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« シュツットガルト・バレエ「ボレロ」メロディ役にジェイソン・レイリー、ほか | トップページ | 続・22 震災とパフォーミング・アーツ界の動き »

2011/05/01

4/28 ミュンヘン・バレエ「幻想 白鳥の湖のように」 Bayerisches Staatsballett Munich "Illusions Like Swan Lake"

Illusionnen -wie Schwanesee
Musik Peter I. Tschaikowsky
Choreographie und Inszenierung : John Neumeier
Bühne und Kostüme : Jürgen Rose
Musikalische Leitung : Michael Schmidtsdorff

http://www.bayerische.staatsoper.de/922-ZG9tPWRvbTImaWQ9MjI1NSZsPWRlJnRlcm1pbj05MDUx-~spielplan~ballett~veranstaltungen~vorstellung.html

Der König Marlon Dino
Der Mann im Schatten/Rotbart Oliview Vercoutere
Natalia Prinzessin Lucia Lacarra
Prinz Léopold/Siegfried Cyril Pierre
Graf Alexander Lukáš Šlavický
Claire Prinzessin Ilana Werner
Die Königinmutter Séverine Ferrolier
Odette Daria Sukhorukova

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NHKでの放映から気になって仕方なく、DVDを買って何回も観てすっかり魅せられていた「幻想 白鳥の湖のように」(ジョン・ノイマイヤー振付)。本家ハンブルク・バレエでの上演ではないのは惜しいけど、ちょうどいいタイミングでミュンヘン・バレエが上演するというので観に行くことにした。当日昼にレジデンスというバイエルン王家の居城を観光しており、バイエルン王ルートヴィヒ2世の物語を元にした作品を、バイエルン州立歌劇場で観るというのも特別の感慨があった。この作品が、ミュンヘン・バレエのレパートリー入りしたのが今シーズンで、4月21日が初演だったとのこと。

(初演のレビューがダンソマニに掲載されている。フランス語だが、ゲネプロの写真も掲載されているので参考になるかと思う。
http://www.forum-dansomanie.net/pagesdanso/critiques/cr0155_illusionen_schwanensee_muenchen_21_04_2011.html

キャストが当日まで発表されていなかったのだが、当日来て見ると、ナタリア王女役はルシア・ラカッラ。ラカッラと昨年結婚したマーロン・ディノが王役。マーロン・ディノはこの日が初役だったとのことである。ジークフリート/レオポルド王子にシリル・ピエール、オデットにダリア・スホルコワとミュンヘン・バレエのトップをそろえたキャスティングであった。

ノイマイヤーの魔法のような演出が冴え渡るこの作品。王が幽閉されている城の一室から、城の建設現場への場面転換の妙、ロットバルトや仮面の道化師が「影の男」の正体を現すときの、場面が凍りつくような衝撃。何よりも、早変わりでナタリア王女が黒鳥に変身して登場するときのドラマティックなインパクト。3幕を仮面舞踏会に置き換えるという解釈の妙。35年前の若きノイマイヤーの才気がほとばしっている様は、今なおも新鮮であるし、映像でなく実際にこの目で観ることができたことに興奮した。まずは、ノイシュヴァンシュタインの装飾からインスパイアされた青に白鳥のモチーフがちりばめられた緞帳を観るだけでも、もうテンションがあがりっぱなし。

ノイマイヤーの演出は、改めて舞台で観ると、オリジナルのプティパ/イワーノフ版をリスペクトしつつも大胆に曲順を変更しているところもあり、長所も短所もあることは感じられた。アレクサンダーとクレア王女のパ・ド・ドゥにチャイコフスキー・パ・ド・ドゥの曲を丸ごと使っているのは、二人の理想化されたカップルぶりを強調するのには良いのだけど、通常パ・ド・トロワで使われている曲もそのまま使用しているので1幕が必要以上に冗長に感じられる部分があった。反面、3幕のディベルティスマンでは、ルースカヤをやはりアレクサンダーとクレアに踊らせたり、チャルダッシュを女王とレオポルド王子の意味深な踊りにしたりと工夫を凝らしているので、長さを感じさせないし、仮面舞踏会の妖しさも加わってスリリングに仕上がっている。

狂王ルートヴィヒ2世をモデルにした王役を演じるのは、マーロン・ディノ。長身で顔が小さく脚が長くてハンサム。プロポーション、容姿には実に恵まれている。この役を演じるのは初めてということだが、屈折した心の持ち主で婚約者ナタリア王女に愛情を持てず、自身が生み出した幻影である影の男に操られ、正気を失っていく様子を、決して大げさにはならず説得力を持って演じていたように感じられた。友人アレクサンダーに抱くひそかな愛と、彼の妻クレア姫への嫉妬も、あからさまではなく深層心理の中に存在しているかのように示唆しているところがうまい。現実の女性には興味を持てない王が、城の模型へ示す偏愛ぶりも遺憾なく表現していて、美しい王の姿の中に隠された狂気を漂わせる様子は陰影に富んでいた。

(余談だが、行きの飛行機の中で映画「ブラック・スワン」を観たのだけど、「ブラック・スワン」のヒロイン、ニーナとライバルであるリリーの関係は王と影の男との関係にそっくりである。「ブラック・スワン」自体は、バレエファンから見ればあまりにも現実のバレエ界とずれているステロタイプと男性視線による偏見に満ち満ちていて、頭を抱えそうになった酷い映画だった。某国内バレエ団が宣伝に協力しているようだが、映画の中身を観て協力することに決めたのかと問い詰めたい)

ただし、マーロン・ディノはその素晴らしい容姿にもかかわらず、クラシック・バレエのテクニックは甚だ心許ない。ピルエットの軸がずれる、着地が不安定、長い手足を十分コントロールしきれていないようだった。この作品はテクニックよりも演技力が重視される作品だから、それでいいとは思うのだが、今後の精進を期待したいところである。

一方、ナタリア王女役のルシア・ラカッラは、踊り、演技とも圧倒的であった。登場したときのナタリア姫はイノセントで愛らしい姫君で、まるで「オネーギン」のタチヤーナのように、美しい王に憧れの気持ちを持つ少女のようである。しかしながら、彼の心が自分に向いていないことを感じた彼女は、王が自分ひとりのために「白鳥の湖」を上演し、王子役に成り代わって舞台の中に入り込んでオデットに愛を誓う、その姿を覗き見てしまう。ナタリア王女は、3幕の仮面舞踏会では仮装のドレスを脱ぎ捨てて黒鳥の扮装に変身し、王を誘惑するのだが、単に妖艶なオディールであるだけでなく、オデットにうりふたつであるところ、そしてなんとかして王の愛を得たいための切ない憐れさをも感じさせていて、その様子に思わず涙がこぼれてしまうほど。白鳥のラインの出した方が彼女は本当に美しくて、あの長く惚れ惚れするようなラインからは白鳥の翼が見えてくるのだ。王がオディールの正体に気づき彼女を突き飛ばして拒絶した後、廃位されて彼は城に幽閉される。幽閉された彼の元を訪ねるナタリア姫、その演技も哀しくて、彼女をここまで変え、追い詰めた王の罪深さを改めて感じ入ったのであった。ルシア・ラカッラは、超絶的に美しいラインの持ち主であるだけでなく、女優バレリーナとしても素晴らしい演技者であることを思い知らされた。

影の男を演じたのは、ドゥミ・ソリストのOliview Vercoutereは、マーロン・ディノとつりあうほどの長身とプロポーションの持ち主だが、この役にはもう少し悪魔的な要素と存在感が強くあってほしいと思ったのであった。王の親友アレクサンダー王子役のルカス・スラヴィツキーは、去年の「ローザンヌ・ガラ」の時にはムチムチのアリを踊っていたのだが、この役では踊りのテクニックも冴え渡っており、王があこがれながらも決して手に入れられない幸福の象徴として印象的であった。そしてアレクサンダーの妻クレア姫役の Ilana Wernerは愛らしく、軽やかで魅力的な姫だった。

オデット役のダリア・スホルコワは甲がよく出た美しい脚の持ち主だが、マリインスキー出身にしては腕の動きが少々硬いのが気になった。この作品での劇中劇の「白鳥の湖」は、かなりカリカチュアしている部分があるので、あれでいいのだろうか。腕以外のテクニックについては問題なく美しかったのだが・・・。ジークフリート王子、そして王に取って代わって王位を継いだレオポルド王子のシリル・ピエールはさすがの安定感。女王への色目の使い方なども怪しく、大きくない役なのに手を抜かずにきっちりと演技しているのがわかった。

白鳥のコール・ドは、ぴったりと揃っているわけではないが、まずまずの美しさをキープしていて、王の心の中に潜む狂気の象徴ともいえる禍々しさがあった。ユルゲン・ローゼのデザインによるデコラティブな白鳥の衣装には、やはりカリカチュアライズの要素があるのだと思うけれども、暗闇に浮かぶ白鳥の純白の洪水がもたらす不吉さも感じさせていて、衣装というものの持つ力を感じさせたのであった。4羽の小さな白鳥の中には、河野舞衣さんもいて、4羽の中では一番きっちりと踊っていて甲も綺麗に出ていて良かったと思う。

ノイマイヤーの「幻想 白鳥の湖のように」の演出と転換の面白さ、ユルゲン・ローゼの美しい舞台装置と衣装、そして何よりもルシア・ラカッラの素晴らしい演技と踊りを堪能して、わくわくできる上演だった。ただ、願うことならやはりハンブルク・バレエで、アレクサンドル・リアブコが王を演じる舞台で再見することができればと思ったのである。

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コメント

あれ、もう「幻想」の感想が!早い!!!しかも、どんな舞台だったかとても良く分かります。ありがとうございます~。ミュンヘン歌劇場、大きいから舞台も立派だったでしょうね。

ラカッラで観られてラッキーでしたね。つぎはハンブルクで観られますように!

生ラッカラを早いうちに見たいです。 まだまだ現役でがんばって下さるでしょうか? 早速のレポありがとうございます。

amicaさん、こんばんは。

感想を早く書かないと忘れてしまうもので・・・大好きな作品を生の舞台で観られて良かったです。オーケストラの2列目だったのですが、残念ながら例によってでかいドイツ人が目の前に座っていて視界が相当さえぎられてしまいました。でも素敵な劇場で、ラカッラの素晴らしい演技を観ることもできてよかったです。

ハンブルク・バレエ、次の来日はこれを持って来てくれないかしら・・・。

ムクジャラさん、こんにちは。

ラカッラといえば、何年か前に新国立劇場の「コッペリア」にゲスト出演したのが日本で観た最後だったでしょうか。本当に素晴らしいスタイルで、可愛い衣装がとってもよく似合ってキュートでした。まだまだダンサーとしてはいけると思うし、若いパートナーも得てこれからもがんばってくれるかと思います。(というか、彼を一人前にしないうちには引退できないでしょう!)

ラカッラ、新国立劇場の「コッペリア」で見たきりです。よいパートナーに恵まれて来日してくれるといいのですが、、、「幻想 白鳥の湖のように」興味なかったんですが、みてみたくなりました。
DVDあるんですね。ありがとうございます。

buminekoさん、こんにちは。

ラカッラはしばらく日本で観る機会がなくて残念ですね。パートナーのマーロン・ディノは感想にも書いたとおり、とても容姿は素敵なダンサーなので、ドラマティック・バレエならぴったりなのではないかなって思います。

「幻想 白鳥の湖のように」は、ルートヴィヒ2世についての知識が必要だったりして、ちょっととっつきにくいところもある作品ですが、私は大好きです。マシュー・ボーンの「白鳥の湖」もこの作品からかなりインスピレーションを得ているんじゃないかなって思います。DVDは輸入盤で入手できます。

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