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« 「ディアギレフ 芸術に捧げた人生」Diaghilev: A Life シェング・スヘイエン著、鈴木晶訳 | トップページ | 黄金のマスク賞受賞者発表/ローレンス・オリヴィエ賞 Golden Mask Awards Announced/Olivier Awards »

2012/04/17

ピナ・バウシュ 夢の教室 Tanzträume - Jugendliche tanzen Kontakthof von Pina Bausch

2008年、ピナ・バウシュの下に、ダンス経験のない40人のティーンエイジャーが集結し、10ヵ月間のリハーサルを経て「コンタクトホーフ」を上演するまでを追ったドキュメンタリー映画。14歳から17歳までの少年少女は性格も家庭環境も様々だけど、みなダンスを経験したことがない。祖父をコソボ内戦で亡くしていたり、父親を不慮の事故で失っていたり、ボスニア難民のロマの少年だったりと様々な事情を抱えていて、一人一人が、そのことをカメラの前で語る。

http://www.pina-yume.com/

Intro_05

実はこのドキュメンタリー、ピナ・バウシュ本人が登場するシーンは決して多くない。しかしながら、その多くない登場場面でのピナの存在感は強烈で、リハーサルにもつきっきりというわけではないのに40人の少年少女全員の名前を覚えていたり、時には厳しく、時には温かい目で彼らを指導し見つめる。その一挙一動にカリスマ性があり腕の動きなどは実に優雅で、目は本当に優しげだ。そして二人の指導者、ジョー=アン・エンディコットとベネディクト・ビリエの限りない愛情と、粘り強さ、徹底的に細かい指導ぶりには心の底から感動した。

「コンタクトホーフ」は男女の関係とその痛み、その孤独を物理的に「触れ合うこと」によって描いた作品で、まだ人生経験の浅いティーンエイジャーにとっては決して演じやすい作品ではない。彼らの多くは、恋愛すら経験していないのだ。したがって、最初のうちは、お互いに触れ合うのも照れくさいく恥ずかしいし、動きの一つ一つがぎこちない。指導者たちも、このままでは間に合わないと焦り始める場面も出てくる。しかしながら、彼女たちの辛抱強い指導によって、次第に少年少女たちも心がほぐれてきて、週に一度の稽古を楽しみにするようになる。子供たちと向き合い、彼ら自身の心の声に耳を傾け、心を開放させることによって、作品にも血が通う。いつしか彼らが、未だ経験したことのない感情ですら表現できるようになってきて、舞台というもの、ダンスというものの持つ力の偉大さ、ピナ・バウシュの作品の素晴らしさを実感した。

印象的なのが、少女キムを多数の少年たちが慰めるように触っていくシーン。最初は愛情に満ちたものだったのが、いつしか暴力的になってエスカレートし恐怖を感じさせるようになり、最後に一人の少年が彼女のお尻を叩く。その時に「本当に君を傷つけたいわけではないよ」と少年が彼女に告げるところでは、なんとも言えない優しさとともに、現実と演技のオーバーラップを感じた。

冒頭と最後の本番のシーンでは、色鮮やかなドレスに身を包んだ少女たちがお尻を振る姿の大人っぽさに驚かされる。リハーサルでの子供っぽさが嘘のように堂々としている。歩いていく少女に追いつこうとしながらどうしても触れることのできない、譜面台を持った少年のシーンには男女の心のすれ違うさまが痛みを伴って伝わってくる。そしてラスト、ピナが一人一人の出演者たちとハグを交わすところの素敵なことといったら。

この上映、終演後に黒田育世さんと近藤良平さんのトークショーが行われた回を観に行った。ともに振付家であり、またピナ・バウシュの筋金入りのファンである二人のトークは大変面白いものであったのだが、その中での近藤良平さんの提言に賛意を示したい。今年からダンスが中学の授業で必修となったが、何よりもこの映画を授業で見せることが、一番の教育になるのではないかという提言である。舞台というもののもつきらめき、作品を作っていくプロセスの中で自分自身を抑圧していたものから解放される喜びを、実在の少年少女が見せてくれる映画なのだから。

(黒田育世さんと近藤良平さんのトークショーについては、こちらのレポートをお読みください)

ユーロスペースでは4/20、
ヒューマントラストシネマ有楽町では4/27までの上映。

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映画」カテゴリの記事

コメント

映画「ベルリンフィルと子供たち」とよくにたドキュメンタリ映画なのですね。
ここに出てくる子供たちも、似たような境遇なのですが、愛情あふれる指導者の存在でストラビンスキーのベルリンフィル演奏のバレエ「春の祭典」に出演し、成功を収めます。
とっても感動的なドキュメンタリー映画です。

buminekoさん、こんにちは。

「ベルリン・フィルと子供たち」の映画、私も見ました!とても気に入っていてDVDも持っています。こっちの映画は、ピナ・バウシュという振付家の作品ならではの特殊性みたいなのがよく出ていました。ダンサーとの対話の中から作品を作っていくということと、題材が子供に演じさせるにはおとなっぽくて難しいところでしょうか。「ベルリン・フィルと子供たち」をお好きなら、この映画も是非おすすめです。

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