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2011/02/14

2/11 シュツットガルト・バレエ クランコ、ファン・マーネン、ベジャールプロ Stuttgart Ballet CRANKO / VAN MANEN / BÉJART

無事4日間のシュツットガルト滞在が終わろうとしています。終わってみれば最高に幸せな4日間でした。


なお、先日掲載した50周年ガラのプログラムですが、公式サイトの記載漏れで、フィリップ・バランキエヴィッチは無事出演して、ローラ・オマリーと、ウィリアム・フォーサイス振り付けの「Ulricht」という作品を踊っていました。
のちほどガラのキャスト表を訂正します。

CRANKO / VAN MANEN / BÉJART Freitag, 11.Februar 2011

Initialen R.B.M.E.

Choreography John Cranko
Music Johannes Brahms
Stage and Costumes Jürgen Rose
World Premiere January 19, 1972, Stuttgart Ballet

I. Satz
Filip Barankiewicz
Rachele Buriassi, Ami Morita

II. Satz
Alicia Amatriain
Anna Osadcenko, Alessandra Tognoloni
Evan McKie, Nikolay Godunov, David Moore

III. Satz
Sue Jin Kang, Jason Reilly

IV. Satz
Alexander Zaitsev
Laura O'Malley

1972年に初演されたこの作品は、ジョン・クランコが当時の4人のプリンシパル、リチャード・クラガン(R)、ビルギット・カイル(B)、マリシア・ハイデ(M)、エゴン・マドセン(E)に捧げて創ったシンフォニック・バレエ。衣装はユルゲン・ローゼによる淡い色使いのユニタードだが、30人以上の出演者がいるという華やかなもの。今回はRはフィリップ・バランキエヴィッチ、Bはアリシア・アマトリアン、Mはスージン・カン、そしてEはアレクサンドル・ザイツェフが受け持っている。4部構成となっているけど、R,B,M,Eの出演者は他の楽章にも出演しており、4人一緒にポーズをとるシーンも印象的である。音楽はブラームスのピアノコンチェルト2番。

Initialen2

ひとつ特筆すべきなのは、第一ヴァリエーションのソリストに、今シーズン入団したばかりのAmi Moritaさんが抜擢されたこと。コール・ド所属の彼女だけど、プロポーションにも恵まれており、堂々とした踊りだった。第一楽章のR役のフィリップ・バランキエヴィッチは回転や跳躍をきびきびと入れながら、颯爽とスピーディに舞台を駆け抜けていった。この人の最近の課題はスタミナ不足で、後半になるにつれてちょっと疲れが見えてしまって脚の上がりが悪くなってしまうのが惜しいところ。第二ヴァリエーションは、アリシア・アマトリアンを中心に、ソリストとしてアンナ・オサチェンコとエヴァン・マッキーがパ・ド・トロワのように踊る。アリシアはとっても現代的なバレリーナなので、きっとビルギット・カイルとは全然違っているんだろう。エヴァンのソロはちょっとしかないのだけど、アントルシャ・シスの足先がとっても美しい。女性ダンサーを男性たちが投げたりする複雑なリフトもたくさんあって、見せ場の多い華麗な第二ヴァリエーション。そして第3ヴァリエーションでは、スージン・カンが比類なき美しさを見せてくれた。なんというしなやかで叙情的な動き。スージンはジェイソンとの息もぴったりで、まるで音楽を奏でているようであり、またそこだけ時間が止まっているかのような至福感も与えてくれた。第4ヴァリエーションのアレクサンドル・ザイツェフは彼らしい軽やかで闊達、生き生きとして楽しい踊り。特に筋書きはないのだけど、情感あふれる美しさの一方で大技も盛り込んであったりして、シュツットガルト・バレエの多彩な魅力に触れることができる逸品となっていた。

Frank Bridge Variations

Choreography Hans van Manen
Music Benjamin Britten
Stage and Costumes Keso Dekker
Lighting Bert Dalhuysen
World Premiere March 18, 2005, Het Nationale Ballet, Amsterdam
Premiere at the Stuttgart Ballet January 14, 2011

Hyo-Jung Kang, Marijn Rademaker
Katja Wünsche, Jason Reilly
Rachele Buriassi, Miriam Kacerova, Alessandra Tognoloni
Roland Havlica, David Moore, Daniel Camargo

キャスト表には、スージン・カンとなっていたけれども、実際にはHyo-Jung Kangが踊った。ハンス・ファン=マーネン振付、ベンジャミン・ブリテンの「Variations on a theme of Frank Bridge(フランク・ブリッジの主題による変奏曲)」を使用。シュツットガルトでは今年の1月に初演されたばかりである。男性がモスグリーン、女性はバーガンディ色のユニタードを着用していて、柄入りと無地の2パターンになっている。マライン・ラドマーカーがノースリーブのこの衣装を着ているのを見ると、ずいぶんと腕が逞しくなった。マラインの体からは驚くほど速いシェネが繰り広げられる。彼が舞台袖にはける時の間の絶妙のはずし方が時にユーモラスだけど、作品そのものは切れ味が鋭くスタイリッシュ。最近ありがちのネオクラシカル要素の強いコンテンポラリーとは一線を画した面白さがあるのだけど、それはブリテンの起伏に富んで生き生きとした、現代的な音楽の力強さに支えられたものだと感じた。陰影のはっきりとした照明の中で一条の光のようにきらめくマラインのシャープな美しさと音楽性の豊かさ、スケールが大きく力強い踊りのジェイソン、二人の男性プリンシパルの魅力がしっかりと味わえる作品だ。それに比べると女性陣がちょっと弱くて、キャスト表にあったとおりスージンが踊っていたら、さらにはファーストキャストのマリア・アイシュヴァルトが踊っていたらどうなっていたのか、それを見たかった気がする。


Bolero

Choreography Maurice Béjart
Music Maurice Ravel
Lighting John van der Heyden
World Premiere January 10, 1961, Théâtre de la Monnaie, Brussels
Premiere at the Stuttgart Ballet July 21, 1984

Friedemann Vogel
Brent Parolin, Alexander Jones
Damiano Pettenella, Nikolay Godunov

初演の日時を見ればわかるとおり、今年は「ボレロ」が初演されて50周年という記念の年である。84年にシュツットガルト・バレエで上演されたときには、マリシア・ハイデ、リチャード・クラガンらがメロディ役を踊った。約20年ぶりに「ボレロ」がシュツットガルト・バレエに帰ってきたことになる。

私はベジャール作品については、あまり好みではないということもあって、何も立派なことは語れない。だけど、「ボレロ」を観た回数はけっこう多い方ではないかと思う。生の舞台で観たのは、いずれも東京バレエ団の「ボレロ」であるが、メロディ役としては、シルヴィ・ギエム、首藤康之、ニコラ・ル=リッシュが印象的であった。東京バレエ団のほかのダンサーがメロディを踊るのも観ている。映像では、初演のデュスカ・シフニオスを始め、ジョルジュ・ドン、リチャード・クラガンなどでも観ている。そして思ったのは、メロディ役には圧倒的なカリスマ性が必要であるし、ひとつの思想、考えを持って踊ってほしいということである。

フリーデマン・フォーゲルは言うまでもなく、身体能力も優れているし、長身で肉体美も誇っている。ところが、シュツットガルト・バレエの長身リズムを従えて踊ると、これが見事なまでにリズムの中に埋没してしまうようなメロディであった。彼の踊りは美しい。とてもしなやかで柔らかく、脚は高く美しく上がるしつま先もきれいだ。しかし何の考えもなく、若くきれいな青年が淡々とメロディの振りを美しく踊っているように見えてしまうのだ。楽器の数が増えて、踊りが最高潮を迎え、汗が吹き出て踊りも熱を帯びてきても、フリーデマンは精神性や思想を何も持たないで、観客ともリズムとも対話をしていないようだった。極端な話、リズムのうちの誰かを円卓の上に乗せて踊らせてメロディを踊らせても同じ結果になるのではないかと想像してしまった。メロディを踊るからには、抜きん出た何か特別なモノを持っていてほしいと、ベジャール作品をあまりわかっていない私は思う。

カーテンコールで円卓を降りて、リズムのダンサーたちと並んでも、背の高いはずのフリーデマンが突出することはなかった。群舞もみな彼のように長身で容姿端麗なのがシュツットガルト・バレエなのだ。ニコラ・ル=リッシュが華奢な東京バレエ団のリズムを従えて踊るのとはわけが違っていて、そういう意味ではフリーデマンは不利だったのかもしれない。だけど、それだけの問題ではないようだった。このメロディ役に同じくキャスティングされている、アリシア・アマトリアンやマライン・ラドマーカーはどうやってこの役を踊るのだろうか、興味深いところだ。観客は本当に熱狂していて、あまりスタンディングオベーションを送ることのない客席が総立ち状態となっていたことは付け加えておく。


ドイツ語での評はこちら
http://www.tanznetz.de/kritiken.phtml?page=showthread&aid=196&tid=19253

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コメント

naomiさん、はじめまして。
私も11日のミックスと12日のガラに行ってましたが、素晴らしかったですね!ガラのプログラム、出演者についてはまったく知らないまま行ったので、ロシアものなどの定番がないのと、作品の多さにびっくりしましたが、未見作品&ダンサーをいっっぱい見れて満足です。翌13日はもう少し早く終わったんでしょうかね。

ご存知かもしれませんが、ドイツ語のニュースでガラの様子と、R.B.M.Eみなさんのインタビューを見つけました。http://www.swr.de/landesschau-bw/-/id=122182/did=7635676/pv=video/nid=122182/1405rp5/index.html

またご感想がアップされるのを楽しみにしております。でも日本からいらしたということで、お疲れだと思います。くれぐれもお大事になさってくださいね。

くまのみさん、こんばんは。

くまのみさんも、11日、12日とご覧になったのですね。13日は、市長?だかの長い挨拶と、最後の同窓会みたいなのがなかった分少し短くて、終わったのは11時15分くらいでした。本当に主要なダンサーはみんな踊ったしゲストもたくさんいて豪華でしたね。観たことのない作品ばかりでした。

ドイツ語ニュース拝見しました。しかし残念ながら私はドイツ語が全然わからなくて(大学で第二外国語でやったのですが覚えているはずもありません)。。とにかく過去の名ダンサーも大勢集結して客席も豪華でしたね。くまのみさんはドイツ在住でいらっしゃるのかしら?

なかなか感想を書くところまで行き着きませんが、なんとか書いてみたいと思います!さすがに体力が落ちていて、疲れました・・・。

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