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« フィーリン襲撃事件続報(アップデート中) | トップページ | 1/21 新国立劇場バレエ団「ダイナミック・ダンス」公開リハーサル »

2013/01/21

1・6,7 ブベニチェク・ニューイヤーガラ Bubenicek New Year Gala

とても素晴らしい公演だった!こんなすごい公演を開いてくれたブベニチェク兄弟と、主催者、関係者、出演者の皆さんに深く御礼をしたいです。すっかり遅くなりましたが感想です。

http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/12_canon/index.html

細かいクレジットはブベニチェク兄弟のサイトで見られます。
http://bubenicek.eu/LBB_prg_japan2013.html

「トッカータ」(日本初演)
振付:イリ・ブベニチェク
音楽: O.ブベニチェク

ドロテ・ジルベール、カテリーナ・マルコフスカヤ、アンナ・メルクロヴァ、エルヴェ・モロー、ヨン・ヴァイエホ、クラウディオ・カンジアロッシ、マイケル・タッカー

NYCBのために振付けられたこの作品は、バランシンへのオマージュが捧げられているという。プロットレス・バレエで、非常に音楽的であるという点ではバランシン的なのだけど、雰囲気はだいぶ違っている。ビビッドな色の半透明のトップスという衣装。無音で始まり、オットーが作曲したというピアノの鍵盤の響きが印象的な現代音楽的な曲を使って踊る。終わりもまた無音。無音の時の動きが非常に面白いのと、7人のダンサーの組み合わせの妙、3組と一人のソリストが違うテンポで踊っていたりするところがとても興味深い。基本的には3組のペアなのだけど、男女のパ・ド・ドゥの途中で別の男性が代わって踊ったりして、男女、時には男男の移つろいゆく心、パ・ド・トロワで表現された三角関係なども描いていて、情感溢れた流麗な動きに、思わず切ない気持ちにさせられる。イリの振り付けの特徴は、上半身が非常に雄弁なところで、この作品に出演しているダンサーは上半身がしなやかで、手脚がそれほど長くなくても上半身がよく動いて語りかけてくる。パリ・オペラ座の二人はドレスデン・バレエのダンサーたちとはメソッドが違うことを感じさせ、上半身より下半身が強いのがわかる。ひときわ背が高くて手脚が長く、プロポーションに恵まれているエルヴェ・モローは実にエレガントで、とてもよく身体が動いており、絶好調の模様。ドロテ・ジルベールはこの中ではスターの輝きがあって華やかだ。最後にソロを踊ったクラウディオ・カンジアロッシマイケル・タッカーのスピーディな動きにも引きつけられた。


「ドリアン・グレイの肖像」(日本初演)
振付:イリ・ブベニチェク
音楽: K.ジャレット、B.モレッティ

ドリアン・グレイ:オットー・ブベニチェク
画家バジル・ホールウッド:イリ・ブベニチェク
ヘンリー・ウォットン卿:イリ・ブベニチェク
ドリアン・グレイの肖像:イリ・ブベニチェク
シビル・ヴェイン:ラケル・マルティネス

オスカー・ワイルド原作「ドリアン・グレイの肖像」は、最近バレエ化されることの多い作品。2003年にABTでロバート・ヒルがバレエ化したのを観たのだが、肖像をダンサーに踊らせるというアイディア以外は平凡な作品だった。一方、マシュー・ボーンが振付けた「ドリアン・グレイ」は、ドリアン・グレイを男性モデル、画家バジルをカメラマン、ヘンリー・ウォットン卿を女性レディH、そしてシビルを男性の恋人というひねりのある設定にして、ダークな作品ながら大変面白かった。(余談だけど、この夏Bunkamuraでこの「ドリアン・グレイ」が上演されるのだけど、これがニューアドベンチャーズのダンサーではなく、日本人ダンサーを起用しての公演ということで、正直大変残念である)

さて、イリ・ブベニチェク版の「ドリアン・グレイの肖像」は、画家バジルとウォットン卿を同一人物=イリが演じ、しかもドリアン・グレイ役を一卵性双生児であるオットーが演じるというキャスティングを巧みに活用している。イリは、佇まいや動きでバジルとウォットンをうまく演じ分けているのだが、途中で二人のダンサーが上着を脱いで上半身裸になると、両方の見分けがつきにくくなることで、ドリアン・グレイのアイデンティティの分裂、そして崩壊を描いている。二つ、そして三つのキャラクターが絡み合って、時には相手を支配するように、時には愛を交わすように対峙する様子には緊張感があり、そして官能的である。さらに、ドリアン・グレイの恋人シビルも加わってのパ・ド・ドゥ、パ・ド・トロワも登場すると、より立体的にキャラクターの関係が浮き彫りになる。ドリアンとシビルのパ・ド・ドゥはリフトを多用した美しいもので、シビル役のラケル・マルティネスはとても可憐。だがパ・ド・トロワになると陰影が深くなり、ドリアンとシビルが引き裂かれる運命が示唆されている。このパ・ド・トロワにはノイマイヤーの振付の影響が大きく見られた。息詰まるような3つの魂の交錯がやがて破局へと至っていくプロセスは、さらに練り上げられる余地はあるものの、一瞬たりとも目が離せない鮮烈な作品に仕上がった。


「牧神」(日本初演)
振付:イリ・ブベニチェク
音楽: F.プーランク、C.ドビュッシー

ラファエル・クム=マルケ、ヨン・ヴァイエホ、クラウディオ・カンジアロッシ、
マキシミリアン・ゲノフ、ファビアン・ボランジェ、マイケル・タッカー、ジャン・オラティンスキー、フランチェスコ・ピオ・リッチ

1月16日より、ドレスデン・バレエで「Les Ballets Russes – Reloaded」というプログラムが上演され、この「牧神」も上演されるのだが、プログラム自体がたいへん興味深い。というのは、バレエ・リュス作品をそのまま上演するのはバランシンの「アポロ」だけであって、このブベニチェク版「牧神」の他に上演される「春の祭典」(Jacopo Godani)「結婚」(Stijn Celis振付)も2012年の新作であることだ。

背景が区切られ、十字架の形に光がくっきりと浮かび上がっていて、安藤忠雄の「光の教会」を思わせる舞台演出。この十字架の太さが時間経過とともに変化していき、色も真っ赤へと変わっていく。秘密儀式が行われている密やかな教会。白い薄い衣を身につけた少年僧たちが一心不乱に祈りを捧げ、中央には赤い法衣をまとった長身で威厳あふれる司祭ラファエル・クム=マルケ。薄い青い瞳、少しヴァンサン・カッセルに似ている容姿。音楽がドビュッシーの「牧神の午後」に変わると、少年僧たちは白い衣を脱ぎ、一人の少年(ヨン・ヴァイエホ)がおずおずと前に出てくる。そしてニジンスキー版の「牧神の午後」の牧神を思わせる姿の牧神(クラウディオ・カンジアロッシ)が、あの独特の横向きギリシャ風のポーズをしなやかに取りながら妖しく身をくねらせる。牧神は、司祭の情欲の象徴なのか。司祭は明らかに少年に対して欲望を抱いている。権力そのものを象徴するような重厚な動きで司祭は時には少年を力づくで押さえつけ、時には三者が絡みあって踊る。司祭と少年の間に牧神が媒介者であるかのようにまとわりつく。赤い上着を脱ぎ、ロザリオを少年の口へと伝わせる司祭。そしてついに己の欲望を満たす司祭。ニンフのヴェールに横たわったニジンスキーの「牧神」のように、少年の衣を手にとって頬を寄せる。少年は放心した表情で虚空を見つめ、牧神は中央の玉座に座って肉欲の勝利を高らかに宣言する。

ニジンスキー振付の「牧神の午後」が初演された時には、跳躍がほとんどなく内向きの脚、横向きのポーズ、そしてラストの自慰行為と大きなスキャンダルとなった。100年後の現代において衝撃的な振付、そしてタブーとはなんだろう。少年に対して性的な妄想を抱きついに自らその欲望を満たしてしまう聖職者というストーリーはスキャンダラスではあるが、今までも映画などの題材には使われてきた主題である。牧神の動きにニジンスキー版「牧神」へのオマージュを捧げつつ、意思を持たない純粋な性欲の象徴である牧神が、邪な情欲を持った司祭の心情を増幅させ悲劇的な結末を呼ぶプロットは確かにインパクトがある。神に身を捧げたはずの聖職者でも、こんなにも罪深いことをしてしまう欲望のもつ力、人間のダークサイドを描ききっている。少年役のヨン・ヴァイエホが童顔でいたいけな雰囲気があるだけに、踏みにじられる様子が痛ましい。

ニジンスキー版「牧神の午後」のモチーフを巧みに取り入れているところがうまい。少年たちの動きは、ニジンスキー版のニンフたちの動きを思わせる。クラウディオ・カンジアロッシの持つしなやかな妖艶さが、メイクと併せて人間ではない、半獣半人の存在を際立たせている。司祭と牧神、少年のパ・ド・トロワの構成はノイマイヤーの影響を感じさせるものの、禁欲性とセクシャルさの両方の要素を感じさせてより妖しくて魅力的。司祭の印象的な赤い衣といい、その下の胸のところが一部シースルーとなっている黒の衣装といい、そして最後の玉座といい、鮮烈な舞台作りの美学も際立っているだけに、その禁断の世界観には震撼させられる。美と欲望の恐ろしさ!


「プレリュードとフーガ」(世界初演)
振付:イリ・ブベニチェク
音楽:D.ショスタコーヴィチ

ドロテ・ジルベール、エルヴェ・モロー
ピアノ:榎本真弓

ショスタコーヴィチのピアノ曲「24の前奏曲とフーガ」。ショスタコーヴィチが、1950年に開催されたバッハ・コンクールの審査員として、同コンクールで優勝したソ連の若く美しいピアニスト、タチアナ・ニコラーエワとの出会いに触発されて作曲した作品ということで、ストーリーはないものの、若い男女が出会ってから次第に恋心が高まっていく様子が爽やかに描かれている。エルヴェ、ドロテとものびやかに、音楽と戯れるように踊り、特にエルヴェの長い腕が歌うように風をはらんで舞っている姿を見ると多幸感で満たされる。美しいけど踊るにはいささか難しそうなピアノ曲の音符を巧みにすくい取るようなパ・ド・ドゥ。次第に熱を帯びてくるふたり。エルヴェの腕に身を任せて仰向けになったドロテと、エルヴェが顔を近づけて見つめ合う甘くロマンティックな幕切れ。若い恋のエッセンスを凝縮したような、胸高鳴らせるこの作品に、イリ・ブベニチェクの才能の別の側面を見た。

「Le Souffle de l'Esprit ー魂のため息ー」「オルガとマリーに捧ぐ」
振付:イリ・ブベニチェク
音楽: J.パッヘルベル、J.S.バッハ、R.ホフステッター、O.ブベニチェク

男性ソロ:イリ・ブベニチェク、オットー・ブベニチェク、ヨン・ヴァイエホ
女性ソロ:ラケル・マルティネス、ドゥオシー・ジュウ
カテリーナ・マルコフスカヤ、アンナ・メルクロヴァ、クラウディオ・カンジアロッシ、マキシミリアン・ゲノフ、フランチェスコ・ピオ・リッチ、マイケル・タッカー

何回観ても、新しい感動に胸震える名作。フルバージョンは2010年1月のさいたま芸術劇場での公演で観て以来。公演に出演していたために最後の別れができなかった二人の祖母に捧げられた作品。インタビューの中で、イリは、「神は外ではなく、我々の中に存在する」と語っているが、この作品を観ると、自分の内面と対話したくなるとともに、自分の魂が天上の存在と結びついたような、永遠のような瞬間を味わう。何とも言えない懐かしくあたたかい気持ちになり、バッヘルベルやバッハの音楽とともに奏でられる流麗な動き、スクリーンに投影されるダ・ヴィンチの「岩窟の聖母」などの絵画が作り上げる宇宙の中で、自分はひとりではない、何千年にも渡る人間の営みの中で魂は永遠に生き続けているのだという思いがして、自然に涙があふれてくる。

メーンのトリオの他にも、男女パ・ド・ドゥや3人と4人のグループに分けたりした群舞もあるなどヴァリエーション豊富で、変幻自在な構成。中でも、若いカップルののびのびとしたデュエットは微笑ましくて、最後にほっぺたにチュッとするところがとても可愛い。(おそらくはオットー・ブベニチェクだと思われる)男性の手にフォーカスしたソロも印象的だし、地面をゴロゴロと転がったりズサーっと滑ったり深いカンブレといった低い重心を置いた振り付けが多いながらも、同時に跳躍も多用し、上半身を大きく使った雄弁で音楽的な動きが心地よい。この作品の中に身を置いている時間がずっと終わらなければいいのに、って思うほど。白眉はやはりトリオで、オットー・ブベニチェク、イリ・ブベニチェク、ヨン・ヴァイエホの3人がシンクロして躍動する姿は、生の喜びに満ちていた。ソリスト以外のダンサーも、しなやかで、全身で語りかけてくるような表現の豊かさを感じさせてくれる。冒頭と終わりの地響きのような電子音は、天使が降りてきて、そして天へと上っていく音だろうか。ラスト、舞台奥へと歩み去っていく3人、中央のダンサーに一人の女性ダンサーが飛びつくラストにスパイスが効いている。現代作品なのに、この「スフル・ドゥ・レスプリ」ほど、誰が観ても感動できる、分かりやすく普遍性をもった作品はない。きっと長いあいだ踊り継がれ、世界中で愛され続ける、不滅の作品だとなることだろう。人の心が死んだあとも不滅であるように。

5作品がすべてイリ・ブベニチェクの振付作品で、すべてが驚くべきクオリティの高さ、作品も変化に富んでいる。世界初演作品、それも7年ぶりに日本の舞台へと帰ってきたエルヴェ・モローと、満開の花のようなドロテ・ジルベール、そしてBunkamuraのために振り付けられた作品もあるとは、なんと贅沢なことだろう。このような素晴らしいガラを主催してくれたBunkamuraなどの関係者、そしてブベニチェク兄弟、出演者の皆さんに心から感謝したい。そして、第2弾が開催されることを強く願っている。本当に観られて良かった。日本のバレエファンは幸せだと思う。


こちらは、「ル・スフル・ドゥ・レスプリ」「トッカータ」「ドリアン・グレイの肖像の映像が見られます。(オットー・ブベニチェクのチャンネルより)

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コメント

naomiさん、いつも大変参考にさせていただいています。
バレエを習っている小学生の娘と観にいってきました。本当にとっても素敵でしたね!

普段親子で古典ばかり見ていて慣れてないし、娘にはどうかな?と思っていたところ、
最初の「トッカータ」が無音で踊りが始まったので、親子で目を見合わせ・・・。
でも、踊りが進むととっても素敵でセクシーな作品でした。娘には難しかったようですが。。
次の「ドリアン・グレイ」などはストーリーもあり、とても面白かったようです。
「牧神」も私はとても気に入りました。
ドロテ・ジルベールとエルヴェ・モローの小作品はため息が出るような美しさ。
そして最後の「ル・スフル・ドゥ・レスプリ」。
耳に心地よい音楽(最初と最後のオットー作品は胎動みたい・・・?)をバックにした踊りで本当に素敵でした。
娘も娘なりに楽しめたようです。ただいま親子で鼻歌が「カノン」です。(笑)

ブベニチェク兄弟が色男でセクシーで呼吸もぴったり、他のダンサーの方々もとても体がやわらかく身体能力が高いなぁと思いました。

席がかなり空いていたのは残念でした。
「素敵」としか言えないボキャブラリー貧困な私で恐縮ですが、
もう1回見たいと思わせてくれるほど本当に良かったです。


パンダさん、こんにちは。

速報と書きながら1演目しか書いていなくてすみません!
お嬢さんも楽しまれたようで、良かったです!友達と、子供が見るにはちょっと難しいかな、って話していたのですが、小学生のお子さんでも楽しめたのは素晴らしい~。ストーリー性がある作品が多かったので、面白かったですよね。カノンの曲が鼻歌になるってわかります。耳に残るんですよね。ダンサーの皆さんも、本当にしなやかで身体能力が素晴らしい人たちばかり。また近いうちに再演してほしいって思います。

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