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2011/05/31

5/21夜 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団「眠れる森の美女」Birmingham Royal Ballet "SLEEPING BEAUTY"

英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団2011年日本公演
 
「眠れる森の美女」 プロローグ付全3幕


音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付:マリウス・プティパ、ピーター・ライト
演出:ピーター・ライト
衣裳・装置:フィリップ・プラウズ
照明:マーク・ジョナサン


国王フロレスタン二十四世:ドミニク・アントヌッチ
王妃:アンドレア・トレディニック
オーロラ姫:佐久間奈緒
フロリムンド王子:ツァオ・チー
カタラビュット(式典長):マイケル・オヘア
カラボス:サマラ・ダウンズ マリオン・テイト
リラの精:ジャオ・レイ

-- プロローグ --
美しさの精:ヴィクトリア・マール
お付きの騎士:ロバート・グラヴノー
誇らしさの精:アンブラ・ヴァッロ
お付きの騎士:マティアス・ディングマン
謙虚さの精:レティシア・ロ・サルド
お付きの騎士:ジェームズ・バートン
歌の精:ローラ・パーキス
お付きの騎士:ベンジャミン・ソレル
激しさの精:キャロル=アン・ミラー
お付きの騎士:オリヴァー・ティル
喜びの精:セリーヌ・ギッテンス
お付きの騎士:トム・ロジャース


-- 第1幕 --
4人の王子:マシュー・ローレンス、ヴァレンティン・オロヴィヤンニコフ、ジョナサン・ペイン、トム・ロジャース

-- 第2幕 --
伯爵夫人: カリー・ロバーツ
王子の側近:ジェームズ・バートン

-- 第3幕 --
パ・ド・カトル:レティシア・ロ・サルド、ローラ・パーキス、ファーガス・キャンベル、オリヴァー・ティル
長靴をはいた猫と白い猫:ジョナサン・カグイオア、イヴェット・ナイト
青い鳥とフロリナ王女:マティアス・ディングマン、アンブラ・ヴァッロ
赤ずきんと狼:アランチャ・バゼルガ、トム・ロジャース
グラン・パ・ド・ドゥ:佐久間奈緒、ツァオ・チー

指揮:フィリップ・エリス
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
協力:東京バレエ団

http://www.nbs.or.jp/stages/1105_birmingham/nemuri.html

大所帯の引越し公演で、全幕のバレエを観る幸せをしみじみ実感させてくれたのが、この日の公演。華麗な舞台装置と衣装、芸達者で演技力に優れたカンパニーと魅力的な主演ダンサー。何よりも、全体を覆う暖かい雰囲気。この大変な時期にフル・カンパニーで公演を行ってくれたことにももちろん大感謝。しかしそういう贔屓目は抜きにしても、おとぎ話の世界へと誘ってくれ、ひと時の楽しい非日常に浸ることのできた素敵な一夜だった。

バーミンガム・ロイヤル・バレエが持ってきてくれた「眠れる森の美女」はピーター・ライト版。お正月にオランダ国立バレエで観たものと同じ版である。若干舞台装置などに違いはあるものの、基本的にデザインは同じ。ゴールドを基本にしながらも落ち着いた茶系の色合いでまとめてあって、豪華でありながらシックで上品だ。まるで古くから伝わる絵本を見ているかのよう。演出も、編み物をしている女性たちが処罰されそうになっていたりといった脇筋を省いてストーリーをすっきりとさせてわかりやすく親しみやすいものになっている。オーソドックスな演出の中で異色なのが、王子が目覚めのキスをしたあとにオーロラと踊る目覚めのパ・ド・ドゥが挿入されていること。間奏曲を使ってのパ・ド・ドゥは非常に美しいのだけど、派手さはないのでダンサーの実力とパートナーシップが問われる場面だ。

それから、リラの精がカラボスと色違いの同じデザインの長いドレスを着たマイムだけの役であることも特徴的。同じドレスで色を変えていることで、リラの精とカラボスが「善」と「悪」の対をなしていることを象徴させている。踊らない役ではあるが、この作品の世界観を作り上げている重要な部分なので、演じるダンサーは高い演劇性を持っていることが求められる。

今回のバーミンガム・ロイヤル・バレエの「眠れる森の美女」の上演でもっとも印象的だったのは、まさにその演劇性の部分だ。カラボス役を演じたマリオン・テイトは、元プリマ(チャリティオークション用に提供され、会場で展示されていた「真夏の夜の夢」のタイターニアの衣装は彼女が着用したものだとのこと)で現バレエ・ミストレス。名キャラクテールとして知られる彼女の演技が圧巻だった。視線と腕の動きでドラマを物語る、その一挙一動に目が吸い寄せられた。このカラボスはオーロラ誕生のお祝いに招待されなかったことを恨んでいるなんてせこい存在ではなくて、もっとスケールの大きい悪の象徴なのだ。(その割に2幕ではあっさりリラと王子に裏をかかれて負けちゃうんだけど)もう~かっこいいことよ!

対するリラの精は、翌日の公演では妖精たちの一人を踊っていたジャオ・レイが演じた。重厚な演技のマリオン・テイトに対抗するに相応しい、エレガントな気品の中に包み込むような優しさとたおやかさを表現していて、とても美しかった。

オーロラ役の佐久間奈緒さんは、1幕の登場のところから音楽性が豊かで、音楽への乗り方がとても気持ちよく軽やかに闊達に踊る。ローズアダージオでは、少し緊張した面持ちの中、16歳の誕生日を迎える少女の恥らう姿が初々しく、どこか東洋的な繊細さと奥ゆかしさを感じさせていたけど、ランベルセはほんとうに柔らかく優雅で美しかった。バランスもきれいに決まった。そして素晴らしかったのがこの後のヴァリエーションで、音楽に寄り添うように滑らかに、上半身を大きく使ってゆったりと動く姿が優美でアラベスクも美しかった。唯一ちょっとだけ残念だと思ったのが、眉毛がまるで困っているかのように下がり気味に描かれていることで、実際以上に緊張しているかのように見えてしまったこと。

佐久間さんは叙情性が持ち味のバレリーナだと感じたけれども、テクニックもとってもしっかりとしているし踊りにまったく力みがないのが良い。そして後半になっていくに連れて調子を上げていって、3幕のパ・ド・ドゥではキラキラ輝いていた。その輝きをますます光り輝くものにさせていたのが、ツォア・チーとのパートナーシップの見事さであった。

ツァオ・チーの王子は、プロポーションは決して恵まれている方ではないし、ハンサムなのだけど髪型がぴっちりとなでつけていてまるでサラリーマンのように見えてしまった。けれども、踊りの方は非常に端正だ。柔らかく深いプリエ、きれいなつま先と正確に5番に入るトゥールザンレール、ふわっとした跳躍を持っていていい踊り手だ。踊りはエレガントなのに、演技はとても情熱的なのがいい。オーロラの幻影をリラの精に見せられて、「なんて美しいんだ」とマイムをするところには愛が芽生えた瞬間が見えた。さすが「小さな村の小さなダンサー」に主演しただけのことはある。「眠れる森の美女」は男性の見せ場がないと思われがちだけども、彼の演技はこの役にちゃんと意味が与えられていて、試練を乗り越え知恵を働かせてオーロラの愛を手に入れる過程がきちんと描かれていた。

何よりも素晴らしいのが二人の呼吸の合い方で、10年以上パートナーとして踊っているだけのことはある。きっと目をつぶっていてもなんの問題もなく一緒に踊れてしまうんだろうなって思うほどぴったりで、安心して観ていられた。ツァオ・チーはサポートがとても上手で、3幕のグラン・パ・ド・ドゥの3連続フィッシュダイブもすごくスムーズに決まって難しいことなど何一つしていないかのように見えた。コーダでは、オーロラはがちょこっと上半身を横に倒さないパターンで踊っていてその分二人の顔の位置が近くてより親密さを感じさせてくれた。東洋的なこまやかさがありながらも、この二人の揺るぎないパートナーシップには華麗さがあり、「全幕バレエを観た!」という満足感をたっぷり与えてもらった気がして、とても幸せな気持ちになった。

3幕のディヴェルティスマンは、パ・ド・カトルのうちの男性二人がなかなか良いと思った以外にはこれという際立った踊り手は見つけられなかったけれども、長靴をはいた猫と白い猫のユーモラスなやり取りや、狼の演技はとても面白くて演劇を見ているようでとても楽しかった。

なんといっても今回主役以外で踊りが素晴らしかったのは、プロローグで喜びの精を踊ったセリーヌ・ギッテンスである。トリニダード出身でアフリカ系の彼女は、プロポーションがきれいだし、アラベスクの形ものびやかで美しく、柔らかくしなやかで小気味良い踊りに思わずうっとりと見入ってしまった。6人の精たちのうちでもずば抜けて魅力的だった。2006年ローザンヌコンクールのファイナリストというから、まだ若いダンサー。これからの彼女の成長がとても楽しみだ。今はファースト・アーティストだけど、今度バーミンガム・ロイヤル・バレエが来日するときにはプリンシパルになっているかもしれない、と思うほどの大器。彼女を発見できたこともこの日の収穫だった。

バーミンガム・ロイヤル・バレエは大カンパニーほど全体のレベルがすごく高いわけではない。けれども、独特の温かみのある雰囲気と演劇性の高さ、そして主役二人の魅力もあり、またライト版のプロダクションの良さもあり、とても楽しめた舞台であった。震災で傷ついた私たちの心を癒してくれる力がバレエにはあると感じさせてくれた良い公演だった。

でもやっぱりピーター・ライト版の眠りの王子はこれが決定版だわ(笑)

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コメント

こんにちは。naomiさんは、今回の眠りの公演に何度も足を運ばれたようですね。
そこで質問なのですが、喜びの精を踊ったセリーヌ・ギッテンスという黒人ダンサーをご存知ですか?注目を浴びてる人ですか?
私は21日のロホの公演を観に行ったのですが、ロホは別格として、今回の公演でただ一人感心したダンサーが彼女だったんです。バーミンガムのHPを見ると、ファーストソリストのようですが、これからどんどん主役級の役をやってほしい!と思いました。
黒人ダンサーがおとぎ話の主役を踊るのって、あまり見かけない気がしますが、日本人の吉田都がオーロラやジュリエットを踊ってるんですもの、ずっと容姿の美しい黒人ダンサーが主役をやっても違和感はないんじゃないかと思いました。
若い才能に期待したいです。

すみません!23日のブログでギッテンスのこと書かれてたんですね。今、気づきました。やっぱり今回の公演で注目を集めたダンサーだったんですね。なんかうれしいです。再来日を希望します!

ポチさん、こんばんは。

ポチさんも、セリーヌ・ギッテンスに注目されたんですね!「眠り~」でも素晴らしかったけど、「ダフニスとクロエ」や「真夏の夜の夢」でも小さな役ながら活躍していて、踊りがきれいだから目立っていましたね。彼女は間違いなく才能があるしこれから出世すると思います。そして主役でも違和感ないと思います。確かにアフリカ系のバレリーナは少ないですが(ABTのソリストのミスティ・コープランドがいますが、彼女は顔は可愛いけど体型があまりバレエ的ではない)、東洋人の主役がありなら、アフリカ系も全然ありだと思います。

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