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2013年1月

2013/01/30

フィーリン襲撃事件続報、ボリショイ・バレエ関連情報

今日、朝「スッキリ」という情報番組を見ていたら、ボリショイ・バレエでのセルゲイ・フィーリン襲撃事件についてかなり時間を割いて取り上げていました。テレビをつけたのが途中だったので、もっと取り上げていたのかもしれません。岩田守弘さんの電話インタビュー、ニコライ・ツィスカリーゼが取り調べを受けた件で彼のコメントを放映、などです。岩田さんは、フィーリンとツィスカリーゼの確執については知らなかったと話していました。ツィスカリーゼは”保守派”とされていて、彼のバックには強力なファン組織がついていることなどなど。

そのフィーリンですが、ロシアのテレビ番組に、中継で生出演をしていました。

こちらでその番組映像を見ることができます。
http://www.ntv.ru/novosti/453119/

頭は剃られていて包帯で巻かれ、首の周りにも包帯が巻かれていますが、顔そのものには包帯などは巻かれていません。中継映像なのではっきりとはわかりませんが、顔はあまりダメージを受けていないように見受けられます。目は閉じられているので見えているかどうかはわかりません。何回も手術を受けているとのことですが、しっかりとした口調で話しています。でも、こんな大変な目に遭った直後にテレビに出演しなくてはならないのは、なんとも気の毒に思えます。

このテレビ出演の様子はGuardianの記事にも載っています。
http://www.guardian.co.uk/stage/2013/jan/28/bolshoi-acid-attack-director-forgives

すでに目の手術を3回受けたフィーリン。病室の彼の元に司祭がやってきたところ、彼はその司祭に「私は今回の事件に関わった全ての人を許すし、裁きを下すのは神になるだろう。人々は弱いものだから」と言ったとのこと。誰がこの襲撃事件の背後にいるのかはわからないけれども、彼のボリショイでの仕事に関わっている誰かだろうと考えているそうです。「約束する、ボリショイの舞台に戻ってくることを」

New York Timesでも詳しい記事が載っています。
http://www.nytimes.com/2013/01/29/arts/dance/bolshoi-ballet-carries-on-amid-acid-attack-scandal.html

事件の捜査は続いていますが、ボリショイでの舞台は続けられ、テレビの報道では事件後最初の舞台「ラ・バヤデール」のカーテンコールで、主演したザハロワがフィーリンへの支援を訴えるスピーチを行った様子が流れました。「ラ・バヤデール」のプログラムノートにフィーリンは文章を寄せ、渦中の人であるツィスカリーゼは日曜日の「白鳥の湖」の公演のリハーサルに励んでいました。メディア向けにバックステージツアーが行われましたが、ダンサーたちは黙々と日々の鍛錬に明け暮れていました。舞台スタッフのひとりは、「この劇場では数千人もの人々が働いていて巨大な組織となっている。フィーリンのような重要な人物が倒れたとしても、劇場での舞台は続けられなければならない、それがここの務めだから」実際、ボリショイの長い歴史の中で、劇場は3度焼け落ちています。

「ラ・バヤデール」の初日の前に、フィーリンはスカイプを使い、舞台の中央に置かれたiPadに向けてダンサーたちへのメッセージを送りました。彼らダンサーたちを深く愛しており、全てを忘れて「踊り続けるように」と指示したそうです。

ニコライ・ツィスカリーゼが取り調べを受けたことは大きく報道されており、本人はそのことについてメディアに登場することで、疑いを晴らそうとしています。彼のコメントによれば、彼は事件当日、フィーリンも出席したモスクワ音楽劇場でのガラ公演に出席しており、夜の12時半まで劇場に残っておりその映像もはっきり映っていることからしっかりしたアリバイがあるとのことです。(先に帰宅したフィーリンが襲撃されたのは11時頃)

ツィスカリーゼとフィーリンは長いこと口をきいていない間柄ではありますが、ツィスカリーゼによればフィーリンの襲撃が彼の地位を狙う者によるものではないかという推測は疑わしいと語っています。「色々な仮説が考えられるけれども、プロの仕業であるとは考えにくい」と。警察のスポークスマンは、目撃者に嘘発見器でのテストを受けさせると語っていますが、誰が受けさせられるかは発表していません。ボリショイ劇場のイクサーノフ総裁も、ツィスカリーゼが事件の背景にいるとは思えないと語っています。


この記事にもあるように、ボリショイでの舞台は通常通り続いており、「ラ・バヤデール」の公演はボリショイ劇場のオフィシャルYouTube(こちらはロシア国内でのみ視聴可能)と、世界中の映画館で中継されました。出演はスヴェトラーナ・ザハロワ、ウラディスラフ・ラントーラトフ、マリーヤ・アレクサンドロワです。


そして事件の前に発表はされていたのですが、ボリショイ劇場のオフィシャルサイトで、昇進の発表が28日に行われました。

http://www.bolshoi.ru/en/about/press/articles/


アルチョム・オフチャレンコがプリンシパルに昇進
クリスティーナ・クレトワがリーディング・ソリストに昇進
アナスタシア・メスコワとヴィタリー・ビクティミロフがファーストソリストに昇進
クリスティナ・カラショーヴァ、ユリア・ルンキナ、カリム・アブドゥーリン、イーゴリ・ツヴィルコがソリストに昇進。

ユリア・ルンキナはスヴェトラーナ・ルンキナの妹です。


ところで、このスヴェトラーナ・ルンキナが今シーズン、ボリショイの舞台に立っていないという事態が発生しています。そして最近、ロシアの新聞で報道されていることによれば、彼女と夫のVladislav Moskalev氏が脅迫されていて、Facebookやメールなどもハッキングされ、身の危険を感じたことから家族共々カナダのトロントに逃げているとのことです。イズベチヤ紙には、彼女のインタビューが掲載されています。

http://izvestia.ru/news/543784

実は私は、12月にナショナル・バレエ・オブ・カナダの「ジゼル」を観に行ったとき、ルンキナが客席にいるのを見かけ、そして関係者から彼女が今トロントに住んでいてナショナル・バレエ・オブ・カナダのクラスレッスンにも参加しているらしいという話を聞いていたのです。

詳しい顛末はこちでも報道されています。(ロシア語)
http://www.mn.ru/friday/20130124/336129037.html

ルンキナの夫君は、「21世紀のエトワール」ガラを主催しているプロモーターなのですが、このブログでも回想録を紹介したバレリーナ、マチルダ・クシェシンスカヤの生涯を映画化する企画にVladimir Vinokur氏と取り組んでいました。ところが、なにかの行き違いがあってVinokur氏がルンキナの夫を訴え、彼から世界中の劇場宛にふたりを中傷する手紙が送られ、そして脅迫が来るようになったとのことです。実際、ジョン・ノイマイヤーの元にもこの手紙が届いたとのことで、彼からルンキナはその手紙を見せられたそうです。

ルンキナはボリショイ劇場、そしてフィーリンに助けを求めたものの、ボリショイ側からは手は差し伸べられなかったとのこと。彼女は、ウェイン・マクレガーの「クローマ」に出演して大変高い評価を得て、今シーズン予定されているマクレガーのボリショイ劇場での新作「春の祭典」、そしてマッツ・エックの作品への出演も予定され、長年待ち望んでいたプロジェクトで大変楽しみにしていたそうで、これらの作品に出演できないことをとても残念に思っているとのこと。今シーズン末までの休暇を劇場に申請しているそうです。

フィーリンの襲撃事件については、ルンキナはもちろん大変な恐怖と悲しみを感じているそう。ボリショイ劇場の関係者がこんなことをするということは考えられない。犯人は劇場の人ではないけれど、劇場やバレエに対して利害関係がある人なのかもしれないと考えているとのことです。しかし、最近になって、フィーリンが「ルンキナはボリショイには復帰しない」と聞いているのを知って、自分は彼には必要とされていないと思ったそうです。それでも、彼女はボリショイへの復帰を望んでいるとのこと。

1997年にボリショイ・バレエに入団してから、輝かしいキャリアを築いてきたルンキナ。「ジゼル」(ボリショイの歴史上最年少のジゼル役)、「白鳥の湖」などの古典ばかりではなく、前述のように最近ではマクレガー作品など現代作品でも実力を発揮してきました。事態が解決してボリショイに復帰できることを祈るばかりです。

こちらの記事とほぼ同じ内容が、フランスのニュースでも報道されています。
http://www.france24.com/en/20130129-top-bolshoi-ballerina-flees-russia-after-threats

また、カナダの新聞にもこの件は報じられました。
http://www.theglobeandmail.com/news/world/bolshoi-ballerina-flees-to-canada-after-threats-practices-with-national-ballet/article7937024/

ロシアのバレエ界をめぐる闇は深いようです。

追記:ルンキナの件は、日本語のニュースにも登場しました。
ボリショイ・バレエのトップバレリーナ、脅迫受けて出国
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2924451/10187311

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2013/01/29

第13回英国ナショナルダンスアワード発表

英国バレエ界の最高の賞である、第13回ナショナルダンスアワード2013が発表されました。

http://dancetabs.com/2013/01/2012-uk-national-dance-awards-winners-announced/

対象となるのは、2011年9月1日から2012年8月31日のあいだに英国内で上演された作品とダンサーです。

The 2013 Winners

DANCING TIMES AWARD FOR BEST MALE DANCER 最優秀男性ダンサー
Akram KHAN (Akram Khan Company)
アクラム・カーン

GRISHKO AWARD FOR BEST FEMALE DANCER 最優秀女性ダンサー
Marianela NUÑEZ (Royal Ballet)
マリアネラ・ヌニェス(ロイヤル・バレエ)

STEF STEFANOU AWARD FOR OUTSTANDING COMPANY 最優秀カンパニー
Royal Ballet Flanders
ロイヤル・バレエ・オブ・フランダース

BEST CLASSICAL CHOREOGRAPHY
Annabelle LOPEZ OCHOA (‘A Streetcar Named Desire’ for Scottish Ballet)
クラシックバレエ振付賞
アナベル・ロペス=オチョア(「欲望という名の電車」スコティッシュ・バレエ)

BEST MODERN CHOREOGRAPHY
Arthur PITA (‘The Metamorphosis’)
モダン振付賞
アーサー・ピタ(「変身」ロイヤル・オペラ・ハウス)

OUTSTANDING FEMALE PERFORMANCE (CLASSICAL)
Ksenia OVSYANICK (English National Ballet)
クラシックバレエ女性ダンサー賞
クセニャ・オフシャニク(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)

OUTSTANDING MALE PERFORMANCE (CLASSICAL)
Zdenek KONVALINA (English National Ballet)
クラシックバレエ男性ダンサー賞
ズデネク・コンヴァリーナ(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)

DANCERS PRO AWARDS FOR OUTSTANDING MODERN PERFORMANCE (FEMALE)
Teneisha BONNER (Zoonation)

DANCERS PRO AWARDS FOR OUTSTANDING MODERN PERFORMANCE (MALE)
Tommy FRANZÉN (Zoonation & Russell Maliphant Company)

BEST INDEPENDENT COMPANY 
Ballet Black
ベスト・インディペンデント・カンパニー
バレエ・ブラック

DE VALOIS AWARD FOR OUTSTANDING ACHIEVEMENT
ROBERT COHAN

DANCE UK INDUSTRY AWARD
JEANETTE SIDDALL


ノミネート者の一覧はこちらのオフィシャルサイトで見ることができます。
http://www.criticscircle.org.uk/dance/?ID=305


この間の週末の彩の国さいたま芸術劇場での「DESH」公演が圧倒的に素晴らしかったアクラム・カーンが最優秀男性ダンサー、映画館で中継された「ジゼル」に主演したマリアネラ・ヌニェスが最優秀女性ダンサーに選ばれました。フォーサイス作品を踊ったロンドン公演が大好評のロイヤル・バレエ・オブ・スランダースが最も傑出したカンパニーに、ENBのクセニャ・オフシャニクとズデネク・コンヴァリーナが最も傑出したクラシックダンサーに選ばれています。

また、クラシック振付賞のアナベル・ロペス=オチョアは、ダニール・シムキンが「インテンシオ」で踊った「気」と「雨」を振りつけた新進気鋭の女性振付家、モダン振付賞のアーサー・ピタはマシュー・ボーンの元で踊っていた人で、「変身」は、カフカの小説のダンス化。エドワード・ワトソンの怪演が話題を呼んだ、ロイヤル・オペラハウスのリンバリー・スタジオでの上演作品です。

2013/01/27

デヴィッド・ビントレーによる、新国立劇場バレエ団2013/14シーズンラインアップ説明会

26日の昼、夜と新国立劇場バレエ団の「ダイナミック・ダンス」公演を見てきたのですが、とても楽しく、バレエ団の充実ぶりを感じられた公演でした。

さて、この昼と夜の公演の間に、デヴィッド・ビントレー芸術監督による2013/14シーズンラインアップ説明会がありました。

(2013/14シーズンラインアップはこちら

今回新シーズンをみなさんに紹介するのは、少し悲しい。今回が最後の発表会になるから、と始めたビントレーさんは感傷的になっていました。

「来シーズン上演するプログラムはとてもエキサイティングで、それぞれが上演するのに大きな意味がある作品です。私たちは、19世紀と21世紀を行き来する毎日となります。私個人としては21世紀志向が高いけどここのお客様は19世紀志向が高いようで(苦笑)。その中でも全幕ではないプログラムを三つ入れることはできましたが、『白鳥の湖』からは逃れることができませんでした。白鳥の湖やくるみ割り人形について私から敢えて話すことはありません」

ストラヴィンスキー・バレエ・リュスプログラム
「12、3歳の時にディアギレフのバレエ・リュスに完全に魅せられました。ピカソ、ストラヴィンスキー、シュトラウス、ドビュッシー、マティスといったアーティスト、パヴロワやニジンスキーのようなダンサー、バランシン、フォーキン、ニジンスキー、ニジンスカといった振付家たち。バレエ・リュスは20年間しか存続しなかったけど、バレエ、アートの世界のすべてを変えました。19世紀と20世紀をつないで発展させたバレエ・リュスは21世紀の私たちにとっても重要なものです。
今回はストラヴィンスキーの夕べです。バレエ・リュスからストラヴィンスキーを抜いてしまうと大きな穴が空いてしまう。バレエ・リュスの作品の中でもそれぞれ個性が違う三作品を上演します。『火の鳥』はロシアのエキゾチシズム。『アポロ』は新古典主義を彷彿させる傑作です。そして私の一番好きな『結婚』。『結婚』が上演できる劇場は滅多にない。音楽、合唱、オーケストラ、ピアノを提供できる新国立劇場だから実現可能となったプログラムです。
アポロ』を振り付けた時バランシンは24歳だったが、すでに自分のスタイルをここで確立していた。彼のすべての作品に『アポロ』の要素がある。今日『コンチェルト・バロッコ』を観ていて、『アポロ』の要素を見ることができた。『シンフォニー・イン・スリームーヴメンツ』にもその要素はあります。かくも若い振付家がこのようなスタイルを持っていたことは驚くべきことです。
NYCBからの振付指導者ダーラ・フーヴァーは、新国立劇場バレエ団を観て、素晴らしい音楽性と正確性にバランシンの真髄を見たと言ってました。今のNYCBはちょっとだめなので…。」

「『大フーガ』のハンス・ファンマーネンも、若い時にスタイルを確立した振付家です。私は13歳の時に、両親がお金を貯めてマーゴ・フォンテーンの出演する公演のチケットを買ってくれて、30マイル旅して観に行きました。残念ながらマーゴはお年を召していてイマイチでしたが、ファンマーネンの『大フーガ』を観てぶっ飛ぶような感動を得たのです。

ジェシカ・ラングはアメリカでは引っ張りだこの振付家です。二年前にDVDで彼女の作品を観て、バーミンガム・ロイヤル・バレエのために作品を作ってもらって成功しました。お客様も喜んでくれました。彼女に新国立劇場バレエ団に作品を作って欲しいとお願いしたところ、私の過去の作品にも美しいものがたくさんあるわと言われたのですが、説得して、新作を新国立劇場バレエ団のために作ってくれることになりました。皆様も絶対に喜んでいただける作品になるはずです」

「最後に紹介する二つのプログラムについては、自己陶酔させてください。

2005年に初めてこのカンパニーで仕事をしたのが、『カルミナ・ブラーナ』で、この時のダンサーたちにも大きな思い入れがあります。今回はロンドンオリンピックを記念した作品『Faster』と組み合わせて上演します。『Faster」は今回上演されている『イン・ジ・アッパー・ルーム』よりも速い作品です。

私のさよなら公演となるのが『パゴダの王子』です。この作品で私の長年の二つの夢を実現することができました。日本をテーマにした作品を作りたかったという夢です。うまくいくか心配だったのですが、結果はなかなかのものだったでしょう?また、ベンジャミン・ブリテンの曲を復活させたかったのです。この曲に日の光を当てたかった。2つの要素を組み合わせて日本風のバレエを作りたかった。その結果には満足しています」


以下は司会者との質疑応答となります。

「オープニング作品に何を持ってこようかと考えられて、ストラヴィンスキー作品を持ってきた理由は?」
「一年のプログラミングを組み合わせるにあたって、『ジゼル』『ドン・キホーテ』『白鳥の湖』だけにさせたくなかったのです。特に私の最後のとしという大事な一年なので、今後カンパニーが行くべき道筋、どんなルーツを持つべきであるかということを明確にしたかったのです。特にディアギレフは重要です。19世紀と21世紀を組み合わせたモノになるからです。ディアギレフの唯一の19世紀作品は「眠れる森の美女」でしたが、これは成功しませんでした。芸術は常に革新を求めるものであり、カンパニーはこういった姿勢を失ってはいけません」

「『Faster』はロンドンオリンピックにインスピレーションを得た新作です。バレエ・リュスがバレエに残した影響はあまりにも大きい。多くの作品の委嘱振り付けが行われました。クラシックバレエの中に、新しい音楽、デザイン、ステップを求めていく勇気が必要です。スキル、そして勇気を持つ振付家も必要です。作曲家と仕事をすることもとても大切なことで、CDを買ってそこに入っている音楽に合わせて振付をするのではなく、新しい音楽を委嘱して作品を作って行くのはエキサイティングなことだし、スリリングだけどリスキーな経験で、このリスクを取ることは必要なことです。

「今シーズンでは『First Steps』という企画でバレエ団ダンサーによる振付作品を紹介しましたね」
「来シーズンは、『Second Steps』という第2弾を開催します。また、ダンスでは中村恩恵さんの新作も上演します。バレエでは常に前に向かって進むことが必要です。ダンサーに振付作品を作ってもらうのは必要なことです。作品を作ってみてどう思うかということを感じること。ダンサーはクリエイティブなアーティストです。与えられた解釈を再現するだけではなく、体験をして、より幅広いセンス、視野を持って欲しいと思います。バレエの中で作る苦しみを感じる、新作を踊ってみるのは大きな意味を持ちます。」

「ジェシカ・ラングと新作を振りつけてもらうために話しました。彼女は大変忙しい人で、過去に自分が振り付けした作品を上演するのはいかがでしょうかと言われましたが、『アラジン』『パゴダの王子』のように、このバレエ団のための作品を作って欲しいと、説得して新作を作ってもらうことにしました」

「今回の『ダイナミック・ダンス』のプログラムを楽しんでくれたら、来シーズンのプログラムも楽しんでもらえると思います。『白鳥の湖』を観に来てくれる人たちが、私たちの給料を払ってくれているわけですが、敢えて今回のプログラムを観ようする人たちが、私たち新国立劇場を支えてくれているのです」

「来シーズンの公演のキャストについて、ヒントを教えていただければ。ゲストは呼ばれるのでしょうか」
「キャストは私自身でもまだ想像できません。私はこのバレエ団のダンサーたちが好きなのです。『アポロ』のアポロ役については、NYCBと話し合ってゲストを招待することになると思います」


来シーズン、2013-14年シーズンがビントレーにとって最後のシーズンとなることもあり、ビントレー氏は時々胸に熱いものがこみ上げていたようでした。ユーモアのある語り口でしたが、その中で、彼が愛情を持ってこのバレエ団と接してきたのが伝わってきました。彼が芸術監督を離れたあとも、ぜひとも、今後の新国立劇場バレエ団のよきサポーターとして、指導をしたり、彼の振付作品が上演されることを祈っています。彼の先進性のあるスピリットが今後も引き継がれますように。

2013/01/25

新国立劇場ビントレー舞踊芸術監督がNHKドキュメンタリー 『NHK TOMORROW beyond 3.11』に登場

日本を愛する外国人が震災後の日本を旅して、明日の復興に向けて歩み始めた日本の姿を伝えるドキュメンタリー&紀行番組 『NHK TOMORROW beyond 3.11』にビントレー監督が登場します。

ビントレー監督は先日、バレエ団の小野絢子とともに福島のバレエ学校を訪ね、コンクールを目指す少女たちと交流しました。

また、先日新国立劇場で行われた「ダイナミック ダンス!」公開リハーサル(※)の模様も取材されました。

放送予定日:
NHK BS1<日本>/3月12日(火)
午後2時00分~2時30分
(再)毎週月曜(日曜深夜)午前3時00分~3時30分

NHKワールド<海外>/ 3月11日(月)
毎週月曜 午前11時30分~午後0時00分(日本時間)

番組概要はこちらから
http://www.nhk.or.jp/ashita/tomorrow/

NHKバレエの饗宴2013、ロバート・テューズリー出演

3月16日に開催されるNHKバレエの饗宴2013ですが、吉田都さんのパートナー、一時ロベルト・ボッレだとアナウンスされていましたが、その後出演者未定となっていました。

昨日、ロバート・テューズリーが自身のFacebookとオフィシャルサイトで、「バレエの饗宴」に吉田都さんと出演してアシュトンの「ラプソディ」を踊ると発表していました。
http://roberttewsley.com/news.html

「バレエの饗宴2013」のオフィシャルサイトでは、まだ吉田都さんのパートナーは未定となっています。

2013/01/24

パリ・オペラ座バレエ団新芸術監督にバンジャマン・ミルピエが決定

追記:公式サイトでもアナウンスがありました。
http://www.operadeparis.fr/actualites/Benjamin-Millepied-nouveau-Directeur-de-la-Danse

現在のブリジット・ルフェーブルが2013-14シーズン末に退任した後、誰が就任するか大変注目されていたパリ・オペラ座バレエ団の新芸術監督が決定しました。フランス時間朝11時半(日本時間7時半)に発表される予定でしたが、その前にNew York Timesにリークされました。

Millepied Will Be New Director of Paris Opera Ballet
http://www.nytimes.com/2013/01/24/arts/dance/benjamin-millepied-to-be-paris-opera-ballet-director.html

NYCBの元プリンシパル(2011年に引退)で、現在は振付家として活躍するとともに、LA Dance Projectという自らのカンパニーを率いているミルピエ。映画「ブラック・スワン」で共演したナタリー・ポートマンの夫であることでも知られています。ボルドー生まれのフランス人ですが、パリ・オペラ座学校ではなく、リヨンのコンセルヴァトゥールを経てスクール・オブ・アメリカン・バレエ出身。パリ・オペラ座バレエにも「Amoveo」「Triad」と過去2作品、小品を振りつけてきました(3作品目を来シーズン振り付ける予定)。1977年生まれで現在35歳という若さです。ミルピエは2014年9月に就任が予定されています。


今まで、現メートル・ド・バレエのローラン・イレール、2014年に現役を引退するニコラ・ル=リッシュ、現ボルドー・バレエの芸術監督シャルル・ジュド、ウィーン国立バレエ芸術監督で成功しているマニュエル・ルグリ、シルヴィ・ギエム、ミラノ・スカラ座芸術監督のワジーエフ、元ボリショイ・バレエの芸術監督アレクセイ・ラトマンスキー、さらにアンジェラン・プレルジョカージュ、ウィリアム・フォーサイスらの名前が有力候補として取り沙汰されてきました。その中で、昨日突然バンジャマン・ミルピエの名前が俎上にあがり、そして最終決定したというもので、世界中がこのニュースに驚いています。

(以下随時更新します)


水曜日に、ミルピエがNY Timesのインタビューに答えました。昨年11月にミルピエは、現在のパリ・オペラ座のニコラ・ジョエル総裁の後継者であるステファン・リスナー(現ミラノ・スカラ座総裁、2015年に着任予定)から接触を受けました。パリ・オペラ座では、バレエ団芸術監督のポリシーは総裁の同意を得なければならないのですが、過去数十年にわたって、総裁が口を挟んだり実際に関わったことはなかったそうです。声をかけられたときミルピエは大変驚き、また他にバレエ団内から候補者がいることも分かっていたそうですが、アーティスティックな会話はとてもワクワクするものだと感じ、そしてしばらくして、この地位を得られる感触を感じたそうで、頭がクラクラしたそうです。


ミルピエは、150人のダンサーで構成される世界最高のクラシックバレエカンパニーを率いることになります。ルイ14世の宮廷でのバレエという、バレエの歴史の始まりからの伝統を持つ。ほとんどのダンサーはパリ・オペラ座学校の出身者であり、カンパニーに入団してから離れる人はほとんどいません。団員は42歳の引退年齢まで契約が続く公務員でもあります。ルフェーブルという例外を除けば、過去の芸術監督で長続きした人はほとんどおらず、ヌレエフが6年間、ヴィオレット・ヴェルディは数シーズン率いていただけでした。

ミルピエは長いことツアーグループを作って公演を行ってきており、ダンサーとしての全盛期においてもミュージシャンやダンサーたちと共に小さな振付プロジェクトやフェスティバルを組織してきました。ABTやNYCB、パリ・オペラ座バレエで彼が振りつけた作品は上演されてきました。また、映画「ブラックスワン」やナタリー・ポートマンとの結婚で一般的にも知名度は高いです。

しかしながら、彼のカンパニー「L.A.ダンスプロジェクト」は9月に旗揚げ公演を終えたばかりで小さく実験的なものです。ミルピエは、オペラ座の芸術監督に就任するまではこのカンパニーの運営を続ける予定であると言っており、オペラ座に就任するにあたってポートマンと彼らの息子と共にパリに引っ越すとのこと。LAダンスプロジェクトは3年間の予算が保証されており、今後も存続することを願っているそうです。

ミルピエは、彼のプログラミングの中に、自身の振付作品を優先的に上演するとは考えていないとのことです(ちなみに、振付家だったパリ・オペラ座の芸術監督はセルジュ・リファール以来(もちろん、ヌレエフは古典作品の再振付を行っているわけですが)。そして、ヴィジョンとしては、コンテンポラリー・バレエのレパートリーを中心にするとのこと。「ブリジット・ルフェーヴルがジェローム・ベルやピナ・バウシュといった振付家をレパートリー入りさせたことには大きな敬意を持っている」「しかし自分が興味を持っているのは、とても豊かで興味深いバレエの芸術と技術を発達させること。新しいアイデンティティを発達させ、ダンサーたちに真の意味で挑戦させ、古典だけではないバレエを踊って欲しいと思う」

どの振付家を招くかという具体的な名前を挙げるのは避けていましたが、NYCBでの経験が自身の振付や音楽の嗜好に強く影響を与え、自身のプログラミングに、コミッションされた音楽を作って使いたいという意図があるとミルピエは語っていました。もうひとつの優先事項は、バレエ団内の振付家の才能を伸ばしたいということだそうです。「長いこと、ここでは大きく育った振付家はいなかったけど、ここには間違いなく才能はあるし、パリでは、創造的な人間にとっての豊かな環境を作るための全てがある」

さて、11時半から行われた記者会見に出席した、ジャーナリストのローラ・カペルさん(ファイナンシャルタイムズのダンス記事を執筆)のTwitter @bellafiguralで、会見の速報が流れていました。

要旨

2014-15年のシーズンのプログラムは、引き継ぎをスムーズにするために、ルフェーヴルがプログラミングを担当する。(すでに、2013-14シーズンは「椿姫」「オネーギン」「ノートルダム・ド・パリ」「眠れる森の美女」が上演されるとされています)

ミルピエの芸術監督としての契約期間は無期限のものとなる。

ミルピエは、ヌレエフ作品はパリ・オペラ座バレエの歴史の一部と言っているが、数年後には変えていくかもしれない。バレエの新しい見方を提供したいと。

新しいスタッフ(バレエ・マスター等)を連れて行くということはない。(現在のメートル・ド・バレエはそのまま残留するそうです)

次期総裁のステファン・リスナーによれば、彼は9人の候補者と面談したそうで、フランス、そして海外の候補者とも会ったとのこと。また、ミルピエには、ぜひオペラとバレエのコラボレーションをして欲しいと思っている。

ミルピエは、オペラ座バレエはもっとツアーを行い、彼の世代のクラシックの振付家に開かれた存在としたい。そして自身のパリ・オペラ座での新作は「ダフニスとクロエ」となる予定。

また、ミルピエは、フランス国内のツアーも行い、そしてダンサーのための定期的な振付ワークショップを、振付の訓練とともに行いたい。

米国での彼のカンパニーで行っているように、公演前に観客に向けて作品の解説を自身が行いたい。


*********
ミルピエのインタビューからは、今後のパリ・オペラ座がさらに現代作品寄りのレパートリーとなることが予想され、一部では反発が出てくるものと思われます。自身が設立したアメリカのカンパニーがすでに3年分の資金を確保していることからも、彼はスポンサー集めの手腕に関しては大変優れているという認識があり、そのことが、今回の仕事を手に入れることのできた大きな理由では、と思われています。さらに、イヴサンローランの香水"L'Homme Libre"の広告や、エールフランスのキャンペーン、もちろんナタリー・ポートマンの夫であるということなど、セレブとして有名だということも勘定に入っていることでしょう。

2013/01/23

イリーナ・ドヴォロヴェンコ、ABTを引退 Irina Dvorovenko, Principal Dancer, to Retire From American Ballet Theater

ABTのプリンシパル、イリーナ・ドヴォロヴェンコが今年5月18日のMETでの「オネーギン」を最後に引退することが発表されました。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=426

最近出演回数が減っていた彼女。その上、去年1度しか踊っていない、夫君であるマキシム・ベロツェルコフスキーは今年からABTのプリンシパルの欄からプロフィールが消えていました。

http://artsbeat.blogs.nytimes.com/2013/01/22/irina-dvorovenko-principal-dancer-to-retire-from-american-ballet-theater/

女優のような華やかな美貌で演技力とテクニックを合わせ持っていた彼女は、2009年の世界バレエフェスティバルに出演するなど、ABTを代表するスターのひとりでした。90年にキエフ・バレエに入団した後、96年に移籍。キエフではプリンシパルだった彼女が、ABTではコール・ドから叩き上げで登っていったのは有名な話です。

ABTでの最後の公演は、5月18日の「オネーギン」公演でタチヤーナ役を演じ、コリー・スターンズと共演の予定。今後もダンサーとしての活動は続けるそうです。

イリーナの舞台といえば、ブラック・スワンが艶やかな「白鳥の湖」はもちろんのこと、「ジゼル」「ロミオとジュリエット」などもとても印象に残っています。ジュリエットの可愛らしさは忘れられません。最近は「椿姫」のマルグリットや、タチヤーナなどよりドラマティックな役中心となっていたようです。

ABTの昔からのスターダンサーがどんどん去っていき、すでにスターであった他のカンパニーからのプシンシパルが主流となってきたのは、たいへん寂しく悲しいことです。イリーナは大好きなバレリーナのひとりだっただけに、ますます寂しいです。

2013/01/22

ボリショイ・バレエの芸術監督代行にガリーナ・ステパネンコ

セルゲイ・フィーリン襲撃事件の続報です。

ロシアのイズベチヤ紙によれば、ロシアの文化大臣ウラジーミル・メディーナとボリショイ劇場総裁アナトーリー・イクサーノフらは、ボリショイ・バレエの暫定芸術監督に、同劇場プリマ・バレリーナ、ガリーナ・ステパネンコを選んだと発表しました。

http://izvestia.ru/news/543401#ixzz2IhgS4mV8(ロシア語)

ただし、労働法や、劇場との契約などでは定められていない役職なので、全面的な権限を委託されるわけではないようです。配役などは引き続きフィーリンが決めるそうで。


1966年生まれのガリーナ・ステパネンコは、46歳の今も現役のプリンシパルであり(訂正:1月1日に公式に現役を退いたそうです)、フィーリンも最近のDance Magazineのインタビューで、長年舞台で共演してきた彼女のことを賞賛していました。最近日本ではご無沙汰ではありますが、最近も「ジゼル」などに主演しているとのことです。彼女の素晴らしさは、日本のファンにもおなじみですよね。


また、フィーリンの最新のインタビューが記事になっていました。

http://themoscownews.com/local/20130122/191163104.html(英語)

彼は時々は、自分の手の指が全部目で認識できるくらいには回復しているそうで、そのことにより、前向きな気持ちになれるそうです。以前書いた記事と矛盾する記述ですが、右側から襲撃されたために、右目の方が大きな被害を受けたそうです。左目は確実に治ると約束されたそう。激しい動きはできないため、海外での治療は当分受けないとのことです。
彼は病院からもしっかりと劇場の様子を把握して指示を出しているとのこと。自分の外見がどうなるかは二の次で、とにかく視力を回復し、職務に復帰して、3人の子供たちの成長する様子を見られるようになりたいと願っているとのことです。「医者が全力を尽くして、残った組織を助けてくれている。ハンサムな姿で復帰できるかは約束できないけど、力強さを持って復帰できると約束する」とのことです。


追記:こちらのロシアの新聞の記事によれば、今年1月1日にステパネンコは指導に専念するために、現役を引退していたそうです。

http://www.kommersant.ru/doc-y/2110553

ボリショイ劇場のオフィシャルサイトにプレスリリースも載っています。
http://www.bolshoi.ru/about/press/articles/2013/2431/(ロシア語)

ステパネンコの就任の件は英語の記事もワシントン・ポストに出ました。
Bolshoi Ballet names interim director while Sergei Filin recovers http://www.washingtonpost.com/world/europe/bolshoi-ballet-appoints-interim-director/2013/01/22/80d1997a-64a1-11e2-85f5-a8a9228e55e7_story.html


いずれにしても、暫定とは言え、ボリショイの歴史上初めての女性芸術監督となります。

New York Timesにはアップデートも載っていますが、「以前、足を骨折した状態で「白鳥の湖」を踊った時の方が今回より痛かった。その時は母親が最前列で見ていたので彼女をがっかりさせたくなかった。もし始まる前に降板していたらママは許してくれなかっただろうから、最初の休憩までは踊ったよ。」とフィーリンは語っています。また、脅迫を受けていたことを受けて劇場に、身の安全の確保を要請したものの、却下されたとも。いずれにしても、彼は脅迫や暴力にも屈してないことがよくわかります。

1/21 新国立劇場バレエ団「ダイナミック・ダンス」公開リハーサル

新国立劇場バレエ団「ダイナミック・ダンス」の公開リハーサルが行われました。劇場のサイトで募集されて、今回は抽選なしで、東日本大震災復興支援のための被災地の復興支援を目的とする芸術文化活動を支援するための「芸術文化復興支援基金」への募金を行うことで見学できるという太っ腹ぶりでした。

リハーサルを見学できるのはデヴィッド・ビントレー振付の「テイク・ファイブ」。なんと本番にも演奏を行うジャズ・ミュージシャン(荒武 裕一朗、菅野 浩、石川 隆一、力武 誠)の生演奏で行われるという豪華さ。キャストは2パターンあるのですが、2キャストでの舞台リハーサルを続けて観ることができたのは、たいへん面白かったです。

始まる前に振付/芸術監督のデヴィッド・ビントレーから挨拶。「この作品では初めてのステージリハーサルなので何が起きるかわかりません、本番の舞台では完璧に踊りますが、今日は完璧ではないかもしれません」とのこと。また、会場にNHKのテレビカメラが入っていましたが、この週末に、ビントレーと小野絢子さんが福島のバレエスクールを訪問し、その様子をNHKのカメラが収録してドキュメンタリーとして放映するとのことでした。そのための映像として、一部このリハーサルの様子も流れるそうです。「舞台上にもカメラマンが歩き回っていますが、本番ではカメラマンはいませんので」と相変わらずビントレー監督はユーモアのセンスがあります。

通し稽古の前に、場当たりを45分程度行い、その際にビントレーが直接自身で身体を動かして指示を出します。指導されているキャストがリハーサルを踊っている時には、もう一方のキャストも熱心に見入っている様子を見ることができました。ビントレーはさらに口でリズムを取ったりメロディを歌ったりしながら振付指導します。とても興味深かったです。

場当たりが終わるとステージリハーサル。照明が入り音楽が演奏されていると、同じ振付でも全く違ったものに見えます。これが舞台のマジックというものでしょう。細かい修正はほとんどなく、2度ほど音楽のテンポについてビントレーから指示があった程度でした。作品の内容については、本番ではないので細かいことは書きませんが、ジャズの演奏に乗せた、とても小粋で楽しく躍動感あふれるバレエです。女性1人メーン(プラス男性4人)、女性トリオ、男性ソロ、男女パ・ド・ドゥ、男性4人、そして全員出演のフィナーレという構成。2キャストで観ると、ダンサーのキャラクターの違いがよくわかります。特に光っていたのは、小野絢子さん、八幡顕光さん、米沢唯さんでしたが、本番はどうなることでしょう。とても楽しみです!また、演奏がとても素晴らしいので、この音楽がライブで聴けるのもとても嬉しいことですね。今週末の本番がとても楽しみです。

このように公開リハーサル(しかも振付家本人による振り付け指導の様子)をしてくださるのは、本当に嬉しいこと。リハーサル終了後、チケットを買っている人もたくさんいましたので、販促効果もあると思います。今後も、上演のたびにこのような公開リハーサルを開催して欲しいと思います。もちろん入場料を払っていいので!


公開リハーサルの前に行われた、「イン・ジ・アッパー・ルーム」のリハーサルの様子は新国立劇場バレエ団オフィシャルブログに掲載されています。仕事が早い!

公演オフィシャルサイト
http://www.atre.jp/12dynamic/index.html


「Take Five」キャスト

1/24、26日マチネ、27日
テイク・ファイヴ 湯川 麻美子
スリー・トゥ・ゲット・レディー 寺田 亜沙子 井倉 真未 加藤 朋子
フライング・ソロ 八幡 顕光
トゥー・ステップ 本島 美和 厚地 康雄
フォー・スクェア 八幡 顕光 菅野 英男 小口 邦明 原 健太

1/25、26日ソワレ
テイク・ファイヴ 米沢 唯
スリー・トゥ・ゲット・レディー 長田 佳世 丸尾 孝子 細田 千晶
フライング・ソロ 福田 圭吾
トゥー・ステップ 小野 絢子 福岡 雄大
フォー・スクェア マイレン・トレウバエフ 福田 圭吾 奥村 康祐 清水 裕三郎


小野絢子さんと福岡雄大さんがバーミンガム・ロイヤル・バレエの「アラジン」にゲスト出演することは皆様ご存知かと思います。
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/30000395.html

出演日もBRBのサイトで発表されています。
http://www.brb.org.uk/masque/index.htm?act=WhatsOn&urn=23831&tsk=fullcast

2月21日夜公演と23日にふたりは出演する予定だそうです。

2013/01/21

1・6,7 ブベニチェク・ニューイヤーガラ Bubenicek New Year Gala

とても素晴らしい公演だった!こんなすごい公演を開いてくれたブベニチェク兄弟と、主催者、関係者、出演者の皆さんに深く御礼をしたいです。すっかり遅くなりましたが感想です。

http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/12_canon/index.html

細かいクレジットはブベニチェク兄弟のサイトで見られます。
http://bubenicek.eu/LBB_prg_japan2013.html

「トッカータ」(日本初演)
振付:イリ・ブベニチェク
音楽: O.ブベニチェク

ドロテ・ジルベール、カテリーナ・マルコフスカヤ、アンナ・メルクロヴァ、エルヴェ・モロー、ヨン・ヴァイエホ、クラウディオ・カンジアロッシ、マイケル・タッカー

NYCBのために振付けられたこの作品は、バランシンへのオマージュが捧げられているという。プロットレス・バレエで、非常に音楽的であるという点ではバランシン的なのだけど、雰囲気はだいぶ違っている。ビビッドな色の半透明のトップスという衣装。無音で始まり、オットーが作曲したというピアノの鍵盤の響きが印象的な現代音楽的な曲を使って踊る。終わりもまた無音。無音の時の動きが非常に面白いのと、7人のダンサーの組み合わせの妙、3組と一人のソリストが違うテンポで踊っていたりするところがとても興味深い。基本的には3組のペアなのだけど、男女のパ・ド・ドゥの途中で別の男性が代わって踊ったりして、男女、時には男男の移つろいゆく心、パ・ド・トロワで表現された三角関係なども描いていて、情感溢れた流麗な動きに、思わず切ない気持ちにさせられる。イリの振り付けの特徴は、上半身が非常に雄弁なところで、この作品に出演しているダンサーは上半身がしなやかで、手脚がそれほど長くなくても上半身がよく動いて語りかけてくる。パリ・オペラ座の二人はドレスデン・バレエのダンサーたちとはメソッドが違うことを感じさせ、上半身より下半身が強いのがわかる。ひときわ背が高くて手脚が長く、プロポーションに恵まれているエルヴェ・モローは実にエレガントで、とてもよく身体が動いており、絶好調の模様。ドロテ・ジルベールはこの中ではスターの輝きがあって華やかだ。最後にソロを踊ったクラウディオ・カンジアロッシマイケル・タッカーのスピーディな動きにも引きつけられた。


「ドリアン・グレイの肖像」(日本初演)
振付:イリ・ブベニチェク
音楽: K.ジャレット、B.モレッティ

ドリアン・グレイ:オットー・ブベニチェク
画家バジル・ホールウッド:イリ・ブベニチェク
ヘンリー・ウォットン卿:イリ・ブベニチェク
ドリアン・グレイの肖像:イリ・ブベニチェク
シビル・ヴェイン:ラケル・マルティネス

オスカー・ワイルド原作「ドリアン・グレイの肖像」は、最近バレエ化されることの多い作品。2003年にABTでロバート・ヒルがバレエ化したのを観たのだが、肖像をダンサーに踊らせるというアイディア以外は平凡な作品だった。一方、マシュー・ボーンが振付けた「ドリアン・グレイ」は、ドリアン・グレイを男性モデル、画家バジルをカメラマン、ヘンリー・ウォットン卿を女性レディH、そしてシビルを男性の恋人というひねりのある設定にして、ダークな作品ながら大変面白かった。(余談だけど、この夏Bunkamuraでこの「ドリアン・グレイ」が上演されるのだけど、これがニューアドベンチャーズのダンサーではなく、日本人ダンサーを起用しての公演ということで、正直大変残念である)

さて、イリ・ブベニチェク版の「ドリアン・グレイの肖像」は、画家バジルとウォットン卿を同一人物=イリが演じ、しかもドリアン・グレイ役を一卵性双生児であるオットーが演じるというキャスティングを巧みに活用している。イリは、佇まいや動きでバジルとウォットンをうまく演じ分けているのだが、途中で二人のダンサーが上着を脱いで上半身裸になると、両方の見分けがつきにくくなることで、ドリアン・グレイのアイデンティティの分裂、そして崩壊を描いている。二つ、そして三つのキャラクターが絡み合って、時には相手を支配するように、時には愛を交わすように対峙する様子には緊張感があり、そして官能的である。さらに、ドリアン・グレイの恋人シビルも加わってのパ・ド・ドゥ、パ・ド・トロワも登場すると、より立体的にキャラクターの関係が浮き彫りになる。ドリアンとシビルのパ・ド・ドゥはリフトを多用した美しいもので、シビル役のラケル・マルティネスはとても可憐。だがパ・ド・トロワになると陰影が深くなり、ドリアンとシビルが引き裂かれる運命が示唆されている。このパ・ド・トロワにはノイマイヤーの振付の影響が大きく見られた。息詰まるような3つの魂の交錯がやがて破局へと至っていくプロセスは、さらに練り上げられる余地はあるものの、一瞬たりとも目が離せない鮮烈な作品に仕上がった。


「牧神」(日本初演)
振付:イリ・ブベニチェク
音楽: F.プーランク、C.ドビュッシー

ラファエル・クム=マルケ、ヨン・ヴァイエホ、クラウディオ・カンジアロッシ、
マキシミリアン・ゲノフ、ファビアン・ボランジェ、マイケル・タッカー、ジャン・オラティンスキー、フランチェスコ・ピオ・リッチ

1月16日より、ドレスデン・バレエで「Les Ballets Russes – Reloaded」というプログラムが上演され、この「牧神」も上演されるのだが、プログラム自体がたいへん興味深い。というのは、バレエ・リュス作品をそのまま上演するのはバランシンの「アポロ」だけであって、このブベニチェク版「牧神」の他に上演される「春の祭典」(Jacopo Godani)「結婚」(Stijn Celis振付)も2012年の新作であることだ。

背景が区切られ、十字架の形に光がくっきりと浮かび上がっていて、安藤忠雄の「光の教会」を思わせる舞台演出。この十字架の太さが時間経過とともに変化していき、色も真っ赤へと変わっていく。秘密儀式が行われている密やかな教会。白い薄い衣を身につけた少年僧たちが一心不乱に祈りを捧げ、中央には赤い法衣をまとった長身で威厳あふれる司祭ラファエル・クム=マルケ。薄い青い瞳、少しヴァンサン・カッセルに似ている容姿。音楽がドビュッシーの「牧神の午後」に変わると、少年僧たちは白い衣を脱ぎ、一人の少年(ヨン・ヴァイエホ)がおずおずと前に出てくる。そしてニジンスキー版の「牧神の午後」の牧神を思わせる姿の牧神(クラウディオ・カンジアロッシ)が、あの独特の横向きギリシャ風のポーズをしなやかに取りながら妖しく身をくねらせる。牧神は、司祭の情欲の象徴なのか。司祭は明らかに少年に対して欲望を抱いている。権力そのものを象徴するような重厚な動きで司祭は時には少年を力づくで押さえつけ、時には三者が絡みあって踊る。司祭と少年の間に牧神が媒介者であるかのようにまとわりつく。赤い上着を脱ぎ、ロザリオを少年の口へと伝わせる司祭。そしてついに己の欲望を満たす司祭。ニンフのヴェールに横たわったニジンスキーの「牧神」のように、少年の衣を手にとって頬を寄せる。少年は放心した表情で虚空を見つめ、牧神は中央の玉座に座って肉欲の勝利を高らかに宣言する。

ニジンスキー振付の「牧神の午後」が初演された時には、跳躍がほとんどなく内向きの脚、横向きのポーズ、そしてラストの自慰行為と大きなスキャンダルとなった。100年後の現代において衝撃的な振付、そしてタブーとはなんだろう。少年に対して性的な妄想を抱きついに自らその欲望を満たしてしまう聖職者というストーリーはスキャンダラスではあるが、今までも映画などの題材には使われてきた主題である。牧神の動きにニジンスキー版「牧神」へのオマージュを捧げつつ、意思を持たない純粋な性欲の象徴である牧神が、邪な情欲を持った司祭の心情を増幅させ悲劇的な結末を呼ぶプロットは確かにインパクトがある。神に身を捧げたはずの聖職者でも、こんなにも罪深いことをしてしまう欲望のもつ力、人間のダークサイドを描ききっている。少年役のヨン・ヴァイエホが童顔でいたいけな雰囲気があるだけに、踏みにじられる様子が痛ましい。

ニジンスキー版「牧神の午後」のモチーフを巧みに取り入れているところがうまい。少年たちの動きは、ニジンスキー版のニンフたちの動きを思わせる。クラウディオ・カンジアロッシの持つしなやかな妖艶さが、メイクと併せて人間ではない、半獣半人の存在を際立たせている。司祭と牧神、少年のパ・ド・トロワの構成はノイマイヤーの影響を感じさせるものの、禁欲性とセクシャルさの両方の要素を感じさせてより妖しくて魅力的。司祭の印象的な赤い衣といい、その下の胸のところが一部シースルーとなっている黒の衣装といい、そして最後の玉座といい、鮮烈な舞台作りの美学も際立っているだけに、その禁断の世界観には震撼させられる。美と欲望の恐ろしさ!


「プレリュードとフーガ」(世界初演)
振付:イリ・ブベニチェク
音楽:D.ショスタコーヴィチ

ドロテ・ジルベール、エルヴェ・モロー
ピアノ:榎本真弓

ショスタコーヴィチのピアノ曲「24の前奏曲とフーガ」。ショスタコーヴィチが、1950年に開催されたバッハ・コンクールの審査員として、同コンクールで優勝したソ連の若く美しいピアニスト、タチアナ・ニコラーエワとの出会いに触発されて作曲した作品ということで、ストーリーはないものの、若い男女が出会ってから次第に恋心が高まっていく様子が爽やかに描かれている。エルヴェ、ドロテとものびやかに、音楽と戯れるように踊り、特にエルヴェの長い腕が歌うように風をはらんで舞っている姿を見ると多幸感で満たされる。美しいけど踊るにはいささか難しそうなピアノ曲の音符を巧みにすくい取るようなパ・ド・ドゥ。次第に熱を帯びてくるふたり。エルヴェの腕に身を任せて仰向けになったドロテと、エルヴェが顔を近づけて見つめ合う甘くロマンティックな幕切れ。若い恋のエッセンスを凝縮したような、胸高鳴らせるこの作品に、イリ・ブベニチェクの才能の別の側面を見た。

「Le Souffle de l'Esprit ー魂のため息ー」「オルガとマリーに捧ぐ」
振付:イリ・ブベニチェク
音楽: J.パッヘルベル、J.S.バッハ、R.ホフステッター、O.ブベニチェク

男性ソロ:イリ・ブベニチェク、オットー・ブベニチェク、ヨン・ヴァイエホ
女性ソロ:ラケル・マルティネス、ドゥオシー・ジュウ
カテリーナ・マルコフスカヤ、アンナ・メルクロヴァ、クラウディオ・カンジアロッシ、マキシミリアン・ゲノフ、フランチェスコ・ピオ・リッチ、マイケル・タッカー

何回観ても、新しい感動に胸震える名作。フルバージョンは2010年1月のさいたま芸術劇場での公演で観て以来。公演に出演していたために最後の別れができなかった二人の祖母に捧げられた作品。インタビューの中で、イリは、「神は外ではなく、我々の中に存在する」と語っているが、この作品を観ると、自分の内面と対話したくなるとともに、自分の魂が天上の存在と結びついたような、永遠のような瞬間を味わう。何とも言えない懐かしくあたたかい気持ちになり、バッヘルベルやバッハの音楽とともに奏でられる流麗な動き、スクリーンに投影されるダ・ヴィンチの「岩窟の聖母」などの絵画が作り上げる宇宙の中で、自分はひとりではない、何千年にも渡る人間の営みの中で魂は永遠に生き続けているのだという思いがして、自然に涙があふれてくる。

メーンのトリオの他にも、男女パ・ド・ドゥや3人と4人のグループに分けたりした群舞もあるなどヴァリエーション豊富で、変幻自在な構成。中でも、若いカップルののびのびとしたデュエットは微笑ましくて、最後にほっぺたにチュッとするところがとても可愛い。(おそらくはオットー・ブベニチェクだと思われる)男性の手にフォーカスしたソロも印象的だし、地面をゴロゴロと転がったりズサーっと滑ったり深いカンブレといった低い重心を置いた振り付けが多いながらも、同時に跳躍も多用し、上半身を大きく使った雄弁で音楽的な動きが心地よい。この作品の中に身を置いている時間がずっと終わらなければいいのに、って思うほど。白眉はやはりトリオで、オットー・ブベニチェク、イリ・ブベニチェク、ヨン・ヴァイエホの3人がシンクロして躍動する姿は、生の喜びに満ちていた。ソリスト以外のダンサーも、しなやかで、全身で語りかけてくるような表現の豊かさを感じさせてくれる。冒頭と終わりの地響きのような電子音は、天使が降りてきて、そして天へと上っていく音だろうか。ラスト、舞台奥へと歩み去っていく3人、中央のダンサーに一人の女性ダンサーが飛びつくラストにスパイスが効いている。現代作品なのに、この「スフル・ドゥ・レスプリ」ほど、誰が観ても感動できる、分かりやすく普遍性をもった作品はない。きっと長いあいだ踊り継がれ、世界中で愛され続ける、不滅の作品だとなることだろう。人の心が死んだあとも不滅であるように。

5作品がすべてイリ・ブベニチェクの振付作品で、すべてが驚くべきクオリティの高さ、作品も変化に富んでいる。世界初演作品、それも7年ぶりに日本の舞台へと帰ってきたエルヴェ・モローと、満開の花のようなドロテ・ジルベール、そしてBunkamuraのために振り付けられた作品もあるとは、なんと贅沢なことだろう。このような素晴らしいガラを主催してくれたBunkamuraなどの関係者、そしてブベニチェク兄弟、出演者の皆さんに心から感謝したい。そして、第2弾が開催されることを強く願っている。本当に観られて良かった。日本のバレエファンは幸せだと思う。


こちらは、「ル・スフル・ドゥ・レスプリ」「トッカータ」「ドリアン・グレイの肖像の映像が見られます。(オットー・ブベニチェクのチャンネルより)

2013/01/19

フィーリン襲撃事件続報(アップデート中)

ボリショイ・バレエのセルゲイ・フィーリン芸術監督が襲撃された事件の続報です。

New York Timesの記事によれば、緊急手術を受けたフィーリンは、失明という最悪の自体はまぬがれたようです(金曜日にボリショイ劇場のスポークスマンがそう語っていたとのこと)。良かった。
http://www.nytimes.com/2013/01/19/world/europe/sergei-filin-bolshoi-ballet-director-is-victim-of-acid-attack.html

脅迫電話や車のタイヤがパンクさせられ車に傷をつけられたこと、携帯電話が使用不能となり、メールアドレスやFacebookのハッキングなどが相次いだため、周囲は彼にボディガードを付けることを勧めていたようですが、実際に暴力が振るわれることを予想していなかった彼はそれは拒否したとのこと。


この記事にも写真が載っていますが、包帯でぐるぐる巻きにされたフィーリンは、インタビューに答えています。こちらのDaily Mailの記事には、インタビュー映像に字幕がついています。顔が痛々しい以外は元気そうです。襲われたとき、撃たれるのではないかと思ったようです。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2264401/Sergei-Filin-Russias-Bolshoi-Ballet-director-lose-sight-acid-attack.html
記事の一番下には、ザハロワと「シンデレラ」を踊るフィーリンの現役時代の映像も少し流れる動画があります。


元ボリショイ劇場のソリスト(現・ブリヤート国立アカデミーオペラ・バレエ劇場の芸術監督)の岩田守弘さんのインタビューが産経新聞に載っていました。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130119/erp13011911360002-n1.htm

岩田さんによると、フィーリンさんは「何度も一緒の舞台に立ち、励まし合ってやってきた仲間」。岩田さんは昨夏、ボリショイ・バレエ団を退団し、現在、シベリアのブリヤート国立アカデミーオペラ・バレエ劇場の芸術監督を務める。
 フィーリンさんは昨年2月の日本公演にも岩田さんと一緒に来日。岩田さんが同い年のフィーリンさんに芸術監督の役回りについて相談することも度々あったという。


パリ・オペラ座のブリジット・ルフェーヴル芸術監督もお見舞いの言葉を述べています。
http://french.ruvr.ru/2013_01_18/L-Opera-national-de-Paris-soutient-Serguei-Filine/


ロシアのテレビ局RTの事件現場からのレポート映像。こちらでも、フィーリンは失明をまぬがれたことを報じています。


まだ犯人は捕まっていませんが、ハッキングの実行犯は逮捕されているとのことで、早く真相が解明しますように。そして、フィーリンの怪我が良くなって監督業に復帰できますように。


追記:
1/20 New York Timesの記事

http://www.nytimes.com/2013/01/21/arts/dance/police-say-sulfuric-acid-was-used-in-attack-on-sergei-filin.html

フィーリンの顔に浴びせられたのは、調査の結果によれば硫酸だったとのこと。フィーリンは鎮痛剤なしで眠ることができる状況で、失明の危険はないというのがボリショイ劇場からの発表。火曜日か水曜日に再手術が予定されているとのことです。

今まで、フィーリンの襲撃に関して質問をされて「自分は関係ない」、そして「ビジネスや痴情のもつれという可能性もある」など、やや問題のある発言を繰り返してきたニコライ・ティスカリーゼも、ついに襲撃者を非難するコメントをロシアのテレビで行いました。「ポワントの中にガラスの破片を入れたり、舞台に猫や箒を投げ入れるといったことは今まで行われてきたと伝えられている。でも、それはフィーリンに対して行われたことと違って、単なる乱暴行為だ。人生を破壊するだけでなく人間らしさ、視力を奪おうとすることである、顔に酸を浴びせることはひどい犯罪であり、モンスターの仕業だ」

ツィスカリーゼの支持者たちが昨年末、プーチン大統領宛に、ボリショイの総裁イクサーノフおよびフィーリンを罷免して彼を芸術監督に据えるように主張した書簡を送ったことが報道されていました。グリゴローヴィチら旧勢力と密接なつながりがあり、ロシアのテレビ界では人気者のツィスカリーゼを推す動きがあったのは確かですが、ボリショイ劇場、そしてバレエ界全体の共通認識として、これは許されるべきではない重大な犯罪行為であるということは一致しているようです。


ボリショイ劇場のサイトに、フィーリンにお見舞いメッセージを寄せた人々のリストが載っていました。ブリジット・ルフェーブル(パリ・オペラ座バレエ芸術監督)、ジジ・ジャンメール、ウラジーミル・ワシーリエフ、ウラジーミル・マラーホフ、ピエール・ラコット、ウェイン・マクレガー、ナチョ・ドゥアト、クレメント・クリスプ(バレエ評論家)、モンテカルロ・バレエ他です。

http://www.bolshoi.ru/about/press/articles/2013/2427

こちらの記事も引き続き最新情報が更新されています。
http://www.theartsdesk.com/dance/bolshoi-ballet-chief-attacked-acid-his-sight-threatened

1/22 さらに続報です。

月曜日の医師団の発表によると、フィーリンの片方の目は確実に回復するとのことで、右目はすでに視力を回復しつつあるそうです。ただし、職務に復帰できるくらい回復するかどうかを見極めるには、あと4回も手術が必要とのこと。全体的に見通しはポジティブなものだそうです。火曜日に皮膚の手術、水曜日に目の手術が予定されているとのこと。フィーリン自身は明るく前向きな姿勢でユーモアも欠かしておらず、それは回復の大きな助けになるだろうというコメントが発表されていました。彼は強い人間ですね。

ロシアの文化大臣メディンスキーは日曜日に病室のフィーリンを訪ね、彼がバレエ団の今後について熱心に語ろうとしていることに感銘を受けたそうです。「驚いたことに、彼は自分の現状や治療の今後ではなく、バレエ団でのクリエイティブな計画について語っていました」とモスクワの新聞に談話が載っていました。「彼が入院している間、誰が代行を務めるべきかということについて話し合いました」とのことです。

http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5jll6tazwOJAnaY7SigouI3Dt9vGw?docId=CNG.b7feecb58a4f14ca6ba18edd772356dc.a21

2013/01/18

パリ・オペラ座の映画館中継上映劇場追加

『パリ・オペラ座へようこそ ライブビューイング2012~2013』の公式ブログがオープンしたとのことです。
http://parisoperamovie.blog.fc2.com/

こちらで随時上映情報などをアップしていくとのことですが、早速上映予定劇場が追加されていました。

http://parisoperamovie.blog.fc2.com/blog-entry-2.html

「ドン・キホーテ」の上映情報
http://www.eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=81

関東地区
TOHOシネマズ スカラ座/みゆき座 03-3591-5358【プレ上映】2/22(金)~3/7(木)、【本上映】5/31(金)~6/6(木
Bunkamura ル・シネマ 03-3477-9264 3/2(土)~3/15(金)
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ 03-5775-60【プレ上映】2/22(金)~3/7(木)、【本上映】5/31(金)~6/6(木)

この他、北海道から九州まで上映予定が追加されていましたので、ぜひご確認ください。

マーラー交響曲第3番(バレエ)
http://www.eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=85

関東地区
TOHOシネマズ スカラ座/みゆき座 03-3591-5358 7/12(金)~8/1(木)
Bunkamura ル・シネマ 03-3477-9264 上映日未定
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ 03-5775-6090 7/12(金)~8/1(木)

こちらも北海道から九州まで上映される予定で上映館も決定しています。

ボリショイ・バレエのセルゲイ・フィーリン芸術監督が襲撃される

恐ろしいニュースが入ってきました。

ボリショイ・バレエのセルゲイ・フィーリン芸術監督(42歳)が17日深夜、モスクワの自宅近くの駐車場で何者かに襲われ、病院に運ばれたとのことです。 警察当局によると、酸性の液体を顔にかけられ、やけどを負った。知人の話では、フィーリン氏は繰り返し脅されていたということです。

http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013011800137

The Arts Deskの方にはもう少し詳しい情報が載っています。

http://www.theartsdesk.com/dance/bolshoi-ballet-chief-attacked-acid-his-sight-threatened

こちらの記事は更新されていますので、ご興味のある方はぜひお読みください。ボリショイにおける権力闘争について、詳しく書かれています。


スタニスラフスキー生誕150周年のガラに出席した帰りに覆面の男に声をかけられて振り向きざまに液体をかけられたそうです。顔と目に3度のやけどを負い、視力が回復するかどうかは2週間経たないとわからず、6ヶ月の入院治療が必要とのことです。命には別状がないそうです。犯人は逃走中。

警察は犯罪事件として捜査しており、おそらくはボリショイ劇場の芸術監督の座を狙っている何者かの仕業によるものだと目されているそうです。自宅にも脅迫電話などがかかってきたり、車がパンクさせられたり、Facebookのアカウントがハッキングされて中傷されるといった被害が続いていたそうで、家族も生命の危険を感じていたとのこと。

理由がなんであれ、このような卑劣な暴力行為は許されるものではありません。早くフィーリンが回復して職務にも復帰できることを祈るばかりです。

ロシア語の詳しい記事は以下にリンクを貼っておきます。
http://www.mr7.ru/articles/65555/
(映像レポートもあります)

産経新聞のロシア特派員の方のブログ
http://sasakima.iza.ne.jp/blog/entry/2980689/

 インターファクス通信の取材に応じたボリショイ劇場のアナトリー・イクサノフ氏は、こう述べました。
 
「100%断言するが、この事件は彼のプロフェッショナルな仕事ぶりに関係している。彼は、筋を通す男で、妥協を絶対に許さなかった。もし、ダンサーの中でちゃんと準備ができていない、そして、演目をちゃんと演じられないと彼が思えば、そのダンサーを拒否していた」

 
毎日新聞大前さんの記事。
http://mainichi.jp/select/news/20130119k0000m030027000c.html

New York Timesの記事。詳しく書いてあります。アレクセイ・ラトマンスキー元芸術監督、太り過ぎを理由に解雇されたバレリーナ、アナスタシア・ヴォロチコワのコメントもあります。ラトマンスキーも芸術監督時代、脅迫されていたとのことです。
http://www.nytimes.com/2013/01/19/world/europe/sergei-filin-bolshoi-ballet-director-is-victim-of-acid-attack.html

ナチョ・ドゥアトがミハイロフスキー劇場のサイトでお見舞いのコメント。
http://www.mikhailovsky.ru/events/nacho_duato_napravil_pismo_v_bolshoy_teatr/

現在フィーリンは目の手術のためにベルギーに移送されているそうです。意識ははっきりしているとのこと。無事回復されることを強く祈ります。

ダンサーとしても素晴らしいテクニック、美しいアントルシャが印象的だったフィーリン。ボリショイ・バレエの芸術監督に就任してからの辣腕ぶりも評判で、デヴィッド・ホールバーグ、オルガ・スミルノワらの獲得に成功し、毀誉褒貶はあったものの観客動員も大幅に伸ばしてチケットが入手困難になるなど劇場に大きく貢献してきました。再びその豪腕ぶりを振るえることを願っています。

ご参考:最近行われたセルゲイ・フィーリンのアメリカ・ダンスマガジン誌のインタビュー。ボリショイ・バレエの芸術監督の激務ぶりがよく伝わってくる、たいへん興味深い内容です。「明るい小川」のバレエダンサー(男性)がポワントで踊るのは彼のアイディアだったとか。また、マッツ・エックやウェイン・マクレガーのような現代振付家の作品を積極的に取り入れていることなどについても語っています。
http://www.dancemagazine.com/issues/January-2013/Inside-Sergei-Filins-Bolshoi-Ballet-expanded-version

ボリショイ・バレエ2012年来日公演の記者会見より
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Guardian紙のジュディス・マッケレル氏が、ボリショイ劇場の権力闘争について書いています。ラトマンスキーがボリショイを去ったのは、自身と家族のみの危険を感じたからだそうです。
http://www.guardian.co.uk/stage/2013/jan/18/sergei-filin-bolshoi-politics-acid-attack

また、ボリショイ・バレエのソリストのアナスタシア・メスコバブが目に涙を浮かべながら、この悲劇について語っている映像もGuardianのサイトに。
http://www.guardian.co.uk/world/video/2013/jan/18/bolshoi-acid-video

2013/01/17

新国立劇場バレエ団2013/14シーズンラインアップ速報/追記

新国立劇場バレエ団の2013/14シーズンラインアップ速報が会報誌ジ・アトレに載っていました。

(1/18追記、オフィシャルサイトにも載っていました。情報を追加します)


バレエ・リュス ストラヴィンスキー・イブニング  
  火の鳥(フォーキン)/アポロ(バランシン)新制作/結婚(ニジンスカ)新制作
Ballet Russes Stravinsky Evening
The Firebird / Apollo / Les Noces
2013年11/13(水)~17(日) 4公演

DANCE to the Future~Second Steps ~
NBJ Choreographic Group

2013年12/7(土)、8(日) 2公演

くるみ割り人形 (牧阿佐美)
The Nutcracker
2013年12/17(火)~23(月・祝) 7公演

白鳥の湖 (牧阿佐美)
Swan Lake
2014年2/15(土)~23(日) 5公演

シンフォニー・イン・3 ムーヴメンツ(バランシン)新制作、大フーガ(ファン=マーネン)新制作、ジェシカ・ラング振付新作(中劇場) 新制作
Symphony in Three Movements Grosse Fuge New Work by Jessica Lang
2014年3/18(火)~23(日) 5公演

カルミナ・ブラーナ(ビントレー)/ファスター (ビントレー)日本初演
Carmina Burana / Faster
2014年4/19(土)~27(日) 5公演

パゴダの王子 (ビントレー)
The Prince of the Pagodas
2014年6/12(木)~15(日) 5公演


新制作は、アポロ、結婚、シンフォニー・イン3ムーブメンツ、大フーガ、ジェシカ・ラング新作、ファスターになります。

ジェシカ・ラングは若手の女性振付家で、彼女の振り付けた「スプレンデッド・アイソレーション」はABTのイリーナ・ドヴォロヴェンコ、マキシム・ベロツェルコフスキーが日本でも踊っています。「大フーガ」はオランダ国立バレエなどで踊られています。

また、新国立劇場のダンスの方では、先日上演されて好評だった、バレエ団ダンサーによる振付作品集「First Steps」の第二弾「Second Steps」が上演されます。今度は2公演に増えて週末の上演です。

デヴィッド・ビントレー芸術監督にとっては最後のシーズン。トリプルビルが二つで、片方は三作品すべて新制作と大変意欲的なのはいいことです。でも評判の悪いの牧阿佐美版くるみをまた上演するのは残念です。白鳥の湖などこういう演目は観客動員には欠かせないものなんでしょうけど。

いずれにしても、進んで新作や現代作品を上演するビントレーの進取精神が次の芸術監督に受け継がれますように。

キャストは一切発表されていないけど、この段階でチケットを売り出して、どれくらいセット券が売れるのかは少々心配です。


ダンス公演の方も発表されているので、併せて。

2013年10/4(金)~10(木)
中村恩恵×首藤康之
Aプログラム「新作」
Bプログラム「Shakespeare THE SONNETS」

2013年12/7(土)、8(日)
DANCE to the Future~Second Steps ~
NBJ Choreographic Group

2014年1/23(木)~26(日)
小野寺修二 カンパニーデラシネラ
ある女の家

2014年6/7(土)、8(日)
ダンス・アーカイヴ in JAPAN
─未来への扉─ a Door to the Future

[プログラム案] 作品・及び初演年・振付家名

第一部 「日本の太鼓」(1951年) 振付:江口隆哉

第二部 小品集
「ピチカット」(1916年) 振付:伊藤道郎
「食欲をそそる」(1925年) 振付:石井 漠
「白い手袋」(1940年) 振付:石井 漠
「母」(1941年) 振付:高田せい子
「BANBAN」(1950年) 振付:檜 健次
〈タンゴ三題〉
「タンゴ」(不明) 振付:伊藤道郎
「タンゴ」(不明) 振付:小森 敏
「タンゴ」(1933年) 振付:宮 操子

第三部 「春の祭典」(2008年) 振付:平山素子/柳本雅寛


追記 26~39歳対象の優待制度「アカデミック39」が新登場!

このたび、26歳から39歳までの方を対象にした新国立劇場主催公演の優待制度、「アカデミック39」が開始されるそうです。公演初日の2週間程度前に残席がある場合、オペラ公演のS・A席を原則として11,000円、他のジャンルの公演は原則として半額にてメールで案内が来るそうです。

【アカデミック39】
対象:26~39歳のすべての方(登録制)
登録受付開始:2013年1月20日(日)
-----------------------------------------------------------
○オペラ…S・A席(通常20,000円程度)が原則として11,000円(アトレ会員10,000円)
○バレエ・ダンス・演劇…原則として定価の50%OFF

登録はこちらのサイトから
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/30000456.html

2013/01/16

ヨハン・コボー、怪我で「オネーギン」降板、代役はジェイソン・レイリー

ロイヤル・バレエでは1月19日より「オネーギン」が上演されますが、ファースト・キャストのヨハン・コボーが「くるみ割り人形」を怪我のためキャンセルし、結局「オネーギン」も最初の2回(19日、23日)は欠場して、代わりにシュツットガルト・バレエのジェイソン・レイリーが出演するとのことです。

http://www.roh.org.uk/events/k8vc3

Tatiana Alina Cojocaru
Eugene Onegin Jason Reilly
Olga Akane Takada
Lensky Steven McRae
Prince Gremin Bennet Gartside
Orchestra Orchestra of the Royal Opera House

ジェイソン・レイリーは以前にもロイヤル・バレエの「ヴォランタリーズ」「ダンシズ・アット・ア・ギャザリング」にゲスト出演したことがあります。

シュツットガルト・バレエのオフィシャル・サイトにもこのゲスト出演について書いてあります。
http://www.stuttgarter-ballett.de/

ついでですが、フィリップ・バランキエヴィチがストラスブールのライン・オペラ・バレエの「ドン・キホーテ」の2月9日の公演に客演するとも書いてありました。

ハンブルク・バレエの「ニジンスキー」映像いろいろ

ハンブルク・バレエは、2月に全米ツアーを行います。

http://www.hamburgballett.de/e/gastspiel.htm

2月1日、2日 シカゴ、Harris Theater 「ニジンスキー」

Chicago
Harris Theater
February 1, 2013 | 7:30 PM Nijinsky
Vaslav Nijinsky: Riabko
Romola Nijinsky: Bouchet, Serge Diaghilev: Urban
Bronislava Nijinska: Tichy, Stanislav Nijinsky: Martínez
Eleonora Bereda: Laudere, Thomas Nijinsky: Revazov
Tamara Karsavina: Azzoni, Leonid Massine: Trusch
Nijinsky – The Dancer: Bordin, Bubenícek, Riggins, Trusch

2月8日~10日 カリフォルニア州コスタ・メサ Segerstrom Center for the Arts 「人魚姫」

February 8, 2013 | 7:30 PM The Little Mermaid
The Poet: Riggins
The Little Mermaid/His Creation: Azzoni
Edvard/The Prince: Jung, Henriette/The Princess: Bouchet
The Sea Witch: Bubenícek

February 9 (evening), 2013 | 7:30 PM The Little Mermaid
The Poet: Urban
The Little Mermaid/His Creation: Bouchet
Edvard/The Prince: Riabko, Henriette/The Princess: Chinellato
The Sea Witch: West

2月13日~19日 サンフランシスコ War Memorial Opera House 「ニジンスキー」

February 13, 2013 | 7:30 PM Nijinsky
Vaslav Nijinsky: Riabko
Romola Nijinsky: Bouchet, Serge Diaghilev: Urban
Bronislava Nijinska: Tichy, Stanislav Nijinsky: Martínez
Eleonora Bereda: Laudere, Thomas Nijinsky: Revazov
Tamara Karsavina: Azzoni, Leonid Massine: Trusch
Nijinsky – The Dancer: Bordin, Bubenícek, Riggins, Trusch

February 14, 2013 | 8:00 PM Nijinsky
Vaslav Nijinsky: Bubenícek
Romola Nijinsky: Bouchet, Serge Diaghilev: Jung
Bronislava Nijinska: Heylmann, Stanislav Nijinsky: Martínez
Eleonora Bereda: Laudere, Thomas Nijinsky: Revazov
Tamara Karsavina: Azzoni, Leonid Massine: Trusch
Nijinsky – The Dancer: Bordin, Riggins, Trusch, Tselikov

February 16 (matinee), 2013 | 2:00 PM Nijinsky
Vaslav Nijinsky: Coté (Guest – National Ballet of Canada)
Romola Nijinsky: Ogden (Guest – National Ballet of Canada), Serge Diaghilev: Urban
Bronislava Nijinska: Tichy, Stanislav Nijinsky: Tselikov
Eleonora Bereda: Laudere, Thomas Nijinsky: Revazov
Tamara Karsavina: Bouchet, Leonid Massine: Amuchástegui
Nijinsky – The Dancer: Amuchástegui, Bordin, Riggins, West

ニジンスキー役は、アレクサンドル・リアブコ、オットー・ブベニチェクに加え、ナショナル・バレエ・オブ・カナダのギョーム・コテがサンフランシスコ公演でゲスト出演をします。(ロモラ・ニジンスキー役はヘザー・オグデン)

サンフランシスコ・バレエのオフィシャルYTチャンネルに動画がアップされていたのでご紹介します。

http://youtu.be/LmnUp5zcZ00

こっちはちょっと短縮版(30秒)
http://youtu.be/g06B73H7a50


ナショナル・バレエ・オブ・カナダでも3月2日から8日まで「ニジンスキー」が上演されます。去年の3月にナショナル・バレエ・オブ・カナダを観に行った時に、ジョン・ノイマイヤーがキャスト選びのために来ていました。

http://national.ballet.ca/performances/season1213/Nijinsky/

まだキャストは発表されていませんが、ニジンスキー役はギョーム・コテ他1名、ロモラ役はヘザー・オグデン、そしてこのリハーサル映像から推察するとディアギレフ役はイリ・イェリネクのようです。

http://youtu.be/niYoD_OAFK0

2013/01/12

ロイヤル・バレエを現地で観よう!バレエ・ツアー

海外でバレエを観てみたい、でもどうやってチケットを買ったらいいのかわからない、という方も多いと思います。今はインターネット・ブッキングの発達で以前よりチケットは取りやすくなったと思うけど、人気のあるチケットは早々に売り切れてしまったりもしますよね。こういう時は、旅行会社に手配してもらったり、ツアーを利用するのも一つの手です。

憧れのロイヤルバレエ&プライベートレッスン体験ツアーinロンドン 2013年3月19日出発

http://plus.toptour.jp/art/balletrad/

ロイヤル・バレエの公演をロイヤル・オペラハウスで観ることができるだけでなく、現地でバレエのオープン・クラスも受けることができるというものです。

言葉が分からなかったり、自分のレベルに合ったクラスが分からない・・・など、不安に思っている方も、ツアーの間はバレエ好きの添乗員とロンドン在住経験のあるバレエ講師が同行してサポートしてくれると至れり尽せりです。男性イギリス人のベテランバレエ講師を特別にお呼びしてプライベートレッスンを開講!1人1人丁寧にご指導していただきます。さらには普段は見られないロイヤル・オペラハウスの舞台裏やロイヤル・バレエ・スクール(ホワイト・ロッジ)も見学できるとのこと。

1.バレエレッスンは全部で2回!英国バレエをじっくり感じて下さい。
プライベートレッスン講師は、ダンスワーク講師ADAM PUDNEY先生を予定しています。
ADAM先生の紹介ページ(英語)⇒ http://www.danceworks.net/teachers/adam-pudney
オープンクラスに参加する際は、お金の支払い方やレッスンの受け方など、細かな所もサポートします。

2.ロンドンにてロイヤル・バレエにどっぷりつかる♪
ロイヤル・バレエ学校の美しいホワイト・ロッジを見学!未来のバレリーナたちの姿を見学しましょう
ロイヤル・バレエ団のバックステージ見学で、ダンサーが着ている衣装や舞台裏を見学!
話題作「不思議の国のアリス」も鑑賞予定!

3.ロンドンでバレエ教師をしていた、ロイヤル・アカデミー(RAD)の先生が同行!
英語が分からなかったり、レッスンについていけるかの心配も解消!しっかりサポートしてくださるので安心です。
ロンドンのバレエショップも網羅、同行講師のサポートでピッタリのトゥーシューズを本場のフィッターさんとの会話で見つけましょう。

年齢、経験は一切問いません。未経験の方も歓迎とのことです。

詳しいツアーの内容はリンク先にて。
http://plus.toptour.jp/art/balletrad/

トップツアー株式会社 One's トラベルサロン
〒150-0002東京都渋谷区渋谷2-22-3 渋谷東口ビル10階
TEL:03-5766-0218 FAX:03-5766-0253
スペシャルツアー係
travelslon@toptour.co.jp
平日 11:00~19:00 火曜日・祝祭日休業

また、ツアーへの参加を検討されている方のために、『バレエレッスンツアーinロンドン』の事前講習会も行われるとのことです。同行のロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス ロンドン本校卒業の先生が事前レッスンを行ってくれるそうです。


トップツアーさんでは、アラン先生のバー・アスティエレッスンツアーinフランス 2013年11月2日(土)出発予定 も企画されているとのことです。この「バー・アスティエ」(フロア・バー/バー・オ・ソルの一種)のレッスンは私も受けているのですが、充分な解剖学に基づき緻密に構成されたバレエエクササイズであると同時に、身体のバランス・筋力・柔軟性を向上させながら、心身の一番良い状態を発見することができるもので、バレエのテクニック向上にはすごくいいです。バー・アスティエを提唱しているアラン・アスティエ先生の講習を直接受けながら、リヨンに4泊、パリに2泊。また様々なオプションを用意。パリでは現地のオープンクラスに参加したり、オペラ座バレエを鑑賞するプランも。

http://plus.toptour.jp/art/barreastie/

他にもアートを海外で体験するツアーが開催されているので、ご興味のある方は是非。
http://plus.toptour.jp/art/


旅行の手配は自分でできる、でもどうしても手に入らない公演チケットがある、という場合には、チケット取り扱い代理店を利用するのも手です。こちらのムジーク・ライゼンさんは、ベルリン・フィル、パリ・オペラ座、ミラノ・スカラ座などのバレエ、オペラ、コンサートの公演チケットを手配してくれる代理店です。来日引越し公演はチケットも高価になりますので、少しプレミアムを払っても現地で観た方がチケット代も安いし、旅行もできるし、いいことずくめですよね。友人でもここを利用した人がいますが、とても良心的で良かったと言っていました。海外公演の検索もできます。

http://www.musik-reisen.jp/

フランシス・ベーコン展でフォーサイス映像、オーディオガイドに熊川哲也

東京国立近代美術館で14日まで開催されている「美術にぶるっ!ベストセレクション 日本近代美術の100年」を観に行ってきました。日本の近代美術の歴史を振り返る展覧会で、東京国立近代美術館が所蔵するすべての重要文化財13点を含む名品を一挙に公開したものです。日本画から現代美術まで質、量とも圧倒的な展覧会で、特に戦争画は凄惨なまでの迫力があり、中でも藤田嗣治の「アッツ島玉砕」「サイパン島同胞臣節を全うす」はあまりにも鮮烈でした。第二セクションの「1950's実験場」でも、土門拳の「ヒロシマ」は大変衝撃的で、日本の歩いてきた20世紀についていろいろと思いを馳せながら、日本の現状についても深く考えさせられました。

さて、この東京国立近代美術館の次回の特別展は、フランシス・ベーコン展です。(3月8日より)
http://bacon.exhn.jp/index.html

フランシス・ベーコンの展覧会は、2008年にテート・ブリテンで開催されたもの(その時の感想)、そして同じ内容が2009年のNY、メトロポリタン美術館で開催された回顧展を観て、暴力的なまでの表現の強さに、頭を殴られたような衝撃を感じて、その世界の虜になりました。デレク・ジャコビ、ダニエル・クレイグが出演した映画「愛の悪魔 フランシス・ベーコンの歪んだ肖像」も観ています。今回の展覧会は、企画内容は完全に日本オリジナルなのだそうです。ベーコンにとって最も重要だった「身体」に着目し、その表現方法の変遷を3章構成でたどろうとするテーマ展となっているとのこと。

というわけで、「身体」の観点から、ドイツのアーティストのペーター・ヴェルツが、同じくドイツを代表する振付家であるウィリアム・フォーサイスとともにつくった作品「Corps étrangers」が映像インスタレーションとして展示されるとのことです。アトリエに残されていたベーコンの絶筆をベースにして、フォーサイス自ら振付けて踊った映像をもとに、ヴェルツが制作した映像インスタレーションだそうで、ルーブル美術館で展示されたこともあるそうです。ベーコンとほぼ同時代に、そのエッセンスを鋭く捉えて吸収していた日本のダンス、土方巽の「舞踏(Butoh)」も映像で紹介されるとのこと。

ルーブル美術館での上演の解説(フランス語)
http://www.louvre.fr/expositions/corps-etrangers-toni-morrison-william-forsythe-peter-welzdanse-dessin-film

ピーター・ヴェルツ自身がアップした動画などもあります。

peter welz | william forsythe | retranslation | louvre from peter welz on Vimeo.

そういえば、今回の展覧会とは関係ありませんが、パリ・オペラ座バレエで上演されたウェイン・マクレガーの作品「Anatomy of Sensation」(世界バレエフェスティバルで「感覚の解剖学」として上演)も、フランシス・ベーコンの絵画に触発されて創られたものでした。

そして、チラシを見てちょっとびっくりしたのですが、音声ガイドではスペシャルナビゲーターとして熊川哲也さんが登場し、表現者ならではの視点でフランシス・ベーコン展を紹介しているんだそうです。
http://bacon.exhn.jp/ticket/index.html
(お得な音声ガイド付き前売り券も発売中)

熊川哲也さんのトークを聞きながらフランシス・ベーコンの作品を見るのも、大変面白い経験になるんじゃないかと思います。

展覧会名 フランシス・ベーコン展
会 期 2013年3月8日(金)‒ 5月26日(日)
会 場 東京国立近代美術館
〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
東京メトロ東西線「竹橋駅」 1b出口 徒歩3分
開催時間 午前10時 ‒ 午後5時(金曜日は午後8時まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日(ただし3/25、4/1、4/8、4/29、5/6は開館)、5/7

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若い頃のダニエル・クレイグが、ベーコンの恋人ジョージ・ダイアー役で出演しています。今回の展覧会でも、この映画の上映が予定されています。

2013/01/09

パリ・オペラ座バレエ、オペラをル・シネマ他で公開/テレビ放映情報

いま、ロイヤル・バレエ(及びオペラ)の公演が「シアタス・カルチャー」として全国の映画館で上映されていますが、パリ・オペラ座の公演も映画館で見られることになりました。

「パリ・オペラ座へようこそ」ライブビューイング
http://www.opera-yokoso.com/

バレエ 
パリ・オペラ座バレエ「ドン・キホーテ」(2012年12月18日収録)ルドルフ・ヌレエフ振付 3月2日~15日 Bunkamuraル・シネマで公開
パリ・オペラ座バレエ「マーラー交響曲3番」(2013年4月18日収録予定)ジョン・ノイマイヤー振付 
パリ・オペラ座バレエ「ラ・シルフィード」(2004年7月収録)ピエール・ラコット振付

オペラ
「カルメン」4月13日~終了日未定 Bunkamuraル・シネマで公開
「ホフマン物語」
「ファルスタッフ」
「ヘンゼルとグレーテル」
「ジョコンダ」

入場料金:3500円


先日フランスでも映画館中継&テレビ放映された「ドン・キホーテ」(ドロテ・ジルベール、カール・パケット主演)が早速観られるのも嬉しいし、また「マーラー交響曲3番」も観られるのは嬉しい驚きですね。公式サイトで、今後の上映予定などは発表されると思います。

*****

Bunkamuraル・シネマといえば、現在「ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ!」が公開中ですが、1月12日(土) 12:50の回上映終了後、及び 15:00の回上映前に、吉田都さんのトークショーがあるとのことです。
http://www.bunkamura.co.jp/topics/2013/01/post-147.html

まだこの映画をご覧になっていない方は、ぜひ!

*****

同じくBunkamuraのオーチャードホールで上演される予定のスペイン国立バレエ団。そしてパリ・オペラ座バレエ。この二つのカンパニーを特集した番組が放映されます。

世界最高峰バレエ団来日緊急企画「かくも、バレエは美しい・・」
~パリの恍惚とマドリッドの情熱~
BS-TBS 放送日:1月19日(土) 午前11:00~11:54

オペラ座では、日本で最も人気のエトワール、マチュー・ガニオをはじめ、美しく華やかなスターダンサーたちをインタビュー。さらに彼らを生み出してきたオペラ座バレエ学校も取材。
スペインでは、フラメンコなどスペインの伝統舞踊と、バレエとの融合で世界を魅了してきた舞踊団のスターたちを取材。さらには、団を率いる芸術監督で、フィギュアスケートの振付でも世界的に知られる若き鬼才、アントニオ・ナハーロにもインタビューしたとのことです。

http://www.tbs.co.jp/event/na_de_espana/

2013/01/05

パリ・オペラ座バレエ「ドン・キホーテ」中継

現地時間1月4日にテレビ放映されたパリ・オペラ座「ドン・キホーテ」、ArteのWebでも中継していたのですが、録画が現在のところまだ見ることができます。
http://liveweb.arte.tv/fr/video/Don_Quichotte_Opera_Bastille/










収録:2012年12月18日

キトリ:ドロテ・ジルベール
バジル:カール・パケット
エスパーダ:クリストフ・デュケンヌ
街の踊り子:ローラ・エケ
ドリアードの女王:エロイーズ・ブルドン
キューピッド:メラニー・ユレル
キトリの友人:マリ=ソレーヌ・ブレ、サラ・コーラ・ダヤノヴァ
ジプシー:アリステール・マダン
ガマーシュ:エリック・モナン

NHKバレエの饗宴2013にロベルト・ボッレ出演/追記あり

Twitterで教えていただきましたが、「NHKバレエの饗宴2013」、未定だった吉田都さんのパートナーはロベルト・ボッレだと発表されていました。演目は決定次第発表されるそうです。

また、中村祥子さんとヴィスラウ・デュデック(ベルリン国立バレエ)の出演も発表となっていました。

未定だった東京バレエ団の演目は、「春の祭典」(ベジャール振付)で、出演は吉岡美佳、宮本祐宜ほかとなっています。

http://pid.nhk.or.jp/event/PPG0180481/index.html

感想を書いていないのですが、「インテンシオ」での吉田都さんとロベルト・ボッレの「ロミオとジュリエット」は素晴らしかったです。恋する者同士の高揚感がとても良く伝わってきて、都さんはとても可愛らしく軽やかだし、ロベルトのサポートの見事さ、特に終盤のリフトでは腕2本で軽々と都さんを持ち上げていました。このシーン、こんなにすごいリフトができるのはロベルトしかいないと思って、心打たれました。演目は未定ですが、またこのバルコニーシーンが観られるといいなって思います。

日時 平成25年3月16日(土)
 開場:午後4時
 開演:午後5時
会場 NHKホール (東京都渋谷区神南2-2-1)

出演
小林紀子バレエ・シアター
東京シティバレエ団
東京バレエ団
中村祥子・ヴィスラウ・デュデック(ベルリン国立バレエ)
橋本清香・木本全優(ウィーン国立バレエ)
吉田都、ロベルト・ボッレ(ミラノ・スカラ座、アメリカン・バレエ・シアター)


前売開始 平成25年1月12日(土)午前10時

・e+(イープラス)
 http://eplus.jp/〔インターネット・携帯受付〕

・チケットぴあ (Pコード 425-837)
 http://t.pia.jp/ 〔インターネット・携帯受付〕
 0570-02-9999 〔音声応答電話予約 無休〕

・ローソンチケット (Lコード 33307)
 http://l-tike.com/
 0570-084-003 〔音声応答電話予約 24時間・無休〕
 0570-000-407 〔オペレーター受付〕(午前10時~午後8時)

※発売日初日特別電話
 0570-084-634 〔音声応答予約〕(午前10時~午後6時)
 0570-084-647 〔オペレーター受付〕(午前10時~正午)

※追記

現在バレエの饗宴2013のサイトから、ロベルト・ボッレの名前は消えてきます。

2013/01/03

『ペテルブルグのバレリーナ クシェシンスカヤの回想録』

マチルダ・F.クシェシンスカヤ著、森瑠依子訳、関口紘一監修

ペテルブルグの有名ダンサーの家に生まれ、プティパ時代のペテルブルグ帝室劇場(マリインスキー劇場)で当時ロシア人唯一のプリマ・バレリーナ・アッソルータの称号を得て権力と名声、栄華を欲しいままにしたクシェシンスカヤ(1872~1971年)の回想録。ロマノフ王朝からロシア革命、第二次世界大戦を経た99年に及ぶ生涯は、そのままバレエの歴史と重なると言っていい。ディアギレフと同い年だった彼女の生涯には、カルサヴィナ、パブロワ、ニジンスキー、イザドラ・ダンカン、フォーキン、リファールなどバレエの歴史上の重要人物が多数登場する。

クシェシンスカヤといえば、ディアギレフの伝記にも、バレエ・リュスのパリ公演を妨害したと書かれており、またロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ二世の愛人としても有名で、マクミランのバレエ「アナスタシア」にも登場する。イメージとしてはたいへん腹黒く、バレリーナとしての実力よりも皇室との関係を利用して権勢を振るった女性として毀誉褒貶がつきまとう印象がある。

この回想録は、クシェシンスカヤ自身が書いた本なので、もちろん自分にとって都合の悪いことは書かれておらず、おそらくは史実と異なるところもあるのではないかと思われる。だけど、彼女の悪いイメージというものはこれを読むと払拭されるし、読み物として大変面白い。バレエについての記述よりも、ロマノフ王朝の皇族との華やかな交際、そしてロシア革命の時のスリリングな逃避行などドラマティックな描写が多いので、バレエファンでなくても楽しめる一冊となっている。

もちろん、クシェシンスカヤのバレリーナとしての実力も素晴らしいものであり、もうひとりのプリマ・バレリーナ・アッソルータであったイタリア人のピエリーナ・レニャーニがロシアで初めて「白鳥の湖」で32回転のグランフェッテを踊った後、対抗心を燃やしてロシア人で初めて32回転グランフェッテを踊り、アンコールがかかるともう一度、32回踊ったという。表現力も大変優れていて、「ファラオの娘」「エスメラルダ」「眠れる森の美女」などのプティパ作品には定評があり、オーロラ役はチャイコフスキーにも絶賛された。イタリア式の高度なテクニックをマスターするために大変な努力を払った一方で、凄まじいブライドの高さ、自負心が彼女の表現を磨いたということが強く感じられる。

17歳の時に当時皇太子だったニコライ二世と恋に落ちた彼女は、身分の差があり彼とはどうしても結婚できない運命だった。戴冠式のガラ公演の出演者からはわざと外されたため、皇帝の叔父に手を回して出演できることにした。恋の苦しみを知っている者だけが踊ることができるとプティパが語った「エスメラルダ」を皇帝の前で踊るという念願も叶えられた。ロマノフ家の二人の大公、セルゲイとアンドレイとの三角関係も有名で、皇室との交際などを通じて手に入れた豪奢にして華麗な生活、帝室劇場内での権勢を誇ったために敵も大変多く、中傷されたり妨害工作をされることもしばしば、32歳の時には一度は引退まで追い込まれる。だが、彼女は力強く敵に対抗し、アンドレイとの間には息子をもうけ、パリに亡命後ようやく結婚を果たして女公爵の地位を手に入れた。

権力欲の高さと自負心の高さを隠そうとしない一方で、豪華な屋敷や宝石の数々、皇族たちとの交友関係も楽しげにあけっぴろげに語っている様子は無邪気で、彼女が魅力的な人柄の持ち主であることが伝わってくる。ロシアでの内乱が始まると自腹で傷病兵のための病院を作ったりといったヒューマニスト的な側面を持っていたこともわかる。中でも印象的なのは、この本の終わりの方で紹介されるアンリ・マールの手記での、若き日の劇場での出会いを経て彼女がある兵士の命を救うために奔走したことと、アンリ・マールとの50年の歳月を経た再会の感動的なエピソードだ。手記を閉じるにあたり長年の使用人たちへの感謝の念も述べている。一方で、セルジュ・リファールが書いた「ロシア・バレエの歴史」での彼女の扱いが小さいことに対して怒りを炸裂させていることで、彼女の誇り高さ、自分こそがロシアバレエであるという強烈な思いが顕になっている。

革命が勃発したペテルブルグから命からがらの脱出、全てを失ってのパリでの亡命生活では想像を絶する苦難も描かれているが、それを経て、過去の遺恨を乗り越えてディアギレフら亡命ロシア人と助け合って生きていき、1世紀近くの生涯を全うした彼女の強さは深い感銘を与える。亡命後パリで彼女が開いたスタジオに通っていたマーゴ・フォンテインは、「どんな環境でもお伽噺のプリンセスを思わせる素敵な人だった」だったと語っているが、そのような魅力があったからこそ、バレエの歴史に大きな足跡を残ることができたのだろう。イヴェット・ショヴィレ、ジジ・ジャンメールらも彼女の教えを受けたという。

ペテルブルグのバレリーナ―クシェシンスカヤの回想録ペテルブルグのバレリーナ―クシェシンスカヤの回想録
マチルダ・F・クシェシンスカヤ 関口 紘一

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ちなみに、去年、ロシアでクシェシンスカヤの伝記映画を作るという企画があり、ディアナ・ヴィシニョーワがクシェシンスカヤ役の候補に挙がっていたようです。その後どうなったかはわかりませんが。
http://www.proficinema.ru/news/detail.php?ID=123447

2013/01/02

オランダ国立バレエ「シンデレラ」(ウィールダン振付)の全幕映像 Christopher Wheeldon’s new Cinderella Dutch National Ballet online

オランダ国立バレエの新作「シンデレラ」(クリストファー・ウィールダン振付)が現地時間1月1日14時よりテレビで放映されましたが、この映像を全幕で観ることができます。いつまで視聴可能かは不明です。出演は、アンナ・ツィガンコワとマシュー・ゴールディング。

http://www.uitzendinggemist.nl/afleveringen/1316927
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Cinderella: Anna Tsygankova
Prince Guillaume: Matthew Golding
Stepmother Hortensia: Larissa Lezhnina
Stepsister Edwina: Megan Zimny Gray
Stepsister Clementine: Nadia Yanowsky
Benjamin: Remi Wörtmeyer

メイキング映像

この作品、大変好評だったようです。
Financial Timesのレビュー
The production is a triumph of storytelling and stage design firmly in touch with the 21st century
http://www.ft.com/intl/cms/s/2/bb4fd494-4841-11e2-a1c0-00144feab49a.html#axzz2FikCXOI8

サンフランシスコ・バレエとの共同制作作品であるため、今年の5月にはサンフランシスコ・バレエでも上演されます。

http://www.het-ballet.nl/voorstellingen/2012-2013/cinderella/

http://www.sfballet.org/tickets/production/overview/cinderella-2013

まだ途中までしか見ていないのですが、このプロダクション、ものすごく良いです。衣装も美しいし物語にも説得力があります。オランダ国立バレエ、これを持ってきて来日公演してくれないかなと思う次第です。

イリ・キリアンのオフィシャルサイトオープン

振付家、イリ・キリアンのオフィシャルサイトが1月1日にオープンしました。

詳細なバイオグラフィの他、全振付作品のデータ、主要作品の映像、今後の振付作品の上演予定などが網羅されています。キリアンのことを知るには大変貴重な資料が揃っています。

http://www.jirikylian.com/

今年は、パリ・オペラ座バレエでの「輝夜姫」をはじめ、フィンランド国立バレエやオーストラリア・バレエでの「ベラ・フィギュラ」、イングリッシュ・ナショナル・バレエでの「小さな死」初演、ヒューストン・バレエでの「シンフォニエッタ」など多くの上演が予定されています。

また、このリストにはありませんが、1月14日の新国立劇場での貞松・浜田バレエ団公演のBプロで「6 Dances」の上演、ボストン・バレエのロンドン公演での「ベラ・フィギュラ」上演も予定されています。

あけましておめでとうございます/2012年を振り返って

皆様、あけましておめでとうございます。今年が皆様にとって笑顔いっぱいの幸せで素晴らしい一年になりますように!そして平和な一年でありますように。本年もどうぞよろしくお願いいたします。旧年中は皆様には大変お世話になりました。ブログを通して得られた出会いに感謝します。

昨年は、体調を崩してしまって色々と大変な年でした。しばらくのんびり過ごし、周りの励ましもあってだいぶ元気になってきましたが。ブログの方では、スランプに陥ってバレエの感想をあまり書けなくなってしまいましたが、こちらも徐々に復活できたらいいなと思っています。でも何よりも健康最優先で行きたいです。

そんな中でも、たくさんの舞台を観に行くことができました。日本でも、海外でもたくさんの友達ができて、楽しく過ごすことができました。このような出会いを大切にしたいと思います。来年は、鑑賞本数は減るはず!(というか、人生のうちでこれだけたくさん観ることはもう多分ないでしょう)

1月3日 レニングラード国立バレエ 新春スペシャル・ガラ
1月13日 「ニジンスキー・ガラ」東京バレエ団&マラーホフ
1月14日 「ニジンスキー・ガラ」東京バレエ団)&マラーホフ
1月28日 「Love from Paris エトワール」 Aプログラム 
2月2日 「Love from Paris エトワール」 Bプログラム 
1月31日 「スパルタクス」ボリショイ・バレエ(ワシーリエフ&ルンキナ、アレクサンドロワ)
2月1日 「スパルタクス」ボリショイ・バレエ(ドミトリチェンコ、ニクーリナ、シプリナ)
2月4日 「こうもり」新国立劇場バレエ団 カオ&テューズリー
2月5日 「スパルタクス」ボリショイ・バレエ 愛知県立芸術劇場(ワシーリエフ&ルンキナ、アレクサンドロワ)
2月7日 「ライモンダ」ボリショイ・バレエ(アレクサンドロワ&スクヴォルツォフ)
2月9日 「白鳥の湖」ボリショイ・バレエ ルンキナ&チュージン
2月19日 「アリーナ・コジョカル ドリーム・プロジェクト」Aプロ
2月21日、22日 「アリーナ・コジョカル ドリーム・プロジェクト」Bプロ
2月23日 「TeZukA」シディ・ラルビ・シェルカウイ
2月26日 「アレキナーダ」(オスモルキナ、ティモフェーエフ)NBAバレエ団
2月28、29日 「This is Modern」ユニバーサル・バレエ
3月4日 「ウエスタン・シンフォニー」「ステップテクスト」「ワルプルギスの夜」スターダンサーズ・バレエ団 
3月6日 「シェエラザード」「ダフニスとクロエ」「アルトロカント」/モナコ公国モンテカルロ・バレエ団
3月18日 「アンナ・カレーニナ」新国立劇場バレエ団 ズミエヴェッツ&ガブィシェフ
3月17日 「アンナ・カレーニナ」新国立劇場バレエ団 長田&厚地 
3月31日 「NHKバレエの饗宴2012」
4月21日 Dance to the Future 2012 新国立劇場バレエ団
4月24日 「ウィンナー・ガラ」 ウィーン国立バレエ団
4月30日 「こうもり」エシナ&クルラーエフ&ルグリ/ウィーン国立バレエ団 
5月5日 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 勅使川原三郎
5月6日 「白鳥の湖」  小野&福岡 新国立劇場バレエ団
5月25日 「海賊」K-Ballet Company 熊川&荒井
6月1日 「じゃじゃ馬馴らし」カン&バランキエヴィッチ/シュツットガルト・バレエ団
6月2日 「じゃじゃ馬馴らし」アマトリアン&ジョーンズ/シュツットガルト・バレエ団
6月2日 「じゃじゃ馬馴らし」アイシュヴァルト&レイリー/シュツットガルト・バレエ団
6月6日 「白鳥の湖」オサチェンコ&マッキー/シュツットガルト・バレエ団
6月9日 「じゃじゃ馬馴らし」ヴュンシュ&レイリー/シュツットガルト・バレエ団(兵庫県立文化芸術センター)
6月10日 「白鳥の湖」オサチェンコ&マッキー/シュツットガルト・バレエ団(びわ湖ホール)
6月24日 「マノン」ウェッブ&ウォルシュ 新国立劇場バレエ団
7月1日 「マノン」小野&福岡 新国立劇場バレエ団
7月7日 「Nameless Voice ~水の庭、砂の家」Noism
7月22日 「バレエ・アステラス」 
8月2日、3日、5日 「第13回 世界バレエフェスティバル」Aプロx3
8月8日 「ラ・バヤデール」ヴィシニョーワ&ゴメス/東京バレエ団
8月9日 「ラ・バヤデール」コジョカル&コボー/東京バレエ団
8月11日、12日、14日 「第13回 世界バレエフェスティバル」Bプロx3
8月16日 「第13回 世界バレエフェスティバル」ガラ
8月18日 「アナスタシア」島添&ステラ 小林紀子バレエ・シアター
8月28、30日 「ロイヤル・エレガンスの夕べ」  
9月28日 「オネーギン」東京バレエ団 吉岡&マッキー 
9月29日 「ハレの祭典」佐藤健作 和太鼓公演、酒井はな
9月30日 「オネーギン」 東京バレエ団 吉岡&マッキー
10月6日 ダンストリエンナーレ東京 ヤスミン・ゴデール「LOVE FIRE」
10月19日 「DEDICATED IMAGE」 首藤康之、中村恩恵
10月20日 「曼荼羅の宇宙」森山開次
10月28日 「シルヴィア」新国立劇場バレエ団 米沢&菅野 
10月30日 「シルヴィア」新国立劇場バレエ団 佐久間&ツァオ 
11月1日 「シルヴィア」新国立劇場バレエ団  小野&福岡
11月24日 「Sadeh21」バットシェバ・カンパニー
11月25日 「ダニール・シムキンのすべて インテンシオ」 
11月15日 「ラ・バヤデール」マリインスキー・バレエ ロパートキナ&コルスンツェフ 
11月22日 「アンナ・カレーニナ」ヴィシニョーワ&ズヴェレフ マリインスキーバレエ
11月23日 「アンナ・カレーニナ」 ロパートキナ&エルマコフ マリインスキーバレエ
11月25日 「ラ・バヤデール」マリインスキー・バレエ ヴィシニョーワ&コールプ
11月27日 「白鳥の湖」マリインスキーバレエ  ロパートキナ&コルスンツェフ 
12月2日 「オールスターガラ」 マリインスキーバレエ
12月22日 「くるみ割り人形」 松山バレエ団
12月25日 「Solo for 2」「中国の不思議な役人」Noism&Noism2

<海外>
1月7日「第6回国際バレエスター・ガラ イン・台北」(台北大劇院) コチェトコワ、シムキン、コールプ、セミオノワ、シアラヴォラ、サイズ、イェリネク、アマトリアン、レイリー他
3月10日、11日、13日、15日、18日「眠れる森の美女」ナショナル・バレエ・オブ・カナダ(フォーシーズンズ・シアター・フォー・パフォーミング・アーツ) ロドリゲス&スタンティク、オグデン&コテ、ホジキンソン&マッキー、ヴァンストーン&コンヴァリーナ
6月15日、16日、17日「椿姫」シュツットガルト・バレエ(ソウル・セジョン劇場)カン&ラドマーカー
7月11日、14日、15日「オネーギン」シュツットガルト・バレエ(シュツットガルト州立劇場)アマトリアン&マッキー、アイシュヴァルト&ジョーンズ
11月3日、4日「椿姫」シュツットガルト・バレエ(上海大劇院)カン&ラドマーカー、アマトリアン&レイリー
11月16日「ドン・キホーテ」パリ・オペラ座バレエ「ドン・キホーテ」(オペラ・バスティーユ)パリエロ&パケット
11月17日、18日(昼夜)「オネーギン」シュツットガルト・バレエ(シュツットガルト州立劇場)サイモン&マッキー、カン&バランキエヴィッチ
12月6日、7日、8日、9日「ジゼル」ナショナル・バレエ・オブ・カナダ(フォーシーズンズ・シアター・フォー・パフォーミング・アーツ) ヴァンストーン&江部、ロドリゲス&コンヴァリーナ、シャオナン・ユ&マッキー、ホジキンソン&コテ

<歌舞伎>
五月花形歌舞伎 「西郷と豚姫」「紅葉狩」「女殺油地獄」
秀山祭九月大歌舞伎 「時今也桔梗旗揚」「京鹿子娘道成寺」
十二月大歌舞伎 「御摂勧進帳」

<オペラ>
「プラテー」(シュツットガルト歌劇場)
「ピーター・グライムス」(新国立劇場)

その中で印象的な舞台を挙げていくと、インパクトの大きさでは、バットシェバ・カンパニーの「Sadeh21」でした。こんなに鮮烈で心に響くような舞台を観ることができて本当に良かった、さいたままで足を運んで本当に良かったと思いました。ダンストリエンナーレのヤスミン・ゴデール「LOVE FIRE」も、もうめちゃめちゃ面白かったです。バレエでは、ボリショイ・バレエの「スパルタクス」と、新国立劇場バレエ団の「シルヴィア」が素晴らしかった。ボリショイの底力は言うまでもありませんが、新国立劇場バレエ団の成熟ぶりは凄いと感じました。それと、2010年1月の役デビューから見続けてきたエヴァン・マッキーのオネーギンのキャラクターの変化を見届けられたのもよかったです。日本でもついに「オネーギン」を踊ることができたし。カナダでのヌレエフ版眠りも大変美しかったので、今年はオネーギンと白鳥以外で観られるといいな、と思ったのでした。
あとは、親に連れて行ってもらった歌舞伎がとても楽しかったので、今年も観られるといいのですが、新歌舞伎座の柿落としでチケットの入手が難しそうなのでどうしようかと思っているところです。

皆様にとっても、素晴らしい舞台との出会いがありますように!

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