワらのマネジメントを手がけているArdaniの代表のセルゲイ・ダニラン氏も、マトヴィエンコの支持を表明し、彼を解任するならウクライナでこの「Kings of The Dance」公演は行わないと語っています。
http://gazeta.ua/ru/articles/culture/_ne-budet-v-kieve-matvienko-ne-budet-zdes-korolej-tanca-sergej-danielyan/492037
後任の芸術監督は無名の人物であり、クラシックバレエの経験も少ないようです。150人もの団員がいる大カンパニーを運営できるのか、疑問視されています。
マトヴィエンコ自身は、ダンサーとして引っ張りだこの状態であり、4月13日にはグルジア国立バレエでニーナ・アナニアシヴィリと「白鳥の湖」を踊り、27日にはボリショイ・バレエで「スパルタクス」のタイトルロールを踊ります。さらに、デヴィッド・ホールバーグが降板したABTの「海賊」と「ドン・キホーテ」にもゲスト出演する予定です。
こちらは、上記ニーナ・アナニアシヴィリとマトヴィエンコの「ラ・バヤデール」についての記事。舞台写真もあります。ニーナは、3月に50歳の誕生日を迎えました。
http://www.inteco.ua/eng/social_responsibility/art/2033.html
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コメント
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naomiさん、はじめまして。
いつもバレエの様々な記事をありがとうございます。
最近色んなバレエ団(というか劇場?)で内部がごたごたしているなぁという印象です。契約更新のタイミングなのかよくわかりませんが、以前からこういうことは起こっていたんでしょうか?ただ、あまり表面化していないだけだったか、いずれにせよ、あまり人事などの争いが表に出てくるのは良くないかなと思います。
上層部のいざこざが早くおさまって、きちんとダンスに取り組める環境になってほしいなと思います。
これからも、バレエの記事楽しみにしています。
投稿: さっちん | 2013/04/13 01:07
さっちんさん、こんにちは。
確かに最近、こういうバレエ団のマネジメントに関わるゴタゴタは増えてきてしまいましたね。ボリショイはもちろんのこと、ENBも前の芸術監督は解任されてしまったし、マラーホフのベルリンもそうです。ロシアは保守派と改革派の争いみたいなのがあるのかな、という感じがするし、ヨーロッパは不況も関係しているのかもしれませんね。
いずれにしても、おっしゃる通り、このようなゴタゴタがなく、アーティストがバレエに専念できる環境になって欲しいと私も願っています。
投稿: naomi | 2013/04/13 22:57