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« 第13回英国ナショナルダンスアワード発表 | トップページ | マラーホフ、ベルリン国立バレエ芸術監督を2014年夏で退任 »

2013/01/30

フィーリン襲撃事件続報、ボリショイ・バレエ関連情報

今日、朝「スッキリ」という情報番組を見ていたら、ボリショイ・バレエでのセルゲイ・フィーリン襲撃事件についてかなり時間を割いて取り上げていました。テレビをつけたのが途中だったので、もっと取り上げていたのかもしれません。岩田守弘さんの電話インタビュー、ニコライ・ツィスカリーゼが取り調べを受けた件で彼のコメントを放映、などです。岩田さんは、フィーリンとツィスカリーゼの確執については知らなかったと話していました。ツィスカリーゼは”保守派”とされていて、彼のバックには強力なファン組織がついていることなどなど。

そのフィーリンですが、ロシアのテレビ番組に、中継で生出演をしていました。

こちらでその番組映像を見ることができます。
http://www.ntv.ru/novosti/453119/

頭は剃られていて包帯で巻かれ、首の周りにも包帯が巻かれていますが、顔そのものには包帯などは巻かれていません。中継映像なのではっきりとはわかりませんが、顔はあまりダメージを受けていないように見受けられます。目は閉じられているので見えているかどうかはわかりません。何回も手術を受けているとのことですが、しっかりとした口調で話しています。でも、こんな大変な目に遭った直後にテレビに出演しなくてはならないのは、なんとも気の毒に思えます。

このテレビ出演の様子はGuardianの記事にも載っています。
http://www.guardian.co.uk/stage/2013/jan/28/bolshoi-acid-attack-director-forgives

すでに目の手術を3回受けたフィーリン。病室の彼の元に司祭がやってきたところ、彼はその司祭に「私は今回の事件に関わった全ての人を許すし、裁きを下すのは神になるだろう。人々は弱いものだから」と言ったとのこと。誰がこの襲撃事件の背後にいるのかはわからないけれども、彼のボリショイでの仕事に関わっている誰かだろうと考えているそうです。「約束する、ボリショイの舞台に戻ってくることを」

New York Timesでも詳しい記事が載っています。
http://www.nytimes.com/2013/01/29/arts/dance/bolshoi-ballet-carries-on-amid-acid-attack-scandal.html

事件の捜査は続いていますが、ボリショイでの舞台は続けられ、テレビの報道では事件後最初の舞台「ラ・バヤデール」のカーテンコールで、主演したザハロワがフィーリンへの支援を訴えるスピーチを行った様子が流れました。「ラ・バヤデール」のプログラムノートにフィーリンは文章を寄せ、渦中の人であるツィスカリーゼは日曜日の「白鳥の湖」の公演のリハーサルに励んでいました。メディア向けにバックステージツアーが行われましたが、ダンサーたちは黙々と日々の鍛錬に明け暮れていました。舞台スタッフのひとりは、「この劇場では数千人もの人々が働いていて巨大な組織となっている。フィーリンのような重要な人物が倒れたとしても、劇場での舞台は続けられなければならない、それがここの務めだから」実際、ボリショイの長い歴史の中で、劇場は3度焼け落ちています。

「ラ・バヤデール」の初日の前に、フィーリンはスカイプを使い、舞台の中央に置かれたiPadに向けてダンサーたちへのメッセージを送りました。彼らダンサーたちを深く愛しており、全てを忘れて「踊り続けるように」と指示したそうです。

ニコライ・ツィスカリーゼが取り調べを受けたことは大きく報道されており、本人はそのことについてメディアに登場することで、疑いを晴らそうとしています。彼のコメントによれば、彼は事件当日、フィーリンも出席したモスクワ音楽劇場でのガラ公演に出席しており、夜の12時半まで劇場に残っておりその映像もはっきり映っていることからしっかりしたアリバイがあるとのことです。(先に帰宅したフィーリンが襲撃されたのは11時頃)

ツィスカリーゼとフィーリンは長いこと口をきいていない間柄ではありますが、ツィスカリーゼによればフィーリンの襲撃が彼の地位を狙う者によるものではないかという推測は疑わしいと語っています。「色々な仮説が考えられるけれども、プロの仕業であるとは考えにくい」と。警察のスポークスマンは、目撃者に嘘発見器でのテストを受けさせると語っていますが、誰が受けさせられるかは発表していません。ボリショイ劇場のイクサーノフ総裁も、ツィスカリーゼが事件の背景にいるとは思えないと語っています。


この記事にもあるように、ボリショイでの舞台は通常通り続いており、「ラ・バヤデール」の公演はボリショイ劇場のオフィシャルYouTube(こちらはロシア国内でのみ視聴可能)と、世界中の映画館で中継されました。出演はスヴェトラーナ・ザハロワ、ウラディスラフ・ラントーラトフ、マリーヤ・アレクサンドロワです。


そして事件の前に発表はされていたのですが、ボリショイ劇場のオフィシャルサイトで、昇進の発表が28日に行われました。

http://www.bolshoi.ru/en/about/press/articles/


アルチョム・オフチャレンコがプリンシパルに昇進
クリスティーナ・クレトワがリーディング・ソリストに昇進
アナスタシア・メスコワとヴィタリー・ビクティミロフがファーストソリストに昇進
クリスティナ・カラショーヴァ、ユリア・ルンキナ、カリム・アブドゥーリン、イーゴリ・ツヴィルコがソリストに昇進。

ユリア・ルンキナはスヴェトラーナ・ルンキナの妹です。


ところで、このスヴェトラーナ・ルンキナが今シーズン、ボリショイの舞台に立っていないという事態が発生しています。そして最近、ロシアの新聞で報道されていることによれば、彼女と夫のVladislav Moskalev氏が脅迫されていて、Facebookやメールなどもハッキングされ、身の危険を感じたことから家族共々カナダのトロントに逃げているとのことです。イズベチヤ紙には、彼女のインタビューが掲載されています。

http://izvestia.ru/news/543784

実は私は、12月にナショナル・バレエ・オブ・カナダの「ジゼル」を観に行ったとき、ルンキナが客席にいるのを見かけ、そして関係者から彼女が今トロントに住んでいてナショナル・バレエ・オブ・カナダのクラスレッスンにも参加しているらしいという話を聞いていたのです。

詳しい顛末はこちでも報道されています。(ロシア語)
http://www.mn.ru/friday/20130124/336129037.html

ルンキナの夫君は、「21世紀のエトワール」ガラを主催しているプロモーターなのですが、このブログでも回想録を紹介したバレリーナ、マチルダ・クシェシンスカヤの生涯を映画化する企画にVladimir Vinokur氏と取り組んでいました。ところが、なにかの行き違いがあってVinokur氏がルンキナの夫を訴え、彼から世界中の劇場宛にふたりを中傷する手紙が送られ、そして脅迫が来るようになったとのことです。実際、ジョン・ノイマイヤーの元にもこの手紙が届いたとのことで、彼からルンキナはその手紙を見せられたそうです。

ルンキナはボリショイ劇場、そしてフィーリンに助けを求めたものの、ボリショイ側からは手は差し伸べられなかったとのこと。彼女は、ウェイン・マクレガーの「クローマ」に出演して大変高い評価を得て、今シーズン予定されているマクレガーのボリショイ劇場での新作「春の祭典」、そしてマッツ・エックの作品への出演も予定され、長年待ち望んでいたプロジェクトで大変楽しみにしていたそうで、これらの作品に出演できないことをとても残念に思っているとのこと。今シーズン末までの休暇を劇場に申請しているそうです。

フィーリンの襲撃事件については、ルンキナはもちろん大変な恐怖と悲しみを感じているそう。ボリショイ劇場の関係者がこんなことをするということは考えられない。犯人は劇場の人ではないけれど、劇場やバレエに対して利害関係がある人なのかもしれないと考えているとのことです。しかし、最近になって、フィーリンが「ルンキナはボリショイには復帰しない」と聞いているのを知って、自分は彼には必要とされていないと思ったそうです。それでも、彼女はボリショイへの復帰を望んでいるとのこと。

1997年にボリショイ・バレエに入団してから、輝かしいキャリアを築いてきたルンキナ。「ジゼル」(ボリショイの歴史上最年少のジゼル役)、「白鳥の湖」などの古典ばかりではなく、前述のように最近ではマクレガー作品など現代作品でも実力を発揮してきました。事態が解決してボリショイに復帰できることを祈るばかりです。

こちらの記事とほぼ同じ内容が、フランスのニュースでも報道されています。
http://www.france24.com/en/20130129-top-bolshoi-ballerina-flees-russia-after-threats

また、カナダの新聞にもこの件は報じられました。
http://www.theglobeandmail.com/news/world/bolshoi-ballerina-flees-to-canada-after-threats-practices-with-national-ballet/article7937024/

ロシアのバレエ界をめぐる闇は深いようです。

追記:ルンキナの件は、日本語のニュースにも登場しました。
ボリショイ・バレエのトップバレリーナ、脅迫受けて出国
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2924451/10187311

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バレエ(情報)」カテゴリの記事

コメント

お~い、原文読みましたが、priestは「牧師」ではないですよ~。牧師(pastor)はプロテスタントの教役者で、ロシア正教会も含む東方正教会はpriestはカトリックと同じで日本語では司祭あるいは神父ですよ。

・・・先日、仕事で会ったロシア人バレエダンサーもツィスカリーゼの名前を出してましたね。
あの国は有名劇場の芸術監督ということだけでそんな危険にさらされるのを覚悟しなくてはならないのでしょうか?
(昼行灯と言われた先代の芸術監督はあまり危険な目に会ってなかったような・・・苦笑。それだけ何もしてなかったのか?ブルラーカさん、批判してすみません。)

フィーリン氏とは原因は異なるもののブリヤンツェフにいたっては殺されているし、管理者様もおっしゃっていたとおりオレグ・ヴィノグラードフも、芸術監督ではないですが化粧が濃くて太りすぎで劇場を追われたとか整形手術のやりすぎとかで悪評高いバレリーナのお父さんも襲撃されています。
ロシアも地に堕ちた感じです。

詳しいレポートをありがとうございます。フィーリン、立派だなーとひたすら感心してます。
それにしてもロシアバレエ界、なんだかメチャクチャになってますね。
以前ナオミさんがレポートしてくださったマリインスキーのダンサーたちの現状も信じられないくらい悲惨なものでしたし、ボリショイにも凄まじい政治闘争があるようですし、ミハイロフスキーはついにバナナ王が破産して(個人的にはザマアミロですが。ロシアの成金、嫌いなんです)、今いるダンサーたちの去就か微妙になってますし。なんだかロシア社会の混沌がそのまま劇場にも反映されているような気もします。
話は変わりますが、ジェイソンのオネーギン、良かったですよー。
ナオミさんがおっしゃっていたように、パートナリングがうまいんですね。演技もバッチリで、周りにいた人たちも、かえって代役でよかったかも、と言い合ってました。コジョカルも素晴らしかった!彼女はロイヤルの中ではa league of her ownって感じです。惜しむらくは、高田茜さんがオリガ役にまったく合わなかったこと。わざとらしい笑顔や教科書通りの踊りにゲンナリ。ロイヤルは多国籍軍で、それが全然気にならない時もあるのですが、オネーギンに関しては、ヴィジュアルの統一感が欲しかったと思いました。(あれ?同じようなドラマティックバレエでも、スージンカンは全然気にならない。はやりダンサー自体の問題かもしれません笑)

詳しい情報ありがとうございます。いつも感謝しております。

ツィスカリーゼが疑われるというのは非常に悲しいです。ルンキナ夫妻の件も知らなかったですがこわいですね。
しかし、バレエ界に閉じた確執のように報じられているけど、私は違うと思います。
私はもともとオペラファンなので思うのですが、劇場は総合芸術の場であるため、バレエだけのものではないです。バレエの繁栄や改革の成功、目立っていることをオペラ側やオケが好ましくないと思うことはよくあることです。
ツィスカリーゼが疑われるというのもファンとしては腑に落ちません。グルジア人で古株で、でもボリショイをよく知っていて愛している、かつバレエを愛しているゆえに一言物申すタイプだけど、そのキャラクターや出身からターゲットとしてすぐ狙われやすいだけだと思います。
ずーっとロシアで、こういう存在で苦労しながらも実力で存在してきた彼が今頃になってそんな馬鹿なことをするかしら?
ツィスカリーゼが事件の背景にいるとは思えないと私も強く強く思っています。
彼は貴重なご意見番ですよね。フィーリンとそりが合わなくとも、フィーリンの業績を妬んだりはしないと思います。彼には彼の美学があるというか、酸をかけるなんて姑息なことを考えたり仕組んだりする人ではないと思います。

どうも安易な取調べという気がして仕方がない。ロシアの警察は大丈夫なのでしょうか。
バレエ関係者内の確執として演出しようとしている空気があって、マンマと惑わされているような感じがします。

ちょうちょさん、こんばんは。

お返事が遅くなってしまってすみません。いい加減な翻訳をしてしまったのがバレてしまいました。

おっしゃる通り、なんでバレエ団の芸術監督をしているだけでこんな命を狙われたり失明させられそうになるのかって感じです。スタートはいえ、ツィスカリーゼが実際この件に関わっているとは到底思えないけど、なんだかロシアの社会には大きな闇がある感じがしますね。ブリヤンツェフもモスクワ音楽劇場の舞踊監督でしたものね。ブルラーカ氏は、政治的なことにはあまり関心のない学者肌の人でしたよね。

ポチさん、こんばんは。

フィーリンの視力は回復しているみたいで、今日のテレグラフの記事で、視力検査表の最初の4つの図は見ることができるまで良くなったようです。
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/russia/9837370/Bolshoi-director-able-to-read-first-four-lines-of-opticians-chart.html
ミハイロフスキーはバナナ王さんは破産してしまったみたいですが、バレエ団自体は大丈夫みたいです。ダンサーたちは一生懸命頑張っていると思うので、踏ん張って欲しいところです。

ジェイソンのオネーギン、良かったですか!コジョカルのタチヤーナは以前観たときも素晴らしかったので、きっと良い舞台だったでしょうね。そして高田さん、実は私も前回オルガ役で見たときにそう思ってしまいました。彼女はちょっと顔芸が鼻につくというか。(ローザンヌでジゼル踊った時もそうでした)モスクワ舞踊アカデミー出身だから踊りがロシアで、ロイヤルで観るとメソッドの違いが目立ってしまうのですよね。ほかのバレエ団でだったらそうは思わなかったかもしれないけど。

ヨハンは結局怪我が長引いてしまったようで、オネーギンには出演できず4回ともジェイソンになったのですね。ヨハン、怪我が早く治りますように。

buminekoさん、こんにちは。

真相は未だ闇の中で、硫酸をかけた実行犯もまだ捕まっていないのですよね。私も、今回の件は、劇場に利害関係がある人の仕業の可能性はあると思うけど、劇場そのものの人ではないと思うし、ましてやツィスカリーゼは全然関係ないと思っています。おっしゃる通り、彼はそんな姑息なことをするような人ではありません。ある意味、彼が目立つ存在であること、もともと今のボリショイに対して批判的だったということを利用されてスケープゴートにされてしまっているのでは、という気がします。おっしゃる通り、彼には彼の美学、芸術があり、教師としても活動しているし、ロシアバレエ界への貢献も大きいし、彼のようにボリショイの伝統を大事にする存在は必要だと思います。(また、ロシアは同性愛に対して非寛容なので、彼のようなキャラは叩かれやすいのかもしれません)

とにかく、事件からしばらく経っているのに、捜査が進展していないように思えますし、何かもっと巨大な陰謀があるのではないかと勘ぐってしまいますよね。

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