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« 第7回黄金のマスク賞/第11回マリインスキー国際フェスティバル National Theatre Award "Golden Mask"/XI International Ballet Festival MARIINSKY | トップページ | サンフランシスコ・バレエ 2012シーズン San Francisco ballet 2012 Season »

2011/04/17

4/16 東京バレエ団「ラ・バヤデール」 The Tokyo Ballet "La Bayadere"

震災後、3月末にO.F.C佐多達枝振付「カルミナ・ブラーナ」を観に行ったのですが(感想が書けていませんが、これも良い公演でした)、グランド・バレエを観るのは初めて。まだ余震が頻発する中、主演ゲスト二人の降板に見舞われながらも立派な代役を立てて、見事な公演を行ったNBSと東京バレエ団には拍手を送りたいです。そして、何よりも、レベル7の深刻な原子力発電所事故が起きている国での公演に急遽代役で舞台に立ってくれたイーゴリ・ゼレンスキーとマシュー・ゴールディングには深く感謝。日本のバレエファンは彼らの勇気を忘れないでしょう。

そして、公演そのものも非常に良い出来だったと思います。中でも、急遽代役で出演したマシュー・ゴールディングは逸材であり、若いにもかかわらず安定していて、確実なテクニックと端正さも持つ優れていて魅力的なダンサーであることが良くわかりました。

http://www.nbs.or.jp/stages/1104_labayadere/index.html

東京バレエ団 
「ラ・バヤデール」


振付・演出:ナタリア・マカロワ(マリウス・プティパ版による)
振付指導:オルガ・エヴレイノフ
装置:ピエール・ルイジ・サマリターニ
衣裳:ヨランダ・ソナベント


◆主な配役◆

ニキヤ(神殿の舞姫):上野水香
ソロル(戦士):マシュー・ゴールディング
ガムザッティ(ラジャの娘): 田中結子
ハイ・ブラーミン(大僧正): 後藤晴雄
ラジャ(国王):木村和夫
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):高橋竜太
アヤ(ガムザッティの召使):松浦真理絵
ソロルの友人:柄本弾
ブロンズ像:松下裕次


【第1幕】

侍女たちの踊り(ジャンベの踊り):矢島まい、川島麻実子
パ・ダクシオン:
高村順子、岸本夏未、阪井麻美、大塚怜衣
西村真由美、乾友子、小川ふみ、二階堂由依
柄本弾、森川茉央


【第2幕】

影の王国(ヴァリエーション1):岸本夏未
影の王国(ヴァリエーション2):佐伯知香
影の王国(ヴァリエーション3):高木綾


指揮: ワレリー・オブジャニコフ
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


今朝も余震に見舞われた東京。開演時間を15分過ぎてもなかなか幕が開かず、幕の前にNBSの係の人が立ってアナウンスを始めた時には何事かと焦ったのだけど、なんと指揮者のワレリー・オブジャニコフが到着していないとのこと。協議の結果コンサートマスターが代わりに指揮をします、と説明があり、場内は苦笑、そして暗転。いよいよ始まるかな、と思ったら「今指揮者が到着しました」とアナウンスがあり、慌てている様子のオブジャニコフさんがピットへ登場。

ミラノ・スカラ座の舞台装置と衣装もゴージャスで、華やかな舞台となった。東京バレエ団を観るのは実は昨年のコジョカルとコボーが共演した「ジゼル」以来なのだが、「ラ・バヤデール」ではこのバレエ団の美質は生かされていると感じた。1幕のジャンベとパ・ダクシオン(マカロワ版って、通常1幕はニキヤとガムザッティの対決で終わるのに、そのまま続けて婚約式まで上演し、影の王国は2幕であることを、キャスト表を見るまで気がつかなかった。東京バレエ団での初演も観ているのに)、2幕の影の王国と女性コール・ドのレベルは以前よりも相当上がっている。特に影の王国は良く揃えており、ぐらつくダンサーもいなかった。ただ、影の王国のヴァリエーションのソリストは、皆そつなく踊っているものの、飛びぬけた才能が感じられなかったのが残念。コール・ド所属の岸本さんが一番良いように感じられてしまったくらい。

2月に新国立劇場バレエ団でも「ラ・バヤデール」の上演があったのでつい比べてしまうが、「影の王国」のシーンに関して言えばやはり新国立劇場の方が良かったと思う。群舞のレベルはそれほど差がないのだが、新国立ではスロープが2段になっていて難易度が高く、コール・ドが32人であること。また、照明の魔術師とも呼ばれる沢田祐二さんによる照明がドラマティックで陰影に富んでいて美しいことがプラスの要素となっている。今回の東京バレエ団の上演では、影の王国の照明が明るすぎて、このシーンに求められる、思わず息を呑んでしまうほどの幽玄さが感じられなかったのが惜しかった。

それからマカロワ版で不満なのは、ニキヤの花篭の踊りで、急にテンポが速くなって、踊りがクライマックスを迎えるかのように高揚するのではなく、違うメロディを使っていて盛り上げに欠けること。ランチベリーの編曲がそうなっているのだから仕方ないのかもしれないけれども、愛する人ソロルが別の女性と婚約する場面を見なければならないニキヤの絶望と情熱を感じさせるオリジナルの演出の方がずっといいと思う。

上野水香さんの古典を観るのは久しぶり。彼女の場合、持っている技術は高いのに音楽性に欠けていて、ひとつひとつの動きに滑らかさがないという欠点がある。「白鳥の湖」や「ジゼル」のような作品よりは、「ラ・バヤデール」のニキヤ役の方がその欠点が目立たなかった。動きそのものも雑さが取れてきて、以前より進化していることが感じ取れた。しかし彼女の踊りには情緒が薄いので、「影の王国」のように感情を余り出さない役は悪くないのだが、1幕での神に仕える舞姫としての内に秘めた静かな情熱というよりは、普通の女の子のように恋する感情が素直に出すぎていて、饒舌すぎたように見受けられた。水香さんはキャラクターが強いので、ガムザッティ役を演じさせたらぴったりなのではないかと感じられる。水香さんのニキヤはガムザッティとの対決でも終始押し気味で勝っているし、大僧正も彼女の強い拒絶にあってはたじたじという感じだった。彼女はガムザッティに相応しい華とテクニックも持っているわけだし。

水香さんは、技術的な見せ場は見事なもので、2幕(影の王国)での長いバランスも魅せたし、ヴェールを持った難しいヴァリエーションも楽々と余裕で決まっていた。手脚が長いので見栄えもするしグランジュッテも大きくてきれい。それだけに、あと少し滑らかさや音楽性、叙情性と演技力を獲得してくれれば、ものすごく良くなるのに、もったいないな~と思った。何しろ、登場シーンひとつとっても、友人いわく「自宅の階段を下りているみたい」という表現がぴったりで、神聖な寺院の階段をしずしずと下りてくる舞姫というイメージからは程遠いのだ。

フリーデマン・フォーゲルの代役として急遽出演することになったマシュー・ゴールディングは、長身で顔がとても小さく、脚が長くて理想的なプロポーションの持ち主。確かにブラッド・ピットに良く似ていて、髭があるのも戦士ソロルに相応しい精悍さを加えている。1985年生まれと若いし、演技には若々しさが出ていたけどテクニックは完成されていた。つま先がきれいだし、ピルエットも軸がまっすぐでぴたっと美しくフィニッシュする。グランジュッテも高いし、影の王国のコーダでのドゥーブル・アッサンブレ5連発も鋭く5番に突き刺さっていて,活きの良さを感じさせると共に、正確だった。その上、合わせる時間がほとんどなかっただろうにサポートも上手で、大柄な水香さんを軽々と持ち上げていたし、彼女の強いキャラクターに負けていなかった。

マシューのソロルは、勇ましい戦士であることは勢いのある踊りには出ているものの、ソロルの未熟さと軽薄さも表現されていてそれが面白かった。ニキヤといるときにはニキヤラブ~と熱いのに、ガムザッティが登場すれば藩主の娘でしかも美人なので簡単にそっちになびいてしまって楽しそうにチェスをしちゃったり。婚約式でも浮かれていてヴァリエーションでは思わず白い歯を見せて笑っちゃう。ニキヤが捧げる踊りを見て初めて、自分の軽薄さと罪に気がつき、やばいって思うも後の祭り。影の王国で悔い改め、結婚式ではガムザッティという女の腹黒さと恐ろしさを感じて、深い後悔とともに彼女を拒絶しようとするものの拒みきれない無念さをあふれさせる。思慮が足りなさそうなところも、ソロルにぴったり(褒めています)だし、ダメな男と思いつつも憎みきれない魅力がある。いずれにしても、彼は若々しく爽やかなところがあるのが持ち味で、水香さんのくどさをうまく毒消ししており、この二人の組み合わせは非常に上手く行ったと思う。今回、マシューは震災の影響がある中で急遽来日して、見事に代役を務めNBSに大いに貢献した。見た目のバランスも水香さんにぴったりであるし、今後彼をゲストやガラで観られる機会があることを期待したい。世界には知らないところで優れたダンサーがいるものだと改めて思った。

一方、奈良さんの怪我により4公演すべてでガムザッティ役を踊ることになったのが、田中さん。2009年のカンパニー初演で観た時も彼女のガムザッティだったのだが、あの時よりはずっと迫力が増していて良くなっていた。中でも、ニキヤとの対決の後、「この女は絶対に生かせてなるものか」という強い決意を込めて前を見据える姿には、恐ろしさも感じさせた。ラジャの娘としての誇り高さ、ニキヤには負けたくないという、時には必死になり、時には冷酷になる面を表現できていた。ただ、ガムザッティ役は主役を踊っている人が演じるメーンキャストであり、気位の高い美しいお姫様であることを体現していなくてはならない。エリザベット・プラテルやマリアネラ・ヌニェス、イリーナ・ドヴォロヴェンコなどが演じているくらいなのだ。田中さんにはさらなる存在感と華やかさを出してもらいたいと思う。ニキヤとガムザッティが対決する時、上野さんがニキヤなのに彼女の方が華があってキャラクターが強いので、ニキヤが全面的に勝利を収めてしまい、ガムザッティは屈辱のあまりニキヤを殺すことを決意したという解釈を取ってしまった。最終幕の結婚式のシーンでの、ソロルににじり寄る姿には鬼気迫る迫力があって、ガムザッティという女性の怖さと哀れさが伝わってきたのだが。

田中さんはテクニック的にはイタリアンフェッテもきっちりと決めていて、回転も正確で堅実なのだけど、婚約式で勝利の凱歌を歌い上げるガムザッティだったらさらなる輝きが必要なのではないだろうか。贅沢かもしれないけれども、ガムザッティってニキヤよりも強さや目をひきつける必要がある役なのだ。きっとこれから場数を踏むことで、その輝きは身につけられると思う。

マカロワ版では最終幕に登場するブロンズ・アイドルは松下さん。松下さんはここでは会心の踊りを見せることができたのではないか。クラシックバレエのキャラクターダンスとしては文句のつけようのない高い跳躍と正確なテクニック。マグダヴェーヤ(苦行僧)役の高橋竜太さんは持ち前の身体能力の高さを生かした、はじけた踊り。大僧正の後藤さんは、大僧正なのに煩悩たっぷりのエロ坊主で、しかもニキヤに拒絶されると「すみません・・・」とすごすごと引き下がったり、ニキヤとソロルの逢瀬を覗き見たりする小物っぷりが面白かった。

いろいろ書いたけれども、全体的な公演のレベルは高く、大変楽しめた舞台であった。やっぱり生で観るバレエは素晴らしい。今まで当たり前のように観ていた公演も、滞りなく無事に上演するには大変な努力が必要であることを実感し(指揮者は遅刻したけど)、余震が続く中でも上質な舞台を観ることのできる幸せをしみじみと噛み締めたのであった。

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