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2011年11月

2011/11/30

11/16、19昼 ユニバーサル・バレエ「オネーギン」Universal Ballet "Onegin"

Onegin Hyonjun Rhee
Tatiana Misun Kang
Gremin Yevgeniy Khissamutdinov
Lensky Yu Zheng
Olga Yoohee Son
Mother Sungah Lee

「オネーギン」2キャスト目は、ゲストなしですべてユニバーサル・バレエのダンサーで構成。オネーギン役は、9月の来日公演の横須賀でアルブレヒト役を演じたイ・ヒョンジュン。長身で横顔が素敵で男っぽいハンサムである。ヴァルナ・コンクールのジュニア部門でベストカップル賞も受賞しているというし、テクニックもある。翳りのある表情、ニヒルなダークさはオネーギンのキャラクターにも良く合っていた。特に2幕で見せる身勝手でその場の空気になじめなくて性格の悪いところなど、ほんとうにこの役にぴったり。(ほめています)

ところで一方のタチヤーナだが、カン・ミソンはソウルコンクールの金メダリスト受賞歴があったりして、やはりテクニックはあるし手脚が長くてきれいだし、華やかな美人なのだけど、なんとも演技が薄味だったのが残念だった。1幕の登場シーンからして、タチヤーナ役には美人過ぎなのだ。決して悪くないんだけど、ほかのタチヤーナ役のバレリーナたちが素晴らしかっただけに、ちょっと印象に残りにくかった。

レンスキー役は中国出身のジェン・ユィ。彼もヴァルナコンクールのシニア1位という華麗なる経歴の持ち主で、ルックスもちょっと韓流アイドル系で踊りも演技もなかなか熱くて良かった。オネーギンがオルガにちょっかいを出した時には、本気でものすごく怒って、手袋で強くオネーギンの顔をはたくあまり、オネーギンがよろけるばかりか、後ろにいた人まで転んでしまう始末で、ずいぶんと血の気の多いレンスキーだと思った。しかしどうやら彼は怪我明けだったようで、16日の2幕の月光のソロでは踊りが不安定で失敗したところもあり。脚が長くてラインがきれいなだけにもったいなかった。オルガについては、タチヤーナよりもさらに存在感が薄くて、うーん今回の3キャストではやはり一番弱かったと思う。

グレーミン役はカザフスタン出身のエフゲニー・ヒスムタジノフ。後で聞いたら、エヴァン・マッキーがソウルに到着する前に彼の代わりにカン・イェナとオネーギン役としてリハーサルをしていたそう。実際には若いダンサーらしいのだけど、少し髪が薄いこともあって年長に見えて、落ち着いて優しく包容力のあるグレーミンだった。

主演ペアについては、3幕の演技がなかなか濃厚で魅せてくれたので、それはそれで楽しめた公演であった。特にオネーギン役イ・ヒョンジュンは、情熱的で全身を使ってタチヤーナに迫りすがり、それまでのダークで悪い男ぶりとは一転して、リアリティを保ちつつもタチヤーナへの燃える思いを抑えきれない様子がとても良かった。2007年に入団したばかりというので、まだ若い彼であるが、今後とても期待できるダンサーとなるのではないだろうか。

2011/11/29

東京バレエ団 子どものための「ねむれる森の美女」(新制作) 上演決定

NBSでは、創立30周年の記念事業として、2012年3月"子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」"を新制作上演することになったとのこと。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/post-377.html

この"子どもたちのバレエ「ねむれる森の美女」"は、子どもたちが音楽性を養い、演劇性に目覚め、踊りの素晴しさのとりこになるように構成され、公演を観終わって劇場を出るとき、興奮して踊りだしたくなるような、子どもの視点で楽しめる舞台になっています。  上演時間は、子どもたちが集中力を持って観られるよう、休憩をはさんで1時間半に設定。本来バレエには台詞はありませんが、物語の登場人物である式典長(カタラビュット)が、ナビゲーターになって見どころを解説します。舞台照明の魔術でびっくりさせたり、登場人物が客席から出入りするなど客席の子どもたちと舞台との一体感を演出しています。  舞台芸術は絵本作家の永井郁子氏による創造力を刺激する色彩豊かなもの、また衣裳も通常のバレエの衣裳に加え、役によって着ぐるみを使うなど、子どもたちに親しみを感じてもらえるような工夫が施されています。

東京バレエ団
子どものためのバレエ「眠れる森の美女」

◆公演日&主な配役
3月3日(土) 1:00p.m.  オーロラ姫:佐伯知香/デジーレ王子:長瀬直義
3月3日(土) 4:00p.m.  オーロラ姫:二階堂由依/デジーレ王子:柄本弾
3月4日(日) 1:00p.m.  オーロラ姫:沖香菜子/デジーレ王子:松野乃知

◆会場:めぐろパーシモンホール(東急東横線 「都立大学駅」下車 徒歩7分)

◆入場料(税込)
S席(1階):大人=¥5,000 子ども=¥2,500
A席(2階):大人=¥4,000 子ども=¥2,000
※子ども料金は4歳~中学生までのお子様が対象です。
☆ご来場のお子さまには、ひなまつりにちなんだプレゼントをさしあげます。

◆前売開始日:2011年12月17日(土) 10:00a.m.~

◆NBS WEBチケット 座席先行発売:2011年12月7日(水)10:00a.m.~

◆お問い合わせ:NBSチケットセンター 03-3791-8888


ということで、新制作の内容も面白そうで期待できますし、配役も若手を起用しているので、大人の東京バレエ団ファンにとっても楽しみな上演ですね。東京での佐伯・長瀬ペアの主演は初めてではないでしょうか?沖香菜子さん、松野乃知さんは不勉強は私は存じ上げない方でした。(と思ったら、松野乃知さんは8月に観たスタジオDUOの公演に出演されていた方でしたね!)

ところで、この公演、3月3日、4日はゆうぽうとで行われるスターダンサーズ・バレエ団のトリプルビル(吉田都さん、ロバート・テューズリー客演)と日程が重なっていますね。

3月は実は、新国立劇場バレエ団の「アンナ・カレーニナ」と、KAATでのウィル・タケット振付、首藤康之主演の「鶴」も日程が重なっていることに気が付いてしまいました。12月は公演の重なりが少ない分、2月、3月は日程重複が多くてバレエファンは大変です・・。

2011/11/28

ユニバーサル・バレエ2012/2来日公演「This is Modern」キリアン「小さな死」、フォーサイス「イン・ザ・ミドル」、ナハリン「マイナス7」Universal Ballet in Japan 2012/2

先日観に行ったソウルでの「オネーギン」公演も素晴らしかったユニバーサル・バレエですが、今年9月に続き、来年3月に来日公演を行います。

今回は、現代を代表する3人のコンテンポラリー・バレエ振付家の代表作3作品を観られるという『This is Modern』。それもキリアンの「小さな死」、フォーサイスの「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」、オハッド・ナハリンの「マイナス7」という傑作ぞろいで、これを来日公演で観られるとはなんと贅沢なこと、と思うような凄いラインアップです。

クラシック・バレエ中心の公演が多い中で、このセレクションは素晴らしいですね。特にバットシェバ舞踊団のオハッド・ナハリンの作品「マイナス7」が観られるって凄い!これは観客参加型の作品なのですごく楽しいです。

ちょっと会場が遠くて行くのが大変なのですが(しかも平日・・・)、無理しても観に行く価値はあります!チケット発売などの詳細は追ってお知らせします。

http://www.universalballet.jp/

『This is Modern』
期間:2/28(火)・29(水) 開場18:30~、開演19:00~予定
会場:パルテノン多摩

**************************************

- 1部 (20分): Petite Mort「小さな死」 (17分) & Sechs Tanze「6つの踊り」 (3分) <Jiri Kylian>イリ・キリアン振付

- 20分休憩

- 2部(26分): In the Middle, Somewhat Elevated「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」<William Forsythe>ウィリアム・フォーサイス振付

- 20分休憩

- 3部(40分): MINUS7「マイナス7」<Ohad Naharin>オハッド・ナハリン振付

**************************************

1. Jiri Kylian - PETITE MORT 「小さな死」
振付/セット イリ・キリアン (Jiří Kylián)
振付指導 ロスリン・アンダーソン(Roslyn Anderson)、 (Urtzi Aranburu)
音  楽 ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルト(W.A. Mozart)
衣  装 ヨーク・フィッセル (Joke Visser)
照  明 ヨープ・カボルト (Joop Caboort)
照明演出 (Kees Tjebbes)
公演時間 17分
世界初演 1991年ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)
ユニバーサル・バレエ初演 2011年ソウル・ユニバーサル・アートセンター

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Photo by Kyoungjin Kim

2. Jiri Kylian - SECHS TÄNZE 「ゼクス・タンツェ~6つの踊り」
振付/セット/衣装 イリ・キリアン (Jiří Kylián)
振付指導 ロスリン・アンダーソン (Roslyn Anderson)
ヨープ・カボルト (Urtzi Aranburu)
音  楽 ヴォルフガング・アマデウス・
     モーツァルト (W.A. Mozart)
照  明 ヨープ・カボルト (Joop Caboort)
照明演出 (Kees Tjebbes)
公演時間 10分
世界初演 1986年ネザーランド・ダンスシアター(NDT)
ユニバーサル・バレエ初演 2011年ソウル、ユニバーサル・アートセンター(韓国初演)

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Photo by Kyoungjin Kim

3. William Forsythe – In the Middle、 Somewhat Elevated「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」
振付: ウィリアム・フォーサイス(William Forsythe)
音楽: トム・ウィレムス(Thom Willems)
    レスリー・ストック(Leslie Stuck)の共同制作
セット/照明/衣装: ウィリアム・フォーサイス(William Forsythe)
公演時間: 26分
世界初演 1987年パリ・オペラ座バレエ団
ユニバーサル・バレエ初演 2008年ソウルLGアートセンター (韓国初演)

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Photo by Kyoungjin Kim

4. Ohad Naharin – MINUS 7「マイナス・セブン」

振付: オハッド・ナハリン(Ohad Naharin)
音楽: Tractor’s Revengeとオハッド・ナハリンの編曲、ビバルディー、 ショパン
照明、衣装: オハッド・ナハリン(Ohad Naharin)
公演時間: 40分
構成: Anaphaza / Mabul / Zachacha / Finale
ユニバーサル・バレエ初演 2008年ソウルLGアートセンター

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Photo by Kyoungjin Kim

動画もオフィシャルのYouTubeにアップされていますね~。

Petit Mort

Sechs Tanze

In the Middle, Somewhat Elevated

MINUS 7

ユニバーサルバレエの「オネーギン」公演の感想はなかなか全部書ききれないのですが、ぼちぼち書いて言っていますので、よろしかったらこちらも併せてご覧ください。(15日の公演についてはほぼ完了)
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2011/11/1115-universal-.html

2011/11/27

ウィル・タケット×首藤康之 『鶴』出演キャスト

KAAT( 神奈川芸術劇場)で上演されるウィル・タケット演出・振付、首藤康之主演の世界初演作「鶴」の出演者がオフィシャルサイトで発表されていました。

なんと、マシュー・ボーンの「白鳥の湖」で印象的な王子役を演じていたクリストファー・マーニー、そして後藤和雄さんが出演するのですね!これはますます必見の公演となりました。衣装がワダエミというのも注目です。

ウィル・タケットは、このプロダクションにパペット技術を導入するという斬新なアイデアをとり入れます。鶴の描写をパペットと人間が一体となって見せる演出は、物語のメッセージをより具体的に表現することが出来、期待が膨らみます。鶴である娘が全身全霊を込めて織り上げる、美しく見事な布はワダエミのデザインによるものです。それを求める人々、布に描かれたストーリーなど、娘の姿でありながら鶴である彼女が作り出した織物の美を、どうぞお楽しみください。
http://www.kaat.jp/pf/the-crane-maiden.html

KAAT神奈川芸術劇場オープニング1周年公演
NIPPON文学シリーズ第2弾
『鶴』日本民話“鶴の恩返し”より

演出・振付/ウィル・タケット
出演/首藤康之、クリストファー・マーニー、キャメロン・マクミラン、ナオミ・コビー、ヌーノ・シルバ、後藤和雄

[スタッフ]
台本/アラスデア・ミドルトン
翻訳/常田景子
音楽/藤原道山、ポール・イングリッシュビー
美術/ボーカー・ジョンソン
人形デザイン/トビー・オリー
衣装/ワダエミ

制作/株式会社パルコ
主催/KAAT 神奈川芸術劇場(指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団)

公演期間
2012.3.16(金)―3.18(日)

公演スケジュール
3.16(金) 19:00
3.17(土) 13:30/18:00
3.18(日) 14:00

※開場は開演の30分前

チケット購入
KAme先行発売
先行発売日
2011.12.10(土)―2012.1.7(土)

一般発売日
2012.01.08(日)

チケット料金(税込)
(全席指定・税込)
S席 8,500円 A席 6,500円

2011/11/26

2012年2月NBAバレエ団「アレキナーダ」にエフゲーニャ・オブラスツォーワ出演 Evgenia Obraztsova guests in NBA Ballet"Les Millions d'Arlequin"

今日はアーキタンツ10周年公演 ARCHITANZ2011に行ってきました。現代作品3作品という構成でしたが、大変見ごたえがあり、面白かったです。能楽師・津村禮次郎氏による創作能「トキ」を小尻健太さんがコンテンポラリーダンスに再構築した作品「トキ」も素晴らしかったのですが、圧巻だったのは、ウヴェ・ショルツ振付による「ラフマニノフ・ピアノコンチェルト第3番」の日本初演で、変な言い方ですが日本にもこれだけ多くの踊れて音楽性の豊かなダンサーがそろっているんだなと改めて認識しました。特に「トキ」にも出演していた酒井はなさんの圧倒的な表現力と、藤野暢央さんのテクニック、奥村康祐さんの清潔感が印象的でした。

さて、このARCHITANZ2011で配布されていたチラシの中に、NBAバレエ団の2月公演「アレキナーダ」のお知らせがありました。なんと、最近ゲストとして引っ張りだこのエフゲーニャ・オブラスツォーワが出演します。共演は同じマリインスキー・バレエのソリスト、アレクセイ・ティモフェーエフ。

NBAバレエ団
「アルレキナーダ 全2幕」 (原振付:マリウス・プティパ、復元・演出・再振付:安達哲治、再振付:アレキサンダー・ミチュージン)Les Millions d'Arlequin
併演 まぼろしの島(せむしの仔馬より2幕)(原振付:サン・レオン)

出演:
エフゲーニャ・オブラスツォーワ
     (マリインスキー劇場ファーストソリスト)
アレクセイ・ティモフェーエフ
     (マリインスキー劇場ソリスト)
 
公演日:2012年2月25日(土)18:30(開場18:00)
    2012年2月26日(日)15:00(開場14:30)

会場:ゆうぽうとホール

チケット料金(全席指定)S席 \10,000 A席 \8,000

12月1日(木) チケット発売開始


2012年2月は本当に公演が目白押しですよね!「アレキナーダ」の今回の復元は世界初演だそうです。
なお、エフゲーニャ・オブラスツォーワは、モスクワ音楽劇場の「ラ・シルフィード」の初日に、ハンブルク・バレエのティアゴ・ボアディンとともにゲスト出演する予定です。

2011/11/25

「エトワール Love From Paris」パリ・オペラ座バレエ団 ダンサーからのメッセージ

来年1月末~2月に開催されるパリ・オペラ座バレエのダンサーたちによるガラ「エトワール love From Paris」ですが、eplusのYouTubeチャンネルにダンサーたちのメッセージ動画がアップされています。

リーダーのバンジャマン・ペッシュをはじめ、ヤニック・ビトンクール、ジョシュア・オファルト、フロリアン・マニュネ、今回けがのために出演が不可能となってしまったマチアス・エイマン、そしてマチュー・ガニオです。一人一人が、最後に日本語で日本の観客に向けて日本語でメッセージを送ってくれているのが何ともほほえましくてうれしくなります。

また、今回のガラは、震災で孤児となった子供たちに何かをしたいとペッシュは願っているとのことで、その心意気もうれしくなります。

http://www.youtube.com/watch?v=tlxCK78LL7c

「エトワール Love From Paris」オフィシャルサイト
http://www.fujitv.co.jp/events/etoiles/index.html

オフィシャルサイトの方にも、ドロテ・ジルベール、バンジャマン・ペッシュ、マチュー・ガニオからの動画メッセージがありますね。
http://www.fujitv.co.jp/events/etoiles/movie.html

なお、マチアス・エイマンの出演キャンセルのためにプログラムが一部変更になってしまったので、ご注意ください。
http://www.fujitv.co.jp/events/etoiles/program.html

2011/11/24

スターダンサーズ・バレエ団3月公演に吉田都・ロバート・テューズリー出演

今日ぴあから来たメールでのお知らせに「吉田都出演公演」として、

スターダンサーズ・バレエ団
「ウェスタン・シンフォニー」/「ステップテクスト」/「ワルプルギスの夜」
の案内がありました。
先行先着「プリセール」 2011/11/25(金) 昼12:00より発売

http://ticket.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=1151250&rlsCd=002

2012/3/3(土)14:00 開演 ( 13:15 開場 )
2012/3/4(日)14:00 開演 ( 13:15 開場 )
会場:ゆうぽうとホール (東京都)

「ウェスタン・シンフォニー」/「ステップテクスト」/「ワルプルギスの夜」

[指揮]田中良和
[演奏]東京ニューシティ管弦楽団
[振付]ジョージ・バランシン / ウィリアム・フォーサイス
[出演]スターダンサーズ・バレエ団
[ゲスト]吉田都
公演などに関するお問い合わせ先
スターダンサーズ・バレエ団:03-3401-2293
SS席 9000円 、 S席 7000円 、 A席 5000円 、 B席 3000円

この公演は内容が面白そうだなとちょっと注目していたのですが、都さんが出演されるんですね。


それで、友達に教えていただいたのですが、ロパート・テューズリーのオフィシャルサイトの出演予定に以下の記述があります。

http://roberttewsley.com/news.html

Schedule

Date Place Ballets
Sat 4 February 2012 Japan / Tokyo / New National Theatre Die Fledermaus/ La Chauve-Souris (Roland Petit) with Begona Cao
Tue 7 February 2012 Japan / Tokyo / New National Theatre Die Fledermaus/ La Chauve-Souris (Roland Petit) with Begona Cao
Sat 3 March 2012 Japan / Tokyo / Gotanda U-Port Hall Walpurgisnacht Ballet (George Balanchine) with Miyako Yoshida
Sun 4 March 2012 Japan / Tokyo / Gotanda U-Port Hall Walpurgisnacht Ballet (George Balanchine) with Miyako Yoshida

ということで、吉田都さんは、ロバート・テューズリーと「ワルプルギスの夜」に出演する可能性が大きいものと思われます。

ウィーン国立バレエ来日 兵庫公演「こうもり」にもルグリ出演 Manuel Legris Appears in Vienna Opera Ballet's "The Bat" Japan Tour

兵庫県立芸術文化センターのオフィシャルサイトに、ウィーン国立バレエ2012年5月3日(木・祝)の概要が出ていました。それによると、「こうもり」でウルリック役がマニュエル・ルグリが演じるそうです。

兵庫県立芸術文化センターのサイトはリンクが張りにくいんですけど、
http://www1.gcenter-hyogo.jp/sysfile/center/top.html

ウィーン国立バレエの「こうもり」予定は「公演カレンダー」から、「近日発売予定の公演」のところに出ています。(発売日順に並んでいるのでスクロールしてくださいね)


ウィーン国立バレエ団「こうもり」


・会 場 芸術文化センター KOBELCO大ホール
・開 演 15:00 (開 場 14:15)
・料 金 A \12,000/B \9,000/C \7,000/D \5,000/E \3,000
・発売日  先行 2011年12月9日(金) 一般 2011年12月11日(日)
・お問合せ 芸術文化センターチケットオフィス:0798-68-0255
12/9(金)10:00AMよりネット先行予約も開始!
最前列はA列です。

■出演者
予定ソリスト
ベラ役:マリア・ヤコブレワ
ヨハン役:ロマン・ラツィク
(上記2名:ウィーン国立バレエ団 プリンシパル)
ウルリック役:マニュエル・ルグリ
(ウィーン国立バレエ団 芸術監督)
管弦楽 日本センチュリー交響楽団

■スタッフ
芸術監督 マニュエル・ルグリ
振付 ローラン・プティ
音楽 ヨハン・シュトラウスⅡ世
編曲 ダグラス・ガムレイ
舞台美術 ジャン=ミッシェル・ウィルモット
衣裳 ルイザ・スピナテッリ
照明 ジャン=ミッシェル・デジレ
演奏 日本センチュリー交響楽団


なお、以前お知らせしたように、5月5日(祝)の愛知県立芸術劇場での「こうもり」でも、ルグリはウルリック役で出演予定です。東京での公演のキャストが気になるところですよね。

2011/11/22

ナタリア・オシポワとイワン・ワシーリエフの移籍騒動続報/ニーナ・カプツォーワのプリンシパル昇進

前回書いたエントリにたくさんのコメントをいただき、旅行の時期と重なってしまい、一つ一つにお返事ができていなくて申し訳ありません。

New York Timesには、かなり辛辣なことも書かれています。バナナで財を成したミハイロフスキーのケフマン総裁が、お金の力で二人のボリショイの大スターを引き抜いたみたいな論調です。ケフマンは、デヴィッド・ホールバーグですらもボリショイから引き抜いて見せるみたいな勢いです。

How a Banana Tycoon Lured Bolshoi Stars to His Theater
http://www.nytimes.com/2011/11/21/arts/dance/vladimir-kekhman-lures-osipova-and-vasiliev-from-bolshoi.html?partner=rss&emc=rss

また、ナタリア・オシポワとイワン・ワシーリエフばかりでなく、ディアナ・ヴィシニョーワ、ポリーナ・セミオノワらのエージェントであり、さらにはナチョ・ドゥアトのエージェントでもあるセルゲイ・ダニラン氏の辣腕ぶりも書かれています。彼が率いる興行会社Ardaniは、マリインスキー、ミハイロフスキー、エイフマン・バレエの米国ツアーの興行のほか、「Kings Of The Dance」、それの女性版「Reflections」そしてヴィシニョーワの「Beauty In Motion」「Dialogues」などの意欲的な企画も行っています。ここが積極的に、この二人のリハーサルの写真などをTwitterで配信しています。

二人のボリショイでの最後の出演となる「ドン・キホーテ」のリハーサルの様子の動画

さて、一方では米国のバレエ・フォーラムBallet Alertのスレッドにロシア語の興味深い記事の翻訳が載っていました。
該当スレッド
http://balletalert.invisionzone.com/index.php?/topic/34719-osipova-and-vasiliev-to-leave-the-bolshoi/page__st__45
オリジナルの記事はこちら(ロシア語)
http://www.fontanka.ru/2011/11/14/149/

ナタリア・オシポワとイワン・ワシーリエフのインタビューなのですが、彼らは熟慮を重ね、真摯に芸術上の理由だけで移籍を実行することになったということが読み取れます。ボリショイのような大きな劇場に所属していると、先のスケジュールを立てることが非常に困難であり、ゲスト出演をしようと思ってもそれが難しい、また逆にゲスト出演が多いと、リハーサル期間が取れないためボリショイ劇場で新しい役を付けてもらうことが困難であり、またボリショイ内で踊る機会自体も少なくなってしまうというのが大きな理由のようです。ミハイロフスキーに移籍すれば、もっとほかの劇場へのゲスト出演をする自由が与えられる上、またナチョ・ドゥアトが二人のために新作を振付けることを約束したのも理由の一つだそうです。

(彼らによれば、逆にフィーリンが芸術監督になって多少は事態は改善していて、3か月先のスケジュールまではわかるようになったそうですが、それでもすべてのゲスト出演の要望には応えられないとのことです)


この件に関する、Guardianの批評家ジュディス・マッケレル氏によるブログ記事も大変興味深いものです。
Bolshoi ballet defections: a case of itchy feet?
http://www.guardian.co.uk/stage/theatreblog/2011/nov/17/bolshoi-ballet-defections-osipova-vasiliev

オシポワやワシーリエフがボリショイで踊れる役はすべて踊った、と言っていることに対して、ボリショイ側からはは、2013年にはウェイン・マクレガー振付けによる新作「春の祭典」が予定されているなど新しいレパートリーにも取り組んでおり、オシポワにはグリゴローヴィチ版「くるみ割り人形」や「眠れる森の美女」の主演、そしてワシーリエフには「アルルの女」の主演が予定されていたと反論があったようです。ただ、フィーリンは、劇場所属のダンサーの外部出演に関しては減らしてもらう方向で動いていたと報じられており、それが今回の彼らの移籍につながったのではと思われます。(Guardianの記事については、コメント欄も興味深いので、ぜひご一読を)


いずれにしても、彼らに限らず、成長途中にある若いダンサーたちは、一つのカンパニーや同じようなレパートリーに縛られず、もっとグローバルに活躍したいし新しい作品を踊ることで、自分たちの芸術性の幅を広げたいと考えている人が多く、そのためにArdaniのようなエージェントに所属するといった選択肢を取るようになってきています。ロシアという国家を代表する何百年の歴史を持つカンパニーに所属しているのではそれが難しいということなのでしょう。

バレエダンサーというのは活躍できる年数が短く、またいつ怪我などでキャリアが断ち切られるかという不安を抱えながら活動しなくてはならないので、若いうちにもっと多くの舞台に立ち、いろいろな経験をし、世界的にも活躍したいと思うことは、当然のことだと言えます。先のスケジュールがわからないために、ゲスト出演やガラへの出演の日程が決められないというのは、ボリショイだけに限った話ではありません。

また、アリーナ・コジョカルやディアナ・ヴィシニョーワのように、頻繁に海外でゲスト出演するために本拠地での出演が相対的に少なくなっており、本拠地では自分のために振付けられた新作を演じることができないという状況になってしまう例は枚挙に暇がありません。結果的に、海外での出演機会を自分で(もしくはエージェントの手を借りて)探していくということにもなっていきます。

それが、またABTをはじめ多くのカンパニーの公演の主役をゲストが占めるという傾向にもつながってきているということになるんでしょうね。ABTに、ナタリア・オシポワとイワン・ワシーリエフ、ディアナ・ヴィシニョーワ、ポリーナ・セミオノワが客演している(オシポワ、ヴィシニョーワはレギュラーゲストですが)ということは、Ardaniの影響力の大きさも感じさせるものです。

*********
ところで、一方では、ニーナ・カプツォーワがめでたくボリショイのプリンシパルに昇進したというニュースも飛び込んできました。今シーズンの新版「眠れる森の美女」でのオーロラ役の高い評価が昇進につながり、公演直後にこの昇進がセルゲイ・フィーリンより発表されたそうです。
Nina Kaptsova - prima ballerina of the Bolshoi Theatre!
http://www.bolshoi.ru/about/press/articles/2011/1982/

2011/11/21

ABT 2012年ゲストにデニス・マトヴィエンコ、ワディム・ムンタギロフ

ユニバーサル・バレエの「オネーギン」公演から帰ってきました。結局6公演観ることになったのですが、いずれも素晴らしかったです。まだ感想を書いている途中なのですが、泊まっていたホテルの宿泊代とインターネット料金があまりにも高額だったために現地でろくに更新もできず、申し訳ありません。

とにかく、エヴァン・マッキーのオネーギンが日に日に素晴らしくなっていき、特に最終日の圧倒的なパフォーマンスがとても感動的でした。また、ファースト・キャストのファン・へミンが演じたタチヤーナの揺れ動く気持ちを細やかに演じる繊細さと強靭さ、表現力にも驚かされ、彼女はアジアを代表する凄いバレリーナであるということを来日公演の「ジゼル」以来改めて実感したのでした。

公演の感想はおいおい書いていくとして、旅行中にもいろいろな動きがあったようですね。新国立劇場バレエ団の「白鳥の湖」のキャスト決定や、「エトワール Love From Paris」のマチアス・エイマンの降板(代役はフロリアン・マニュネ)、2012年3月30日に 「NHK バレエの饗演 2012」開催などなど・・・。


一応取り上げておきたいニュースとしては、これがあります。

DENIS MATVIENKO AND VADIM MUNTAGIROV
TO APPEAR AS GUEST ARTISTS WITH ABT FOR 2012
http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=375

来年のMETシーズンはイワン・ワシーリエフ、ヨハン・コボーなどのゲストを迎えるABTのさらなるゲストとして、日本でもおなじみのデニス・マトヴィエンコ(一応マリインスキーに所属していますが、キエフ・バレエの芸術監督にも就任しました)と、イングリッシュ・ナショナル・バレエのワディム・ムンタギロフが出演するとのことです。

マトヴィエンコは5月26日の「ラ・バヤデール」でジリアン・マーフィのパートナーとしてソロル役を踊ります。また、ムンタギロフは2月4日のワシントンDCでの「ラ・バヤデール」、5月23日のMETシーズンでの同じく「バヤデール」のソロル役(相手役はヒー・セオ)、そして6月30日の「白鳥の湖」でイリーナ・ドヴォロヴェンコをパートナーに王子を踊ります。

ムンタギロフは、同じくENBでパートナーを務めているダリア・クリメントヴァとともに2月の「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」で来日します。ENBに入団したのが2009年でまだ21歳ですが、あっという間に出世街道を駆け上り現在プリンシパル。ENBの男性ダンサー唯一のスターといってもいい立場となったため、どこかもっとメジャーなバレエ団に引き抜かれてしまうのではないかともっぱらの噂の対象となっています。ただ、彼自身は英国以外ではまだ知名度が高くないし、ENBも超一流のバレエ団ではないため、この段階でのゲスト出演ということは、ABTが彼を将来のスター候補として引き抜きにかかっているのではないかとは大いに考えられます。


ABTが深刻な男性プリンシパル不足に悩まされているのは、以前もこのブログで何回か取り上げてきました。しかし内部のダンサーを育てるのではなくてっとり早く外部からのゲストに頼るのもどうしたものかと思われます。しばらくの間、昇進の話も全く聞きません。

なお、フォーラムBallet Alertで、METシーズンで男性プリンシパルが何回出演する予定になっているかを計算した方がいたので、引用してみます。(まだ主演が決定していない演目もありますので、参考までに)
http://balletalert.invisionzone.com/index.php?/topic/34739-denis-matvienkovadim-muntagirov-to-appear-with-abt-in-2012/page__pid__295025#entry295025

14 Gomes
10 Hallberg
8 Stearns
7 Cornejo
5 Bolle
5 Vasiliev
4 Simkin
4 Corella
4 Kobborg
3 Steifel
2 Muntagirov
1 Beloserkovsky
1 Matvienko
1 Hammoudi

やはりマルセロ・ゴメスに圧倒的に負荷がかかってしまっていることがよくわかるのと、ソリストクラスの男性ダンサーに主演の機会がほとんどないことが見てわかります。(シムキンを4回としていますが、「明るい小川」のバレエダンサー役が2回と「海賊」のアリが1回なので実質的な主演は「白鳥の湖」1回のみ)また、ボリショイに移籍したホールバーグにも相当頼っています。

2011/11/17

11/15 ユニバーサル・バレエ「オネーギン」Universal Ballet "Onegin"

Universal Ballet "Onegin"

http://universalballet.com/english/performances/performance_view.asp?nyear=2011&nmonth=11&cSort=12

Ballet in three acts
Choreography and libretto JOHN CRANKO
(after a novel by Alexander Pushkin)

Music by Pyotr Ys. Tchaikovsky
Arranged and orchestrated by Kurt-Heinz Stolze
Staged by Jane Bourne
Supervised by Reid Anderson
Set Design: Thomas Mika
Costume Design: Maren Fischer
Lighting Design: Steen Bjarke
Copyright: Dieter Graefe

Onegin Evan Mckie
Tatiana Hyojung Kang
Gremin Dongtak Lee
Lensky Konstantin Novoselov
Olga Naeun Kim
Mother Hyeseung Oh

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シュツットガルト・バレエのエヴァン・マッキーがゲストで「オネーギン」を踊るというわけで、韓国に駆けつけた。本当は初日から行く予定だったのだけど事情により火曜日からに変更。同じくシュツットガルト・バレエの新プリンシパルであるヒョジュン・カンのタチヤーナ役をやっぱり観たいということもあって旅行日程が二転三転してしまった。

それにしても、ゲストを迎えているとはいえ、自前の主演陣も加えて「オネーギン」の公演を8回も上演できるこのバレエ団の興行力はすごい。(初演は二年前)会場はゆうぽうとくらいの規模のLGアートセンターとはいえ、チケットの売れ行きも非常に好調であったという。実際この日はほぼ満席であった。そして公演全体のクオリティは、群舞に至るまでとても高くて、この客入りも納得であった。唯一難を言えば、舞台装置と衣装がオリジナルのユルゲン・ローゼのイメージが強いこともあり、こちらの衣装や装置はかなり安普請で魅力に乏しく、そのためにせっかくのパフォーマンスの良さが100%生かされなかったことであろうか。

「オネーギン」という作品は、タイトルロールこそオネーギンであるものの、タチヤーナ役も非常に重要で、オネーギン異状の難役ともいえる。その役に、今回この役を演じるのが初めての、シュツットガルト・バレエの新プリンシパル、ヒョジュン・カンを持ってきた。これは一種大冒険である。本場のダンサーでありながらオルガ役しか経験していない彼女がどんなタチヤーナを踊るかは非常に興味があった。私自身、彼女はオルガ役では観ているけど、どちらかというとコンテンポラリー作品での高い身体能力を生かした作品でのイメージが強かった。

ヒョジュンは容姿も地味なほうであるし、田舎の垢抜けなくて初心で、夢見がちな少女であるということにはとても説得力がある。いかにも都会的でエレガントな美青年オネーギンには鼻も引っ掛けられないのもよくわかる。鏡のシーンでは、実は手足が長いことがわかり、ぱっと花開いたように奔放に踊るところのラインがとても美しく、急に女性の色香を放ち始めたというのに、2幕の名前の日のパーティではおずおずとオネーギンに進み出ては相手にされず、萎れていく。さらに手紙を破かれたところでの身を震わせて涙を流す姿はもうかわいそうで仕方ない。だが、決闘でレンスキーを殺してしまったオネーギンを射抜く厳しい視線を向けるところで、彼女は確実に変わったのが伝わってきた。

3幕のタチヤーナは美しく花開いたとともに、いかにも賢夫人となった姿をヒョジュンは見せていた。人生において正しい選択を行い、優しい夫と幸せな生活を送っているのがよくわかる満たされた表情。彼に再会したときにも、すっと通り過ぎるかのように歩き去っていくけど、ほんの一瞬彼を振り返る、だからオネーギンは最後に希望を持ってしまうのだ。オネーギンから手紙が送られてきても、動揺はするものの理性が勝っているし、おやすみをするために夫が部屋に入ってくると、激しく抱きつき彼との愛を確認しようとする。オネーギンが駆け込んできても、最初はタチヤーナはクールだ。決してこの男には心を許してはならないと頑なに誓いを守ろうとする。だが、オネーギンの求愛に次第にタチヤーナの心は解けていく。ついに気持ちを抑えきれなくなったタチヤーナは横たわり、オネーギンに身を任せると大きく開脚して飛翔する。この一連の感情の動きを激情的に表現したヒョジュンの、身体をつかった演劇表現は初役とは思えないほど圧巻で、心を動かされた。ちゃんと、1幕の鏡のパ・ド・ドゥのリプライズとなっているのだ。ところが、身も心も解けていく自身に気がついてしまった賢い少女タチヤーナは、その少女時代の想いを永遠に封印する強い決意を持ち、オネーギンのほうに一瞥もくれずに手紙を突き返し、彼がなおもすがりつくと厳しい表情でそれを破り捨てて彼に立ち去るように命令する。タチヤーナは走り去ってしまったオネーギンを追いかけようともしないで、しかし激しく嗚咽し両手で顔を覆って涙を流すのだった。この一瞬の嵐のように通り過ぎた激しい想いを強い決心で葬り去ることができるタチヤーナは、これからも賢夫人として強く生きていくのだろうな、と思わせるラスト。タチヤーナ役の解釈はバレリーナによっても全然違うと思うけど、ヒョジュン・カンは、一人の奥手で真面目で夢見がちな女の子が、読書やグレーミンとの結婚生活で得た知性により、夢を見ないで強く生きるという自分の生き方を決めていく物語として成立させていたと私は感じたのであった。

それだけ深い解釈をした見事なヒョジュン・カンの3幕手紙のパ・ド・ドゥの衣装が地味なクリーム色であったことが非常に残念でならない。ユルゲン・ローゼデザインの繊細なブラウンの衣装で見たかった・・・。エヴァンはシュツットガルト・バレエの自前の衣装を持参してきたけれども、まだシュツットガルト・バレエでタチヤーナ役を踊ったことがないヒョジュンは自分の衣装を持っていないのだった。

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さて、今回のヒョジュン・カンのユニバーサル・バレエへのゲスト出演は、もともとはカン・イェナとのみ踊る予定だったエヴァン・マッキーの推薦によるものだった。逆に言えば、彼女からこれだけのものを引き出したのがエヴァンのパートナーシップの手腕だったといえる。「オネーギン」というバレエは、主役2人がテクニックに優れていて、自分なりのキャラクター観を持っていたとしても、ひとりよがりの演技だったり技術的に目立とうと思って踊ってしまっては観る者に何の感情も引き起こさない。

オネーギンとタチヤーナのお互いの持つ感情が、パートナーとすれ違うところが多い作品なのであるが、それが一瞬だけ交錯して昂揚感、そして愛の悲しみがあふれ出して胸が苦しくなるほどの想いを観る者にも引き起こすのが二つのパ・ド・ドゥ、1幕の鏡のパ・ド・ドゥと3幕の手紙のパ・ド・ドゥである。踊りで語られるシーンであるけれども、言葉よりも雄弁に踊りが主人公二人の気持ちの高まりと揺らぎをあらわしているのだ。ヒョジュンがタチヤーナ役が初めてだったのに、これだけ同じテンションで演技が持続し、感情の行き来が細やかに伝わってきて、特に3幕のクライマックスの幕切れへとなだれ込んでいくことができたというのがとにかくすごい。エヴァンだって、オネーギン役を踊ったのはシュツットガルトでは2回だけだったのに、オネーギンという役が彼の血肉となっているのがみえた。

エヴァンのオネーギン役デビューはシュツットガルトで観ることができたのだけど、そのときのオネーギンとはまたまったく違っていたというのがとても興味深かった。ミリアム・サイモンと踊ったときのエヴァンは、一見好青年で如才なく優しそうだけれどもセクシーで素敵なオネーギンだった。ところが、今回のエヴァンは、長身、美しく長い脚と美貌で周りを威圧する、スノッブで悪魔的なオネーギンだったのだ。

すばらしく長いラインとエレガントなしぐさには妖しいというほど色気が漂い、その圧倒的な美しさにタチヤーナはすっかり魅入られて魔法にかけられてしまったのだ。本の世界に生きていて現実の男性を知らないタチヤーナなんて、このオネーギンの前ではイチコロであろう。たとえ、読みふけっている恋愛小説を見て一笑に付されても、タチヤーナはひたすら彼との恋を夢見る。鏡のシーンで少女の妄想が暴走し、本当はとーっても嫌なやつというか、自分の美しさに溺れて中身のない薄っぺらな男であることにも彼女は全然気がつかない。ヒョジュンが演じるタチヤーナには、エヴァンのオネーギンはとても冷ややかで、こんなに冷たくしなくてもいいじゃないってくらい意地悪で嫌な男なのに、その意地悪加減がかえって魅惑的なのだから困ったものだ。現実には明らかに彼女を田舎の小娘だと馬鹿にしていたオネーギンが、鏡のシーンでは優しく魅力的この上ない夢のような理想の男性として表現されていた。サポートに関してはリハーサル不足でちょっと安全運転かな、ってところはあったが、あの長い脚、腕のラインがタチヤーナとハーモニーを奏でると本当に夢を見ているかのようだ。

エヴァンは大きな手の使い方がとても優雅で美しい。レンスキーにオルガを紹介されて、「美しいですね」ってマイムをするときの手の動きひとつとっても。鏡のパ・ド・ドゥでタチヤーナの耳にささやきかける時の手の添え方はセクシーだ。最初のオネーギンのソロで自分の顔の前に手をかざすしぐさ、手袋やカードの扱い方、その美しい手がタチヤーナの書き溜めた手紙をビリビリに破くときの乱暴さと対照的でなんともそれがタチヤーナにとっては切ない。

そして彼は恐ろしいほどものすごく色っぽい。鏡の中から出てくるときに、顔を傾けてタチヤーナの首筋にキスをする角度、ぴんと伸びた長い足先の描くつま先のカーヴ。しなるライン。長い腕とこまやかに神経の行き届いた指先。グラン・ジュッテのときの180度に美しく開いた脚、アントルラッセのときにしなやかに高く上がる脚。2幕でオルガをたぶらかすときの、彼女への強引すぎるほどの腕の引っ張り方、もてあそび方、彼女の首筋に触れる様子、田舎生活に倦んだ遊び人の雰囲気がたっぷりで、これで彼に落ちない女性はいないだろう。しかし、手紙を破かれても彼に向けて悲しみを込めて一生懸命に踊るタチヤーナに対する苛立ちは観ていて怖くなるほどで、バンと机を叩いて立ち上がるところも剃刀のように鋭くて実に恐ろしい。

そんなオネーギンだけど、レンスキーとの決闘に赴くところで、急にこれでよかったのだろうかという想いが彼の心を曇らせる。マントに隠した銃を撫でて見つめる様子も思いつめたようで。レンスキーに頬を張られて怒りに任せてピルエットをしてはひざを叩く音も大きく、クールに見えて実はキレやすく小心者のオネーギンの真の姿を現すものだった。決闘でレンスキーを撃ち殺してしまった後、タチヤーナの厳しい視線を浴びながら、ゆっくりと、レンスキーの目に見えない血で汚された美しい手で顔を覆い身体を斜めに向けて体を震わせ、自分の愚かさを嘆くようすには、深い悔恨の念が感じられて、自業自得の結果ではあるけれども思わずオネーギンに同情して涙が出てしまうほど。

さて、3幕のオネーギンの解釈は、ダンサーによってもっとも表現が分かれるところである。エヴァンが演じたオネーギンは、長い年月が過ぎた後でもまだ十分魅力的で美しい。むなしい漂泊の日々を過ごす間にもエレガンスや美貌は衰えず、あくまでも優雅さを保ちつつ女性たちと戯れるが、それだけに美しいだけで悲しい存在と成り果てている。グレーミン侯爵家の舞踏会でも居場所を見つけられず、横顔を見せながら俯いている姿には憂愁があってドラマティックなのだが、どうしてこんなにも素敵な男性がこんなに空虚で寂しそうにしているのだろうか。そこへグレーミン侯爵夫人として現れた気品にあふれた女性がタチヤーナであることに彼は気づいてしまって彼女から目が離せなくなる。ほんの一瞥だけを投げるタチヤーナの姿に、彼はかすかな希望を抱くとともに、ますます心は混迷を極めてしまう。舞踏会の踊りの波の中でもまれ自分を見失いそうになりながらも、彼はタチヤーナの寝室へと駆けていく。

そしてラスト、手紙のパ・ド・ドゥへ。ヒョジュン・カンのタチヤーナは、オネーギンの手紙を受け取っても、極力自分の思いは封じ込め、足元に何年分もの想いを込めたように跪かれても、オネーギンの腕から逃れようとする。心の揺らぎも見せずに頑ななタチヤーナ。ところが、今までの自分を飾りたてていたプライドをかなぐり捨てたかのようなオネーギンが、素の感情を初めて見せてタチヤーナに愛を告白する。お願いだ、どうかこの気持ちをわかってほしいと懇願し、拒む彼女の目を覗き込んでは首を傾げ、長い腕を差し出し、背中を向けるタチヤーナの腕をつかんでは引き寄せる。背後からタチヤーナを抱き寄せては彼女の顔の右から、左からささやきかける。その絶望的なまでに情熱があふれ出る求愛にタチヤーナもついに冷静さを失い、心がとろけそうになって、少女時代に夢で観た鏡のパ・ド・ドゥでのリフトを思い出すかのように高くリフトされ、そして舞う。だが、ここで我を取り戻しタチヤーナはテーブルへと歩いていき、オネーギンの顔を観ないようにしながら手紙を突き返して破く。全身から涙を流すように、エヴァンのオネーギンはなおもすがりつくが、ついには走り去っていく、その走っていく姿でさえもあまりにも美しく、しかしながら美しいからこそ、より絶望的であり、すべてを失った男の最後の姿として心に刻まれたのであった。


さて、ユニバーサル・バレエのキャストにも触れなければならない。レンスキー役は、日本公演で「ジゼル」のアルブレヒト役で好演したコンスタンチン・ノヴォセロフ。ワガノワ出身で両親ともマールイのダンサーだったというサラブレッドの彼は、身長は少し小柄な方だけど容姿端麗で脚のラインも美しく、踊りも正統派ワガノワ育ちを感じさせる端正さでロマンティックな詩人役にぴったり。演技自体は抑え目なのだけど、それまでが控えめだっただけに、決闘の前の月光のソロでの長いラインのしなやかな美しさと溜めの効いたドラマティックで悲劇的、自己憐憫的だけど深みのある踊りはとても印象的だった。やはりレンスキーは美しいダンサーが踊らないと。

オルガ役のキム・ナウンは明るく闊達で切れ味良いテクニックに優れたバレリーナ。オルガの軽薄さも実にうまく表現していて、この役にぴったり。オルガ役は、これくらいちょっとおバカさんに徹することができる人じゃないといけないのだ。ちょっと残念だったのが、決闘のシーンのタチヤーナとオルガ役の衣装で、ユルゲン・ローゼ版と比べるとだいぶ違っていてフードがなく前面が割れていて白い重ね着が見えるというものだった。このシーンの重苦しさとどうしようもない空しさを表現するには、オリジナルの衣装の方が良かっただろう。グレーミンはこれがちょっとびっくりするくらいハンサムなドンタク・リー。彼は今年の年末にNBAバレエ団に移籍するらしいので、日本でも踊る姿を観ることができるかもしれない。

群舞については、男女ともプロポーションに恵まれたダンサーが多くて技術的な水準が高い。1幕の男の子たちのソロの踊りもレベルが高く、みんな跳躍力に優れていて、女の子たちのスカートをめくって見せるいたずらっぽさが可愛い。ほかの日にレンスキー役を演じていたダイ・ジイェンが凄い超絶技巧を見せていた。グランジュッテで男女でディアゴナルに舞台を横切るところもみんなきれいに跳んでいた。2幕の冒頭の「名前の日」での若者たちや老人たちのユーモラスなやり取りには思わずくすくす笑わされたし、演技的にもみんなこなれている。3幕の舞踏会では、将校たちに口髭がないのに少々違和感を感じたが、東洋人には髭は似合わないのかもしれない。やっぱり舞踏会の衣装が惜しいというか社交界の華麗さを表現するには物足りないのがもったいない。1,2、3幕と群舞で出ずっぱりの、このカンパニー随一のハンサムボーイ、カン・ミヌにはどうしても目が行ってしまう。これだけ容姿に恵まれて長身ですらりとした東洋人ダンサーはめったにいないから期待したい!

というわけで、セットと衣装、音楽が生演奏でないことだけは残念であったが、それ以外は大いに満足できた「オネーギン」の上演であった。ゲストの主役二人がものすごく優れていただけでなく、カンパニーのレベルも高くて「オネーギン」の世界観を東洋人なりにうまく表現できていたと感じた。この後まだ5公演!も観られたわけだけど、大好きな「オネーギン」をこんなに観られて幸せだった。

2011/11/15

ナタリア・オシポワとイワン・ワシーリエフ、ミハイロフスキー劇場へ移籍 Osipova & Vasiliev are leaving the Bolshoi

Ballet.coのスレッドに投稿されたロシアの新聞記事から、ボリショイのスターカップル、ナタリア・オシポワとイワン・ワシーリエフ、ミハイロフスキー劇場へ移籍するのではないかということで大騒ぎになっています。そして、実際にもう移籍は決定してしまいました。

Ballet.coの該当スレッド
http://www.ballet.co.uk/dcforum/DCForumID12/244.html

こちらがふたつのロシアの新聞記事
http://www.itar-tass.com/c9/271138.html

http://www.dni.ru/culture/2011/11/14/222216.html

これによれば、オシポワとワシーリエフは移籍の意思をもって上層部と交渉を行っている一方で、より良い条件を求めて交渉しているという話もあり、一方、芸術監督のフィーりンは、彼らにもっと外部出演を行う自由を与えることで引止めを図っているということのようです。

http://kommersant.ru/news/1815914
こちらはフィーりンのコメントで、彼らがなぜ退団しようとしているのかの理由はわからず、残ってほしいために交渉をしたいとの意向があったようです。

ダンソマニより、プラウダ紙の英語版にも記事が出たとのことで、紹介しておきます。

Two lead dancers of Bolshoi Theater quit (Pravda)
http://english.pravda.ru/news/society/14-11-2011/119608-bolshoi-0/


しかしながら、イスベチヤ紙には、ついにふたりの公式コメントが掲載されてしまいました。
http://translate.google.com/translate?hl=en&sl=ru&tl=en&u=http://www.izvestia.ru/news/506754

要約すると、ボリショイにはレパートリーの数が不足しており、二人とも、すでに踊りたい役はすべて踊ってしまい、このまま同じ役ばかり踊ることには飽き飽きした。これ以上の芸術上の発展性はここにいてもないため、新しい世界へと足を踏み出すためにミハイロフスキーを選んだとのことです。(しかし、ミハイロフスキーのレパートリーはいわゆる古典と、ナチョ・ドゥアト作品に限られているため、少々不思議な気がしなくもありません)

オシポワの移籍にあたってのコメントは、彼女のFacebookでも読めます。
http://www.facebook.com/Osipova.Natalia/posts/306145119414373

For me, a native Muscovite, the decision to move to The Mikhailovsky - Is a very serious step. The main reason why I'm leaving the Bolshoi Theatre - is the lack of repertoire: everything that you could dance, I danced. We are going for creative freedom. Life has become too comfortable for me, I feel a great need for change and desire for artistic expression. I hope you understand and have a beautiful day!

特にワシーリエフは最近「Kings of the Dance」に参加し、パトリック・ド・バナの振付けた新作を踊るなどの機会も多かったため、またこの公演でもドゥアト作品が踊られていたため、そのようにコンテンポラリー寄りの作品を踊りたいという希望もあったことなのでしょう。またオシポワも、同じくArdaniがプロデュースした女性版Kings of the Dance「Reflections」で現代作品を踊っています。

このイスベチヤ紙においては、ミハイロフスキー劇場の芸術監督であるナチョ・ドゥアトと劇場総裁のウラジーミル・ケフマンの歓迎のコメントも掲載されています。

彼らがミハイロフスキー劇場に初めて出演するのは12月1日のガラとなり、5年間の契約を結んだとのことです。

この記事には、ニコライ・ツィスカリーゼのコメントも載っており、ウヴァーロフはフィーりンより劇場から引退することを迫られ、彼自身も引退を勧告されたが、それに従うつもりはないと語っています。


いずれにしても、オシポワとワシーリエフの移籍については、決定したものとみなしてよいと思います。なぜなら、ミハイロフスキー劇場のTwitterで、 @Mikhailovsky_en
Ballet stars Natalia Osipova and Ivan Vasiliev are now Principals of the Mikhailovsky Theatre

と公式に発表したからです。

そして、ミハイロフスキー劇場のロシア語版のオフィシャルサイトにも、二人の移籍のニュースとコメントがすでに掲載されていました。
http://www.mikhailovsky.ru/events/natalia-osipova-ivan-vsilyev-mikhailovsky-theatre


*****************
日本にいる私たちがまず気になるのは、ワシーリエフが来年1月、2月に予定されているボリショイの来日公演「スパルタクス」「ライモンダ」で踊るかどうかということです。

また、この二人は、ナチョ・ドゥアトの作品を踊ることになるのだろうかということ。

このあたりについては、いずれジャパンアーツや光藍社から公式な発表もあるものと思われますが、特に「スパルタクス」のワシーリエフの出演は来日公演の大きな目玉といえるため、どうなるのか早くはっきり発表してほしいものです。

*******

セルゲイ・フィーリンはボリショイの芸術監督に就任してから、チュージンやホールバーグの入団、ボリショイ劇場の再オープニングや積極的な映像配信などの路線を打ち出していますが、なかなか前途は困難なようです。

2011/11/14

ロイヤル・オペラ・ハウスのiPhone/iPadアプリ

パリ・オペラ座を皮切りに、ローザンヌコンクール、ナショナル・バレエ・オブ・カナダ、ボルドー・バレエ、最近ではサドラーズ・ウェルズ劇場、ケネディ・センター劇場、リンカーン・センターなどが独自のiPhoneアプリを開発して提供しています。またデンマーク・ロイヤル・バレエのアメリカツアーやABTの日本公演でも、ツアー用のアプリが公開されています。ハンブルク州立劇場も最近アプリを始めたのですが、こちらは残念ながらまだオペラのコンテンツしか載っていません。

たまたまiTunesストアを見ていたら、ロイヤル・オペラハウスも11月にアプリを公開していました。オペラ、バレエの両方の分野にまたがり、カレンダーからチケットを買うことができたり、作品紹介、リハーサルやインタビューなどの動画、ポッドキャストのダウンロードなどができます。関連するTweetなどを読むこともできます。iTunesAppストアでRoyal Opera Houseで検索すると出てきます。

ロイヤル・オペラハウスでは、新たにThe Show Must Go Onというゲームを開発しました。これもiPhone向けのアプリゲームで、劇場のマネージャーに扮して、主役がいない、衣装がない、などのさまざまなトラブルを解決していくというものです。Guardian紙にこのゲームの紹介が載っていて面白そうだと思ってやってみたいと思ったのですが、あいにくこのゲームに関しては、日本のアップルストアではダウンロードできないという制限がついてしまっています。

ともかく、伝統あるパリ・オペラ座やロイヤル・オペラハウスなども、新しい観客層を取り組むべく、このようなデジタルナ取り組みに積極的に乗り出してきたというのが近年の大きな動きとして特筆すべきことであり、日本でも同じようなことをするバレエ団など団体が出てこないかしらと思う次第です。

2011/11/13

マリインスキー・バレエ「ジュエルズ」Blu-ray Mariinsky Ballet "Jewels" (2011)

ずっと発売を楽しみにしていたマリインスキー・バレエの「ジュエルズ」。Amazon.comやAmazon.co.jpの方が先に入荷していたのだけど、値段が一番安かったAmazon.co.ukからの発送を待っていた。

http://www.mariinskylabel.com/page/2/Catalogue/19

George Balanchine choreographer
Valery Gergiev artistic director
Ulyana Lopatkina, Igor Zelensky, Irina Golub
Andrian Fadeyev, Zhanna Ayupova
Mariinsky Ballet & Orchestra
Conducted by Tugan Sokhiev

Duration 94 mins approx
Recorded at Mariinsky Theatre, St Petersburg April 2006
Brian Large director
A production of the Mariinsky Theatre,
In co-operation with Austrian Broadcasting Corporation, ORF

Bonus Features
Interview with Valery Gergiev
Tommy Pearson director
Duration 7 mins

BLU-RAY MAR0516 822231851622
BD25 (ALL REGIONS)
1080i HD 16:9
STEREO dolby digital
5.1 dts hd master audio

「エメラルド」Emeralds: Zhanna Ayupova, Dennis Firsov, Daria Sukhorukova, Dmitry Semionov
Yana Selina, Xenia Ostreikovskaya, Anton Korsakov

「ルビー」Rubies: Irina Golub, Andrian Fadeyev, Sofia Gumerova

「ダイヤモンド」Diamonds: Ulyana Lopatkina, Igor Zelensky


2006年に収録されていたことは周知されていたものの、一向に発売される気配のなかったマリインスキー・バレエの「ジュエルズ」がDVD・Blu-Ray化された。5年もたつとメンバーはかなり変わり、「エメラルド」のジャンナ・アユポワは引退して現在はミハイロフスキー・バレエのバレエ・ミストレス。ダリア・スホルコワはミュンヘン・バレエへ、ドミトリー・セミオノフ(ポリーナの兄)はベルリン国立バレエへとそれぞれ移籍している。

「ジュエルズ」の映像化ではパリ・オペラ座のもあるのだが、こちらはパフォーマンスの内容は良いものの、残像が残る撮影が非常に見づらくて残念であるということもあり、また、ロパートキナが「ダイヤモンド」を踊っているということもあって大いに期待される映像ソフト化であった。


結論から言えば、この映像はロパートキナとゼレンスキーの「ダイヤモンド」を観るために存在するような映像である。以前の来日公演での「ロパートキナ・ガラ」での女神様のような究極のダイヤモンドを再びこの映像で観ることができるのだ。最初は、パートナーがダニーラ・コルスンツェフでないのがちょっと残念かなとも思ったのだけど、この映像でのゼレンスキーも素晴らしい。大事な壊れ物のようにロパートキナを丁寧にサポートするゼレンスキーのジェントルマンぶり。彼の踊りも少しも衰えは見られず、さすがNYCBに在籍していただけあってバランシンらしさが発揮されている。そしてなんといってもロパートキナ!バレエの究極の美しさをこの演目で彼女は見せてくれる。ゆるやかでむだがなく、気品に満ちていてこの上なく優雅で輝けるダイヤモンド。しかし冷たく輝く高貴な宝石ではなく、温かみがあるのだ。観る芸術そのものであり、このロパートキナを観るだけで、この映像を買う価値は十分ある。バレエファンの一家に一枚、必見の映像だ。そして「ダイヤモンド」でのコール・ドも粒ぞろい。なんだかんだ言って、美しさでいえばマリインスキーは世界一であり美しい人でないと入れないというのがよくわかる。

ところが、「エメラルド」「ルビー」が弱いのがこの映像の弱点だ。「エメラルド」は、ビデオ化された(廃盤についきDVD化切望)の「バランシン・セレブレーション」にも出演しているジャンナ・アユポワの叙情あふれる踊り、ダリア・スホルコワの美しい脚、ヤナ・セリーナ、クセニャ・オストレコフスカヤ、そしてアントン・コルサコフのパ・ド・トロワも健闘しているのでまだ良い。「ルビー」のソフィア・グメロワは下手ではないのだけどあまりにも地味でインパクトがなく、この華やかでシャープな役を普段踊っているエカテリーナ・コンダウーロワでなぜ収録しなかったのが疑問に思える。イリーナ・ゴルプに至っては、パートナーのアンドリアン・ファジェーエフ(サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエの芸術監督に就任した彼の名前がマリインスキーのダンサーリストから消えてしまったので、ついに引退してしまったのだろうか)が気の毒に思えてくるほどだ。こちらも、なぜヴィシニョーワで収録できなかったのだろう。

それから、カメラワークの問題。多分、ロパートキナ主演の「白鳥の湖」と同じスタッフで制作されていると思うのだが、正面からのカットは思ったより多かったけど、無意味な呷りカット(まるで劇場の最前列から見上げているような感じ)や逆に俯瞰や天井からのカット、さらにはサイドからといった映像が挿入されていて、バランシン作品の魅力であるフォーメーションの美しさを堪能できない。ふつうに正面から映すことがなぜできないのだろうか。救いなのは、ロパートキナとゼレンスキーのパ・ド・ドゥだけはきちんと正面から映されているのでしっかりと観られることである。

カリンスカのデザインによる衣装の繊細な美しさ、シンプルながらもモダンでエレガントな舞台装置、そして世界一の美しいコール・ド、何よりもロパートキナの究極に美しい「ダイヤモンド」。変な撮影アングルが入っていることと「ルビー」が弱いことを除けば、満足できる映像であった。とにかく、ロパートキナの「ダイヤモンド」が入っているだけで値千金の価値があり、このチャプターだけを今後も何十回と繰り返し観る自分が想像できる。そういった意味で、ぜひお勧めしたい映像である。


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2011/11/12

森 優貴さんがドイツ、レーゲンスブルグ劇場のバレエ芸術監督にYuki Mori appointed the Director of ballet in Regensburgurg berufen

ドイツのニュルンベルグ・バレエ、ハノーファー・バレエ、スウェーデンのイエデボリ・バレエを経てドイツ、ヴィスバーデン・バレエでダンサー/振付家として活躍してきた森 優貴さんが、2012/13シーズンよりドイツ、レーゲンスブルグ劇場のバレエ芸術監督に就任することが発表されました。

レーゲンスブルグ劇場
http://www.theater-regensburg.de/

ドイツ語の記事
http://www.tanznetz.de/news.phtml?page=showthread&aid=201&tid=21654

森さんのオフィシャルサイトのバイオグラフィ
http://yukimori-opaquevase.jimdo.com/biography-japanese-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E/

1978年生まれ。貞松・浜田バレエ団、ハンブルク・バレエ学校を経てドイツを中心に活躍してきた森さんは、ハノーヴァーで開催された第19回国際振付コンクールに出品し「MissingLink」で観客賞と批評家賞を同時受賞したり、ヴィースバーデンバレエ/トスタンツカンパニーへダンサー兼専属振付家として移籍。平成19年度(第62回)文化庁芸術祭新人賞受賞。2008年5月には東京セルリアン能楽堂で能とダンスのコラボレーション公演「ひかり、肖像」の演出、振付 を担当し、バレエダンサー酒井はなと重要無形文化財(能楽総合)指定保持者・津村禮次郎と共演。2008年「週間オン★ステージ新聞」よ り新人ベストワン振付家賞に選ばれています。「ひかり、肖像」はパリ、ブダペストで上演されています。

「ひかり、肖像」の動画

日本人がドイツのバレエ団の芸術監督に就任するのはすごいことですね。まだ若く振付家・ダンサーとしても大きな活躍を見せている森さんの今後に期待したいものです。

2011/11/11

11/2、3 新国立劇場バレエ団「パゴダの王子」Prince of the Pagodas 

http://www.atre.jp/11pagodas/index.html

◆2011年11月3日(木・祝)14時開演
 さくら姫  :長田佳世
 王子    :芳賀望
 皇后エピーヌ:川村真樹
 皇帝    :マイレン・トレウバエフ
 北の王:福田圭吾
 東の王:奥村康祐
 西の王:小口邦明
 南の王:厚地康雄
 道化:吉本泰久 
 宮廷官吏:貝川鐵夫

 雲:西川貴子/北原亜希/千歳美香子/今村美由起/川口藍/成田遥
   古川和則/輪島拓也/アンダーシュ・ハンマル/小柴富久修
   田中俊太朗/原健太/宝満直也/宇賀大将 (交替出演)
 星:大和雅美/石山沙央理/奥田花純
   五月女遥/盆子原美奈/益田裕子 
 泡:さいとう美帆/高橋有里/寺島まゆみ/寺田亜沙子/堀口純
   丸尾孝子/井倉真未/加藤朋子/柴田知世/細田千晶 
 タツノオトシゴ:八幡顕光/江本拓/奥村康祐/福田圭吾
         小口邦明/清水裕三郎/林田翔平 (交替出演)
 深海:貝川鐵夫/厚地康雄
 炎:大和雅美/奥田花純/盆子原美奈/益田裕子

 妖怪:高橋一輝、野崎哲也、八木進、小野寺雄

  ほか 新国立劇場バレエ団

幕間にゆらゆらゆれるサラマンダーの幕。色が照明によって緑色に変わったり、不思議な効果を上げている。
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11月2日のちゃんとした感想を書く時間がなかったので、2日間分まとめて書きます。

舞台が始まる前には、幕の前にちょこんと座った道化の吉本さんの姿が。オバQのようなメイクをした彼が、手品を披露したり、写真撮影や食事はだめだよって身振り手振りで伝えていく。さすが芸達者な彼、特に学校の鑑賞教室で観に来ていた中高生たちにはとてもウケていた。彼がくるりと後ろへとでんぐり返ると、幕が開く。

「菊の国」とされているけれども日本とおぼしき東洋の国が舞台。小さな王子が甕のような墓に埋葬されるプロローグから始まる。舞台は、ビアズリーとウィリアム・モリスにインスパイアされたという白い繊細な唐草模様に縁どられている。甕からは、サラマンダーが這い出る。

白い切り紙で表現された富士山のシルエットが美しい。貴族たちの衣装は思いっきり平安貴族の装束で、足袋を履いており、すり足で踊っている。それでもちゃんと群舞として踊れるのが新国立劇場のコール・ドの素晴らしいところ。皇帝はすっかりヨボヨボで弱っており、さくら姫の継母である皇后エピーヌが宮廷を牛耳っている。おすべらかしの髪型をしたエピーヌ役は2日は本島さん、3日は川村さん。目力の強い本島さんには、意地悪で強気な美しい皇后役がよく似合う。川村さんのエピーヌは、もう少したおやかなのだが、美しさとおしとやかさの中に底知れぬ怖さがある感じ。皇帝は堀さんも熱演だったけど、マイレンの老いさらばえた姿はほとんど衝撃的だった。

4人の外国の王たちが、さくら姫に求婚するためにやってくる。それを見ている貴族たちはひな壇に正座していて、バレエダンサーにとって長時間正座するのってきついだろうな~と余計な心配をしてしまう。そして4人の王たちの姿が奇天烈だ。ロシアを象徴する北の王は割と普通なのだけど、中国を象徴する東の王は辮髪にほとんど全裸に見えるすごいお姿。アメリカを象徴する西の王は星条旗をデザインした服を着ていて、アフリカを象徴する南の王はレビューダンサーのような羽を背負っていて白く顔を塗りサラマンダーのような縞々のボディスーツ。それぞれが求婚のヴァリエーションを踊るのだけど、この振り付けは、それぞれの国を象徴させるようなエキゾチックな踊りなのだが音楽がちょっと地味なのもあってあまり印象に残らない。北の王役、2日の福岡さん、3日の福田さんともテクニックに関してはいちばん光っていてふたりともうまいな~と思わせた。ものすごいお姿の東の王なのに、3日の奥村さんは踊りに気品があった。そして全身を黒と白に塗りレビューダンサーのような姿でも、厚地さんはすらりとしていて容姿が美しいのがわかる。

面白いのが、上階からみると、照明で方位磁石のように東西南北が映されていて、その方角に4人の王が立っていること。北の王は石油を象徴するミニチュアの掘削機、南の王は象牙、東の王はアヘン、そして西の王は銃を贈り物として持参。

さくら姫は、名前の通り桜色の着物ドレスに細めの帯を着用して桜の髪飾り。2日の米沢さんは耳の横に少し髪を垂らしていて、もともとちょっと和風のおっとりした顔立ちにますますお姫様っぽさを加えている。3日目の長田さんは、とてもしっかりもののお姫様なのがよくわかる感じ。二人とも実に輝かしいテクニックの持ち主で、アティチュードもアラベスクも美しいし、音楽性もとても豊かだ。長田さんはロシア仕込みの腕づかいがとても美しい。

4人の王たちはさくら姫のことよりも「菊の国」の実権を握ることに関心があるようで、姫に迫るものの実態としては権力者であるエピーヌ皇后の方にすり寄っている。彼らを拒絶するさくら姫に、思いっきり平手打ちを食らわせるエピーヌ。そこへ5人目の求婚者として現れたのは、「ウルトラマン」のダダ星人そっくりのサラマンダー。さくら姫はこのサラマンダーの手を取ると、彼のおつきの怪物たち=4人の妖怪たちに連れられてサラマンダーの王国へと向かう。背面に妖怪たちを描いた歌川国義の絵の幕が下りてくると、国義からインスパイアされたこの妖怪が現れるのだが、妖怪たちの可愛いことといったら!頭がとっても大きくて、目が光っていて、お腹がちょっと出ていて、かぶりものをかぶっていながら大きく開脚してジャンプしてみたり、愛嬌があってキュートでたまらない。新国立劇場が、この妖怪くんたちのグッズを発売したら絶対に売れたんじゃないかと思う。カーテンコールにも出てほしかったな、妖怪君たち。(しかも気の毒なことに、配布されたキャスト表には妖怪のキャストが書いてないのである!それは残念。プログラムには書いてあったけど)

参考
http://www.nntt.jac.go.jp/nbj/blog/2011/11/02/%E3%83%91%E3%82%B4%E3%83%80%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%97%85-%E3%80%90photo-%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%80%91/


2幕はパゴダの国への旅。サラマンダーと4匹の妖怪たちをお供に、雲に乗ったさくら姫は雲、風、海の底、炎などの試練を潜り抜ける。雲と泡にふんしたコール・ドのバレリーナたちのチュチュはとても可愛らしく、振り付けはアシュトンの「シンデレラ」の群舞を髣髴させるもので、新国立劇場の優秀なコール・ドの魅力が存分に発揮されていてウキウキする場面だ。

海底ではバルタン星人とスター・ウォーズのキャラクターから抜け出たようなタツノオトシゴたちに出会い、海の底では、イカの化け物に変身したエピーヌ皇后と対決。これらの化け物たちも、国義から影響を受けた姿をしている。(これらの衣装の一部は、大和雅美さんを応援しよう!masamiFCブログで見ることができます)そして真っ赤で雷が鳴り響く炎のシーンでは、4人の炎ダンサーたちとともに、エピーヌと4人の王たちもさくら姫に迫る。本島さんがここではスタミナ切れを起こしていたのが残念。

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これらの試練を潜り抜けたさくら姫とサラマンダーがたどりついたのは、パゴダの国。巨大で鮮やかなハイビスカスの花々が咲き誇り、ガムラン音楽が鳴り響き、バリ・ダンサーたちが踊る世界である。サラマンダーは麗しい王子の姿に変身し、二人は美しいパ・ド・ドゥを踊るも、目隠しをされた桜姫は彼の姿を見ることができない。そして一瞬目隠しが外れたときに、姫は王子の姿を一目だけ見るものの、恐ろしいエピーヌが子供時代の王子に魔法をかけてサラマンダーに変えてしまう様子を見てしまう。エピーヌの怖いことといったら!自分の息子の着物を脱がせて裸にしてしまうくらいなのだから。ここでようやくさくら姫はサラマンダー=王子が自分の兄であること、そしてエピーヌの正体を知るわけだ。


そしてさくら姫が帰ってきた菊の国は、モラルの崩壊した堕落して頽廃的な世界となっていた。髪をショートボブヘアに変えたエピーヌ皇后は、4人の王たちと酒池肉林の乱痴気騒ぎを繰り広げ、宮廷の人々も昼間から酒浸り。権力を完全に奪われて幽閉されてしまった皇帝はすっかり惚けてしまい、ぼろぼろの老いさらばえた姿で道化を馬に見立てて遊んでいたり、家来たちに酒をかけられてしまったり、まるでリア王の世界である。そこへ戻ってきたさくら姫は父の変わり果てた姿に驚き、エピーヌを責めるがまたエピーヌは得意のビンタ。王子の姿に戻ったサラマンダー=兄が登場し、彼がサラマンダーに変えられてしまったときの着物を証拠として王に見せる。愛おしそうに着物に頬ずりずる王は、ついに陰謀に気が付いてシャキっとする。エピーヌは倒されるが、今度は4人の王たちが王子に襲い掛かる。棒術で迎え撃つ王子にさくら姫も勇ましく加わり、しまいには見事な装束を着て往年の輝きを取り戻した皇帝の親子三人が戦う。4人の王たちは追い出され(アメリカの王は自分の銃が暴発して自爆)、ついに菊の国は元の姿を取り戻したのだった。(棒術を使っていると、どうしてもドラゴンボールっぽく見えちゃうんだけど)

そこからは、再興した王国で華やかなパ・ダクシオンとグラン・パ・ド・ドゥが繰り広げられる。姫たちの衣装は着物ドレスであまり違和感がないのだけど、男性貴族は長い髷といい、なんだか中国の時代劇を観ているかのようであった。それでも後方下手には日の丸を思わせる太陽が輝き、富士山が浮かび上がると、やはり舞台は日本をイメージしているのがわかる。さくら姫と王子のグラン・パ・ド・ドゥは兄と妹なのでロマンティックさはないけれども、リフトも多用して難易度が高いのにスムーズに運んだ。でも菅野さんの正確無比な踊りに対して、芳賀さんはやっぱり少し踊りが雑なのが惜しまれる。急な代役ということもあって仕方ないのだけど。

大団円を迎えると、舞台後方には桜吹雪が舞い降りる・・・・。


エンターテインメント性、クリエーティブ性、和洋をうまく折衷させて非常に優れた上演となったと思う。もちろん、「菊の国」としているだけあって完全に日本がモデルってわけではなく、日本以外、たとえば中国やバリなどの東洋が混じっているところもあるのだが、「外国人から見たなんちゃって日本」になっていなくて、ちゃんとした日本文化への理解と深い研究が感じられる作品だ。歌川国義にインスパイアされた怪物たち、1幕の本格的な着物とすり足による振付け、そこへビアスリーとウィリアム・モリスという(ジャポニズムに影響されているとはいえ)西洋美術を見事を融合させたレイ・スミスのデザインの秀逸さが何よりも光っていた。

再演を重ねれば、さらに楽しめる作品となっていくのだと思うし、外国で上演したら、日本らしさが感じられてとても人気を得られる作品となると思う。滅びかけていた王国の復活という、震災で傷ついた日本へのメッセージも込められた素敵な作品を作ってくれたビントレーに深く感謝したい。また、新国立劇場バレエ団のダンサーたちの優秀性も良く出ている作品だと思った。ファースト・キャストの小野絢子、福岡雄大の二人も素晴らし方ので、こちらもおりを観て簡単な感想が書けるとよいのだが。

ラストシーンの花のセットは、模型で観てもこんなに細密で美しい・・・

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2011/11/10

キリアンのドキュメンタリー「Mémoires d'oubliettes」がArteで全編視聴可能

紹介しようと思ってしそびれていたのですが、Arteで放映された振付家イリ・キリアンのドキュメンタリー「Mémoires d'oubliettes」をArteのサイトで全部無料で見ることができます。

http://videos.arte.tv/fr/videos/jiri_kylian-4240796.html

これは、近日発売されるDVD「Forgotten Memories」と同じ内容のものかと思われます。(Amazon.co.jpでも入手可能)

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キリアンの語りを中心として舞台などの映像を挟み込み形式ですが、キリアンは英語で話していますので、内容は字幕がなくても比較的わかります。「ベラ・フィギュラ」「小さな死」「シンフォニエッタ」などの舞台映像もありますし、「輝夜姫」を、先日プルミエールに昇進したばかりのアリス・ルナヴァンや、マリ=アニエス・ジロらパリ・オペラ座のダンサーに振付けている様子も。「Mémoires d'oubliettes」は、2009年11月にキリアンがNDTで振付けた最後の作品の題名です。チェコでの子供時代からシュツットガルト・バレエ時代、ジョン・クランコとの出会い、そして今に至るまでの彼の人生をたどったもののようですね。すごく面白かったです。(52分)

いち早くこのDVDについて教えてくださったSide B-alletさんによると、シノプシスがBelAirMediaのサイトに掲載されています。

http://www.belairmedia.com/jiri-kylian-memoires-oubliettes/lang/en/


キリアンといえば、代表作を収めた「Black & White Ballets」が廃盤でマーケットプレイスでも高値で取引されるなど入手困難な状態となっているので、ぜひ再販してほしいと思う次第です。

2011/11/09

ミハイロフスキー劇場バレエでのナチョ・ドゥアトのドキュメンタリー Nacho Duato's Documentary at Mikhailovsky Ballet

ミハイロフスキー劇場バレエ(日本ではレニングラード国立バレエもしくはマールイ)の芸術監督に就任したナチョ・ドゥアトを追ったドキュメンタリー映画「The New Tzar」が現在制作中とのことで、その予告編動画を見ることができます。監督はAlejandro Alvarez。

http://vimeo.com/30242390
(今は見られなくなってしまっているようです)

これを見ると、やはりナチョは全く新しい方向性を目指しているようで、ダンサーと芸術監督とは丁々発止の関係で緊張感を持つことが良いと考えているようですね。

また、12月16日に初演を迎えるナチョ・ドゥアト版「眠れる森の美女」ですが、この作品のためにLive journal(ロシアでポピュラーなブログサービス)の特設ブログが設けられており、リハーサル、衣装などの写真や制作過程の映像などを見ることができます。衣装などは本当に美しいですね~。しかしさすがドゥアト作品、普通の「眠れる森の美女」とは全く違った作品のようで、とても興味深いです。

http://mikhailovsky.livejournal.com/

ミハイロフスキー劇場関係の情報については、M's Daily Lifeさんが非常に詳しく追っていますので、そちらもぜひご覧ください。
http://amlmlmym.blog15.fc2.com/blog-category-30.html

なお、ミハイロフスキー劇場は来年、ニューヨークのリンカーンセンターでの公演を行います。
http://www.davidhkochtheater.org/events.html
http://www.davidhkochtheater.org/moreinfoMB.html

2012年6月19日から31日までで、ドゥアト版「眠れる森の美女」と「ジゼル」、ドゥアト作品のミックスプロ「ドゥエンデ」「ウィズアウト・ワーズ」そしてミハイロフスキー劇場バレエのために振付けられた新作が上演されるとのこと。これはまたニューヨークの人たちがうらやましい限りです。

たびたび文句を言ってまいりましたが、来年初頭に行われるレニングラード国立バレエの来日公演では、「海賊」と「白鳥の湖」「新春ガラ」の3演目のみで、ドゥアト作品は一つもありません。ワガノワの卒業生を多数擁しクラシックの技術のしっかりとした美しいダンサーたちによるドゥアト作品が観たいのに・・・。せめて次回の来日公演では、ドゥアト版「眠れる森の美女」が観られますように。


日本版Newsweekにも掲載されていた記事ですが、ナチョ・ドゥアトが芸術監督に就任した波紋についてのNewsweekの記事です。(英語)
http://www.thedailybeast.com/newsweek/2011/05/01/russian-ballet-gets-a-lift.html

2011/11/07

毎日新聞「質問なるほドリ」で「日本人は海外のバレエ団で活躍しているの?」

記事の紹介が遅れてしまいましたが、興味深い記事が、数日遅れで読んだ毎日新聞の紙面に紹介されていました。検索したらネット版にも掲載されていたのでご紹介します。

このような記事が一般紙に載ること自体、バレエについての話題って普通の人にも関心を持たれてきたのかしら、って思います。毎日新聞では、ボリショイ・バレエを退団する岩田守弘さんの連載もしていたため、そのような話題を載せやすくなっているのかもしれません。

質問なるほドリ:日本人は海外のバレエ団で活躍しているの?=回答・斉藤希史子(毎日新聞学芸部) (2011年11月2日掲載)

(詳しくは以下のリンク先で。以下は概要です)
http://mainichi.jp/select/wadai/naruhodori/news/20111102ddm003070073000c.html

 <NEWS NAVIGATOR>

◆日本人は海外のバレエ団で活躍しているの?

◇主演級、欧米に多数 踊りに専念できる環境求め

  岩田さん、堀内元さんをはじめ、吉田都さん、熊川哲也さん、そして現在も欧米で活躍している主演級のダンサーの紹介をしています。

Q たくさんいるんだね。日本はバレエ大国なんだ。

 A 正確には「ダンサーの輸出大国」でしょうか。背景には、三つの事情があります。

一つは、日本人の体格向上とバレエの普及。
二つ目は、冷戦終結後のグローバル化に伴い、海外の名門が外国人に門戸を開き始めたこと。

Q 事情の三つ目は?

 A 欧州に「公営」の縛りがあるのと対照的に、日本のバレエ団は大半が「民間」。運営は厳しく、ダンサーも生計を立てにくいのです。弟子をとって教えるか、アルバイトで暮らすケースも。踊りに専念できる環境を求めて、海外に「流出」せざるを得ないのが現状です。

 Q 外国での活躍を、喜んでばかりもいられないんだね。

 A それでも最近は、あえて国内で踊ることを選ぶ若手も増えてきました。ダンサーたちが生活の心配から解放された時、日本は真のバレエ大国になるのかもしれません。(学芸部)

―ということで、日本のバレエ界の現状の裏返しが、海外で日本人ダンサーが活躍している大きな理由であるということがこの記事で説明されています。ぜひリンク先の詳しい内容を読まれることをお勧めします。
毎日新聞は震災報道から書評欄、クラシック音楽評など良質な記事をたくさん載せているので我が家でも購読しているのですが、一つだけ注文をするとしたら舞踊評の掲載が少なく、それも必ず三浦雅士氏によるもののみということは、内容の公平性から言ってもあまりよくないのではないかと思います。NBSの公演に偏っているのです。

昭和音楽大学公開講座「日本バレエの創成期を語る」

公開講座「日本バレエの創成期を語る」

昭和音楽大学舞台芸術センターバレエ研究所で、「バレエ教育現場との連携による日本におけるバレエ教育システムに関する研究」という講演を行っているそうです。

昭和音楽大学バレエ研究所の公開講座「日本バレエの創成期を語る ― 日本におけるバレエ・教育の成立と変遷」。
http://www.tosei-showa-music.ac.jp/balletresearch/topics/topics20111108.html

バレエ教育の初期の系譜を追いながら、 日本バレエの創成期を担われた方々からお話を伺うことで、日本バレエ教育史を実証的に記録、検証するためのシリーズ公開講座を開催します。

すでに2回開催されていて、

昭和音楽大学バレエ研究所 公開講座
『日本バレエの創成期を語る ― 日本におけるバレエ教育の成立と変遷』
第1回 講師:牧阿佐美(新国立劇場バレエ研修所所長)
第2回 講師:石井清子(東京シティ・バレエ団評議員)


第3回  11月 8日(火) 講師:薄井憲二(日本バレエ協会会長/舞踊評論家)
第4回    14日(月) 講師:雑賀淑子(サイガ・バレエ主宰)
第5回    30日(水) 講師:大竹みか(コデマリスタジオ主宰)

会場は昭和音楽大学、北校舎または南校舎(サイトで確認してください)

各回18時30分~20時30分。
聴講無料、予約不要。
募集対象: バレエ教育に携わる方、バレエ学習者の方、一般のバレエ愛好家
定   員: 各日184名 ※但し、定員を越えた場合はお断りすることがございます。


ということで、第3回の薄井憲二先生は言わずと知れた日本バレエ協会会長にして、日本のバレエ・リュス研究の第一人者。生きたバレエ史そのものの方なので、ぜひお話を聞きに行きたいと思っています。また、大竹みか先生は、実は私のバレエの師匠であり、貝谷バレエ団代表。日本のバレエ史で重要な位置を占めるプリマ貝谷八百子さんについて、また戦後間もないころからのバレエ界についての貴重な話が聞けると思います。70代後半でも完璧にお手本をこなし、また気さくな人柄の先生でもあります。

聴講は無料で事前申し込みも不要なので、興味のある方は是非。

2011/11/04

英国舞踊批評家協会賞のノミネート 12th National Dance Awards – Announcement of Nominations

英国舞踊批評家協会賞(12th National Dance Awards)のノミネートが発表されました。受賞者は2012年1月23日に発表されます。

Ballet.coにノミネートが載っていますので、まるっとコピーしてきました。
http://www.ballet.co.uk/2011/11/pr-2011-uk-national-dance-awards-nominees-announced/

最優秀男性ダンサー、女性ダンサーは、それぞれ4人のうちの3人ずつがロイヤル・バレエのダンサーとなっています。最優秀男性ダンサーにロイヤルから、スティーヴン・マックレー、セルゲイ・ポルーニン、エドワード・ワトソン。最優秀女性ダンサーにロイヤルから、ローレン・カスバートソン、マリアネラ・ヌニェス、タマラ・ロホ。また、今度「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」で来日するENBのダリア・クリメントヴァもノミネートされています。

優秀カンパニーとしては、ENB、マリインスキー・バレエ、リチャード・アルストン・ダンス・カンパニー、そしてロイヤル・ニュージーランド・バレエ。クラシック振付では「シンデレラ」でデヴィッド・ビントレー(ぜひ新国立でも上演してほしいですね)、ロイヤルで活躍するキム・ブランストラップの名前があります。モダン振付では、ペットショップボーイズ&イヴァン・プトロフと‘THE MOST INCREDIBLE THING’でコラボレーションを行ったハヴィエル・デ・フルートス、アクラム・カーン、そして日本でも公演を行った「ポリティカル・マザー」のホフェッシュ・シエヒターがノミネートされています。

クラシック女性ダンサーの優秀賞ノミネートには高田茜さんの名前が。クラシック男性ダンサーの優秀賞ノミネートには、カルロス・アコスタの甥ヨナ・アコスタ、ロイヤルのギャリー・エイヴィスの名前があります。モダン女性ダンサーの優秀賞ノミネートの中には「6000 Miles Away」のシルヴィ・ギエムもありますね。


DANCING TIMES AWARD FOR BEST MALE DANCER

Jonathan GODDARD (RAMBERT DANCE COMPANY)
Steven McRAE (ROYAL BALLET)
Sergei POLUNIN (ROYAL BALLET)
Edward WATSON (ROYAL BALLET)

BEST FEMALE DANCER

Lauren CUTHBERTSON (ROYAL BALLET)
Daria KLIMENTOVÁ (ENGLISH NATIONAL BALLET)
Marianela NUÑEZ (ROYAL BALLET)
Tamara ROJO (ROYAL BALLET)

OUTSTANDING COMPANY

ENGLISH NATIONAL BALLET
MARIINSKY BALLET
RICHARD ALSTON DANCE COMPANY
ROYAL NEW ZEALAND BALLET

BEST CLASSICAL CHOREOGRAPHY

David BINTLEY (for ‘CINDERELLA’ for the BIRMINGHAM ROYAL BALLET)
Kim BRANDSTRUP (for ‘INVITUS INVITAM’ for the ROYAL BALLET)
Andrew SIMMONS (for ‘A SONG IN THE DARK’ for the ROYAL NEW ZEALAND BALLET)

BEST MODERN CHOREOGRAPHY

Javier DE FRUTOS (for ‘THE MOST INCREDIBLE THING’)
Akram KHAN (for ‘VERTICAL ROAD’ )
Hofesh SHECHTER (for ‘POLITICAL MOTHER – THE DIRECTOR’S CUT’ )
Luca SILVESTRINI (for ‘LOL’ )

OUTSTANDING FEMALE PERFORMANCE (CLASSICAL)

Melissa HAMILTON (ROYAL BALLET)
Sophie MARTIN (SCOTTISH BALLET)
Akane TAKADA (ROYAL BALLET)
Elisha WILLIS (BIRMINGHAM ROYAL BALLET)

OUTSTANDING MALE PERFORMANCE (CLASSICAL)

Yonah ACOSTA (ENGLISH NATIONAL BALLET)
Gary AVIS (ROYAL BALLET)
Tobias BATLEY (NORTHERN BALLET)
Esteban BERLANGA (ENGLISH NATIONAL BALLET)

OUTSTANDING FEMALE PERFORMANCE (MODERN)

Sylvie GUILLEM (for ‘6000 MILES AWAY’)
Sally MARIE (PROTEIN DANCE)
Michela MEAZZA (Freelance Dancer)
Angela TOWLER (RAMBERT DANCE COMPANY)

OUTSTANDING MALE PERFORMANCE (MODERN)

Sidi Larbi CHERKAOUI (for ‘DUNAS’)
Sean PALMER (for ‘CRAZY FOR YOU’)
Alexander WHITLEY (WAYNE McGREGOR | RANDOM DANCE)

BEST INDEPENDENT COMPANY

BALLET BOYZ – THE TALENT
ROSEMARY BUTCHER COMPANY
PROTEIN DANCE
TILTED PRODUCTIONS – MARESA VON STOCKERT


ロイヤル・オペラハウスのブログにも、このノミネーションについての記事が載っています。
http://www.roh.org.uk/news/national-dance-award-nominees-announced

ヨハン・コボーとイーサン・スティーフェルの爆笑CM "We Used To Be Real Good" by Ethan Stiefel and Johan Kobborg

連日の劇場通いなどなどでちょっと疲れ切っており、なかなかちゃんとした記事を書く余裕がありません。月曜日の吉田都さん主演の「コッペリア」も素敵な公演だったし、今日の「パゴダの王子」長田さん主演の日もまた楽しかったです。しばしお待ちいただければと思います。

息抜きに、こんなちょっと笑える動画を紹介します。

MUSE DANCEWEARというオーストラリアのバレエ用品のメーカーがあって、日本ではTOMONで扱っているようです。ここのCMに、なんとヨハン・コボーとイーサン・スティーフェルが出演しているんですが、これがめちゃめちゃ可笑しいのです。

http://www.mdmdance.com/films.php?id=4

思い出話のように「日本での僕たちの人気はすごかったよね、1万人もファンが来て」なんてイーサンは言っているし、ヨハンはファットスーツをつけて車椅子に乗っています。そんな彼らがMUSEのダンスウェアを身に着けた途端、往年の輝きを取り戻してバリバリ踊り始めるというものです。(途中で登場するウェイトレスはジリアン・マーフィのようですね)


初代Kings of the Danceで共演したヨハン・コボーとイーサン・スティーフェルは親しいようで、このたびロイヤル・ニュージーランド・バレエの芸術監督に就任したイーサンへのプレゼントとして、ヨハンはイーサンと共同で「ジゼル」の新作を振付けるそうです。初演は2012年11月7日。

http://www.nzballet.org.nz/Giselle

関連して、イーサン・スティーフェルと彼の婚約者でもあるジリアン・マーフィのインタビューもご紹介します。この中で、イーサンがニュージーランドで芸術監督という仕事を引き受ける背景には、彼の友人であるヨハン・コボーの勧めがあったということも明らかにされています。

http://www.stuff.co.nz/dominion-post/culture/performance/5663010/Leap-of-faith-for-ballet-rock-stars

2011/11/03

11/2 新国立劇場バレエ団「パゴダの王子」National Ballet of Japan "The Prince of the Pagodas"

ちょっと時間がなくて感想は明日にでも書きます(って、明日も観に行くんですけど!)

面白かったです。特にトニー賞を受賞したばかりのレイ・スミスの創意工夫に富み、切り紙やシルエットの使用など美的センスにも優れた舞台美術が素晴らしかったです。2幕の華麗なコール・ドの踊りや歌川国義にインスパイアされたブキミで可愛らしい妖怪たちやタツノオトシゴたち、悪女エピーヌの七変化などエンターテインメント性もたっぷり。また主演の二人、米沢唯さん、菅野英男さんの踊りもとてもよかったです。開演前5分くらい前に、道化役の吉本さん(まるでオバQのようなメイク)が幕の前に座って観客とコミュニケーションをしたりさまざまな芸を見せてくれるのが楽しかったので、これから観に行く方は少し早めに席に着くことをお勧めします。

あと、これだけは言いたかったんですが、サラマンダーの姿かたちが「ウルトラマン」のダダ星人にそっくりです。友達に指摘されたんですが、本当に笑っちゃうくらい似ています。

個人的にブリテンの音楽も気に入りましたし、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏も良かったです。兄と妹の兄弟愛、王と子供たちの愛による王国の再興という、今の日本人を激励するような終わり方には元気を与えられました。和のテイストの入れ方には好き嫌いは現れると思いますし、日本というより中国じゃない?って思えるような衣装もありましたが、まあその辺は温かい目で見たいと思います。1幕は本格的な和装で、4人の王子たち以外は平安時代の貴族のような姿をしていて足袋着用でした。エピーヌの最初の髪型はおすべらかし。東の王子の衣装はほとんど全裸!背景に使われている富士山は美しかったです。震災の時に日本にビントレーがいたからこそ出来上がった作品として、貴重なレパートリーとして新国立劇場は大事にしてほしい良い作品だと思いました。

かなりツッコミどころは多いですけど、楽しい作品ですしこれだけのワクワクできて美術にも凝り、目に快い作品を作ったビントレーは天晴れなので、迷っている方は是非ご覧になることをお勧めします。

(ということで、また感想は後程!)

さしあたって、新国立劇場バレエ団ブログから「パゴダへの旅」をご紹介します。
http://www.nntt.jac.go.jp/nbj/blog/2011/11/02/%E3%83%91%E3%82%B4%E3%83%80%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%97%85-%E3%80%90photo-%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%80%91/

《パゴダの王子》 The Prince of the Pagodas
 振付:デヴィッド・ビントレー 
 音楽:ベンジャミン・ブリテン
 美術:レイ・スミス
 照明:沢田祐二

 指揮:ポール・マーフィー
 演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

[キャスト]
◆2011年11月2日(水)14時開演
 さくら姫  :米沢唯
 王子    :菅野英男
 皇后エピーヌ:本島美和
 皇帝    :堀登
 北の王:江本拓
 東の王:輪島拓也
 西の王:福岡雄大
 南の王:貝川鐵夫
 道化:吉本泰久 
 宮廷官吏:厚地康雄

 雲:西川貴子/北原亜希/千歳美香子/今村美由起/川口藍/成田遥
   古川和則/輪島拓也/アンダーシュ・ハンマル/小柴富久修
   田中俊太朗/原健太/宝満直也/宇賀大将 (交替出演)
 星:大和雅美/石山沙央理/奥田花純
   五月女遥/盆子原美奈/益田裕子 
 泡:さいとう美帆/高橋有里/寺島まゆみ/寺田亜沙子/堀口純
   丸尾孝子/井倉真未/加藤朋子/柴田知世/細田千晶 
 タツノオトシゴ:八幡顕光/江本拓/奥村康祐/福田圭吾
         小口邦明/清水裕三郎/林田翔平 (交替出演)
 深海:厚地康雄
 深海:芳賀望

 炎:大和雅美/奥田花純/盆子原美奈/益田裕子 

2011/11/02

10/30 シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2011 Sylvie Guillem HOPE JAPAN TOUR Bプロ

10月30日(日) 3:00p.m. 東京文化会館

シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2011 
HOPE JAPAN TOUR Bプロ
*works from "6000 miles away"


「春の祭典」Rite of Spring
振付:モーリス・ベジャール、音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

生贄:長瀬直義
2人のリーダー: 柄本弾、森川茉央
2人の若い男:氷室友、小笠原亮
生贄:吉岡美佳
4人の若い娘:高村順子、西村真由美、佐伯知香、吉川留衣


体調が相変わらずすぐれなかったことと、録音テープの音質の悪さ、ベジャール作品を楽しむには適していない座席の位置もあって残念ながら「早く終わらないかな」とずっと思ってしまった。吉岡美佳さんの生贄は神々しさがあってよかったと思う。数年前に東京バレエ団で観た「春の祭典」はもう少し面白かったのに・・・。


「リアレイ」Rearray*
振付:ウィリアム・フォーサイス、音楽:デヴィッド・モロー

シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル

フォーサイスが20年ぶりにシルヴィに振付けたという新作。フォーサイス作品としては特別に目新しいものは何もなく、シンプルなダークな衣装を身に着けたシルヴィとマッシモが、薄暗い照明の中で踊るパ・ド・ドゥ。あまりにも照明が暗くて見づらかったが、シルヴィもマッシモも両腕、両脚がとても長くて細くてしなやかで、彼らの特に腕が描く軌跡が非常に美しかった。暗い舞台の上で、白く長い二組の腕が息もぴったりに動いていく様子はまるで双生児のような不思議な生き物を見るかのようで、神秘的ともいえる体験だった。マッシモが女性のシルヴィと並んでも華奢なので、ときどき、このふたりがどっちがどっちなのか混同してしまうほどだったというのも面白かった。


「パーフェクト・コンセプション」Perfect Conception
振付:イリ・キリアン
音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ、ジョン・ケージ、レスリー・スタック

田中結子、川島麻実子、松下裕次、宮本祐宜

この作品は、やはり数年前に、現芸術監督の飯田さんはじめ、井脇さん、大嶋さんといったメンバーで観ていて、このときはとてもユニークな作品だと思った。キャスト表を見ると、前日のキャストに井脇さんが入っており、こっちのキャストで観たかったと思ってしまった。前に見たときには、もっとスカートっぽい衣装だったと思ったのに、今日はもっと分厚くて、まるで真ん中に穴が開いた座布団のようだった。この4人はキリアンらしい音楽性などをうまく発揮できていないように感じられてしまったが、この中では田中さんが健闘していたように思えた。


これだけは言っておきたいのだが、シルヴィ・ギエムの今年のプロデュース公演「6000 Miles Away」が7月と9月にロンドンのサドラーズ・ウェルズで行われた。そのうちの1公演は完全なチャリティ公演であり、6000 Miles Awayとはロンドンと日本の距離のことである。この公演では、シルヴィと7月公演ではニコラ・ル・リッシュが、そして9月公演ではマッシモ・ムッルが「リアレイ」を踊り、そしてシルヴィが「アジュー」を踊った。そして、そのほかに、イリ・キリアンが振付けた「27' 52"」という作品を、元NDTのAurélie Caylaと小尻健太さんが踊った。この二人のダンサーは、シルヴィ自身がこの公演のために選んだということである。「6000 Miles Away」はロンドンだけでなく、10月15日、16日にはシンガポールでも公演が行われ、Aurélie Caylaと小尻健太さんが「27' 52"」を踊った。ところが、日本だけ「27' 52"」ではなく、東京バレエ団がキリアン作品を踊ったのである。「27' 52"」を日本で観ることができたらどんなに素晴らしいことだっただろうに、それが実現しなかったのは非常に残念である。NDTのダンサーといえば、キリアン作品に最も通じている人たちであり、もちろん小尻さんは日本人であり、日本の被災者のためにサドラーズのチャリティ公演にも出演してきた。その彼らが出演機会を与えられなかったのは、興業元の事情があっただろうと考えられるとはいえ、やはり残念なことである。


参考The ObserverのLuke Jenningsの批評
http://www.guardian.co.uk/stage/2011/jul/10/sylvie-guillem-6000-miles-away


「アジュー」(Bye)*
振付:マッツ・エック
音楽:ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第32番Op.111 第2楽章

シルヴィ・ギエム

この日の白眉。というか、この作品一つだけのために18000円を払う価値があったといえる。舞台の真ん中に扉のようなスクリーンがあり、モノクロの映像でシルヴィの顔が大写しになったかと思うと、そのスクリーンから彼女が飛び出てくる。柄物のシャツに辛子色のスカート、カーディガン、ピンクの靴下、髪を無造作に一本のお下げにしたシルヴィは一見、冴えない中年女のようである(でも、何気にこの服装はお洒落でかわいいと思う)。マッツ・エック特有の不思議で独特な舞踊言語による振り付けを踊り、もがき葛藤する彼女の姿。スクリーンには、男性、子供、そして数人の人物の映像が現れ、ひょっとして彼らは彼女の家族?なのかと思わせるが必ずしもそうでもないようだ。ところが、シルヴィは靴やカーディガン、靴下を脱ぎ捨て、最初は子供のように自由に戯れはじめ、やがてあのものすごい身体能力でキレキレに超絶技巧で踊り始めるのだ。いきなり三点倒立をするところにはちょっと笑っちゃったけれども。最後に彼女は再び靴下とカーディガンを着て、スクリーンの中へと去って行った。

彼女の飛翔するかのような姿は、まるでいろいろなしがらみから解き放たれ、自由に飛びだっていく女性のようである。思えばシルヴィは若いころから、バレエ界に様々な革命をもたらしてきた存在であり、様々なレッテルを張られたり保守的な人々には反発を受けたりしたジャンヌ・ダルクのような女性であった。その彼女も40代半ばを迎え、クラシック・バレエからコンテンポラリーへと移行するのは年齢ゆえ仕方ないと思われてきた部分もあっただろう。しかし、彼女は軽々とそのような偏見から自由になり、ノーメイクに近い姿かたちは自分の年齢を受け入れているかのように若さに固執しているわけではない。だが、まだまだバリバリと先鋭的な現代作品もクラシックバレエも踊れるし、固定概念から自由に生きることができる。過去の自分には潔くByeと言いながら、誰も見たことのない新しい世界を切り開いていくことのできる稀有な存在であるということを、彼女はこの作品で身をもって証明した。その清々しい姿には思わず熱いものがこみ上げてきたし、これからまた変化していくであろうシルヴィ・ギエムが踊る「アジュー」がどのように進化した表現となっていくのかも、見届けたいと心から願ったのである。

本当にシルヴィ、この時期の日本に来てくれてありがとう。彼女こそは真の芸術家であり、100年に一人の人物といってもいいと思う。

2011/11/01

新国立劇場バレエ団「パゴダの王子」ダイジェストと2012/13シーズン一部発表 Bintley's Prince of the Pagodas Footage

10月30日に初日を迎えた新国立劇場バレエ団の「パゴダの王子」(デヴィッド・ビントレー振付)。残念ながら初日は私はギエムのBプロのチケットを取ってしまったために観ることができなかったのですが、11月2日、3日、6日と3キャスト観る予定です。

その「パゴダの王子」のダイジェスト映像がオフィシャルサイトに掲載されていました。かなりネタばれもあるようですので、公演をこれから観る予定の方は、後でご覧になった方がいいかもしれません。妖怪がいっぱい出てきて面白そう!って思いましたが。

http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20001710.html

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情報は前後しますが、来年1月下旬のシーズンラインアップ発表に先がけて、新国立劇場2012/2013シーズンのオペラ、舞踊、演劇それぞれのラインアップより、注目の5演目が先行発表されました。

http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20001704.html

そのうちバレエですが、今年3月に予定されながら東日本大震災直後だったため中止となってしまった「ダイナミック・ダンス」が上演されることが決定しています。これは楽しみにしていたプログラムなので嬉しいことです。

また、デヴィッド・ビントレーがバーミンガム・ロイヤル・バレエのために振付けた「シルヴィア」が新制作作品として上演されることになったとのことです。

バーミンガム・ロイヤル・バレエでの「シルヴィア」
http://www.brb.org.uk/masque/index.htm?act=production&urn=12463

「シルヴィア」についてのビントレーのインタビュー(BRBのオフィシャルサイトより)
http://www.brb.org.uk/4917.html

佐久間奈緒さんが「シルヴィア」のピチカートヴァリエーションをリハーサルする動画

The Ballet Bagでは、アシュトン版、ノイマイヤー版、ビントレー版の「シルヴィア」の比較を行っています。ビントレー版の舞台写真も掲載されています。
http://www.theballetbag.com/2010/11/24/sylvia/

【バレエ】

《新制作》
◆「シルヴィア」 Sylvia

 振付:デヴィッド・ビントレー  音楽:レオ・ドリーブ
 2012年10・11月

◆「ダイナミック・ダンス!」 Bintley’s Choice

 「コンチェルト・バロッコ」Concerto Barocco 振付:ジョージ・バランシン
 「テイク・ファイヴ」Take Five  振付:デヴィッド・ビントレー
 「イン・ジ・アッパー・ルーム」In the Upper Room 振付:トワイラ・サープ

ウィーンフィルの2012年のニューイヤーコンサートの振付はノイマイヤー John Neumeier will be choreographing for New Year's Concert of the Vienna Philharmonic 2012

まだウィーンフィルのオフィシャルには掲載されていない情報ですが、オーストリアの公共放送局で、正月に開催されるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートの中継映像製作会社ORFのサイトに掲載されていた情報です。

Neujahrskonzert der Wiener Philharmoniker
http://derneue.orf.at/programm/fernsehen/orf2/neujahrskonzert.html

(記事の見出しでは2011年とありますが、2011年はウェザー=メストが指揮をしているので、2012年の間違いだと思われます)

それによると、2012年のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートの指揮者はマリス・ヤンソンスで、バレエの振付はジョン・ノイマイヤーが担当するとのこと。ノイマイヤーが振付を担当するのは2006年以来2回目のことで、バレエは新装されたベルヴェデール宮殿の上宮で3作品が上演されるそうです。

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