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« テディベアのふるさとギーンゲンへ | トップページ | 11/27 新国立劇場バレエ団「シンデレラ」New National Theatre Ballet "Frederick Ashton's Cinderella" »

2010/11/26

9/30 ロイヤル・バレエ「オネーギン」The Royal Ballet "Onegin"

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アリーナ・コジョカルとヨハン・コボーが「オネーギン」を踊ると聞いて、どうしても気になって、シーズンのオープニングだしチケットなんてないだろうな、と思ってサイトを見たら思いがけず良席が一枚だけ残っていて、ついにロンドンまで出かけることになったのが今回の旅の発端。

The Royal Ballet
Ballet in Three Acts
Music Kurt-Heinz Stolze after Peter Ilyich Tchaikovsky
Choreography John Cranko
Costume and Set Design Jurgen Rose after Original 1969 Designs for Stuttgart Ballet
Staging Reid Anderson, Jane Bourne
Conductor Valeriy Ovsyanikov

Thursday 30 September 2010

Eugine Onegin :Johan Kobborg
Lensky :Steven McRae
MadameLarina :Genesia Rosato
Tatiana: Alina Kojocaru
Olga: Akane Takada
Prince Gremin: Bennet Gartside

実は新装されてからロイヤル・オペラハウスでバレエを観るのは初めて。モダンでスタイリッシュな部分と古くてゴージャスな部分、そしてフローラル・ホールのレトロさがうまい具合に折衷されたオペラハウスの雰囲気は素敵。

舞台装置はユルゲン・ローズのオリジナル・デザインを踏襲したおなじみのもの。指揮は前回世界バレエフェスティバルの指揮をしたヴァレリー・オフシャニコフだったけれど、本家のジェームズ・タグルの音を聴きなれているとちょっと軽く感じられてしまった。

アリーナ・コジョカルのタチヤーナは1幕ではイノセントで奥ゆかしく、賢い少女だ。とーっても可憐で、だけど踊りはしなやかでとても強靭、小さな身体から生み出されるラインが美しい。鏡のパ・ド・ドゥで奔放に軽やかに舞う姿からは、奥手な外見の中に秘められた少女の情熱がほとばしり、高揚感がいつまでも持続しているかのようだった。踊りのテクニックと演技力のバランスが絶妙にとれているアリーナは、今が絶頂期だと言える。(それだけに、この公演の後怪我で「オネーギン」や「シンデレラ」などを降板しているのが気がかりである)2幕でオネーギンに傷つけられたタチヤーナ、動揺と諦めきれない想いが乱れるステップの中に込められていて、痛ましくて涙を誘われる。

一方で、3幕ではタチヤーナの美しく成熟した姿に目を瞠らされた。タチヤーナはグレーミンと結婚した後、幸福な日々を送りながらも強く賢く生きていて、1幕の鏡のパ・ド・ドゥで見せた情熱をそのまま持ち続けているのが見える。オネーギンからの手紙を読んで心を揺さぶられ、おやすみのキスをしにきた夫グレーミンを強く抱きしめ、激しいといってもいいほどの接吻を交わす。オネーギンの最後の求愛に理性を失いそうになり煩悶しながらも、ふと我に返る。手紙を突き返すところ、バレリーナによって演じ方がまるで違っていて、このシーンでその人の演技が好きになれるかどうかの分かれ道。アリーナが演じたタチヤーナは最後までオネーギンに対する態度の中に優しさがあり、ごめんなさい、あなたを受け入れるわけにはいかないの、と心の叫びを封じ込めていたようだった。本当にアリーナ・コジョカルはダンサーとしてだけでなく、演技者としても素晴らしい。

ヨハン・コボーのオネーギンって、きっと演技はうまいのだろうけど、1幕では超カッコいい都会の貴族であるこの役に合っているのかどうか観る前は疑問に感じていたところがあった。実際に観てみると、傲慢でいけ好かない男ではあるけれども、そのイケズ加減が、小娘にとっては都会の洗練された大人の男性に見えるんだろうなと感じられた。彼がうまいなあ、と改めて実感したのは鏡のパ・ド・ドゥのシーンで、サポートが達者でありアリーナとの息もぴったりと合っているのは予想の範囲内であったが、ちゃんと悪魔のようなダークな魅力を漂わせる素敵なオネーギンになっていたのである。手脚が長くないので、パ・ド・ドゥの最後に腕を大きく振りながら去っていくところのキメ加減は物足りないけれど、十分魅力的である。

2幕ではオネーギンはまとわりついてくるタチヤーナに苛立ち、プライドの高さとちょっとした不埒でよこしまな邪心が取り返しのつかない事態を引き起こしていく。雪だるまが転がり落ちていくかのように運命が加速度的に暗転していく様を目の当たりにしてもどうすることもできなくなった、そんな男の器の小ささと不幸をドラマティックに体現していた。

3幕のコボーは、いくら時間が経過しているとはいえ、ちょっと老け過ぎ。実はシュツットガルトで行われたガラで、コボーとコジョカルが「オネーギン」3幕手紙のパ・ド・ドゥを踊ったそうなのだが、とある人に言わせると「コボーのオネーギンは80歳に見えた」そうだ。80歳は大げさにしても、70歳近いといってもいいくらいで、放蕩と流浪の末にめっきりと老いさらばえてしまった無残な姿が、艶やかなアリーナのタチヤーナとは対照的であった。タチヤーナがグレーミンと踊っている間、物陰から二人を見つめるオネーギンは、狂気すれすれというかストーカー入っていて凄まじい。タチヤーナに対してものすごい執念というか執着を持っているオネーギン像というのは、彼の演技を観るとそれはそれで説得力はある。年月の間に彼を通り過ぎて行った女性たち、その間をふらふらと漂うコボーの常軌を逸した様子は、そのまま手紙のシーンになだれ込む。プライドも未来も何もかも投げ捨てて、最後の愛に生のすべてを注ぎ込んだその様子には心を揺さぶるものはあったが、個人的な好みとしては、オネーギンには最後まで魅力的な男性であったほしかったと思う。それでも、ヨハン・コボーは、ダンサーとしてはキャリアの終盤を迎えているのだろうけれどもまだまだ素晴らしく、また演技者として一流でありドラマティックなものを演じさせたら右に出る者はなかなかいないだろうと感じさせてくれた。

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スティーヴン・マックレーは、当初ファーストキャストに予定されていたイヴァン・プトロフの退団によって急遽レンスキー役にキャスティングされた。甘くて可愛いてワンコのようなレンスキーで、オルガといる姿は子犬がじゃれあっているようである。最初ちょっと硬さがあったけれども途中からはエンジンがかかって、軽やかな跳躍は隅々まで美しく、太陽のような明るさがかえってレンスキーという存在の儚さを感じさせる。ただ、演技としては物足りないところがあり、オネーギンにプライドを傷つけられての怒りの表現も、決闘を前にした自己憐憫あふれるソロでのナルシズムも薄かった。アラベスクなど本当に美しいんだけど、溜めが足りないのだ。初役の初日だったので、きっと3回目を踊る頃には演技の方もこなれてきているであろう。

やはり大抜擢の高田茜さんは、群舞と一緒の踊りだと、その柔らかくロシア的な美しい踊りが際立っていて、なるほどの才能の持ち主であることを感じさせる。小柄でしなやかなところが、いかにもコジョカルの妹だな、と思わせるし。ただ、すぐに眉間に皺を寄せたり、首をかしげたり、演技が大げさで特に表情を作りすぎなところが目に付いてしまって、クラシックでは彼女のテクニックは大きな武器になるだろうけど演技が大きな要素を占める「オネーギン」という作品のオルガ役としてはいかがなものだろう、と思ってしまった。もっと自然さを心がけてほしい。

グレーミン役はベネット・ガートサイド。落ち着いて渋くて素敵な大人の男性で、包容力を感じさせてくれて、こんな夫だからこそタチヤーナも美しく磨かれたのだろうと思わせてくれた。

今回一番不満だったのが群舞。「オネーギン」は3年前にもロイヤル・バレエで上演しているはずだから、それほど大きくメンバーが変わっていないはずなのだが。シーズンのオープニング作品ということもあったのだろうけど、もうボロボロの一言である。特に1幕で男女ペアがグランジュッテをしながら斜めに舞台を横切るシーンで、ジュッテの高さやタイミングがバラバラもいいところで、まったく高揚感というものを感じさせず、拍手もまばらであった。3幕の舞踏会では、距離感をつかめないのか、ダンサー同士がぶつかって転ぶというシーンに遭遇。容姿的には揃っているのに、目を覆わんばかりだった。「オネーギン」はコール・ドが主要人物の心境を物語ったり、その時の社会の情勢をあらわしたり、普通のバレエの群舞よりも重要な役割を果たしているのだから、もっと大事にしてほしいと思う。

「オネーギン」の上演として見るといくつかの不満点はあるものの、アリーナ・コジョカルとヨハン・コボーは当代一のパートナーシップを誇る黄金ペアであり、この二人の魂がこもった熱いパフォーマンスを現地で観ることができたのはまたとない幸せであった。ヨハン・コボーが現在38歳でダンサーとしての人生がそれほど長くないと思われるのと、アリーナ・コジョカルが怪我が多いことを考えると、この二人の舞台を観るチャンスがあれば決して見逃してはならないと改めて思うのであった。

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Emerson String Quartet

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

ロンドンでもオネーギンを上演しているのですね。私は10月にウィーン国立バレエのオネーギンを観てきました。主役級はほとんどがロシア勢で、なかなかよかったです。 が、シュトゥットガルトには負けているなという印象でした。タチアーナを演じたPapavaのオネーギンを拒絶するシーンがちょっとオーバー(あまり品がない)だったのが、個人的にはあまり好きな終わり方ではありませんでした。。群舞はしっかりしていて、1幕で男女ペアがグランジュッテをしながら斜めに舞台を横切るシーンは、素晴らしくよくて思わず、「おおー」と言いそうになりました。

todomakiさん、こんばんは。
今年の秋は、ウィーン、ロイヤルのほかミラノスカラ座とミュンヘンでも「オネーギン」の上演がありました。ウィーンの上演をご覧になったのですね。ウィーンでは「オネーギン」で二人のダンサー(ラツィク、シショフ)がプリンシパルに任命されたとのことです。タチヤーナがオネーギンを最後に拒絶するシーンは私も大事なポイントだと思っていて、10月5日に観たラウラ・モレラのその場面での演技が私もあまり好きではありませんでした。知人でロイヤル、ウィーン、スカラと立て続けに観た人がいて、やはりロイヤルの群舞が一番だめだったと言っていたのですが、ウィーンはルグリが就任して気合が入ったのでしょうか?ウィーン国立バレエは来日公演も予定されているし、観るのが楽しみになってきました。

maomiさんの記事を拝見していたらどうしてもロイヤルに行きたくなり、
行ってくることにしました!!!!!!!!!!
私が計画している時期はジゼルです。
大好きなタマラの日とロベルタの日に行こうかなーと思っております。
あと一ヶ月遅いとスワンレイクだったのですが…><
ロイヤルのスワンレイクは賛否両論ありますが(特に衣装)、
やっぱりスワンレイクは特別な演目だなって思います。
帰ってきたら、ちょこっとご報告させてくださいね。

nomuyukaさん、こんばんは。

ロイヤルでジゼルをご覧になるんですね!いいな~。実は去年ロイヤルでジゼルの上演があった時にチケットを取ったのですが諸事情により行けなくなったのでした。ロイヤルの良いところは、いけななった場合もチケットをボックスオフィスに戻せて、そのチケットが売れたら返金して貰えることです。タマラのジゼルなんてきっと見応えがあって素敵でしょうね。感想楽しみにしています。ロイヤルオペラハウスは本当に素敵な劇場ですし、いい思い出になると思います。時間があったらぜひバックステージツアーにも参加すると楽しいと思います。

naomiさん こんにちは

シュツットガルトの後、バイエルン(ミュンヘン)の劇場でオネーギンを観てきます:)
クランコの上演も多いので、おととしはロミオとジュリエットを観れたのですが
そちらはいまひとつで・・・
今度はいい舞台だといいな~。
タチアナのミラーのシーンも大好きなので どんな表現になるのかとても楽しみです!

vegaさん、こんばんは。

シュツットガルトの後はミュンヘンですか!私はまだミュンヘンには行ったことがないんです。シュツットガルトからICEで2時間くらいなので、そんなに遠くないのに。ここはけっこう「オネーギン」をよく上演しているので(東京バレエ団の「オネーギン」はミュンヘンから衣装を借りたそうですし)良いかもしれませんね。楽しまれますように!

ミュンヘンのオネーギンのご報告など。

12月6日
Onegin> Marlon Dino
Lenski> Javier Amo Gonzalez
Tatijana> Roberta Fernandes
Oliga> Ivy Amista

Marlon Dinoは今年の2月にプリンシパルに昇格したらしいのですが
ダンスも演技力も優れていてクールさが魅力的なダンサーだと思います。
本当はこの日Cyril Pierreが踊るはずだったのですが 何らかの事情で(というか ブックレットがドイツ語で書いてあるので全く理解できず) 急遽彼に代わったようです。

とはいっても、冊子に歴代ダンサーの役を踊った回数、というのが載っており それを見る限りでは
彼も、Cyril Pierreも12~3回の経験があるのでオネーギンに関してはベテランといってもいいのかも。

配役を見るとMarlon以外の3人はラテン系で、どうなるのかな、と楽しみだったのですが・・・
Marlonとタチアナ役のRobertaがなぜかうまく噛合わず、
特に3幕目のパドゥドゥのリフトのシーンは タイミングがあわなかったのか
ステップの後に一間おいてのリフトになっていて 
「ツーステップ で よっこらしょ」と思わす心の中でアテレコしてしまったくらい ぎこちないものでした。

タチアナ役のRobertaは、(レンスキー役のJavierも)クランコのバレエ学校出身ですし、
たしか2007年のクランコガラにも出ていたくらいなので 踊りこんではいると思うのですが
タチアナのイメージから遠く、ちょっとがっかりしてしまいました。

オリガのIvy Amistaは かわいくてちゃっかりしているキャラクターを活き活きと演じていて
とても良かったです。

ミュンヘンの舞台は大きいので 視覚的にまのびして見えてしまうのと
照明がなんだか暗くて せっかくの衣装もあまり良く見えないのが なんとも残念でした。
おまけに群舞があまり揃っておらず・・・

う~ん、不完全燃焼です。

ルシア・ラカッラのバヤデールの写真を横目で見ながら帰りました・・・

naomiさん、シュツットだけで良いかもです。

vegaさん、こんばんは。

ミュンヘン・バレエの「オネーギン」の感想もありがとうございます。マーロン・ディノは最近ルシア・ラカッラと結婚した人ですよね(ダンスマガジンの最新号に載っていました)。背が高くてとてもハンサムな感じです。シリル・ピエールの代役として出演されていたんですね。。

「オネーギン」ってタイトルロールはもちろんですが、タチヤーナ役が重要というか、タチヤーナが良くなければいくらオネーギン役が好演していても作品の中に入りきれませんよね。まだ感想を書いていませんが(書く暇あるかな)ロイヤルで、フェデリコ・ボネッリとラウラ・モレーラを観た時がまさにそんな感じで。ボネッリはとてもよかったのですが、モレーラの役作りがとにかく違和感がありすぎたのでとても残念な感じでした。衣装といえば、東京バレエ団が「オネーギン」を上演した時の衣装がミュンヘンから借りたものだったようですね。ミュンヘンは劇場が広いとのことですが、確かに作品によって合う、合わないがあるのかもしれません。

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