12/14 ロイヤル・バレエ「くるみ割り人形」の生中継
10月の「白鳥の湖」に続き、ロイヤル・オペラハウスからの「くるみ割り人形」の生中継(厳密には時差があるため、生ではない)が行われるということでチケットを買い求めて観に行きました。チケットは2週間前に発売ということだったのですが、12月2日の時点ですでに渋谷TOHOシネマズの席は残り少なく、当日はソールドアウトでした。
開演前には、上演の舞台裏についての映像が流れました。これがいつも大変よくできているのです。子役たちのリハーサルの様子などを見ることができます。本番に出演したフリッツ役の子は、サードキャストにも入っていなかったのに抜擢されたようですね。
The Nutcracker: Behind the scenes preparations (The Royal Ballet)
そして休憩時間が終わったあとは、「くるみ割り人形」に登場する手品や魔法の種明かし、クリスマスツリーの秘密など。ロイヤルバレエスクールのアッパースクールの生徒が演じる天使たちは、クララとくるみ割り人形を乗せたそりを運転するため、運転免許を持っている子が採用されるのだそうです。
The Nutcracker: Tricks and illusions (The Royal Ballet)
キャスト
ドロッセルマイヤー:ギャリー・エイヴィス
クララ:ミーガン・グレース・ヒンキス
ハンスピーター/くるみ割り人形:リカルド・セルヴェラ
フリッツ:ジョニー・ランダル
ダンシング・ミストレス:ジェネシア・ロサート
アルルカン:ブライアン・マロニー
兵隊:アレクサンダー・キャンベル
コロンビーヌ:エリザベス・ハロッド
ヴィヴァンデール:エマ・マグワイア
ねずみの王様:デヴィッド・ピッカリング
金平糖の精:ロベルタ・マルケス
王子:スティーヴン・マックレー
スペイン:クリスティナ・アレスティス、デヴィッド・ピッカリング、クレア・カルヴァート、ブライアン・マロニー、ローラ・マッカロック、トーマス・ホワイトヘッド
アラビア:メリッサ・ハミルトン、平野亮一、蔵健太、エリック・アンダーウッド
中国:フェルナンド・モンターニョ、アンドレイ・ウペンスキー、ジョナサン・ワトキンス、ジェイムス・ウィルキー
ロシア(トレパック):ジェイムス・ヘイ、ポール・ケイ
葦笛:エリザベス・ハロッド、エマ・マグワイア、ロマニー・パジャク、サビーナ・ウェストコーム
花のワルツ
薔薇の妖精:ラウラ・モレーラ
おつきの騎士:アレイスター・キャンベル、ベネット・ガートサイド、ヴァレリー・ヒストリフ、ヨハネス・ステパネク
花のワルツのソリスト:崔由姫、ヘレン・クローフォード、小林ひかる、イツァール・メンディザバル
キャスト表でトップに名前が登場しているドロッセルマイヤーが、このピーター・ライト版「くるみ割り人形」の主人公といっても過言ではない。ドロッセルマイヤーが発明したネズミ捕り器が全ての始まりなのだから。そしてここでこの役を演じるのは、堂々とした存在感と演技力、カリスマ性と魅力あふれるギャリー・エイヴィス。子供たちに手品を見せる手つきや動きも鮮やかで、一挙一動がスタイリッシュでスマート。彼をこの役にキャスティングさせたことで、この公演の成功は半分約束されたようなもの。
そしてもうひとりの主役は、ドロッセルマイヤーの甥であるハンス・ピーター。ネズミたちによってくるみ割り人形の姿にされてしまった彼を演じるのは、やはりこの役は得意中の得意であるリカルド・セルヴェラ。少年のようなルックスもさることながら、全編踊りっぱなし、2幕のディヴェルティスマンにも参加して大活躍しながら微塵の疲れも見せず、美しい足先、軽やかな跳躍で魅せてくれる。クララ役のミーガン・グレース・ヒンキスはやや大人っぽいのだけど、リカルドの好サポートもあってよく踊っている。通常の版より、ライト版くるみが楽しいのは、ひとえにドロッセルマイヤーとハンス・ピーター、そしてクララの活躍が多いからというのがあると実感。
雪の精の踊りはやはり、群舞が弱いロイヤルの弱点が出てしまった感じ。衣装もクラシックチュチュではなく、やや丈の長いロマンティックチュチュ。代わりに可愛い天使たちが舞台を賑わせてくれる。
2幕のディヴェルティスマンは、上述の通りくるみ割り人形とクララも一緒に踊って大変楽しい。アラビアでは、妖艶なメリッサ・ハミルトンを高々とリフトする平野さんの存在感の大きさに驚く。花のワルツはなかなか豪華なメンバー。ラウラ・モレーラの踊りのうまさ、音の載せ方の巧さはさすがだし、ソリストの中ではユフィさんがやはり目立って美しい。
グラン・パ・ド・ドゥは、なんといってもスティーヴン・マックレーの素晴らしさ。マックレーの「くるみ割り人形」は、吉田都さんと踊った映像がDVD化されているけれども、それよりも踊りがずっと進化しているのが感じられる。吸い付くような着地、パの一つ一つが切れ味鋭くて美しく、体重などまるでないような軽やかさを見ていると思わず頬が緩む。ロベルタ・マルケスはとても可愛らしく、このペアを見ているととても幸せな気持ちにさせられた。
ライト版の良さはエピローグにもある。楽しい夢から醒めたクララが、ハンス・ピーターとすれ違って恋の予感に胸を高鳴らせ、そしてハンス・ピーターは元の姿に戻ってドロッセルマイヤーの元へと帰ってくるというものだ。とても素敵なエンディング。ロイヤル・オペラハウスでの公演のチケットは全て売り切れという大人気ぶりも納得できる、理想的なくるみ割り人形だ。
なお、年明けの公演では、金子扶生さんが金平糖の精役でデビューするとのことで、リハーサルの映像がロイヤルオペラハウスのYTチャンネルにアップされている。きっと本番も素晴らしいことでしょう。
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