9/13 ユニバーサル・バレエ「ジゼル」Universal Ballet "Giselle"
2011/9/13 Tue. 18:30 ゆうぽうと
http://www.universalballet.jp/www/index.html
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー
音楽:アドルフ・アダン
演出:オレグ・ヴィノグラドフ
ジゼル:ファン・ヘミン Hyemin Hwang
アルブレヒト:コンスタンチン・ノヴォショーロフ Constantin Novoselov
ヒラリオン:チン・ホンジェ
ウィルフリード:カン・ミヌ
バチルダ:チェ・ジウォン
ミルタ:キム・チェリ
二人のウィリ:バン・メンイン、キム・エリ
前日に同じキャストでのゲネプロを見せていただいて、良い舞台になることは確信できていたのだが、実際に本番の舞台を観たら、やはりレベルが高くて素晴らしい公演となっていた。東京公演が1回だけなのがもったいないほどで、とても深い感動を味わうことができた。
なんといっても、ジゼル役のファン・ヘミンが見事だった。華奢で小柄だけどプロポーションに恵まれている彼女はジゼル役にぴったりの容姿で、病弱なこともよくわかる儚さがあった。くっきりとしたパが美しく、演技が繊細で、一つ一つの感情が手にとるように伝わってくる。踊りはとても軽やかでテクニックも研ぎ澄まされて高く、1幕のヴァリエーションでははにかむ気持ちと、大好きなアルブレヒトの前で踊ることのできる幸せを全身で表現していた。狂乱のシーンでは、最初は静かに壊れて行ったのが、どんどんその壊れ方が大きくなり、最後にはあまりにも激しく加速する感情にかき乱されてその結果死んでしまった。その変化の仕方が絶妙で、ジゼルの狂乱の演技としての完成度の高さに驚かされた。
ウィリとなった後のファン・ヘミンも素晴らしい。とにかく足音がまったくしないし、体重がないかのようにふわりふわりと舞うエアリーな透明感がまさに精霊だ。しっかりとアルブレヒトへの想いは感じさせていて、特に朝の鐘が鳴ってアルブレヒトが救われたことがわかってから、永遠の別れを迎えるまでの去り難い、身を引き裂かれるような哀しみをこらえながら去っていく様子には思わず落涙。彼女のジゼルは機会があればぜひとも観てみたいと思った。というか、彼女を日本で観る機会があれば必見とも言える。
アルブレヒト役のコンスタンチン・ノヴォショーロフは2004年ワガノワ卒の若手(アルブレヒト役は初役だったそう)。脚が長くて伸びやかな美しいラインを描き、甘いマスクの持ち主だ。彼が演じるアルブレヒトは若くて未熟で、自分の立場も考えずにジゼルとの恋に夢中のお坊ちゃまという感じ。バチルダに問い詰められ、一瞬何をしていいのか戸惑った後で、実は狩りに来ていて~ってマイムがまさにとってつけてというか嘘がバレバレで、すっかりバチルダのことなんか忘れていたんでしょう、って思わせる。ジゼルが狂乱しているときから相当心が乱れていて、彼女が死んだときの嘆き方も激しく、幕切れの時まで亡骸にしがみついていた。2幕では、コンスタンチンは高いテクニックを発揮。アントルシャ・シスの足先も美しく、腕の力を使うことなく22回跳んで見せたし、一つ一つの踊りがきっちりと端正で決して流れることはない。そしてサポートも上手で、ジゼルを無重力状態でリフトするところもスムーズできちんと優しく下ろしていた、ユニバーサル・バレエの外国人男性ダンサーは後に別のバレエ団で活躍するケースも見られるだけに、今後の彼には要注目だと思う。容姿もテクニックもこれだけ揃っていれば、人気も出ることだろう。
ヒラリオン役のチン・ホンジェは荒々しく、非常に熱いヒラリオンで、韓国人の熱い血を感じさせてくれた。ウィルフリードのカン・ミヌはバレエ団きってのハンサムというが確かにとても美形で、ウィルフリード役なのがもったいないほど。ぺザントのパ・ド・シスは特に女性陣のレベルが高かった。東京バレエ団が採用しているパ・ド・ユイットよりはこおnパ・ド・シスのほうが踊りの見せ場も多くて魅力的だと思う。
コール・ドのレベルの高さは1幕からも感じられたが、2幕のウィリたちは非常によく訓練されていたようで、アラベスクで交差するところも足音がさほど響かず、脚が下がってしまう人もいなくてとても美しかったし、とてもよく揃っていた。揃っているがゆえに非常に怖い感じであった。ミルタのキム・チェリは背が高くてすごく威厳があって恐ろしいミルタ。ドゥ・ウィリは特に跳びぬけているわけではないのだけど、とにかく群舞のレベルが高い。
衣装はぺザントやジゼルにもゴールドが使われており、色合いもグラデーションになっていてきれいだった。プロダクションの出来もとてもよくて、すごくストーリーがするりと入ってくる。唯一残念だったのが、音楽がテープだったこと。今回、バレエファンというよりは韓流ファン中心に宣伝をしたようで、お客さんの入りはとてもよかったけど明らかにバレエファンではない感じの反応だったが、しかしカーテンコールは盛り上がっていて、良いものはバレエファン以外にも受け入れられるものなのだなって思った。キャスト表はパンフレットの抜き刷りみたいなものであらすじも載っていてカラーで親切。終演後には主演ダンサーのサイン会まで開催されていた。
ユニバーサル・バレエは来年も来日を予定しているそうだから、ぜひ次回はもっと多くのバレエファンに観てほしいと思う。明日の横須賀、金曜日の市川の公演もあるので、そちらもぜひ。(ファン・ヘミンはこの日だけなのが残念だけど、明日の横須賀公演で主演するABTのヒー・セオ(ソ・ヒ)のジゼルはNYでも評価が高かったそうだし)
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コメント
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naomiさん! お久しぶりです。
ユニバーサルのジゼル、ご覧になったのですね。
私もファン・へミンのジゼルは好きです。当たり役ですよね。イメージがぴったり。
今回はアルブレヒトがオム・ジェヨンじゃなかったんですね。
二人はプライベートでも恋人同士だそうですが、息がぴったり合っていて、とても素敵なんですが。
私、韓国の男性ダンサーの中ではユニバーサルでは彼、国立ではキム・ヒョンウンが好きです。
もっとも、キムは先日バレエ団内で問題を起こしたとかで、バレエ団を辞めてしまいましたが。
早く復帰して欲しいです。。。
もしいつかオム・ジェヨンが日本で踊ったら、ぜひご覧になってください。とてもノーブルな感じです。^^
投稿: HESS | 2011/09/17 22:40
HESSさん、こんばんは。
ファン・ヘミンのジゼル、本当に素晴らしかったです。今まで観たジゼルの中でも相当上位に入るジゼルだったのではないかしら。オム・ジェヨンさんは来日していなかったのかしら?パンフレットで名前はあったんですけどね、今回3公演だけで、アルブレヒト役初役の人が2回踊っていましたからね。いずれにしても、男性ダンサーのレベルも高いバレエ団だと思いました。来年も来日する予定だそうなので、楽しみにしています。来年はどうやらコンテンポラリー作品みたいですが。
もしかしたら、ソウルでの「オネーギン」も観に行くかもしれません!
投稿: naomi | 2011/09/19 00:53