BlogPeople


2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« 首藤康之出演ドキュメンタリー映画「今日と明日の間で」2012年新春公開 | トップページ | Bunkamura改修工事情報 »

2011/06/21

6/17、19 東京バレエ団「白鳥の湖」 The Tokyo Ballet "Swan Lake"(まだ途中)

東京バレエ団「白鳥の湖」
振付:プティパ、イワーノフ、ゴールスキー、スミルノフ
装置、衣装:ニコラ・ベノワ

http://www.nbs.or.jp/stages/1106_swanlake/index.html

オデット/オディール:上野水香
ジークフリート王子:マシュー・ゴールディング
王妃:松浦真理絵
悪魔ロットバルト:柄本弾
道化:松下裕次


【第1幕】
家庭教師: 佐藤瑶
パ・ド・トロワ:高村順子-佐伯知香-長瀬直義
ワルツ(ソリスト):乾友子、奈良春夏、吉川留衣、矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子


【第2幕/第4幕】
四羽の白鳥:佐伯知香、森志織、岸本夏未、阪井麻美
三羽の白鳥:高木綾、奈良春夏、田中結子


【第3幕】
司会者:佐藤瑶
チャルダッシュ
(第1ソリスト):乾友子-長瀬直義
(第2ソリスト):森志織、阪井麻美、氷室友、小笠原亮
ナポリ(ソリスト): 佐伯知香-松下裕次
マズルカ(ソリスト): 奈良春夏、渡辺理恵、宮本祐宜、梅澤紘貴
花嫁候補たち:高村順子、西村真由美、村上美香、吉川留衣、岸本夏未、小川ふみ
スペイン:井脇幸江、川島麻実子-木村和夫、後藤晴雄


指揮:井田勝大
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


降板したロベルト・ボッレの代役として、マシュー・ゴールディングが再び客演。「ラ・バヤデール」でのパフォーマンスもとても良かったし、王子役はどんな感じなんだろう、と楽しみにしていた。今回、日本でめったに観られないロベルトが来るから、と苦手な東京バレエ団のゴールスキー版の「白鳥の湖」を2回分もチケットを取ってしまっていた。あの「白鳥の湖」を2回も観るのは拷問に近いと思っていたけど、結果的には2回観ることができてとても良かった。マシューの王子は、2回のパフォーマンスという短期間の間に進化していたのだ。若いダンサーを観る醍醐味を味わった。

初日の1幕に登場した時のマシューは、立ち居振る舞いはエレガントなのだけど、気のいいあんちゃんという彼本来のイメージから抜け切れない、若くて素直な王子だった。小柄な高村さんとの踊りの時にはちょっと踊りにくそうだったし、1幕のソロも跳躍は高いけどスムーズさに欠けていたところも見受けられた。ところが、2回目からは憂いを秘めて、一見明るい中にも少しのかげりを感じさせ、しぐさはさらに優雅さを増して王子らしくなっていたのだ。

2幕、湖畔のシーンでは、マシュー王子はオデットへのラブラブ光線を出しまくりで、優しいのに情熱的な王子でとてもロマンティックだった。オデットを背後から包み込むような柔らかくアクセントのある腕には愛がこもっていたし、愛を誓うマイムには純粋なパッションがほとばしっていた。残念だったのは、オデット役の上野さんがさっぱり王子には関心がなく、自分のことしか見えていない、何を考えているのかさっぱりわからないキャラクター造形だったこと。王子の想いが一方通行に見えてしまって。そういえば数年前に観たマラーホフとの「白鳥の湖」でもマラーホフの熱い思いにさっぱり応えていないオデットだったと思い出した。王子がオデットをリフトするときには、オデットが上でプルプル震えているのが見えてしまって、上体を保つのにも苦労しているんだと余計なことを感じさせてしまっていた。長くゆるやかな弧を描くマシューの腕のラインが繊細かつ雄弁で、指先まで神経が行き届いており、オデットの腕よりもよほどデリケートのではないかと思ってしまったのであった。

3幕のマシューは、若く上り調子のダンサーを観る幸せを感じさせてくれる、のびのびとして胸のすくようなヴァリエーションを見せてくれた。長身から繰り広げられる浮かび上がるような高い跳躍、きれいにアンドゥオールした美しいライン。何よりも、まったく軸がぶれず減速しながら余裕で7回転回っているピルエットには惚れ惚れとした。コーダのピルエット・ア・ラ・スゴンドも惰性で美しく回転し、王子の歓喜と高揚を感じさせていた。それだけに、オディールにだまされたと知って全力で落胆する姿も痛々しく、こんなに明るい好青年の王子を傷つけたオディールとロットバルトはなんて悪い奴なんだ、って思ってしまったほど。花嫁候補たちに対しても、一人一人に、「ごめんね、僕には好きな人がいるんだ。申し訳ない」って丁寧に接していて本当にこのジークフリート王子は、よくある情けないへたれマザコン王子ではなく、育ちの良いいい子なのだということが伝わってきたのだ。


幕のマシュー王子は、3幕でオディールの後を追いかけていった姿そのままに、あのシーンから
そのまま彼女を追い続けたかのような勢いで熱情あふれる跳躍で飛び込んできた。長身から
繰り出される跳躍は大きくて、ゆうぽうとの舞台からはみ出して落ちてしまうのではないかと思う
ほど。未熟ながらも若さあふれる荒々しさでロットバルトに戦いを堂々と挑んだ王子は、見事に
その戦いに勝利して愛を勝ち取る。その雄姿は頼もしく、愛を通じて王子が立派に育っていった
道筋が見えるものでまぶしいほどであった。ジークフリート王子の成長振りが、ダンサー、そして
演技者としてのマシューの成長振りにも見事に重なっていて、観る側としても達成感のような
満足感を得ることができた。

上野さんのオデットは、長身、長い腕の姿は美しく見た目のバランスはマシューと釣り合っていた。
だが、オデットとして一番大事な、白鳥の翼のようなポールドブラはついぞ見ることはできなかっ
た。肘の使い方に癖があって、肘の角度が鋭角的過ぎなのと、鳥としてのオデットを描くことに
集中しすぎていて、腕を動かしすぎているのがせわしなく、また音のとり方が一つ一つカウントを
とる様に取っているので、まるで繰り人形のようであった。ポワントからドゥミを通って
ア・テールになるときも、ゆっくりと過程を見せてくれなくてカックリとア・テールに降りてしまう
ので情感に乏しく見えてしまっていた。腕を大きく動かすことができたり、脚を高く上げること
ができる身体能力には恵まれているし、アラベスクのポーズはとてもきれいなのに、ポーズとポーズ
の間の動きが滑らかさに欠けているのも残念であった。

一方で、オディールとしての演技は、キャラクターを表現することには成功していたと思う。
ロットバルトに操られた可哀想な娘ではなくて、王子を困らせること、悩ませることが楽しくて
仕方のないいたずらっ子のようなオディールは個性的で面白い存在感を見せていたと思う。
ただ、グランフェッテはダブルなども入れていてテクニックを誇示しようとしてはいたものの、
音楽とまったく合っていなくて、軸がぶれたり場所が移動したりしていたので、感心できるもの
ではなかった。一番彼女がよかったと思うのはラストシーンで、人間に戻れたんだわ、とにっこり
と笑うところ。ここは、白鳥に変えられた娘が人間に返れたことの幸せ、一人の女の子としての
姿を取り戻しているのが伝わっていて、良かったね、って感じられたのであった。

ゴールスキー版の「白鳥の湖」はかつてボリショイ劇場でも採用されていた版だそうだが、今
見ると古色蒼然としており、白鳥たちの静謐で幻想的なはずの世界、抑制された美意識は微塵も
見えてこなくて、せわしないコール・ドの隊形変化、オデットと王子のパ・ド・ドゥから意識を
逸らせてしまったり前をふさいでしまうような配置、ロボットのような機械的で変化に乏しい
振り付けと、見ていてつらくなってしまうような残念な演出である。コール・ドはよく揃って
いるが、揃ってさえいればいいんでしょうといわんばかりで、ポール・ド・ブラが雑で機械的
な人が多く、忙しい振り付けのためか足音も煩い。白鳥の中で腕の使い方が美しいと思った
唯一のダンサーが高木綾さんで、地方公演では彼女がオデットを踊る日もあるという。ぜひとも
彼女が主演する「白鳥の湖」全幕を観たいものだと思わせてくれた。また、まっすぐで長い脚、
長身の二階堂由依さんもきっとオデットを踊らせたら素敵なのだろうと感じた。

ほかの出演者では、まず衣装が大変気の毒ではあるのだが道化の松下さんが、ピルエット・ア・
ラ・スゴンドや高い跳躍できっちりと見せてくれた。彼は以前よりずっと良くなっていてちゃん
としたクラシックの踊り手として頭角を出していると思うんだけど、欲を言えばもう少しつま先
が伸びているとさらに良くなるだろうって感じた。パ・ド・トロワの高村さん、佐伯さん、長瀬
さんは手堅い踊りだけど、長瀬さんはちょっとナルシスティックなところが気になる。
花嫁候補は魅力的なダンサーで揃えているけれども、柔らかくフェミニンな踊りの西村さんが
なんとも可愛らしくてほんわかとさせた気持ちにさせてくれた。白眉はなんといってもスペインで
プリンシパル3人を投入していたけど、キメキメにキメて楽しそうに邪悪なキャラクターで弾けて
いた木村さんから目が離せなかった。キャラクターダンスなのに脚捌きがとても美しくて、
跳躍の軌跡も鮮やかで残像をしっかりと残してくれた。彼と井脇さんのスペインが観られたことは
とても嬉しいことであった。

このように、魅力的なダンサーもたくさん出演している「白鳥の湖」であるが、何よりも残念な
のが、もともと安っぽい上にすっかりと古ぼけてしまっている衣装と舞台装置のセンス。デザイン
の二コラ・ベノワは有名な人ではあるけれども、このセンスは時代に完全に取り残されたもので
趣味がいいとは到底いいがたい。書割の背景などもチープな雰囲気をかもし出していて、せっかく
優れたダンサーがたくさんいるのに、公演のレベルをすっかり下げてしまっている。衣装を
リニューアルする予算がないのなら、いっそのこと最低限の舞台装置でシンプルにしてしまった
ほうがスタイリッシュな感じがして今の時代にマッチしたものになるのではないだろうか。
舞台というものが、パフォーマンスの出来が一番重要な要素であるのは間違いないにしても、
やはり音楽、美術、照明などが作り上げる総合芸術であるということを改めて感じさせてしまった
例であった。新国立劇場の「白鳥の湖」の振り付けや演出が決していいとは思わないのだが、
コール・ドのクオリティの高さとともに、シックで美しい衣装や装置、沢田さんによる魔術的な
照明の威力もあって、ずっと完成度の高い舞台に感じられてしまうのであるのは皮肉なものだ。

(続く)

« 首藤康之出演ドキュメンタリー映画「今日と明日の間で」2012年新春公開 | トップページ | Bunkamura改修工事情報 »

バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

naomiさん こんばんは。
まだ途中ということなのですが、おじゃまします。マシューくんの王子様ぶりは、
短い間に進化していましたよね。1幕のソロも、黒鳥のヴァリもお見事でした。
個人的には4幕の闘う王子も好きでした。ピルエットもエレガントで繊細で、
あそこだけとったら、気の良いあんちゃんではなく、ダンスールノーブルですよね。
あんなに美しいプロポーションの若い王子をみられるのは幸せでした。

マラーホフと上野さんの舞台は私も覚えています。のっぺらぼうなオデットだったですよね。
私はマラーホフが見られれば満足してしまうので、上野さんについては批判的な
ものは残っていませんでした。でも、今回は、マシューの演技にそぐわない表面的な
感情表現しかなかったと思い、そこは残念でした。でも、プロポーションが良くて
二人のヴィジュアルの相性は良かったかと思いました。ただ、上野さんのどことなく
皮下脂肪を感じる腕や背中にバレリーナとしての意識の低さを感じてしまったのでした。

ショコラさん、こんばんは。

マシューくんは「ラ・バヤデール」でももちろんとても良かったのですが、今回、短い時間の間に進化していて、すごく素敵でしたね。プロポーションも理想的だし、まだ若いから荒削りなところはあるけれどもこれから先がとても楽しみです。

すごく好きなダンサーが主役だったりすると、パートナーに目が行かなくて、ってこともありますよね。今回はやっぱり上野さんとマシューの感情表現に温度差があって、リハーサルの期間も短かったし仕方ないのかなとも思ったのですが、上野さんの繰り人形のようなカクカクした動きや、ドゥミポワントをつかわなくて流れの悪い動きにはあまり惹かれませんでした。見た目のバランスはとてもいいんですけどね。彼女はやっぱり現代的な作品の方が似合うのではないかと思います。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 首藤康之出演ドキュメンタリー映画「今日と明日の間で」2012年新春公開 | トップページ | Bunkamura改修工事情報 »