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« SWAN MAGAZINE Vol.22(2011冬号) | トップページ | ABTのびわ湖公演キャスト »

2011/01/21

1/18 新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」New National Ballet Theatre "La Bayadere"

「ラ・バヤデール」
 振付:マリウス・プティパ
 改訂振付・演出:牧阿佐美
 作曲:レオン・ミンクス
 編曲:ジョン・ランチベリー

 舞台美術・衣裳・照明:アリステア・リヴィングストン
 照明  :磯野睦
 舞台監督:森岡肇

 指揮:アレクセイ・バクラン
 演奏:東京交響楽団
    (コンサートマスター:グレブ・ニキティン)

ニキヤ:小林ひかる(英国ロイヤル・バレエ)
ソロル:デニス・マトヴィエンコ (マリインスキー劇場)
ガムザッティ:厚木三杏
ハイ・ブラーミン(大僧正):森田健太郎
マグダヴェヤ:吉本泰久
黄金の神像 :八幡顕光
トロラグヴァ:貝川鐵夫
ラジャー(王候):逸見智彦
ジャンペの踊り:井倉真未 大和雅美
          伊東真央/細田千晶/今村美由起/川口藍/加藤朋子/益田裕子
つぼの踊り  :寺田亜沙子
ブルー・チュチュ:西川貴子/寺島まゆみ/丸尾孝子/本島美和
ピンク・チュチュ:さいとう美帆/高橋有里/西山裕子/米沢唯
アダジオ    :マイレン・トレウバエフ/菅野英男
第1ヴァリエーション:長田佳世
第2ヴァリエーション:西山裕子
第3ヴァリエーション:米沢唯

会員予約期間に、ザハロワのニキヤが観たいと思ってチケットを入手していたのに(前回「ラ・バヤデール」が新国立劇場で上演された時に、ザハロワの日のチケットを取っていたのに会社の飲み会を入れられてしまって泣く泣く手放したのだ)、今回はザハロワがおめでたのためにキャンセル。ベルリン国立バレエの来日公演と重ならないように気をつけてチケットを取ったつもりだったのに、思いっきりガラの日と重なった日を取ってしまっていたし。ザハロワ降板の知らせとともに、別の日を取り直そうかとも思ったのだけど、面倒になってしまってそのままにしてしまった。

新国立劇場バレエ団に前芸術監督の牧阿佐美氏が振付けた何本かの作品のうち、唯一の成功例がこの「ラ・バヤデール」だと思う。基本的にはオーソドックスな流れなのだが、寺院崩壊まで描かれており、そして最後にソロルはニキヤに許されないで息絶えるという結末も説得力を持った演出となっている。

なんといっても素晴らしいのが、このバレエ団のコール・ド。影の王国のスロープは3段になっており、8人X4列のバヤデールたちが整然と並び、一斉にエカルテそしてアラベスクをするところは息をすることも忘れ、思わず震えが来るほどの幽玄な美しさだった。アラベスクをキープするところでぐらつく人が皆無ではなかったものの、乱れは最小限に抑えられており、3階正面という群舞を堪能するには最高の席で観られて本当に良かった。

また、新国立劇場バレエ団の舞台を観るたびに思うのは照明の美しさ。この位置から舞台を観ると、バレエという芸術の中でどれほど照明というものが舞台づくりの中で重要であるかということを再認識させられる。闇に浮かび上がる白いチュチュの群れの幻想性、岩肌の間に現れては消えるニキヤの姿。これぞバレエを観る喜びの一つである。

ザハロワの代役という大任を任されたのは、ロイヤルのファーストソリスト、小林ひかるさん。ひかるさんのニキヤは、1幕では儚げで繊細、幸薄そうな舞姫。華奢な姿は1幕の衣装が良く似合い、丁寧で柔らかい腕の使い方がとても雄弁で美しい。背中もとても柔軟でアラベスクも美しい。ソロルとの密会の時の、喜びに輝く姿は情感溢れて生き生きとしていた。大僧正に迫られるところ、ザハロワが演じるとニキヤの方が大僧正よりもエラそうに見えてしまうのだけど、ひかるさんの場合には奥ゆかしくも毅然と拒絶していて、ニキヤの秘められた芯の強さを感じさせた。2幕の花籠の踊りでは、愛する人に裏切られ、身を切られるような苦しみの中で切々と踊り、花籠を渡されてからは歓びと悲しみがない交ぜになりながら恍惚の中でクライマックスを迎える心境を情熱的に、見事に表現しきっていた。毒蛇に噛まれてから、「あなたが仕組んだのね」とガムザッティをはっきりと指差し、そして絶望して息絶えるまでに一連の演技も、愛に生きて死んだ一人の女性としての血の通った心情が伝わってきた。

1,2幕までのひかるさんの演技も踊りも素晴らしかっただけに、3幕で別人のように緊張していたのがとても残念だった。影の王国のニキヤ役というのが、いかに難しい役であるかということを改めて実感した。ソロル役のマトヴィエンコと息が合わないところもあり、ヴェールのパ・ド・ドゥでは二人の距離がすごく近かった。ヴェールを持って回るところはなんとかこなしたものの、ピルエットの着地が不安定になっていたりして、音楽が聴けないくらい観る方も緊張しながら観ることになってしまった。ヴァリエーションでは体力を使い果たしてしまったのか、アントルラッセの脚が上がらなくなってしまっていたし。ただコーダのシェネやピケでは気を吐いて高速できれいに回転していてホッとした。

3幕での失速があったものの、ひかるさんは1,2幕は本当に心を込めて、一生懸命に役作りをしてきたのが伝わってきて、とても好感が持てたニキヤであった。今回彼女はニキヤ役が初役だったとのことだ。(ロイヤルでガムザッティを踊ったことはある)しかも初めての劇場、初めてのパートナーで、本当に苦労とプレッシャーがあったものだと思われるし、その中で健闘したと思う。だが、多くの人が思ったことであろうことだけど、ゲストダンサーになぜ、その役を踊ったことがない人を新国立劇場は呼んだのだろうか?ゲストダンサーを招くというのは、その役に定評がある人を呼ぶから、他のバレエ団でその役を経験している人だから呼ぶ意味があるのではないだろうか。そもそも初役という人をこのカンパニーに呼ぶ意味は、残念ながら分からなかった。


一方のデニス・マトヴィエンコは、ソロル役には定評があるダンサー。ひかるさんとのパ・ド・ドゥでは、タイミングの合わないところもあったけれども、ソロでの踊りにはものすごい気迫が満ち溢れていた。もう笑ってしまうくらいピルエットはぐるぐるいつまでも回っているし、シェネも超高速回転だし、「影の王国」でのコーダでの8回連続?ドゥーブルアッサンブレによるマネージュはフィニッシュだけ着地が乱れたけど、そこまでこんなにパワフルでイケイケな踊りを見せてくれたから全然許せてしまう。やっぱりソロル役は、これくらい踊れる人が踊らないと話にならない、とも思うわけだが。踊りの方はそんなわけでとっても勇ましいのだけど、ソロルってやっぱりへたれな男。毒蛇に噛まれたニキヤを見てはおろおろしつつもガムザッティの顔色を伺い、ニキヤの死では彼女のところに駆け寄って顔を覆いへたり込んで号泣。とっても楽しませてもらった。

厚木さんのガムザッティはとにかく怖くて怖くて、ニキヤの前に2,3人は平気で殺しているでしょうっていうくらい残酷さと腹黒さが前面に出ていた。ソロルの肖像画を見て「素敵~」って思っているところの顔ですら、すごく怖い。よって、ニキヤとの対決のシーンではガムザッティの完全なる勝利だった。哀れなニキヤは、メドゥーサににらみつけられて石になってしまいそうなくらい。そういう意味で厚木さんのガムザッティは迫力満点だったのだけど、残念ながら彼女は踊りのテクニックがないので、チュチュ姿になると厳しいものがある。2幕の婚約式はガムザッティ・オン・ステージなのに腕をはじめ上半身はカクカクと堅いわ、脚は上がらないわ、ジャンプは跳べないわ、緊張で顔がこわばっているわで残念だった。ブルー・チュチュやピンク・チュチュのダンサーたちの方がよほど上手い(約1名を除く)のはどうかと思ってしまった。なぜ彼女がこんな大きな役を踊らせてもらえるのか、よく分からない出来だった。

ブロンズ・アイドルの八幡さんはとにかく軽やかでよく跳んでいるんだけど、彼はアティチュードでちょっと膝が下がっているのがいつも気になってしまう。つぼの踊りの寺田さんは、最後につぼが落ちないようにしてある仕掛けが見えてしまうように引き抜いていたのがわかっちゃって、ちょっと興ざめだった。森田さんの大僧正は、とてもふくよかで着ぐるみか肉襦袢を着ているのかと思ってしまったほど。童顔なのでこの役にはそぐわない気がした。別の日に演じる輪島さんの大僧正が観てみたかった。

影の王国の3人のソリストは、3人ともうっとりさせられるほど素晴らしい踊りを見せてくれた。テクニックも音楽性も本当に優れていて、これほどレベルの高い影のヴァリエーションはロシアに行かない限り見られないのでは、と思うほど。中でも第一ヴァリエーションの長田さんは、正しいクラシックバレエのお手本のようなクリアな踊りで、実に見事だった。彼女のガムザッティはきっと華やかで素晴らしいだろう。(長田さんがガムザッティを踊る日も観たかったのだが、観られなくて残念)

アレクセイ・バクラン指揮の東京交響楽団による演奏も、とても美しいもので、特に弦の響きが美しく、公演のレベルをより高いものに引き上げてくれた。3幕での小林ひかるさんの不調、厚木さんのクラシックでのテクニックの弱さというマイナスはあったものの、全体のパフォーマンスのレベルは高く、客の入りが良くなかったのがもったいない、良い公演だった。特に、この回の影のヴァリエーションを踊った3人の、今後の活躍が楽しみである。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
今回のゲスト人選にはがっかりしたので、naomiさんのご意見にはまったく同意です。
なぜ、ロイヤルでニキヤを踊って大変評判の良かったユフィさんではなくて、ガムザッティの方を踊った小林ひかるさんを呼んだのか?
ビントレーの方針で、あえて日本人を選ぶということなら、ユフィさんは日本で育ったけれども韓国人だから、選ばれなかったのでしょうか?
ユフィさんはニキヤにぴったりだし、その美しさも上品さも、新国立劇場に合っていると思います。
また、ザハロワの代役なのだから、無理矢理ロイヤルから呼ばなくても、ロシア系のダンサーを呼べばよかったのではとも思っています。

こんにちは

小林さん、意外と健闘していたと思います。
この方あたりが、ソリストで新国立に残ってくれれば、そこそこになるのではないでしょうか?
そんな感じがしました。

ほかのメンバーと、同じ日本人なので違和感が全くなかったですし。

私も驚いたのは
牧版ということでしたが、
すごく良かった、ということ。もう丁寧に演出しており、海外の、この演目は手抜きなんだと思いました。

昨日、ベルリンに行ったのですが
この、東京交響楽団あたりが来日バレエのオケやってくれると
すごく締まると思いました。

人選について、私も常々???と思うことがあります。私もnaomiさんのようなことを考えていました。
また、6月のマクミラン版ロメジュリのロミオが、なぜマトヴィエンコなんでしょう?
彼のレパートリーを把握してるわけではないのですが、彼ならラヴロフスキー版というのが自然な気がします。

先日18日と20日のベルリン国立バレエ公演に行ってきました。
naomiさんがチャイコフスキーのコメントを載せられたら、レスしようかなと思っています。

小林さんのニキヤは、賛否両論あるものの彼女なりの努力や実力が伺える役作りで検討した様ですね。牧版の影の王国は、大変美しいと思います。
外国で活躍してる日本人ダンサーは、表現力や踊り方が違うと感じる時があります。
ゲストに上記のダンサーの誰かでも良いと思いますが、知名度等を考えると英国ロイヤルバレエなのかな?と思ってしまいます。
森田さんは、ご夫妻を劇場で時々見かけますが、舞台で拝見するよりも細いのに、舞台に立つと・・どうしてだろうと不思議
厚木さん、ユフィさん、ロミオとジュリエットのマトヴィエンコ 同感です。

チャイコフスキー行ってきました。
私も、さえさん同様にnaomiさんの感想の後にコメントしようかと思いますが少し書きます。
チャイコフスキーはマラーホフの為に振付けられたのかと思ったほど、彼の懇親の演技に
魅了されました。ボリス・エイフマンの作品は初見でした。振付が、感情表現と結びついてわかり易いと感じました。
チャイコフスキー夫人とフォン・メック夫人の感情の対比が上手く現されていました。

haruさん、はじめまして。

私も、小林ひかるさんがニキヤを踊ると聞いて、なんで同じロイヤルでニキヤを踊ったことがあるユフィさんじゃなかったのかな、と思いました。
ユフィさんは日本国籍ではありませんけど、日本で生まれ育っているし、ロイヤルのサイトに載っているプロフィールでも日本出身と書いてあるので、日本人と同じだと考えて言いと思うんですよね。
ロイヤルもシーズン中で忙しいようですが(「ジゼル」のペザントなどにユフィさんは出演していたようです)一度でも踊ったことがある人を起用するのが自然なことだと思いますよね。
それから、ソロルはマトヴィエンコのままだったので、ロシア系のダンサーの方が合わせやすかったのではないか、ということも同意見です。

zuikouさん、こんばんは。

小林さんはとても表現力があったし、丁寧に踊っていたので、3幕のヴァリエーションでのいっぱいいっぱいなところさえなければとても健闘していたと思います。初めての役、初めての劇場でこれだけ踊れたのは立派だとも思いますし。本国ロイヤル・バレエでもニキヤを踊ることができればいいと思います。

牧版では珍しい成功例がこの「ラ・バヤデール」でしたね。ロシア系の、太鼓やインドの踊りがある版も好きですが、寺院崩壊を割りといい加減に扱っているヴァージョンも多いですものね。

新国立は東フィルが多いですけど、今回の東京交響楽団の演奏はとても良かったですね。(ベルリンの「シンデレラ」は演奏もかなりグタグダだったし)

バヤデール行って来ました。
主役は、小野絢子さん。
小野ニキヤの初役を観たくて行きました。
経験を増す毎に、実力に磨きがかかり素晴らしいニキヤでした。
実力、容姿共にバレエ向きだと思います。お顔も可愛いから、もっとマスコミに
出てほしいです。
輪島さんのソロルで観たかった。

さえさん、こんにちは。

お返事が遅くなってしまってごめんなさい!
本当にこのカンパニーのキャスティングについては?と思うことが多いです。他に才能豊かなダンサーがたくさんいるのに、主役の機会も与えられなくて。
マトヴィエンコは素晴らしいダンサーですけど、たしかにマクミラン版のロミオというのは違和感があります(前回の上演で志賀さんと踊っていましたっけ?)それも小野さんとなんですよね。

私は23日(今日)チャイコフスキーを観に行くので、ぜひコメントをお待ちしています!

キララさん、こんにちは。

お返事が遅くなってしまってごめんなさい。

>外国で活躍してる日本人ダンサーは、表現力や踊り方が違うと感じる時があります。
私も、今回の小林ひかるさんの演技を見てそう思いました。とても細やかで情感溢れていて、1,2幕はそれはそれは素敵なニキヤだと思いました。

森田さんって、たまに劇場でお見かけしますが、実際にはすらりとしていてかっこいいのに、舞台に立つとどうして膨張して見えるんでしょうね。やはりバレエダンサーってすごいスリムなんだなって改めて思います。

チャイコフスキー、ゲネプロで見たときも、リハーサルなのにこれだけ魂を込めて踊り演技をしていて、最後は抜け殻のようになっているマラーホフを見て驚きました。二人の女性の使い方も面白かったですよね。今日はこれから本公演を観てきます。

キララさん、こんばんは。

小野絢子さんのニキヤの感想、ありがとうございました。本当は小野さんのニキヤも見たかったんですけど、最近体力がなくて、土日のうちの一日は家にいて家事をやらなくっちゃ、って感じで残念でした。小野さんは少し小柄ですけど、本当に可愛らしいし、その可愛いお顔に似合わず芯が強くてテクニックもしっかりしているから、新国立劇場一押しのプリマへと成長しているのもすごくよく分かります。輪島さんのソロルもきっといいでしょうね、彼も上手いし背も高いから映えることでしょう。(で、彼の大僧正にもとても興味があったのですが)

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