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2013/02/28

2/22 ミュンヘン・バレエ "Zugvögel (Migrant Birds)"(キリアン作品)

氷点下10度と極寒のミュンヘンにて、ミュンヘン・バレエのイリ・キリアン振付"Zugvögel (Migrant Birds)"(渡り鳥)を観てきました。

http://www.bayerische.staatsoper.de/922-ZG9tPWRvbTImaWQ9MTU2MyZsPWVuJnRlcm1pbj02NzQ3-~spielplan~ballett~veranstaltungen~vorstellung.html

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Jiří Kylián

Music by Dirk Haubrich, Han Otten a.o.

Set and Lighting Michael Simon
Costumes Yoshiki Hishinuma (菱沼良樹)
Film Jiří Kylián
Boris Paval Conen
Choreographic assistance Ken Ossola
Music (Film) Han Otten
Costumes (Film) Joke Visser
Music Dirk Haubrich
Artistic direction and choreography Jiří Kylián
Installations, Choreography and Costumes backstage Karine Guizzo
Assistance Yvan Dubreuil

Gast Caroline Geiger

Soloists and corps de ballet of the Bavarian State Ballet

初演のキャスト表
http://www.bayerische.staatsoper.de/upload/media/200907/06/10/rsys_28216_4a51b57745b22.pdf

2009年初演のこの作品は、ミュンヘン・バレエ20周年を記念し、キリアンに委嘱した新作。ミュンヘン・バレエの芸術監督イヴァン・リスカはキリアンと年齢が近く、同じチェコ出身であることから友人関係にあり、その縁でこの作品が振りつけられた。2000年以降、キリアンがNDT以外のカンパニーに新作を振りつけることは少なく、中でも全幕作品は非常に珍しい。

ダンサーを渡り鳥になぞらえ、このバイエルン州立劇場に住み着いた鳥であると設定したこの作品は、劇場そのものにオマージュを捧げたものである。ユニークなところは、舞台上の公演の前に、劇場を案内するツアーがついていること。係員の案内により、観客はいくつかのグループに分かれ、普段は入れない劇場の地下に潜り、機械室や縦横無尽に張り巡らされた通路を歩く。床や壁にダンサーが這いつくばっている。鳥の巨大な卵。撒き散らされた羽根。鳥をかたどったオブジェ。頭や全身を羽根で覆われ鳥に扮したダンサー。カラスの鳴き真似をするダンサー。手を伸ばせば届くようなところで、ダンサーが動く生きた彫刻のように配置されパフォーマンスを行っている。鳥かごの中で踊るダンサー。羽根の壁から頭と腕だけ突き出したダンサー。ダンサーのシルエット。床下から見上げているダンサー。二人のダンサーのやり取り。まさに劇場に住み着いた鳥たちのようだ。主にジュニアカンパニー所属のダンサーたちが、あっと驚くような場所でパフォーマンスを繰り広げている様子はとてもユニークである。最後に階段を上っていくと、そこは劇場の舞台の上。暗い場内の中、渡り鳥のシルエットが映し出されている様子はとても幻想的で美しい。がらんとしたオーケストラ・ピットへと降りていくこともできる。バイエルン州立劇場の舞台の上に立つという珍しい体験もできて、とても楽しかった。

さて、本編は、舞台上のパフォーマンスと、スクリーンに映し出される映像を織り交ぜて展開される。この作品の主演ペアは、初老のダンサー二人ということになっており、初演時は男性はイヴァン・リスカが踊った。女性ダンサーは、キリアンのミューズであるサビーヌ・クッペルベルグが演じる予定だったけど、彼女は怪我をしてしまったため、実際にはミュンヘン・バレエを経てクルベリ・バレエで踊っていた(既に引退)カロリーヌ・ギーガーが踊った。サビーヌ・クッペルベルグは、映像の方で、元バレリーナとして出演している。

かつてこのバイエルン州立劇場でバレリーナだった初老の女性が、少女だった頃の自分を思い出し、劇場内を彷徨うという設定。少女役の女の子が海辺で戯れていると、なんと砂の中にこの劇場の小さな模型が出現して波と砂に洗われるというから面白い。実際の劇場にも砂が運び込まれて劇場は砂まみれ、また白いドレス姿のサビーヌが廊下や衣裳室で衣装のあいだを歩き回ったり、少女が舞台の上で歌っている様子を客席から見守ったり。映像の方も古い映画のようであってちょっと奇妙で、よくできている。

実際のパフォーマンスは、初老のペアと、もっと若いペアの2組のパ・ド・ドゥを中心として展開する。2組が同じ振り付けを踊っても、まったく違った印象を受ける。初老の女性(カロリーヌ・ギーガー)は片方に翼をつけて踊るが、彼女の踊りは人生の哀歓を感じさせて美しい。高い天井からは、ビラビラのような背幕が下がっており、その中から男性ダンサーたちが登場して激しく、時にはヒップホップのような振り付けで旋回し、空のオーケストラ・ピットへと降りて捌けていく。サングラスを着用して黒いスタイリッシュなドレスに身を包んだ女性二人による、最高にクールな踊り。男女3人によるパ・ド・トロワ、スピーディでスリリングなパ・ド・ドゥ。頭にランプをつけた男性ダンサーたち。ディアゴナルに駆け抜けるダンサーたち。エネルギッシュに、変幻自在に展開する作品だが、中でもインパクトが大きいのが、菱沼良樹による衣装。主人公の初老の女性のドレスを始め、モノトーンで統一され非常にファッショナブルなのだが、同時に斬新さをある。(上半身裸にサスペンダーというのも)黒くて長い裾をマントのようにはためかせてダンサーが駆けていくというのはよくある演出だが、この裾、単なるマントではなく、ヨットの帆のように、風船のように驚く程大きく膨らんでいるのである。おそらくはヘリウムガスで膨らまされているため、踊る方はきっと大変だろう。さらにびっくりするのは、今度は男性ダンサーふたりが、いくつもの連なった、四角くて大きく黒い提灯のような風船を頭から生やしていながら踊るのだ。風船の中に入っているヘリウムと、重力が拮抗していて不思議な印象を与える。これも、空を飛ぶ鳥の象徴の一つなのであろう。

クライマックスとなると、ほぼ全員のダンサーたちがビラビラ幕から飛び出してきて、混沌を感じさせながらも圧倒的な高揚感をもたらす群舞をを繰り広げる。舞台上には、映像にも登場した劇場のミニチュア模型が登場し、天井がパカッと外れたけと思うと、初老カップルがこの中から登場する。しまいには、この劇場模型は火を噴いて爆発し、中から真っ赤な羽が飛び散るのだ。実際の舞台上でのパフォーマンス時間は1時間程度ではあるが、変幻自在で、緊張感があって、多彩な振付、あいだに挟み込まれた映像と片時も飽きることがない。”キリアン風”の振付は今では世界中で見られるが、イリ・キリアンという人の才能は、これらのフォロワーとは一線を画す斬新さが今なおあって、心臓が高鳴るワクワクする時間を過ごすことができた。

昨年亡くなった高名なバレエ評論家 Horst Koegler氏による初演時の批評(英語)も併せて。
http://tanznetz.de/blog/14750/in-the-wake-of-dante%25e2%2580%2599s-divina-commedia-and-kafka%25e2%2580%2599s-%25e2%2580%259cmetamorphosis%25e2%2580%259d

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