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2011/11/11

11/2、3 新国立劇場バレエ団「パゴダの王子」Prince of the Pagodas 

http://www.atre.jp/11pagodas/index.html

◆2011年11月3日(木・祝)14時開演
 さくら姫  :長田佳世
 王子    :芳賀望
 皇后エピーヌ:川村真樹
 皇帝    :マイレン・トレウバエフ
 北の王:福田圭吾
 東の王:奥村康祐
 西の王:小口邦明
 南の王:厚地康雄
 道化:吉本泰久 
 宮廷官吏:貝川鐵夫

 雲:西川貴子/北原亜希/千歳美香子/今村美由起/川口藍/成田遥
   古川和則/輪島拓也/アンダーシュ・ハンマル/小柴富久修
   田中俊太朗/原健太/宝満直也/宇賀大将 (交替出演)
 星:大和雅美/石山沙央理/奥田花純
   五月女遥/盆子原美奈/益田裕子 
 泡:さいとう美帆/高橋有里/寺島まゆみ/寺田亜沙子/堀口純
   丸尾孝子/井倉真未/加藤朋子/柴田知世/細田千晶 
 タツノオトシゴ:八幡顕光/江本拓/奥村康祐/福田圭吾
         小口邦明/清水裕三郎/林田翔平 (交替出演)
 深海:貝川鐵夫/厚地康雄
 炎:大和雅美/奥田花純/盆子原美奈/益田裕子

 妖怪:高橋一輝、野崎哲也、八木進、小野寺雄

  ほか 新国立劇場バレエ団

幕間にゆらゆらゆれるサラマンダーの幕。色が照明によって緑色に変わったり、不思議な効果を上げている。
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11月2日のちゃんとした感想を書く時間がなかったので、2日間分まとめて書きます。

舞台が始まる前には、幕の前にちょこんと座った道化の吉本さんの姿が。オバQのようなメイクをした彼が、手品を披露したり、写真撮影や食事はだめだよって身振り手振りで伝えていく。さすが芸達者な彼、特に学校の鑑賞教室で観に来ていた中高生たちにはとてもウケていた。彼がくるりと後ろへとでんぐり返ると、幕が開く。

「菊の国」とされているけれども日本とおぼしき東洋の国が舞台。小さな王子が甕のような墓に埋葬されるプロローグから始まる。舞台は、ビアズリーとウィリアム・モリスにインスパイアされたという白い繊細な唐草模様に縁どられている。甕からは、サラマンダーが這い出る。

白い切り紙で表現された富士山のシルエットが美しい。貴族たちの衣装は思いっきり平安貴族の装束で、足袋を履いており、すり足で踊っている。それでもちゃんと群舞として踊れるのが新国立劇場のコール・ドの素晴らしいところ。皇帝はすっかりヨボヨボで弱っており、さくら姫の継母である皇后エピーヌが宮廷を牛耳っている。おすべらかしの髪型をしたエピーヌ役は2日は本島さん、3日は川村さん。目力の強い本島さんには、意地悪で強気な美しい皇后役がよく似合う。川村さんのエピーヌは、もう少したおやかなのだが、美しさとおしとやかさの中に底知れぬ怖さがある感じ。皇帝は堀さんも熱演だったけど、マイレンの老いさらばえた姿はほとんど衝撃的だった。

4人の外国の王たちが、さくら姫に求婚するためにやってくる。それを見ている貴族たちはひな壇に正座していて、バレエダンサーにとって長時間正座するのってきついだろうな~と余計な心配をしてしまう。そして4人の王たちの姿が奇天烈だ。ロシアを象徴する北の王は割と普通なのだけど、中国を象徴する東の王は辮髪にほとんど全裸に見えるすごいお姿。アメリカを象徴する西の王は星条旗をデザインした服を着ていて、アフリカを象徴する南の王はレビューダンサーのような羽を背負っていて白く顔を塗りサラマンダーのような縞々のボディスーツ。それぞれが求婚のヴァリエーションを踊るのだけど、この振り付けは、それぞれの国を象徴させるようなエキゾチックな踊りなのだが音楽がちょっと地味なのもあってあまり印象に残らない。北の王役、2日の福岡さん、3日の福田さんともテクニックに関してはいちばん光っていてふたりともうまいな~と思わせた。ものすごいお姿の東の王なのに、3日の奥村さんは踊りに気品があった。そして全身を黒と白に塗りレビューダンサーのような姿でも、厚地さんはすらりとしていて容姿が美しいのがわかる。

面白いのが、上階からみると、照明で方位磁石のように東西南北が映されていて、その方角に4人の王が立っていること。北の王は石油を象徴するミニチュアの掘削機、南の王は象牙、東の王はアヘン、そして西の王は銃を贈り物として持参。

さくら姫は、名前の通り桜色の着物ドレスに細めの帯を着用して桜の髪飾り。2日の米沢さんは耳の横に少し髪を垂らしていて、もともとちょっと和風のおっとりした顔立ちにますますお姫様っぽさを加えている。3日目の長田さんは、とてもしっかりもののお姫様なのがよくわかる感じ。二人とも実に輝かしいテクニックの持ち主で、アティチュードもアラベスクも美しいし、音楽性もとても豊かだ。長田さんはロシア仕込みの腕づかいがとても美しい。

4人の王たちはさくら姫のことよりも「菊の国」の実権を握ることに関心があるようで、姫に迫るものの実態としては権力者であるエピーヌ皇后の方にすり寄っている。彼らを拒絶するさくら姫に、思いっきり平手打ちを食らわせるエピーヌ。そこへ5人目の求婚者として現れたのは、「ウルトラマン」のダダ星人そっくりのサラマンダー。さくら姫はこのサラマンダーの手を取ると、彼のおつきの怪物たち=4人の妖怪たちに連れられてサラマンダーの王国へと向かう。背面に妖怪たちを描いた歌川国義の絵の幕が下りてくると、国義からインスパイアされたこの妖怪が現れるのだが、妖怪たちの可愛いことといったら!頭がとっても大きくて、目が光っていて、お腹がちょっと出ていて、かぶりものをかぶっていながら大きく開脚してジャンプしてみたり、愛嬌があってキュートでたまらない。新国立劇場が、この妖怪くんたちのグッズを発売したら絶対に売れたんじゃないかと思う。カーテンコールにも出てほしかったな、妖怪君たち。(しかも気の毒なことに、配布されたキャスト表には妖怪のキャストが書いてないのである!それは残念。プログラムには書いてあったけど)

参考
http://www.nntt.jac.go.jp/nbj/blog/2011/11/02/%E3%83%91%E3%82%B4%E3%83%80%E3%81%B8%E3%81%AE%E6%97%85-%E3%80%90photo-%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%80%91/


2幕はパゴダの国への旅。サラマンダーと4匹の妖怪たちをお供に、雲に乗ったさくら姫は雲、風、海の底、炎などの試練を潜り抜ける。雲と泡にふんしたコール・ドのバレリーナたちのチュチュはとても可愛らしく、振り付けはアシュトンの「シンデレラ」の群舞を髣髴させるもので、新国立劇場の優秀なコール・ドの魅力が存分に発揮されていてウキウキする場面だ。

海底ではバルタン星人とスター・ウォーズのキャラクターから抜け出たようなタツノオトシゴたちに出会い、海の底では、イカの化け物に変身したエピーヌ皇后と対決。これらの化け物たちも、国義から影響を受けた姿をしている。(これらの衣装の一部は、大和雅美さんを応援しよう!masamiFCブログで見ることができます)そして真っ赤で雷が鳴り響く炎のシーンでは、4人の炎ダンサーたちとともに、エピーヌと4人の王たちもさくら姫に迫る。本島さんがここではスタミナ切れを起こしていたのが残念。

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これらの試練を潜り抜けたさくら姫とサラマンダーがたどりついたのは、パゴダの国。巨大で鮮やかなハイビスカスの花々が咲き誇り、ガムラン音楽が鳴り響き、バリ・ダンサーたちが踊る世界である。サラマンダーは麗しい王子の姿に変身し、二人は美しいパ・ド・ドゥを踊るも、目隠しをされた桜姫は彼の姿を見ることができない。そして一瞬目隠しが外れたときに、姫は王子の姿を一目だけ見るものの、恐ろしいエピーヌが子供時代の王子に魔法をかけてサラマンダーに変えてしまう様子を見てしまう。エピーヌの怖いことといったら!自分の息子の着物を脱がせて裸にしてしまうくらいなのだから。ここでようやくさくら姫はサラマンダー=王子が自分の兄であること、そしてエピーヌの正体を知るわけだ。


そしてさくら姫が帰ってきた菊の国は、モラルの崩壊した堕落して頽廃的な世界となっていた。髪をショートボブヘアに変えたエピーヌ皇后は、4人の王たちと酒池肉林の乱痴気騒ぎを繰り広げ、宮廷の人々も昼間から酒浸り。権力を完全に奪われて幽閉されてしまった皇帝はすっかり惚けてしまい、ぼろぼろの老いさらばえた姿で道化を馬に見立てて遊んでいたり、家来たちに酒をかけられてしまったり、まるでリア王の世界である。そこへ戻ってきたさくら姫は父の変わり果てた姿に驚き、エピーヌを責めるがまたエピーヌは得意のビンタ。王子の姿に戻ったサラマンダー=兄が登場し、彼がサラマンダーに変えられてしまったときの着物を証拠として王に見せる。愛おしそうに着物に頬ずりずる王は、ついに陰謀に気が付いてシャキっとする。エピーヌは倒されるが、今度は4人の王たちが王子に襲い掛かる。棒術で迎え撃つ王子にさくら姫も勇ましく加わり、しまいには見事な装束を着て往年の輝きを取り戻した皇帝の親子三人が戦う。4人の王たちは追い出され(アメリカの王は自分の銃が暴発して自爆)、ついに菊の国は元の姿を取り戻したのだった。(棒術を使っていると、どうしてもドラゴンボールっぽく見えちゃうんだけど)

そこからは、再興した王国で華やかなパ・ダクシオンとグラン・パ・ド・ドゥが繰り広げられる。姫たちの衣装は着物ドレスであまり違和感がないのだけど、男性貴族は長い髷といい、なんだか中国の時代劇を観ているかのようであった。それでも後方下手には日の丸を思わせる太陽が輝き、富士山が浮かび上がると、やはり舞台は日本をイメージしているのがわかる。さくら姫と王子のグラン・パ・ド・ドゥは兄と妹なのでロマンティックさはないけれども、リフトも多用して難易度が高いのにスムーズに運んだ。でも菅野さんの正確無比な踊りに対して、芳賀さんはやっぱり少し踊りが雑なのが惜しまれる。急な代役ということもあって仕方ないのだけど。

大団円を迎えると、舞台後方には桜吹雪が舞い降りる・・・・。


エンターテインメント性、クリエーティブ性、和洋をうまく折衷させて非常に優れた上演となったと思う。もちろん、「菊の国」としているだけあって完全に日本がモデルってわけではなく、日本以外、たとえば中国やバリなどの東洋が混じっているところもあるのだが、「外国人から見たなんちゃって日本」になっていなくて、ちゃんとした日本文化への理解と深い研究が感じられる作品だ。歌川国義にインスパイアされた怪物たち、1幕の本格的な着物とすり足による振付け、そこへビアスリーとウィリアム・モリスという(ジャポニズムに影響されているとはいえ)西洋美術を見事を融合させたレイ・スミスのデザインの秀逸さが何よりも光っていた。

再演を重ねれば、さらに楽しめる作品となっていくのだと思うし、外国で上演したら、日本らしさが感じられてとても人気を得られる作品となると思う。滅びかけていた王国の復活という、震災で傷ついた日本へのメッセージも込められた素敵な作品を作ってくれたビントレーに深く感謝したい。また、新国立劇場バレエ団のダンサーたちの優秀性も良く出ている作品だと思った。ファースト・キャストの小野絢子、福岡雄大の二人も素晴らし方ので、こちらもおりを観て簡単な感想が書けるとよいのだが。

ラストシーンの花のセットは、模型で観てもこんなに細密で美しい・・・

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