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2010/11/19

ヴィクトリア&アルバート・ミュージアムでのDiaghilev and the Ballets Russes展に行ってきました

すっかり遅くなってしまったが、9月末から10月上旬までお休みをいただいて、ロンドンとドイツに旅行してきた。ロイヤル・オペラハウスで「オネーギン」、シュツットガルトで「ロミオとジュリエット」を観て来たのもひとつの目的だったが、最大の目的は、ヴィクトリア&アルバート・ミュージアムでのディアギレフとバレエ・リュス展。以前に当ブログのエントリでも紹介したが、500点ものバレエ・リュス関連衣装を所蔵するヴィクトリア&アルバートでの展覧会は、バレエ・リュス100周年のフィナーレを飾るにふさわしいものと確信し、これは足を運ばなければと思ったのだ。

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ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム
Diaghilev and the Golden Age of the Ballets Russes, 1909-1929

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「青列車」の舞台から、ブロニスラヴァ・ニジンスカ、アントン・ドーリンら

この展覧会は全部で6つのセクションに分かれており、
1.The First Seasons, 1909-14では、バレエ・リュスの初期、レオン・バクストによるデザインとミハイル・フォーキンの作品が代表的なもの。
2.Nijinsky: A Force of Natureでは言うまでもなくバレエが生んだ20世紀最大のスター、ニジンスキーについて。
3.Creating Balletでは、バレエ・リュスが新しいバレエの創造を中心としたカンパニーであったということで創作活動について。
4.The War Yearsでは、第一次世界大戦期の作品とレオニード・マシーンやピカソを中心とした活動。
5.Ballets Russes in the 1920sは、ベル・エポックの時代における、マティスやブラックらアヴァンギャルドのアーティストとのコラボレーション、ニジンスカ、マシーン、バランシンらの創作活動。
6.Legacyは、バレエ・リュスが20世紀の芸術に遺した遺産について。

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展覧会は撮影禁止だったので、入り口の様子だけ。深紅と鮮やかなブルー、エメラルド・グリーンの”バレエ・リュス・カラー"に彩られた会場自体に魔術的な魅惑が満ちていた。

会場の様子は、The Ballet Bagのエントリで見ることができる。
http://www.theballetbag.com/2010/09/24/diaghilev-the-golden-age-of-the-ballets-russes/

本展覧会に出展されたバレエ・リュスの衣装は、所蔵500点のうち71点のみ。とはいえ、厳選されたアイテムだけに一つ一つが宝石のように美しく、100年前にこれらの衣装をダンサーが着用してバレエが上演されたのだと思うと、思わずタイムマシーンに乗ったような気持ちになり、20世紀初頭の空気を全身で感じた。

衣装の中でも、最も強烈な体験だったのが、ニジンスキーが実際に着用した「ジゼル」アルブレヒト、「火の鳥」の王子の衣装。大粒のパールが縫い付けられ、また大きな薔薇が刺繍されたレオン・バクストのデザインによる「火の鳥」の衣装はシンプルながらも豪華だし、ニジンスキーが袖を通したものだと考えるだけで震えが来る。タマラ・カルサヴィナが着用したトウシューズも飾ってあったが、彼女の足が小さかったことに驚かされる。

「春の祭典」の3人の乙女の衣装の民族的で鮮やかな色使いも素敵だし、バレエ・リュス後期に巨額の赤字を生んでしまった「眠れる森の美女The Sleeping Princess」の贅を尽くした華麗な衣装の数々にはうっとりさせられる。バレエ作品を世に送り出す前にディアギレフが興行を行ったオペラ「ボリス・ゴドノフ」のタイトルロールの圧倒させられる豪華さにも目が眩む。一方で、ナタリヤ・ゴンチャロワが手がけた「結婚」のシンプルなモダンさ、シャネルがデザインした「青列車」のニットで編まれたコスチュームのシックさ、そしてピカソのデザインを基にした「パラード」の大胆で奇抜なことにも目を瞠らされる。マティスやブラックがバレエ・リュス作品のデザインのみならず衣装まで手がけていたとは知らなかった。バレエ・リュスを彩った芸術家たちの錚々たる面々には驚かされる。

もうひとつの圧倒的な体験が、ナタリヤ・ゴンチャロワのデザインによる「火の鳥」最終シーンの背景幕。実際の舞台で使用されているがごとく、巨大な幕の全体が展示されているのだ。新国立劇場バレエ団で上演された「火の鳥」と同じデザインのものだが、1926年製作のオリジナル。打ちのめされるような経験であった。展示方法のユニークな工夫として、「火の鳥」の幕の飾られている部屋ではストラヴィンスキーの曲に合わせ、イングリッシュ・ナショナル・バレエのプリマ、ベゴーニャ・ツァオが「火の鳥」を踊る映像が、「火の鳥」の初演当時の写真プログラム表紙などをコラージュ的に織り交ぜながら壁面に映し出されている。その映像は彼女のシルエットのみを捉えている。シルエットだけを映すことによって、火の鳥特有の鳥のような腕の動きや顔の向き、細かいパドブレがより強調されてドラマティックで鮮烈な体験を与えてくれた。また、ヴィクトリア&アルバートの全ての所蔵品の中で最も大きな「青列車」のピカソが手がけた幕も展示されていて、この作品がオークションで競り落とされる様子の映像も見ることができる。

スケッチやポスター、絵画など平面作品も、バレエ・リュスの足跡と息遣いを感じさせる貴重なものばかり。1909年の「ショピニアーナ」のポスター、アンナ・パヴロワの美しさ。ジョン・ノイマイヤーが自らのコレクションから貸し出したという、ジャン・コクトーによるニジンスキーのスケッチ。「シェヘラザード」の黄金の奴隷を踊るニジンスキーの鉛筆画からは、むせ返る官能が匂ってくる。「春の祭典」初演の舞台上の様子のスケッチからは、怒号飛び交う歴史的事件が想像できるし、「レ・シルフィード」のフォーメーションの変化のスケッチなども面白い。ボリス・エイフマンのバレエ「赤いジゼル」のモデルとなった伝説のバレリーナ、オリガ・スペシツェワが舞台袖でトウシューズのリボンを結んでいる様子を描いた絵画からは、当時の舞台がどのような感じで上演されていたのかをうかがい知ることができた。

バレエ・リュスの作品の創作時の映像は残っていないが、いくつものビデオ上映が会場では行われており、ジョフリー・バレエが上演した復元版の「春の祭典」のほか、ストラヴィンスキーとの音楽でのコラボレーションについてのドキュメンタリーや、バレエ・リュスでの方式を想定してのバレエ作品の振付を振付家のリチャード・アルストンがダンサーたちと行っていく映像など、興味深いものがたくさんあって、いくら時間があっても足りないほどのボリュームである。

そしてディアギレフその人。未払いのホテルの請求書の束。ストラヴィンスキー、ピカソ、マシーンらと写った写真の数々。故郷を失いホテルに暮らし、何も持たず、展示されていた愛用の山高帽やオペラグラスですら借り物だった。1929年に亡くなった時には借金の山をつくりあげ葬式の費用はシャネルが用立てたという。だが、彼の遺した遺産には計り知れないものがあり、バレエのみならず、音楽、美術、ファッションなど多分野に多大な影響を与えた。展覧会の最後を彩るのは、バレエ・リュスにインスパイアされたイヴ・サンローランによるモード・コレクション。サンローランのデザインしたモードを見ることで、逆にバレエ・リュスのデザインがいかに時代を先取りした画期的なものであったかが浮かび上がる。ディアギレフという奇才なしでは、バレエが現在のように発展したとは思えないばかりか、それ以外の芸術も今のような栄華を誇ることはなかったと思われる。彼は20世紀の芸術を築いた一大巨人であった。

すべての展示を観るのに4時間を要しただけでなく、一度観た後でもう一度、この圧倒的な体験をしたいと思って後日再びヴィクトリア&アルバートに足を運んだ。この展覧会は観るものではなく、まさに”体験”し、五感で感じるものだ。

ミュージアムショップで販売されていた、衣装のレプリカ
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また、本展覧会のカタログは240ページにわたるものであり、美しい図版に彩られたとても豪華なもので、カタログとしてだけではなく、読み物としても充実した内容だ。バレエ・リュスに関心のある人には必読の一冊となっている。(日本まで持って帰るのにはとても重かったけどー日本のアマゾンで買った方が安かったし!)

http://www.vandashop.com/product.php?xProd=5517&s=1

Diaghilev and the Golden Age of the Ballet Russes 1909-1929Diaghilev and the Golden Age of the Ballet Russes 1909-1929
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さらに多くの写真をBallet.coのギャラリーで観ることができる。
http://www.ballet.co.uk/gallery/jr_diaghilev_vanda-0910


「Diaghilev and the Golden Age of the Ballets Russes, 1909-1929」は来年1月9日まで開催されている。期間内にロンドンを訪れる予定の方には必見。

邦訳は出ていないが、このディアギレフの伝記はとても面白かった。感想はこちら

Diaghilev: A LifeDiaghilev: A Life
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コメント

詳しいレポートありがとうございます。面白かった。

ロンドン、1月中旬に行く予定なのでこの展覧会は終わってしまっているのね。残念です…naomiマジックにかかり、アマゾンでカタログをポチしてしまいました(汗)!!!

amicaさん、こんばんは。
お~ロンドンには1月中旬に行かれるのですか!しかしタッチの差で残念ですね。展示品の多くはV&Aの収蔵品なので、終了後も一部は見られると思います。カタログは豪華で素晴らしい本ですよん♪

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