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« パリ・オペラ座バレエ2012/13シーズン Paris Opera Ballet's 2012/2013 Season | トップページ | 「ディアギレフ 芸術に捧げた人生」Diaghilev: A Life »

2012/03/21

3/15 ナショナル・バレエ・オブ・カナダ「眠れる森の美女」National Ballet of Canada "Sleeping Beauty”

エヴァン・マッキーがカナダのファッションマガジンで特集された記事。公演前のバックステージやリハーサルの様子がスライドーショーで見られる。これが実に美しくて惹きつけられる。
http://www.fashionmagazine.com/blogs/society/2012/03/15/the-national-ballets-special-guest-star-evan-mckie-takes-us-behind-the-scenes-of-the-latest-production-of-the-sleeping-beauty/

ナショナル・バレエ・オブ・カナダの3月15日の公演は、前日14日の公演に引き続きソールドアウト。11日の公演について絶賛の嵐が吹き荒れ、エヴァン・マッキーの故郷への凱旋は大成功、カーテンコールでは観客が総立ちとなった。

前奏曲を演奏中に技術的なトラブルが発生したとのことで一旦演奏が中断し、開演が遅れるというアクシデントが発生。そのために3幕のダイヤモンドなど宝石のヴァリエーションがカットされるという異例の事態となった。(オーケストラの組合の関係で、上演時間を3時間以内に抑えなければならないため)

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ここで上演されるヌレエフ版「眠れる森の美女」はアポテオーズがないほか、赤ずきんちゃんも出てこないと「眠れる森の美女」にしてはコンパクト。2回の休憩時間(各15分と短い)込みでぴったり3時間で終了する。このオーケストラの演奏は非常に優れており、特にコンサートマスターのヴァイオリンソロとハープの響きが美しかった。バレエ団専属のオーケストラではあるが、独自に演奏会なども行なっているとのことである。

3月15日のキャスト
オーロラ姫:グレタ・ホジキンソン
フロリムント王子:エヴァン・マッキー
フロレスタン王:レックス・ハリントン
リラの精:リサ・マリー・ジョーダン
フロリナ王女:ティナ・ペレイラ
青い鳥:スカイラー・キャンベル

ここのヌレエフ版の「眠り」は、パリ・オペラ座の「ライモンダ」や、ロイヤル・バレエの「ロミオとジュリエット」「マノン」のデザインで知られるニコラス・ジョージアディスによる重厚な舞台装置と衣装が華麗で豪奢だ。フォーシズンズ・アート・センターの舞台は決して広くないのだけど、舞台を埋め尽くした舞台装置を観るだけでも夢の世界へと連れて行かれた気がする。リラの精は踊らないが、舞台奥を斜めに下っていく大階段を滑るように降りていく姿が美しく、マイムの一つ一つが美しくてうっとり。長いドレスを着用していて、床の上も本当に滑るように進んで行っているので、本物の妖精のよう。どれだけ素晴らしいプロダクションを持っているかが、舞台のクオリティを高める大きな要素であることを実感する。

オーロラの誕生を祝福する妖精たち。ここでは6人の妖精が登場するが、優しさの精、といった名前は付けられていない。第二ヴァリエーションだけ、二人のバレリーナが踊り、そして他の版だとリラの精のヴァリエーションを踊るのは、プリンシパル・フェアリーという役名のバレリーナ。プリンシパル・フェアリーはコーダでイタリアン・フェッテを少し変形させたヴァリエーションを踊る。具体的にいえば、エカルテにグランバットマンした後フェッテして、通常だったらアティチュードに保つ脚をルティレの位置に持って行くフェッテの連続技だ。何人かのプリンシパル・フェアリーを見たけれど、ファーストソリストのロシア人、エレーナ・ロブサノワがポール・ド・ブラが美しくて一番印象に残った。彼女のフロリナ王女も素晴らしかった。

まずは仮面をかぶったカラボスの手下が登場したかと思うと、女性のカラボスが登場してカタラビュットの鬘をむしり取る。オーロラは編み針が刺さって死ぬという呪いをかけると、それを阻止しようとする妖精たちとカラボスの手下たちが戦いを繰り広げる。これがまた複雑なリフトを含んだ振付で合わせるのが大変そうだ。


1幕では、冒頭に編み物に熱中する魔女たちが登場する。彼女たちはカラボスの差し金で、踊りながら編み物に夢中になっていて、それを面白そうと思った一般の女性たちに編み物に興味を持たせ、挙句の果てに逮捕させてしまう。女王様の恩赦により女性たちは解放される。そして16歳のオーロラが階段の上から登場。

グレタ・ホジキンソンはこのバレエ団に22年も在籍している大ベテランなのに、驚くほど初々しく、闊達で生き生きとしたオーロラ姫を踊っていた。一つ一つのパが軽やかで、重力など存在していないかのよう。愛らしくて鷹揚なお姫様。ローズアダージオでのバランスも見事なもので、毎回きちんとアンオーに腕を上げてバランスをとっていたし、デヴェロッペもゆっくりと脚を上げ下ろしていて品が良い。アラベスク・パンシェの動きも上品で愛らしいし、最後のヴァリエーションのランベルセは柔らかくて音楽にふわっと乗っていて軽やかで素敵だ。

ヌレエフ版で特徴的なのは、カラボスが正体を現した後、4人の王子がカラボスを退治しようとするものの、彼女の魔力にかかって相討ちとなってしまい全員倒れてしまうこと。1幕冒頭に登場する魔女たちといい、少しダークな風味がこのヴァージョンの持ち味と言える。

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(フォーシーズンズ・アートセンター全景)

2幕の狩りのシーン。水色のヴェルヴェットの上着に大きな帽子、ヒールのあるロングブーツを履いた王子が颯爽と登場。登場してきた時には少し傲慢な感じもするエヴァンの王子だけど、バットマン・エカルテした時の脚の長さに改めて驚く。ダーツ遊びでは、おつきの者たちがことごとく外すのに王子の投げたダーツは真ん中に命中してちょっと笑いが起きる。王子は目隠しされておつきの者たちや伯爵夫人一行と鬼ごっこをして戯れるが、ふと目隠しを外すと、伯爵夫人の問いかけに応じて涙を流すマイムをする。ここから徐々に、王子の背負っている悲しみが少しずつ明らかになっていくのだ。お付きの者の手を借りて、上着とロングブーツを脱ぐと、光り輝くばかりの王子の衣装で最初のヴァリエーション。長い脚のつま先まで神経の行き届いた美しい踊り。高く上がるアラベスク。何より端正なポールドブラは、ロシア流のエレガンスであることがわかる。

狩りの一行を見送ったあと、憂愁に沈む王子のところへリラの精が来て、なぜ悲しんでいるのですか、と問いかける。本当に愛する人をまだ見つけられなくて心が涙を流しているのです、と王子が答えると、眠れる姫のことをリラは伝える。まだ見ぬオーロラ姫への憧れを募らせ、胸を高鳴らせる王子のヴァリエーションがこの幕の最大の見せ場と言っていいだろう。美しいヴァイオリン・ソロに乗せて6分間も王子が踊るのだ。ヌレエフ版の「眠れる森の美女」は、初演がミラノ・スカラ座で、その後ウィーン国立バレエ、ナショナル・バレエ・オブ・カナダ、そしてパリ・オペラ座バレエと改訂され、王子のヴァリエーションが最もテクニック的に難しい振付となっているのがパリ・オペラ座版だという。そして、今回エヴァンは、敢えてこの一番高度なテクニックを要するオペラ座版のヴァリエーションに挑んだという。

このヴァリエーションの映像といえば、マニュエル・ルグリが踊っているDVDが決定版と言えるほどの素晴らしさだ。比類のないエレガンス、正確なテクニック。ルグリの踊りが頭に刷り込まれていると、エヴァンのには若さがあり、ルグリが見せている究極の優雅さや成熟の領域にはまだ到達していない。ヌレエフ版の「眠り」の王子を踊るのが今回初めてだから、致し方ない。だが、その細長く柔らかい肢体から繰り出されるラインの美しさと豊かな音楽性、ロン・ドゥ・ジャンブの足先の細やかさ、ロシアン・スクール出身ゆえのしなやかさ、大柄ゆえのダイナミックさという点では、鮮烈な印象を与えられた。そして一つ一つのパに意味を持たせて、まだ見ぬ姫への憧憬と熱情を高まらせていく彼のロマンティックさ、そしてドラマティックな表現には、胸を射抜かれるものがあった。

リラの精がオーロラの幻影を王子に見せる。手が届きそうでなかなか届かない。王子の行く手を阻む群舞たち。ようやくオーロラの儚げな幻に出会えてのパ・ド・ドゥがあるが、彼女は彼の腕の中をすり抜けていってしまう。そしてもう一つ王子のヴァリエーションが入る。そこでのパドシャとブリゼを交互にいれながらのディアゴナルに進んでいくコーダも見事だ。(そしてオーロラの幻影は、大きくグランジュテしながら彼を追う) いよいよ王子はオーロラへと彼を導くリラに再会し、ゴンドラに乗って彼女の眠る深い森へと導かれる。行く手を阻もうとするカラボスは手下共々年老いており、簡単にリラの精によってやっつけられる。眠れる森の中で王子はなかなかオーロラを見つけられないが、やがてたどり着き、彼のキスで姫は目覚め、彼女と共に眠りについていた王室の人々も100年の眠りから目を覚ます。

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3幕は、赤を基調にした重厚で派手な頭飾りをつけた衣装に身を包んだ宮廷一同が踊るサラバンドから始まる。サラバンドのソリストはなんと王様で、懐かしのレックス・ハリントンが典雅な踊りを披露した。この場面での衣装はジョージアディスらしい、悪趣味スレスレのゴテゴテと凝りに凝った豪奢ものである。こんなに巨大な頭飾りをつけて踊るダンサーたちは本当に大変だと思う。

冒頭で述べたように、今回は開演が遅れたために残念ながらダイヤモンドと宝石のヴァリエーションはカットされてしまい、すぐに青い鳥とフロリナのヴァリエーションに。フロリナ王女のティナ・ペレイラは可愛らしくも強靭なテクニックの持ち主で目をみはらされた。また、青い鳥のスカイラー・キャンベル(まだコール・ドのダンサー)は1回目の時はまだまだだと思ったが、この日は美しいつま先や高い跳躍、ブリゼ・ボレのなめらかな動きと見事であった。白猫と長靴を履いた猫の後、いよいよグラン・パ・ド・ドゥ。

ナショナル・バレエ・オブ・カナダ版の「眠れる森の美女」では、ヌレエフ版でも主役二人は鬘を着用しないところが良い。1幕の登場では初々しく快活な姫だったグレタ・ホジキンソンのオーロラは、ここでは初々しさを保ちながらも、堂々とした風格を身につけて余裕たっぷり。幸福感で輝いていた。そしてエヴァンの王子は、これぞ王子というエレガンスで、二人の間のパートナーシップも完璧。1回目の公演ではグレタの回転付きピルエットの軸がずれてしまったところがあったが、この日はそれもなくて、フィッシュダイブもとてもスムーズで二人のコミュニケーションが見事であることがよく見て取れた。

ヴァリエーションではエヴァンの長い脚でのマネージュが大きく羽のように軽やかで、舞台をはみ出てしまうのではないかと思うほど。彼の踊りはもちろんテクニック的にも優れているのだけど、何よりも、派手な見せ場を作ろうとするのではなくて、どうすれば美しく見えるかということを考え抜いて踊っていて、つま先や脚の軌跡が実に優雅な上に、ヌレエフ版ならではの細かい足技もしっかりと盛り込んでいる。今時の若い男性ダンサーといえば、ついつい大技に走りがちで美しさを二の次にしていると感じられることが多いので、彼のようなダンスールノーブルタイプはもはや絶滅危惧種に近いのだが、一つ一つのポーズ、特にアティチュードでのバランスとそこへ持って行くまでの動きのエレガントさにはうっとりさせられるほどの美しさがあった。

グレタのヴァリエーションは、とにかく音楽性の豊かさが素晴らしくて、音の粒をひとつひとつ拾いながら歌うように踊ってくれるのが心地よい。滑らかなポールドブラ、愛らしい表情、キラキラ輝く幸せなお姫様は、醒めてほしくない夢の中へと連れて行ってくれる。弾むようなコーダまで、この二人の幸福な物語の舞台が永遠に終わらないといいな、と心から願った。アポテオーズなしで幕が降りてしまうこのバージョンは、終わり方が唐突な感じがしなくもないけれども、この幸福感の絶頂で舞台が終わるという意味では、それもいいのかもしれない。

ナショナル・バレエ・オブ・カナダでは、このヌレエフ版「眠れる森の美女」は2年に1回は上演される人気演目だというが、その人気の秘密もよくわかる。春休みの時期で、観客に子供の姿も目立った。豪華さといい、必要十分なプロダクションの長さといい、とても見やすいのである。最終的に、グレタ&エヴァンが出演した最終日までもソールドアウトとなったのは、多くの新聞にこのペアの絶賛評が掲載されて評判を呼んだ部分も大きい。トロント出身で、ナショナル・バレエ・オブ・カナダのバレエ学校出身のエヴァンにとって、故郷に錦を飾ることができて本当によかったと思うし、トロントの人々も、地元出身のスターの里帰りに大いに沸くこととなった。

Princess Aurora
Greta Hodgkinson (March 11, 18 at 2:00 pm/ March 15 at 7:30 pm)

Prince Florimund
Evan McKie+ (March 11, 18 at 2:00 pm/ March 15 at 7:30 pm)

King Florestan
Rex Harrington (March 10, 15, 17 at 2:00 pm/ March 10, 14, 15, 17 at 7:30 pm)

Queen
Joanna Ivey+ (March 10, 13, 17, 18 at 2:00 pm/ March 10, 14, 15, 17 at 7:30 pm)

Catalubutte
Tomas Schramek (March 11, 15 at 2:00 pm/ March 15, 17 at 7:30 pm)

Lilac Fairy
Lise-Marie Jourdain (March 10, 11, 17 at 2:00 pm/ March 10, 14, 15, 17 at 7:30 pm)

Carabosse
Alejandra Perez-Gomez* (March 15 at 2:00 pm/ March 15, 16, 17 at 7:30 pm)

Principal Fairy
Adji Cissoko* (March 15, 18 at 2:00 pm)

Princess Florine
Tina Pereira (March 11 at 2:00 pm/ March 15 at 7:30 pm)

Bluebird
Skylar Campbell* (March 11 at 2:00 pm/ March 15, 17 at 7:30 pm)

* Debut + Guest Artist

オーレリー・デュポン、マニュエル・ルグリ主演のパリ・オペラ座「眠れる森の美女」
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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

こんにちは

 2日連続で完売とはすごいですね。あと、3時間までというのも意外でした。眠りは長いからねえ。実際、昔はもっと長かったみたいですが。。。
私は、ポスターで隣のハムレットの方が気になりました。新国立みたいに演劇もやっているのかと思ったのですが、バレエと書いてるので、振付とかどうなんだろう?と思いました。音楽は何を使っているんでしょうかねえ。
オテロもバレエだったらヴェルディを使うのかなあ?

「鶴」のところで、感想で書いたのですが
尺八とオリジナルの楽曲がついていて、創造性がありました。
あと、私が勘違いしたのは、クリストファー・マーニーという人です。この人、妻の役をやったんですが、女のダンサーだと思っておりました。確かに事前のダンサーの男女の数、あわなかったんですが、深く考えてみていなかった。
しかし昨年から「トキ」とか「鶴」とか鳥ばかりです。笑い
どちらも残る作品です。

zuikouさん、こんばんは。

結局公演は10回あって、そのうち3回がソールドアウト、うち2回がグレタ&エヴァンの出演日でした。一応この劇場は5階席まである大きなオペラ劇場で、チケット代も一番高い席は2万円超と日本並に高いので、かなり売れ行きが良かったと思います。(平日マチネは割引も出ていましたが)。オーケストラの組合が強いみたいで、その関係で開演時間が延びると公演自体を短縮してしまったんですね・・。

「ハムレット」ですが、私は観たことがないのですが元々はシュツットガルト・バレエのレパートリーで(エヴァンもタイトルロールを踊っています)、マンハイム劇場バレエの芸術監督であるケヴィン・オデイが振り付けています。ハムレットのバレエって今まで12本くらい作られていて、ノイマイヤーやエイフマンも振り付けていますよね。こちらは、音楽はこの作品のために作曲されたもののようです。

「鶴」観に行けなくて残念だったのですが、クリストファー・マーニーはマシュー・ボーンの「白鳥の湖」で王子役を踊っていたダンサーなんですよね。とても好きなダンサーなので今回観られなくて特に残念でした。

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