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2011/11/02

10/30 シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2011 Sylvie Guillem HOPE JAPAN TOUR Bプロ

10月30日(日) 3:00p.m. 東京文化会館

シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2011 
HOPE JAPAN TOUR Bプロ
*works from "6000 miles away"


「春の祭典」Rite of Spring
振付:モーリス・ベジャール、音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

生贄:長瀬直義
2人のリーダー: 柄本弾、森川茉央
2人の若い男:氷室友、小笠原亮
生贄:吉岡美佳
4人の若い娘:高村順子、西村真由美、佐伯知香、吉川留衣


体調が相変わらずすぐれなかったことと、録音テープの音質の悪さ、ベジャール作品を楽しむには適していない座席の位置もあって残念ながら「早く終わらないかな」とずっと思ってしまった。吉岡美佳さんの生贄は神々しさがあってよかったと思う。数年前に東京バレエ団で観た「春の祭典」はもう少し面白かったのに・・・。


「リアレイ」Rearray*
振付:ウィリアム・フォーサイス、音楽:デヴィッド・モロー

シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル

フォーサイスが20年ぶりにシルヴィに振付けたという新作。フォーサイス作品としては特別に目新しいものは何もなく、シンプルなダークな衣装を身に着けたシルヴィとマッシモが、薄暗い照明の中で踊るパ・ド・ドゥ。あまりにも照明が暗くて見づらかったが、シルヴィもマッシモも両腕、両脚がとても長くて細くてしなやかで、彼らの特に腕が描く軌跡が非常に美しかった。暗い舞台の上で、白く長い二組の腕が息もぴったりに動いていく様子はまるで双生児のような不思議な生き物を見るかのようで、神秘的ともいえる体験だった。マッシモが女性のシルヴィと並んでも華奢なので、ときどき、このふたりがどっちがどっちなのか混同してしまうほどだったというのも面白かった。


「パーフェクト・コンセプション」Perfect Conception
振付:イリ・キリアン
音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ、ジョン・ケージ、レスリー・スタック

田中結子、川島麻実子、松下裕次、宮本祐宜

この作品は、やはり数年前に、現芸術監督の飯田さんはじめ、井脇さん、大嶋さんといったメンバーで観ていて、このときはとてもユニークな作品だと思った。キャスト表を見ると、前日のキャストに井脇さんが入っており、こっちのキャストで観たかったと思ってしまった。前に見たときには、もっとスカートっぽい衣装だったと思ったのに、今日はもっと分厚くて、まるで真ん中に穴が開いた座布団のようだった。この4人はキリアンらしい音楽性などをうまく発揮できていないように感じられてしまったが、この中では田中さんが健闘していたように思えた。


これだけは言っておきたいのだが、シルヴィ・ギエムの今年のプロデュース公演「6000 Miles Away」が7月と9月にロンドンのサドラーズ・ウェルズで行われた。そのうちの1公演は完全なチャリティ公演であり、6000 Miles Awayとはロンドンと日本の距離のことである。この公演では、シルヴィと7月公演ではニコラ・ル・リッシュが、そして9月公演ではマッシモ・ムッルが「リアレイ」を踊り、そしてシルヴィが「アジュー」を踊った。そして、そのほかに、イリ・キリアンが振付けた「27' 52"」という作品を、元NDTのAurélie Caylaと小尻健太さんが踊った。この二人のダンサーは、シルヴィ自身がこの公演のために選んだということである。「6000 Miles Away」はロンドンだけでなく、10月15日、16日にはシンガポールでも公演が行われ、Aurélie Caylaと小尻健太さんが「27' 52"」を踊った。ところが、日本だけ「27' 52"」ではなく、東京バレエ団がキリアン作品を踊ったのである。「27' 52"」を日本で観ることができたらどんなに素晴らしいことだっただろうに、それが実現しなかったのは非常に残念である。NDTのダンサーといえば、キリアン作品に最も通じている人たちであり、もちろん小尻さんは日本人であり、日本の被災者のためにサドラーズのチャリティ公演にも出演してきた。その彼らが出演機会を与えられなかったのは、興業元の事情があっただろうと考えられるとはいえ、やはり残念なことである。


参考The ObserverのLuke Jenningsの批評
http://www.guardian.co.uk/stage/2011/jul/10/sylvie-guillem-6000-miles-away


「アジュー」(Bye)*
振付:マッツ・エック
音楽:ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第32番Op.111 第2楽章

シルヴィ・ギエム

この日の白眉。というか、この作品一つだけのために18000円を払う価値があったといえる。舞台の真ん中に扉のようなスクリーンがあり、モノクロの映像でシルヴィの顔が大写しになったかと思うと、そのスクリーンから彼女が飛び出てくる。柄物のシャツに辛子色のスカート、カーディガン、ピンクの靴下、髪を無造作に一本のお下げにしたシルヴィは一見、冴えない中年女のようである(でも、何気にこの服装はお洒落でかわいいと思う)。マッツ・エック特有の不思議で独特な舞踊言語による振り付けを踊り、もがき葛藤する彼女の姿。スクリーンには、男性、子供、そして数人の人物の映像が現れ、ひょっとして彼らは彼女の家族?なのかと思わせるが必ずしもそうでもないようだ。ところが、シルヴィは靴やカーディガン、靴下を脱ぎ捨て、最初は子供のように自由に戯れはじめ、やがてあのものすごい身体能力でキレキレに超絶技巧で踊り始めるのだ。いきなり三点倒立をするところにはちょっと笑っちゃったけれども。最後に彼女は再び靴下とカーディガンを着て、スクリーンの中へと去って行った。

彼女の飛翔するかのような姿は、まるでいろいろなしがらみから解き放たれ、自由に飛びだっていく女性のようである。思えばシルヴィは若いころから、バレエ界に様々な革命をもたらしてきた存在であり、様々なレッテルを張られたり保守的な人々には反発を受けたりしたジャンヌ・ダルクのような女性であった。その彼女も40代半ばを迎え、クラシック・バレエからコンテンポラリーへと移行するのは年齢ゆえ仕方ないと思われてきた部分もあっただろう。しかし、彼女は軽々とそのような偏見から自由になり、ノーメイクに近い姿かたちは自分の年齢を受け入れているかのように若さに固執しているわけではない。だが、まだまだバリバリと先鋭的な現代作品もクラシックバレエも踊れるし、固定概念から自由に生きることができる。過去の自分には潔くByeと言いながら、誰も見たことのない新しい世界を切り開いていくことのできる稀有な存在であるということを、彼女はこの作品で身をもって証明した。その清々しい姿には思わず熱いものがこみ上げてきたし、これからまた変化していくであろうシルヴィ・ギエムが踊る「アジュー」がどのように進化した表現となっていくのかも、見届けたいと心から願ったのである。

本当にシルヴィ、この時期の日本に来てくれてありがとう。彼女こそは真の芸術家であり、100年に一人の人物といってもいいと思う。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

キリアンの作品の件、知りませんでした。NDTのダンサーで見たかった!
NBSがどうしても東バをと言うなら、せめて1作品にして欲しかったです。
アデューの感想、100%同感です!彼女はダンサーとして、芸術家として別格ですよね。Aプロのマノン、田園も素晴らしかったので、ポワントはおしまい、なんて言わずに演劇的作品は今後も踊り続けてほしいです。
フォーサイス作品は、終わった瞬間に、私の席の周りにいたおば様方が大ブーイングで面白かったです。
「真っ暗で何にも見えないわよ!」「お金返してほしいわっ」って(笑)
私は好きな作品でしたが、確かに暗すぎましたね。後ろの方だとほとんど見えなかったかも。

それにしても、シルヴィ・ギエム、なんとカッコイイ女なのか!
彼女が表現し続ける限り、ずっと見続けようと思いました。
naomiさん、素敵なレビューをありがとうございました!

ポチさん、こんにちは。お返事遅くなり申し訳ございません。
そうなんですよ、特にBプロは東京バレエ団が踊った時間のほうがずっっと長くてうーん微妙と思ってしまいました。攻めて他のアーティストによる踊りが見たかったです。

確かにリアレイは照明が暗かったので、もっと狭い会場向きの作品だったでしょうね。

しかし昨日のNHKの小さな画面ニュースを見ても、ギエムのインタビューといわきで踊ったボレロを見て思わずテレビの前なのに涙がこぼれてしまいました。何という信念のかっこいい素敵な女性なんでしょう。

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