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« 9/24昼 パリ・オペラ座バレエ「フェードル」「プシュケ」 Paris Opera Ballet "Phedre", "Psyche" | トップページ | 10/8 新国立劇場バレエ研修所 第7期生・第8期生秋の発表公演 »

2011/10/09

新国立劇場バレエ団「パゴダの王子」ビントレーのトークイベント David Bintley & Rae Smith Talk Session, Creation of "Prince of the Pagodas"

10月30日に世界初演を迎えるデヴィッド・ビントレー振付の「パゴダの王子」(新国立劇場バレエ団)。公演に先立ち、振付のデヴィッド・ビントレー舞踊芸術監督と舞台美術を手掛けたレイ・スミスの二人が、作品のみどころや舞台制作に関わる話などを語る国際連携プロジェクト「パゴダの王子」トーク・イベントが、本日開催されました。

「パゴダの王子」特設サイト
http://www.atre.jp/11pagodas/

トーク・イベントの模様はUstreamで配信され、アーカイヴも見ることができますがトーク・イベントに参加してきましたので、報告をしてみます。

その前日にリハーサル見学会にも参加し、少しだけですがビントレーがダンサーに振付を行う様子も見ることができました。ビントレーは自分で身体を動かし、演技しながら振付指導するので、ダンサーにとってもとてもわかりやすいのではないかと思いました。リハーサルの中で印象的だったのは、エピーヌ役の湯川さんで、トリプル・キャストの3人が並んで参加しているのですが、彼女の演技力が断然光っていました。また、さくら姫役の小野絢子さんの輝きは稽古場でも眩いほどで、福岡さんとのパ・ド・ドゥの練習には目を引き付けられました。

http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20001674.html

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(注:これはテープ起こしをしたわけではなく、聞き取りによるものなので不正確なところもあるかもしれません。正確な内容についてはUStreamの動画でご確認ください)

デヴィッド・ビントレー談

<ジョン・クランコをもってしても失敗した作品「パゴダの王子」>

「パゴダの王子」はジョン・クランコが1957年に30歳のときに振付けた長編バレエ第一作で、20世紀でもっとも偉大な作曲家の一人であるブリテンに音楽も委嘱した作品。その作品のために作曲された音楽を使った作品で全幕を作ることはとても難しいことであった。ロイヤル・バレエの歴史をたどってみても、マクミランやアシュトンなどの振付家をもってしてもロイヤル・バレエが委嘱された曲を使っての新作でレパートリーに残った例は少なく、たとえば「オンディーヌ」は最近になってようやく復活上演された。

ジョン・クランコは、ブリテンとともにこの物語を創ったのだが、「美女と野獣」「眠れる森の美女」の要素も入っている御伽噺であり、音楽的にもチャイコフスキーやストラヴィンスキーの影響がある。紙に書いて見ると成功したように見えたが、結局ロイヤルのレパートリーとして定着しなかったためその一部すら残されておらず、私はクランコの「パゴダの王子」は観ていない。ドラマティックなオペラの作曲家として知られるブリテン、そして「オネーギン」など物語の名手として知られるクランコの手腕をもってしてもわずか一シーズン半でまったく日の目を見ない作品となってしまったのには、何か問題があったわけだ。

クランコの「パゴダの王子」は2回も上演が延期され、ブリテンは作曲を中断した。その間ブリテンは日本、そしてバリ島に行ってバリでガムランに出会った。結果的にバリでのインスピレーションが第2幕に使われた。「パゴダの王子」の音楽の長さはブリテン作品の中でももっとも長く色彩豊かであって素晴らしいのだが、バレエとしては長すぎる上、ストーリーも人々にとって意味がわからないものだった。ブリテンはクランコともうまくコミュニケーションがとれず、クランコの意味するところがわからないと愚痴り、クランコは彼に「くるみ割り人形」のパ・ド・ドゥを見せてパ・ド・ドゥとはこういうものだとわからせようとしたが、ブリテンがパ・ド・ドゥ用に作った曲は「くるみ割り人形」とは似ても似つかぬ作品に仕上がった。ボタンの掛け違いもあった。ダンサーがリハーサルに使うために聴くのはピアノ譜であり、オーケストラで演奏された曲を聴くことがないまま本番に当たってしまってうまくいかなかった。

1979年にブリテンはロイヤル・オペラハウスのオーケストラを使って全曲のおよそ70%の楽曲の部分を録音した。きちんとした作品として保存しようという動きもなく、プログラムノーツを読んでもストーリーのあらすじしか載っておらず、音楽は70%しか聴けずピンとこなかった。音楽を聴いてもこの曲を使ってバレエ作品を創ろうとは思っていなかった。この音楽を使って振付をすべきだと、ロイヤル・バレエの創始者であり芸術監督だったニネット・ド・ヴァロワが私に対して勧めてきた。1980年代後半に「パゴダの王子」全曲の録音が発売されたが、それでもこの作品は一貫性のない矛盾を抱えていた。また、すべての音符をそのまま使わなければならないという縛りもあった。9ヶ月前にこの作品を創ることになったときにも、そのことは大きな問題として横たわっていた。

<マクミラン版と日本の浮世絵に得たインスピレーション>

どうやってこの「パゴダの王子」を作ろうかと思っていたら、1990年にケネス・マクミランがこの音楽を使って自分の振付作品を創った。マクミランはクランコが創った当時の振付を知っていたので、もっと筋が通る作品となっていた。だが、このプロダクションでもっとも記述すべきことは、当時19歳だった、素晴らしいダーシー・バッセルを人々に知らしめたことである。私自身は、この「パゴダの王子」という作品としては心は揺さぶられなかった。ロマンス抜きのロマンティックバレエのようだった。東洋の国という設定であるにもかかわらず、英国、それもエリザベス1世の時代に舞台をおいているかのようであった。「リア王」の物語のように、意地悪な娘に国を譲ってしまうということへの納得いかない作品となっていた。マクミランが振付けた作品を見た後、それは40年以上も心に引っかかりとして残っていたことだが、2幕のディベルティスマンをどう振付けるかということだった。

(自身が振付けた)「アラジン」が新国立劇場で上演されたときに、2幕のディベルティスマンが観客にとても受けたことがヒントとなり、「パゴダの王子」のディベルティスマンもそうやって創ろうと思いついた。パゴダの国を東の国、それも日本を舞台と使用と思った。早速上野の美術館に行き、浮世絵の本を買って見たところ、求めていたことのすべてがそこにあった。海、雲、擬人化された動物たち、侍、そして当時の日本から見た西洋の人々が描かれていた。英国に戻るとロイヤル・アカデミーで歌川国芳の素晴らしい展覧会が開かれており、それらを通してイメージを膨らませた。また、日本の歴史を読む機会にも恵まれた。

<勇気あるお姫様と家族の愛の物語>

そして、全面的に物語を変えることにした。ロマンスの物語をやめて、サラマンダー(とかげ)に変えられた王子は姫の兄という設定にした。意地悪な姉妹たちという設定は、邪悪な女王に買えた。兄を求め、兄を取り返し国の新しい形を求めた姫の物語として、日本人の精神世界、家族愛を大事なものとする日本人の絆の物語、国そのものの回復に繋がるという物語にした。歌川国芳の「源頼光公館土蜘蛛作妖怪図」に登場するような物の怪が登場し、海のシーンでは蛸、火の中では炎に変身するなど4回も衣装を変える。浮世絵のデザイン性の高さが私は好きで、特に稲光の描き方などは素晴らしい。オリジナルの「パゴダの王子」では、東西南北の4人の王子が登場するが、浮世絵に出てくるような、日本の鎖国時代に襲ってくる邪悪な外国のイメージで創った。北はロシア、南はアフリカ、東は中国、西はアメリカのイメージで、中国からはアヘン、アメリカからは銃、アフリカからは象牙、そしてロシアからは石油というように問題のある贈り物を持ってくる。これらのイメージとストーリーを、美術担当のレイ・スミスに投げかけて、デザインしてほしいと依頼した。彼女がどんなデザインをしてくるか見当がつかず、一緒に仕事をするのは今回が初めてだったが、まったく新しい人と仕事をしたかった。それも経験豊富な人と。レイ・スミスはつい先ほどミュージカル「War Horse」でローレンス・オリヴィエ賞、そしてそのブロードウェイ版でトニー賞を受賞している。

舞台装置の模型
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美術:レイ・スミスの談話

(ストーリーボードを見せながらの説明)
この作品は、ブリテンの音楽のイメージ、そして現代性、日本に根ざした精神性、バレエならではの神秘な世界の4つのイメージからデザインをしました。プロローグの幕では、ロイヤルファミリーでの小さな王子の死が洞窟の絵で表現され、つらい思い出として描かれています。ビアスリー、そしてウィリアム・モリスのデザインのイメージを使いました。この洞窟が消えると宮廷が現れ、階段の向こうには富士山があり、そして昼は太陽、夜は月が現れます。そこからドラマティックな暗い場となります。妖怪が出てくる暗黒の世界です。サラマンダー(とかげ)の王子が姫を、海を越えたパゴダの国への旅へと連れ出します。サラマンダーがシルクに描かれているので、風で動き、息づいているかのように見えます。

2幕では、空を飛んでいるので富士山が遠くに見えます。悪い物の怪に囲まれながらエピーヌ女王が現れます。ここでは歌舞伎から発想を得ました。空から水の中、海の中へと飛んでいくと波が炎に変わり稲妻が走ります。それぞれの場所でさくら姫は海の怪物と出会いますが、勇気のある姫は新しい国へと到着します。パゴダの国で、姫はパゴダの王子、サラマンダーと出会います。そして彼が兄であることに気がつきます。すべてが今まであったのと誓うものになり、ジャングルのようなところへと到達します。

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3幕では、日本の宮廷に戻ります。悪い王妃が国を乗っ取り、西側の悪い影響を得てデカダンスが支配しています。王妃は現代風に短く髪を切っています。その後宮廷は昔の姿を取り戻し、愛に満ちた強く美しい兄と妹が新しい王国を治めます。春をイメージさせるための花たちに、新しい時代を象徴させます。

実際の製作はロイヤル・オペラハウスの工房で作られました。国芳のデザインをロイヤル・オペラハウスで行い、英国の画家が国芳の絵を描き、英国の技術を導入しています。バックライトを後ろから当て、妖怪が襲ってくる感じ、妖怪の目が光るようにしています。ロイヤル・バレエスクールの生徒たちに実際に衣装を着せて、物の怪の感じを見て調整しました。幕にサラマンダーの姿があることにより、休憩時間においてもサラマンダーのことを観客が思い出すようにしています。また、ビアズリーの絵のように縁取りがあってその中に形があるように枠組みの中に話を形作っていきました。この枠組みの中に、自然の中、花や蝶の中に宮廷の物語が展開し、国芳、ビアズリー、ウィリアム・モリスの3人のアーティストが融合するのです。切り紙の手法を用いて、これらが自然と物語を語っていくことが必要だと考えました。切り絵が物語を進めていく上での重要な要素となっています。

ロイヤルファミリーのイメージは、王子が葬られる場所である洞窟、パゴダの国はバリをイメージしています。パゴダ(塔)は切り絵だけで立体的に表現し、同時にジャングルのイメージを出しています。巨大な花はステンドグラスのように見えます。バリのダンサーのデザインについては、実際にバリのダンサーを見に行き、木のイメージも重ねています。照明デザイナーとは緊密なコラボレーションを行いました。白のカットには光を当て、黒のカットはシルエットで表現しています。

(質疑)
Q.あらすじを聞いてみると、どうしても日本の震災をイメージしてしまうが、この作品と震災との関係性はあるのか?

A.(ビントレー)この作品のストーリー自体は震災の前に作りました。震災の後すぐにミーティングを行い、悲惨な最悪のニュースが続く中で、震災の影響を避けることはできない、日本の再生への強いメッセージを打ち出した作品となりました。

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<感想>
この作品の構想を聞いたときに、日本のイメージを使い、姫の名前はさくら姫となると聞いて、外国人から見た日本の奇妙なイメージのまま製作されたらちょっと嫌だなと正直思いました。しかしながら、こうやってビントレー、そして美術のレイ・スミスさんの話を聞くと、しっかりとしたコンセプト、日本文化に対する理解と敬意を払って創られた作品なのだとはっきりしました。トニー賞に輝くレイ・スミスのデザインは、歌川国芳、ビアズリー、ウィリアム・モリスの融合という、文字通り受け止めたら何だろうというものを美しくスタイリッシュにまとめたもので、とても期待が持てるものです。さらに、ビントレーが話すあらすじから、震災で傷ついた日本の復興への強いメッセージが感じられて、このような作品を今発表することの意義も感じられました。

ストーリーボードや衣装デザインの過程、実際にロイヤルバレエスクールの生徒が物の怪の衣装を着用した写真や製作中のスタッフの写真なども見せてくれて、大変面白いトークショーでした。このように振付家だけでなく、製作スタッフから直接話を聴けたことは本当に貴重なことであったし、こういった催しはどんどん開催してほしいと思います。しかもこのトークショーがUStreamで中継し、後日もアーカイヴで視聴できることも素晴らしいことです。

ただ、日本側(新国立劇場サイド)からどのように国際共同制作を行ったかということについて質問する人がいなかったのが少しだけ残念でした。ちょうど当日3時からオペラ劇場での「サロメ」の上演、中劇場での新国立劇場バレエ研修所の発表公演もあるということで、時間に制限があるので仕方ないことでしたが、もっといろいろと聞けたらさらに面白いものになったと思います。

とにかく、この公演を観られるのがとても楽しみになりました。2回観る予定なのですが、残念ながら初日はシルヴィ・ギエムの公演のチケットを取ってしまっていて行けないのです。


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