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2010年9月

2010/09/29

【重要:訂正あり】ロイヤル・バレエ「くるみ割り人形」Blu-ray 吉田都&スティーヴィン・マックレー 

ついにわが家にBlu-rayディスクプレイヤーがやってきました。とともに、タイミングよく、Amazon.ukからロイヤル・バレエの新しい「くるみ割り人形」のBlu-rayディスクが到着しました。ハンブルク・バレエの「マタイ受難曲」のDVDとともに。Blu-rayは映像の美しさもさることながら音響も臨場感いっぱいで最高!

<キャスト>
The Sugar Plum Fairy Miyako Yoshida
Nephew/Nutcracker Ricardo Cervera
The Prince Steven McRae
Drosselmeyer Gary Avis
Clara Iohna Loots

Drosselmeyer's Assistant Jonathan Howells
Dancing Mistress Genesia Rosato
Dolls: Harlequin Brian Maloney Columbine Bethany Keating Soldier Kenta Kura Viviandiere Helen Crawford
Mouse King David Pickering
Spanish Dance Kristen Mcnally, Jonathan Howells, Sian Murphy, Erico Montes, Cindy Jourdain, Thomas Whitehead
Arabian Dance Laura McCulloch, Ryoichi Hirano, Fernando Montano, Johannes Stepanek
Chinese Dance Liam Scarlett, Andrej Uspenski, Jonathan Watkins, James Wilkie
RussianDances Paul Kay, Michael Stojko
Dance of the Mirlitons Elizabeth Harrod, Bethany Keating, Emma Maguire, Akane Takada
Waltz of the Flowers :Rose Fairy Laura Morera
Her Escorts: Kenta Kura, Ernst Meisner, Sergei Polunin, Brian Maloney
Leading Flowers Yuhui Choe, Helen Crawford, Hikaru Kobayashi, Samantha Raine


The Royal Ballet
Artists of The Royal Ballet
Director Peter Wright
Composer Pyotr Ilyich Tchaikovsky
Conductor Koen Kessels
Choreographer Peter Wright after Lev Ivanov


ピーター・ライト演出によるロイヤル・バレエの「くるみ割り人形」はすでに2回DVD化されており、演出や美術なども大きな変更点はない。逆に言えばオーソドックスながらも華麗で、夢をいっぱい凝縮したこのプロダクションの素晴らしさを改めて実感する次第。クリスマスツリーが大きくなるところのわくわく感といったら!

吉田都さんはこれがロイヤルでの最後の金平糖の生徒は思えないほどの圧倒的な完成度とキラキラ感。スティーヴン・マックレーは驚くほどの高い跳躍と軽やかさ、鮮やかなテクニックに気品を備えていて目を瞠るほど。またクララ役のイオーナ・ルーツのイノセントな愛らしさ、ドロッセルマイヤーのギャリー・エイヴィスのカリスマ性とかっこよさ、くるみ割り人形役リカルド・セルヴェラの誠実でクリアな踊りと、それぞれのダンサーがみな輝いています。

詳しいキャストをごらんいただければ判るかと思いますが、アラビアに平野亮一さん、人形の兵隊と花のワルツに蔵健太さん、葦笛に高田茜さん、花のワルツに崔由姫さんと小林ひかるさんも出演しています。


詳しい感想を書こうと思ったのですが、それより、国内盤が発売されるようなので、そのニュースを先にお知らせしますね。コロムビアミュージックエンタテインメントより11月17日発売です!

【訂正】
大変申し訳ありません、国内盤の発売は、この吉田都&スティーヴン・マックレーの最新の「くるみ割り人形」ではなく、

バレエを観るのが初めてでも理解できる!楽しめる!登場人物やストーリー、マイムの意味、テクニックなど鑑賞のポイントを字幕で解説した鑑賞ナビつきDVD。英国ロイヤル・バレエ団による、チャイコフスキー3大バレエの一つである古典バレエの名作を収録。(Joshin Web より)

という製品のようです。いつの収録のロイヤル・バレエの「くるみ割り人形」なのかはまだわかりません。早とちりをしてしまいまして申し訳ございません。この記事を見て予約してくださった方は、キャンセルしてくださいますよう、お願い申し上げます。


Blu-rayは国内盤はまだのようなので、amazon.ukからどうぞ。リージョン等問題なく観られますし、お値段もお買い得です。

Tchaikovsky: The Nutcracker (The Nutcracker: Royal Ballet 2009) [Blu-ray]Tchaikovsky: The Nutcracker (The Nutcracker: Royal Ballet 2009) [Blu-ray]
Miyako Yoshida

OPUS ARTE 2010-08-31
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2010/09/28

吉田都主演ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」の放映予定

吉田都さんを追った「プロフェッショナル 仕事の流儀」の放映が10月25日に決定して、一方の「ロミオとジュリエット」の全幕の放映はいつになるのかしら、と思ったらまたTwitterで情報を頂きました。

気がつかなかったのですが、現在吉田都さんのマネジメントをしているのは、牧瀬里穂さんや川原亜矢子さんらの所属しているブルーミングなのですね。その吉田都INFORMATIONに都さん最新情報がいろいろとアップされていました。

http://www.blooming-net.com/agency/blog_info/yoshidamiyako/index.html

それによると、

11月19日(金) 23:00~25:40 NHK教育テレビ
 「芸術劇場」
 スタジオでのトークの後、英国ロイヤル・バレエの最後の舞台「ロメオとジュリエット」
 全幕ノーカット放送いたします!

とのことです。なお、芸術劇場のオフィシャルサイトにはまだ11月の放映予定は掲載されていません

10/15追記
芸術劇場サイトにも放映予定が掲載されました。
http://www.nhk.or.jp/art/current/music.html#music1119

放送時間:23時00分~(番組終了時刻未定)

案内役:
礒野 佑子アナウンサー
ゲスト:
吉田 都(バレエ・ダンサー)
情報コーナー 「吉田都の芸術」

日本が世界に誇るプリマバレリーナ吉田都が、長年プリンシパルとして活躍した英国ロイヤル・バレエ団を2009/2010年のシーズンをもって退団。今年6月の英国ロイヤル・バレエ団日本公演が、吉田とロイヤル・バレエとの最後の共演となった。

情報コーナーでは吉田都をスタジオゲストに招き、ロイヤル・バレエの名作「ロメオとジュリエット」の魅力を解き明かすとともに、バレエ・ダンサー吉田都のバレエ芸術の神髄に迫る。

公演コーナー「英国ロイヤル・バレエ日本公演 「ロメオとジュリエット」全3幕」

世界屈指のバレエ団、英国ロイヤル・バレエ団の日本公演から、吉田都が主演したバレエ「ロメオとジュリエット」全幕を紹介する。これが吉田都がロイヤル・バレエ団と踊る最後の舞台となった、貴重な映像である。

「ロメオとジュリエット」は、英国人振付家ケネス・マクミラン(1929-1992)の手掛けた傑作で、英国ロイヤルバレエの代表的なレパートリーの一つ。数多くある「ロメオとジュリエット」の振付の中でも特に人気のあるバージョンである。

<演目>
バレエ「ロメオとジュリエット」全3幕(プロコフィエフ)
<振付>
ケネス・マクミラン
<出演>
ジュリエット:吉田都
ロメオ:スティーヴン・マックレー
ティボルト:トーマス・ホワイトヘッド
べンヴォーリオ:セルゲイ・ポルーニン
パリス:ヨハネス・ステパネク ほか

英国ロイヤル・バレエ団
<管弦楽>
東京フィルハーモニー交響楽団
<指揮>
ボリス・グルージン
<収録>
2010年6月29日  東京文化会館(東京・上野)

WOWOWでのバレエ関連放送予定

Twitterで教えていただいたのですが、WOWOWの11月はバレエ関連の番組の放送がたくさんあります。

http://www.wowow.co.jp/で「バレエ」で検索すると以下の番組が出てきます。

10/6(水)深夜0:00      シャネル&ストラヴィンスキー[R15+指定版]
11/9(火)よる11:50     シャネル&ストラヴィンスキー[R15+指定版]
11/16(火)よる6:53     ベジャール、そしてバレエはつづく
11/17(水)よる7:03     ベジャール・バレエ・ローザンヌ 80分間世界一周
11/17(水)深夜0:03     パリ・オペラ座のすべて
11/18(木)よる6:18     エトワール
11/18(木)よる8:03     オレリー・デュポン 輝ける一瞬に
11/22(月)午前11:15    マニュエル・ルグリの新しき世界
11/30(火)午前9:45     アダム・クーパーxウィル・ケンプ「兵士の物語」

これは大盤振る舞いですね。特に「エトワール」はDVDが廃盤になっているので、貴重な放送です。

WOWOWはもっぱら家人の趣味のボクシング中継と、テニスのグランドスラム観戦目的で加入しているようなものですが、注意すてみるとかなりすごい番組を放送してくれています。

(今日放送された「太陽の男 ラファエル・ナダル」は、初めてナダルに密着取材した番組でとても面白かったです)

2010/09/26

ヴィクトリア&アルバート・ミュージアムでのDiaghilev and the Ballets Russes Exhibition

ロンドンのヴィクトリア&アルバート・ミュージアムにおいて、ディアギレフのバレエ・リュス101周年を記念しての「Diaghilev and the Golden Age of the Ballets Russes, 1909-1929」が9月25日より来年1月9日まで開催されます。

Diaghilev and the Golden Age of the Ballets Russes, 1909-1929
http://www.vam.ac.uk/collections/theatre_performance/diaghilev-ballet-russes/exhibition/index.html

バレエ・リュス100周年を記念しての展覧会は昨年から世界各地で開催されていますが、このヴィクトリア&アルバートミュージアムでの開催は、真打的なものと言えそうです。もともと舞台美術の収集では定評のある同ミュージアムですが、同ミュージアムのコレクションだけでなく、世界各地から今回のためにデザイン画、衣装、舞台装置や資料までさまざまな作品が集められました。

Ballet.coのギャラリーでは、展示作品の一部が紹介されていますが、「春の祭典」の初演の様子を描いたスケッチや、ジャン・コクトーが「薔薇の精」を踊るニジンスキーを描いたスケッチ(ニジンスキーのコレクターとして知られるジョン・ノイマイヤーが今回の展覧会のために提供したとのこと)、ピカソが描いた「青列車」の幕、ドガによる彫刻などの素晴らしい作品を見ることができます。

http://www.ballet.co.uk/gallery/jr_diaghilev_vanda-0910

また、The Ballet Bagでも、展示の様子の紹介があります。こちらでは、特に衣装の写真がたくさん掲載されていますね。イヴ・サンローランがバレエ・リュスをテーマに展開したモードのコーナーなどもあるようです。

http://www.theballetbag.com/2010/09/24/diaghilev-the-golden-age-of-the-ballets-russes/

来年1月はじめまでにロンドンに行かれるバレエファンの方にとっては、必見の展覧会と言えるでしょうね。


***
ちょっとだけ関連して。

先日、現在上野の東京藝術大学大学美術館にて開催中の「シャガール-ロシア・アヴァンギャルドとの出会い」展に行ってきました。シャガールも、 バレエ・リュスの舞台美術の代表的な作品を手がけているレオン・バクストに師事していたなど、初期の頃バレエ・リュスに関わりのあったアーティストとして知られています。この展覧会では、ニジンスカ振付の「結婚」やフォーキンの「火の鳥」などバレエ・リュス作品の舞台美術を手がけた、ロシア・アヴァンギャルドの代表的なアーティスト、ナターリヤ・ゴンチャローワの作品もいくつか展示されていました。展示されていたゴンチャローワの《収穫物を運ぶ女たち》とバレエ「結婚」のデザインには、ロシア・プリミティヴィスムという点でも共通点が感じられますよね。

また、バレエ・リュスと直接関係はありませんが、メトロポリタン・オペラで上演されたオペラ「魔笛」の舞台美術関連の展示(衣装や舞台装置のデザイン画や当時の上演の様子の写真等約50点!)がものすごくユニークでわくわくさせられ、面白かったです。 本当にシャガール独特の不思議で幻想的なデザインを舞台で再現したことがわかったのが楽しかった!衣装のデザイン画の多くには、キラキラ光るテキスタイルが一部に貼り付けてあったりしたのが、さらに観る楽しさを増幅させてくれました。

2010/09/24

NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」10/25に吉田都さんを特集

ロイヤル・バレエの今年の6月の来日公演での「ロミオとジュリエット」、吉田都さんが主演した日にNHKの取材が入っていましたが、この時に取材した映像等を使用し、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」で10月25日に放送されるようです。

「プロフェッショナル仕事の流儀」の番組サイト
http://www.nhk.or.jp/professional/

によると、

10月25日 「世界のプリマ、最後の闘いの日々~バレリーナ吉田都~」というテーマでの放送があるとのことです。どのように都さんの姿を捉えているのか、とても楽しみですね!

第144回 10月25日(月) 放送予定

世界のプリマ、最後の闘いの日々
~ バレリーナ・吉田都 ~

大英帝国勲章を授与された英国ロイヤルバレエ団のプリンシパル吉田都(44)が、今年6月、惜しまれながら、バレエ団を引退した。40代にしてなお世界の第一線で踊り続けてきた吉田の3か月の格闘に密着。最後の最後まで高みを目指し続けた感動のバレエ団・ラストステージ。その舞台裏の知られざるドラマ。
http://www.nhk.or.jp/professional/schedule/index.html#03


なお、10月18日より「プロフェッショナル仕事の流儀」は月曜日夜10時からのレギュラー放送が始まるとのことです。

2010/09/16

SUZUKIのCMにポリーナ・セミオノワが出演

もうひとつ、TVCMの話題です。

日々これ口実のebijiさんに教えていただきましたが(いつもありがとうございます)、ベルリン国立バレエのポリーナ・セミオノワがSUZUKIの新型スイフトのCMに出演しているということで、サイトで動画を見ることができます。

http://www.suzuki.co.jp/car/swift/gallery/index.html
(9/19 コメント欄でリンク変更をお知らせいただきました!ありがとうございます)

こちらのサイトでは、CMのコンセプトや撮影の模様などもレポートしてあって、とても興味深く読むことができました。ベルリンでロケを行ったのですね。ポリーナのダイナミックな跳躍や正確な回転が素晴らしいです。


ポリーナ・セミオノワについては、最近彼女についての本が出版されました。
「Polina: Aus der Moskauer Vorstadt auf die großen Bühnen der Welt 」
「ポリーナ、モスクワ郊外から世界の舞台へと羽ばたく」という題名のようで、彼女がボリショイ・バレエ学校を経て、現在のスターの地位をつかむまでの半生を追ったもののようです。今のところはドイツ語版のみのようですね。

PolinaPolina
Gerhard Haase-Hindenberg

Egmont Vgs Verlagsgesell. 2010-09
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エフゲーニャ・オブラスツォーワのオフィシャルサイトがオープン

「エトワール・ガラ」への出演が大好評で、10月のボリショイ・マリインスキー合同ガラ公演への出演も楽しみなエフゲーニャ・オブラスツォーワの公式サイトがオープンしていました。

http://www.evgeniaobraztsova.com/

プロフィール、レパートリー、スケジュール、フォトギャラリー、動画へのリンクなどなど、ほとんどのコンテンツを英語で読むことができるし、とても充実しています。フォトギャラリーの中で、著名人とのツーショット写真などもあったりするのが微笑ましいですね。

2010/09/15

熊川哲也さん出演のオンワード「AIR JACKET」CM

K-Balletのオフィシャルサイトにお知らせが載っていましたが、芸術監督の熊川哲也氏がオンワードの「AIR JACKET」のCMに出演しており、そのCM映像をオンワードのサイトで見ることができます。

http://www.onward.co.jp/air_jacket/

やっぱり熊川さんは腕の動き一つとっても、美しいですよね。

K-Balletの秋のツアー公演「コッペリア」と「白鳥の湖」にはオンワードが協賛していますが、それもあってのCM出演なんでしょうね。

なお、「白鳥の湖」の10月31日公演には、ロイヤル・バレエからロベルタ・マルケスがゲスト出演します(ジークフリート役は浅田良和さん)

2010/09/11

9/9 東京バレエ団「ジゼル」Tokyo Ballet "Giselle" Alina Cojocaru & Johan Kobborg

アリーナ・コジョカルのジゼルを前回観たのは、マニュエル・ルグリと共演した2006年世界バレエフェスティバルの全幕プロ。(その後発売されたDVDも一応観ている)あの時のアリーナにも涙したけれども、今回の公演では、この4年間における彼女の進化を実感し、なんという素晴らしい表現者になったのだろうと震える思いがした。

髪を下ろしたアリーナのジゼルは驚くばかりの可憐さを持ち、儚い存在のように見える。小さくて愛らしい顔の中には翳りがあって、この子は早く天に召されてしまう運命なのだと感じさせる。だがジゼルは決して不幸なわけではなく、体が弱いことも忘れてしまっているかのように、踊るときには生の喜びをあふれさせんばかりに快活に踊る。登場シーンでの、元気いっぱいに高くリズミカルに踊るところの生き生きとした姿は幸福感に満ちている。ジゼルがアルブレヒトの前でヴァリエーションを踊るときには、母親に「ねえ、踊ってもいいでしょ?」ともたれかかってちょっとだけ甘えるような表情を見せているのがすごく可愛らしい。

ヴァリエーションでジゼルは、はにかみながらも常に愛するアルブレヒトの視線を意識しているのがわかる。片脚ポアントでもう片方の脚を振り上げながら進むときには、音をたっぷりと取って感情をパの中に込めようとしているのが伝わってきた。そよ風のように軽やかなピケターンも愛を柔らかく奏でている。足先、指先、一つ一つの繊細な動きから、彼女の小鳥のような声が聞こえてきそうだ。

純真で無垢なジゼルにとって、恋人アルブレヒトに裏切られていたことは、とても受け入れられるものではなかった。彼女の心は一瞬のうちに壊れてしまい、視線は虚空をさまよう。幸せだった頃のことを反芻するかのように花占いを始めるけれども、瞳からは堤防が決壊したかのように涙があふれ落ちている。ウィリたちが彼岸から呼んでいるのに反応し、彼女たちの姿を目で追う。アルブレヒトの剣で自分の胸を本当に刺そうとし、ヒラリオンに止められる。(ロイヤル・バレエで上演されているピーター・ライト版では、ジゼルの死は剣を胸に刺した自殺ということになっている)ジゼルは母の腕の中で一瞬正気に戻り、恋しいアルブレヒトの元へと駆けて行き、花の蕾が落ちたかのように息絶える・・・。

ウィリとなったジゼルだが、精霊としての透明感や浮遊感を持ちながらも、肉体の呪縛を離れ、生前の心臓の弱さがなくなった分、より自由に舞い踊っていた。ジゼルは死してなおも、ぬくもりを残した生身の感情を持ち、アルブレヒトへの深い愛を貫く強い意思がウィリの姿となって現れていた。アルブレヒトの前に現れたときには、透けて見えそうなくらいの透明度なのだけど、彼女の存在をアルブレヒトは感じていたし、霊としてすり抜けて行ってしまうのに彼女の想いはそこに残っているのが見える。しなやかで強靭な身体能力を感じさせる長いバランスも、少しでもその心をアルブレヒトのそばに置いておきたいからという気持ちのあらわれ。ウィリたちに踊らされて倒れこんだ彼を包み込むように抱きしめるジゼルには、深い愛と赦しが強く息づいていた。

ついに朝を告げる鐘が鳴って、アルブレヒトを救うことができたという安堵の表情とともにジゼルは寂しそうに微笑み涙を一粒流す。「あなたは前を向いて強く生きていって」と言い残すかのようにアルブレヒトの視線の先を指差し、彼が気がつく前に、指先が触れ合うこともなくお墓の中へと消えていく。そして、ここが後述する感動的なラストへとつながっていくのである。


思わず心が震えてしまうような舞台を作り上げたのは、もちろんアリーナ一人だけの力ではなくて、アルブレヒト役のヨハン・コボーとの練り上げられたパートナーシップ、そしてコボーの好演があったことは言うまでもない。コボーはアルブレヒト役を演じるには少々大人過ぎるかと思っていたけれども、やはりアリーナを一番輝かせるのか彼だということを確信した。マントを肩にかけて登場したときにはやや尊大で少しだけやさぐれた貴族に見えたけれども、ジゼルを見守る目は優しくて、彼女のことが可愛くて仕方ないようだった。アリーナの演技を前面に押し出すように彼の演技は控えめで自然で、それゆえとても説得力があり、ジゼルへの愛情を感じさせた。

しかしアルブレヒトがバチルドという婚約者の存在を隠してジゼルを騙していたのは事実だった。バチルドに「あなたはここで何をしているの」と問い詰められたときの、コボーの困惑する表情からは「やばい、本当に困ったなあ、どうやって説明しよう」と、せりふが聞こえてきた。正気を失ってさまようジゼルの姿を見て、おろおろと狼狽し動揺するアルブレヒト。(このあたりの演技については、バチルドを演じた井脇幸江さんのサイトに興味深い話が載っている)彼の腕の中に飛び込んで事切れたジゼルを強く抱きしめて激しく慟哭し、剣を取ると猛然とヒラリオンに立ち向かっていってウィルフリードに止められる。こんなに激しく、飛び掛らんばかりにヒラリオンへと立ち向かっていくアルブレヒトを観たのは初めてかもしれない。

ジゼルのお墓へと百合の花束を大事そうに抱えて一歩一歩歩いていくアルブレヒトは、深い後悔に沈んでいるものの、自己憐憫は感じさせず、ジゼルの死を純粋に悲しんでいるかのようだった。お墓に百合を一本、一本と捧げた後にはただただ号泣。こんなにも泣いているアルブレヒトを観るのも初めてだった気がする。ジゼルが現れたときには、その気配を感じ、懸命にジゼルを感じてコミュニケートしようとする。やがて二人の踊りはハーモニーを奏で始める。アルブレヒトが高々とジゼルを持ち上げるとき、アリーナは持ち前の身体能力の高さで大きく背中を反らせているけれども、コボーは彼女を空気をはらんだシフォンを持ち上げるかのように軽やかにリフトしていた。

ミルタに無理やり死の舞踏を踊らされるアルブレヒト、コボーはアントルシャ・シスを23回。肩が上がり、苦しそうな表情を見せながらも跳躍には高さがあり、足先は美しい。本当にこの踊りはきつかったようで、ばったりと死んだように倒れこむ。

永遠の別れのシーン。ジゼルに「あなたは強く生きていて!」とのメッセージを受け取っていたアルブレヒトが振り返ると、ジゼルは名残惜しそうにしながらも、もうお墓の中に消えていくところ。猛ダッシュで走っていっても、彼女とは指先さえ触れ合うことができなかった。再び、お墓のそばに座り込んでは号泣するアルブレヒト。

そのとき、ひとつの奇跡があった。花占いの時のあの花が3枚のみ花びらを残して、ぽつんと落ちていたのだ。手にとって「愛している、愛していない、愛している」と花占いを繰り返すコボーのアルブレヒト。ジゼルはもうこの世にはいないし、ウィリたちの世界も現実に起きたことなのか夢幻なのか。でも、ジゼルはたしかに存在していたし、ジゼルを愛したことは夢でも幻でもなかったことをこの花は示している。ジゼルは彼を守り抜いたのだということを彼は確信し、そして微笑む。悲しみの中にも、希望を感じさせるエンディング。

ヨハン・コボーというダンサーが稀代の演技者であることを思い知らされた舞台であった。


忘れてはならないのは、ヒラリオン役木村さんの大熱演。世界で一番熱烈にジゼルを愛しているヒラリオンである。コボーのアルブレヒトよりもプロポーションが良くてすらりと背が高いのに、どうしてジゼルは彼のことを一顧だにしないんだろう。その憐れさ報われなさを全身で表現していた。ラブラブの二人の間に割って入る猛烈な勢い、ジゼルの死のときの激しい慟哭。ウィリたちに踊ることを強いられたときの、美しい足先で文字通り死ぬまで踊らされる様子を体現した体当たりの踊りには、心を震えさせるものがある。

高木さんのミルタは怖さは足りないと感じたところもあったが、地面を滑るような滑らかなパ・ド・ブレ、美しい腕の動きが素晴らしく、また威厳ある中でもほんの少しだけ優しさを残した雰囲気と見事なものであった。ドゥ・ウィリの二人も出来が良かったし、コール・ドには統一感があって揃っている時のウィリの怖さを感じさせた。前述のエピソードで改めて実感されたが、井脇さんのバチルドは美しさと誇り高さの中にも、戸惑いや困惑を感じさせていて心の襞を見せ、バチルドという姫の人生にも思いを馳せさせてくれたものだった。

東京バレエ団というカンパニーの中でも、この「ジゼル」のプロダクションはレベルが高く、毎回新しい感動を与えてくれると実感したのだった。その中でも当代最高のパートーなーシップが織り成すドラマを観ることができて幸福な一夜だったと思い返す公演となった。


◆主な配役◆

ジゼル:アリーナ・コジョカル
アルブレヒト:ヨハン・コボー
ヒラリオン:木村和夫


【第1幕】

バチルド姫:井脇幸江
公爵:後藤晴雄
ウィルフリード:柄本武尊
ジゼルの母:橘静子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):
村上美香-小笠原亮、岸本夏未-井上良太、
阪井麻美-梅澤紘貴、河合眞里-岡崎隼也

ジゼルの友人(パ・ド・シス):
乾友子、奈良春夏、田中結子、吉川留衣、矢島まい、渡辺理恵


【第2幕】

ミルタ:高木綾
ドゥ・ウィリ:乾友子、奈良春夏


指揮:井田勝大
演奏:東京ニューシティ管弦楽団


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2010/09/09

ホワイトハウスでのWhite House Dance Series

9月7日に、ホワイトハウスにおいて、ファーストレディのミシェル・オバマが主催したWhite House Dance Seriesの第一回公演が行われました。来年6月にアルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアターの芸術監督を退任するジュディス・ジャミソンに捧げられた公演で、ホワイトハウス公式サイトにてこの公演の模様は生中継されました。司会を勤め出演者の選定に当たったのは、元NYCBのプリンシパルで大統領の芸術と人権に関する委員会の一員であるダミアン・ウェーツェルです。冒頭のミシェル夫人のスピーチによれば、オバマ家はアルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアターの大ファンで、よく公演に足を運んでいるとか。

そして、アルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアター(「クライ」と「レベレーションズ」の抜粋を上演)、NYCBのアシュレー・ボーダーとダニエル・ウルブレヒトによるバランシン振付「タランテラ」、ワシントン・バレエからのペアによるトライワ・サープ振付「ナイン・シナトラ・ソングス」からのデュエット、ヒップホップのグループSuper Cr3wによるパフォーマンス、ポール・テイラー・ダンス・カンパニー、そしてミュージカル「ビリー・エリオット」で主役を務めているDayton Tavaresによる同ミュージカルのナンバー「Electricity」など、多彩なダンスが上演されました。

そして、その全編がYouTubeのホワイトハウス公式アカウント上で公開されているだけでなく、ダウンロードをすることもできます。

ホワイトハウスの狭いステージの上で上演された「タランテラ」のアシュレー・ボーダーとダニエル・ウルブレヒトは本当に見事なものでしたね~。ビリー少年役の子もとても踊りが達者で、ミシェル夫人が立ち上がって拍手を送っていました。抜粋が多いとはいえ、さまざまなダンスを見ることができて一時間楽しく見入ってしまいました。

今後もこのダンスシリーズが続けられるとのことで、どのようなアーティストを見ることができるのか、とても楽しみですね。なお、このパフォーマンスの前には、全米各地からの100人の子供たちを招いたダンスワークショップも開催されたとのことで、その子供たちが客席に座って今回の公演を観たそうです。これらの子供たちに、ミシェル夫人は「あなたたちはホワイトハウスでできたのだから、どこででもできるわ」とメッセージを送ったそうです。

9/10追記:上記動画は、現在非公開になっています。おそらくは、YouTubeへの動画アップを認めないバランシン財団の抗議に伴うものと思われます。

ABTホセ・カレーニョの引退は2011年7月/追記 Jose Manuel Carreño retires from ABT next July

ABTのホセ・カレーニョが米国のサラソタ・オペラハウスにてCarreño Dance Festivalを開催するとのことで、インタビューが下記新聞記事に載っています。

http://www.yourobserver.com/news/longboat-key/A-and-E/090720107900/A-QA-with-Jose-Manuel-Carreo

以前にも少し記事を書きましたが、その中でカレーニョは、ABTを引退するのが来年、2011年7月であると明言しています。その後もフリーランスのダンサー/指導者として活動を続けるとのことです。寂しいですね。

来年7月には、ABTの来日公演も予定されていますので、そこでホセ・カレーニョの最後の勇姿を観ることができるでしょうか。観られることを祈りたいです。


追記:New York Timesに続報が掲載されていました。
http://artsbeat.blogs.nytimes.com/2010/09/09/jose-manuel-carreno-to-retire/

ABTでのホセのフェアウェル公演は、6月30日の「白鳥の湖」で、パートナーはジュリー・ケント(オデット)とジリアン・マーフィ(オディール)を迎えるとのことです。1995年にプリンシパルとしてABTに入団し、16年間私たちを魅了し続けていたのですね。

またABTのオフィシャルにもプレスリリースが載っています。引退は8月とのことで、アジアツアーには参加してくれるそうです。
http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=320

9/9 BS-1「きょうの世界」の中で、ダニール・シムキン登場

お友達に教えていただいた情報ですが、

本日9/9 22:00~22:50 NHKのBS-1「きょうの世界」の中で、ダニール・シムキンが取り上げられるそうです。

番組表では、「きょうの世界」 ▽難民の“第三国定住”日本でも開始 ▽米バレエ界の新星 ほかとなっていますね。

今日は東京バレエ団、アリーナ・コジョカル&ヨハン・コボーの「ジゼル」を見に行くので、放映に間に合うかしら?

2010/09/04

ベルリン国立バレエ来日公演「シンデレラ」キャスト変更

NBSのサイトに以下のお知らせが載っていました。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/2011-2.html

来年1月、6年ぶりの来日を果たすベルリン国立バレエ団2011年日本公演の公演概要・予定キャストが決定いたしました。

[9/4変更] 「シンデレラ」1月16日(日)"甘いモノ好きのバレリーナ"のキャストが変更となりました。(ウラジーミル・マラーホフからライナー・クレンシュテッターに変更)


ベルリン国立バレエ団2011年日本公演


■公演日程・予定キャスト

「シンデレラ」 全2幕 CINDERELLA   

1月15日(土)1:30p.m.
シンデレラ :ポリーナ・セミオノワ
ゲスト・ダンサー/王子:ミハイル・カニスキン
甘いモノ好きのバレリーナ:ウラジーミル・マラーホフ
アル中のバレリーナ:フェデリコ・スパリッタ
元プリマ/仙女ベアトリス・クノップ

1月15日(土)6:00p.m.
シンデレラ :ヤーナ・サレンコ
ゲスト・ダンサー/王子:マリアン・ヴァルター
甘いモノ好きのバレリーナ:ライナー・クレンシュテッター
アル中のバレリーナ:フェデリコ・スパリッタ
元プリマ/仙女:エレーナ・プリス

1月16日(日)3:00p.m.
シンデレラ :ポリーナ・セミオノワ
ゲスト・ダンサー/王子:ミハイル・カニスキン
甘いモノ好きのバレリーナ:ライナー・クレンシュテッター(ウラジーミル・マラーホフから変更)
アル中のバレリーナ:フェデリコ・スパリッタ
元プリマ/仙女:ベアトリス・クノップ

2010/09/03

オーストラリア・バレエ団「白鳥の湖」DVD Australian Ballet Swan Lake by Graeme Murphy

出演
オデット:マドレーヌ・イーストー
王子:ロバート・カラン
ロットバルト男爵夫人:ダニエル・ロウ
オーストラリア・バレエ団

振付: グレアム・マーフィー
構成: グレアム・マーフィー、ジャネット・ヴァーノン
クリスティアン・フレドリクソン
音楽: ピョートル・チャイコフスキー
演奏: ニコレット・フレイヨン指揮、
    オーストラリア・オペラ・バレエ管弦楽団
衣装・装置: クリスティアン・フレドリクソン
照明: ダミアン・クーパー
制作: オーストラリア放送協会

収録:2008年4月 シドニー・オペラ・ハウス

ヒロインであるオデットを、英国王室の故ダイアナ元妃と重ね合わせた現代版「白鳥の湖」をDVD化。新婦、王子、王子の愛人の3人による愛憎関係が、華やかなロイヤルウエディングの陰でドラマティックに展開される-(キネマ旬報社データベースより)

2007年7月のオーストラリア・バレエの来日公演で観た、グレアム・マーフィ版の「白鳥の湖」は衝撃的とも言える面白さと斬新さを持った作品だった。当時の感想はこちら


それから3年経ってのDVD発売。10月のオーストラリア・バレエ来日公演でも、再びこの「白鳥の湖」が上演されるということで、予習と復習を兼ねた感じで映像を観てみた。

(今度の来日公演が、この作品の初見になる方は、舞台を観てからこのDVDを観たほうがいいと思う。物語の意外な展開に驚いて欲しいから)

久しぶりに観たこの作品、一度舞台で経験はしているけれども改めて見直してもウィットと起伏に富んだ面白い作品だ。とてもひねりが効いていて、諧謔的なところもあるけれど、悪趣味になる一歩手前でとどまっていて程よい気品を保ち、見事にまとまっていて見ごたえたっぷりだ。

古典の「白鳥の湖」では通常第一幕が一番面白くないのだか、ここではなんといっても第一幕が一番ドラマティックで華やかで見せ場が満載である。プロローグも入れると50分近い長さで、1幕が終わるころにはもう胸もドキドキしっぱなし。

プロローグはサスペンスタッチで始まる。結婚式前日のオデットの不安。それを見透かしたかのようにカーテンに不吉に浮かび上がるロットバルト男爵夫人のシルエット、そして王子と男爵夫人との官能的なパ・ド・ドゥで幕は開く。

1幕は幸せなロイヤルウェディングのはずだったのに、花婿の王子が招待客たちの前であからさまにロットバルト男爵夫人といちゃついているなんて。男爵夫人の心境を表した妖艶なチャルダッシュの踊りとともに二人の関係に気がついたオデットが二人を引き離そうとし、二人の女の間で王子は揺れるという心理面の描写があらわれ、そして三つ巴になったダンス。やがて精神のバランスを崩したオデットはジゼルさながらに狂乱し、結婚パーティに参加した男たちの腕から腕へと、まるでマノンのように身を任せようとする。3幕のグランフェッテの曲でフェッテを繰り返しながら彼女の混乱は激しくなり、やがて舞台奥の湖へ身を投げようとまでするのだ。王子にキックまで浴びせて暴れまわった姫というのも前代未聞なのではないだろうか?
主人公3人のドラマティックで濃厚な情念が渦巻くパ・ド・トロワに加えて、結婚式に参加した招待客の男性たちによるダイナミックなダンスも見所のひとつである。

2幕はサナトリウムにいるオデットの姿から始まる。体を歪め暴れては看護婦に取り押さえられ、訪ねてきた王子を見て拒絶するオデット。彼女の心を癒すのは夢の中の世界、凍てついた湖にいる白鳥たちだけだった。そうして始まる湖畔のシーンは、傾斜した盆のような凍った湖を横たわる白鳥たちが取り囲むという、はっとさせられるほど清らかで美しいもの。終盤のソロでオデットが生きる力を取り戻したところへ、ようやく王子が登場して優しく抱きしめてくれる。だけどそれは夢の中の世界だった。

3幕はロットバルト男爵夫人主催の淫靡な秘密パーティに、純白のドレスに身を包んだオデットがやってくるという逆転の発想がとてもユニーク。純粋な美しさで圧倒したオデットは王子の心を取り戻し、逆に捨てられそうになった男爵夫人がルースカヤで持てる情念と怨念のすべてを込めた踊りを見せるところが、この作品の大きなクライマックスのひとつである。そして4幕では、美しく悲劇的な幕切れ。

*******

2幕のほとんどが王子なしで展開しまうためにパ・ド・ドゥが少なく、「やはり2幕はオリジナルのイワーノフ振付の『白鳥の湖』2幕が最強だった」って思ってしまったことを除けば、オリジナリティにあふれていて現代的なこの「白鳥」は、新しい古典となる可能性を秘めた強力な作品である。振付も、クラシックだけでなくコンテンポラリーダンス的な要素も入っていて面白い。

「小さな村の小さなダンサー」にも主要な役で出演したマドレーヌ・イーストーは身体能力に優れ、1幕の狂乱のシーンでのアクロバティックな動きや複雑なリフトも軽々とこなしている。演技力も高く、無垢だったオデットがふと持った小さな疑念がやがて膨れ上がり、夫の不貞を確信して少しずつ心が壊れていく様子、そしてサナトリウムで小さな子供のように震えている姿を的確に表現していた。いわゆるオデットタイプのダンサーと言うよりは、映画で見せたようにキトリなど元気の良い踊りのほうが合っているタイプであると思う。

一方のロットバルト男爵夫人を演じたダニエル・ロウは黒髪の麗しい若い美女で、傲慢で自信と野心に満ちた愛人をスタイリッシュに切れ味鋭く演じていた。それだけに、3幕でオデットに逆襲されたときには弱いところを突かれた未熟で哀れな姿を見せてしまうが、切々とした踊りには思わず同情してしまう。

去年の世界バレエフェスティバルに出演したロバート・カランは派手なダンサーではないが、一見誠実そうで優しげな容姿なのが、優柔不断男の典型的な姿なのよね、と思わず納得してしまう。フィギュアスケートのペア競技を思わせるようなリフトや、複雑なサポートをスムーズに優雅にこなしていて実力派なのがとてもよくわかる。

2幕の息を呑むようなプロダクションデザインの美しさや、1幕の優雅な中に意味ありげな要素を込めた衣装など、美術も秀逸なこの作品。10月の来日公演での上演も本当に楽しみである。


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追記:NBSのオフィシャルでプロモーション動画がありました。出演者はこのDVDとは異なります。

スヴェトラーナ・ザハロワ、新国立劇場「ラ・バヤデール」も降板 Svetlana Zakharova Cancels NNBT La Bayadere

新国立劇場のサイトには、スヴェトラーナ・ザハロワが「ラ・バヤデール」への出演をキャンセルしたというお知らせが今日付けで載っていました。

http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20001153.html

2011年公演「ラ・バヤデール」1月15日(土)、18日(火)に出演を予定しておりましたスヴェトラーナ・ザハロワが健康上の理由により出演できなくなりました。  代わって小林ひかる(英国ロイヤルバレエ)が出演いたしますのでお知らせします。 

来年1月の出演もキャンセルだなんて、ザハロワの健康状態が非常に心配です。今シーズン唯一の新国立劇場でのザハロワの出演がキャンセルになってしまって本当に残念と言うしかありません。(私もチケットを買っていました)早く回復されますように。

小林ひかるさんは、ロイヤル・バレエでもニキヤを演じていましたよね←と思ったらニキヤではなくガムザッティでした。パートナーはマトヴィエンコのままということなのかしら。このキャストの人選にも、新国立劇場のロシアカラー払拭が見えるようです。

***

ちなみにこちらは、ミラノ・スカラ座での9月公演「フォーサイスの夕べ」ザハロワキャンセルのリリース
http://www.teatroallascala.org/en/stagioni/2009_2010/opera-e-balletto/Serata_Forsythe.html

Due to personal reasons, Svetlana Zakharova had to cancel all the next artistic engagements included the announced performances of “Serata Forsythe”.

[ボリショイ×マリインスキー合同バレエ]スヴェトラーナ・ザハロワ出演キャンセル、ガリーナ・ステパネンコ出演

ジャパンアーツのバレエ・舞踊ブログに9/3付で載っていたお知らせです。

【出演者変更のお知らせ】 ボリショイ・バレエのスヴェトラーナ・ザハーロワはやむをえない個人的な理由により、参加できなくなりました。 代わりにボリショイ・バレエ プリンシパル、ガリーナ・ステパネンコが出演いたします。 なにとぞご了承をいただきますよう、謹んでお願い申し上げます。 Due to personal reasons, Svetlana Zakharova had to cancel all performances of this project.

*ステパネンコの出演演目は現在ボリショイ・バレエと調整中です。決まり次第追加発表いたします。
*この変更による、チケットの払い戻しや変更はお受けいたしません。

ザハロワからのメッセージも掲載されています。

http://ja-ballet.seesaa.net/article/161339587.html

ザハロワはボリショイ・バレエのロンドン公演やミラノ・スカラ座への出演をキャンセルしており、体調が非常に心配です。今回の出演を楽しみにしていた人も多いと思うので本当に残念です。代役で久しぶりにステパネンコの踊りを観られるのは楽しみですが。。

2010/09/01

ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 「私と踊って」がNHKプレミアムシアターで放映

ちょこっと劇場に行ってきます」のmiyaさんに教えていただきましたが(いつもありがとうございます)、NHKプレミアムシアターにて、ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 「私と踊って」とドキュメンタリー「ダンシング・ドリーム~ピナ・バウシュの『コンタクトホーフ』~」が放映されるとのことです。うれしいですね~。

http://www.nhk.or.jp/bs/premium/

◇舞台中継 ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 「私と踊って」
◇インタビュー「ピナ・バウシュの遺したダンス」
◇ドキュメンタリー ダンシング・ドリーム
   ~ピナ・バウシュの『コンタクトホーフ』~   
   
   10月2日(土)22:00~26:00 NHKBShi
   10月10日(日)24:40~28:40 NHKBS2

ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団の「私と踊って」は、私も6月12日の公演を見に行って、非常に心に残る素晴らしい公演でした。その時の感想はこちら 注目のドキュメンタリー「コンタクトホーフ」の放映もあり、見逃せませんね。

新国立劇場のサイトリニューアルとダンサーのラインアップ

9月1日から新しいシーズンになったからでしょうか、新国立劇場のバレエのサイトがリニューアルされていました。
http://www.nntt.jac.go.jp/nbj/

その中で注目は、新国立劇場バレエ団の団員一覧のページのリニューアルです。新しい年度のダンサーラインアップは発売中のダンスマガジンにも掲載されていましたが、改めて公式サイトで見ると実感します。
http://www.nntt.jac.go.jp/nbj/dancer/contract.html

まず、シーズンゲストダンサーとして掲載されていたスヴェトラーナ・ザハロワとデニス・マトヴィエンコの名前が消えていて、ビントレー芸術監督となって一新されたんだな、と思うとともにやっぱり寂しさを感じます。

ファーストソリスト以上は顔写真が載っていますが、これもリハーサル中の写真となっています。契約ダンサーのファーストソリストだった寺島ひろみさんが、登録ファーストソリストへと移ってしまったため、ファーストソリストは川村真樹さんとマイレン・トレウバエフの二人、プリンシパルは引き続き山本隆之さんのみ。ソリスト以下の写真の掲載がなくなってしまいました。(今後、さらにコンテンツを追加していくと思われますが、せめてソリスト以上は写真とプロフィール、団員全員の写真を掲載して欲しいものです)

ソリストでは、新加入として、サンノゼ・バレエより米沢唯さん、キエフ・バレエより菅野英男さん、バーミンガム・ロイヤル・バレエより厚地康雄さん。また、コール・ドから寺田亜沙子さんと福田圭吾さんが昇格していました。

ところで、今日は「ペンギン・カフェ」の公開リハーサル発売開始日。電話のみの受付ということで、今は仕事が休みなので電話をかけまくりましたが、ずっとNTTのアナウンスばかりを聞かされ、つながるまで1時間ちょっとかかりました。やっとつながった時点でチケットはソールドアウトでした。平日の昼間という時間帯から電話のみの受付方法というのが、社会人にとっては難しい時間帯だと思うし、なぜインターネット受付にしなかったのでしょうか・・・。抽選で外れたほうがまだ納得が行く気がします。正直言って、今回は面倒な切り替え手続きの伴うアトレ会員の継続をしたことを後悔しています。

いろいろな試みをしているのはわかるのですが、サハロワのゲストもなくなってしまったことや人気ゲストを呼べなくなってしまったこと、古典演目の上演の少なさもあって、相当チケットの売り上げには苦戦するのではないかと思います。新国立劇場にとってはこのシーズンは正念場でしょう。


追記:新国立劇場のサイトに、「新国立劇場バレエ団 New Direction」として今シーズンの方向性やデヴィッド・ビントレーについて詳しく記述したプレスリリースが掲載されています。参考までに。
http://www.nntt.jac.go.jp/release/pdf/ballet_1011newdirection.pdf

中村祥子さん、「テレビでドイツ語」に出演(来週火曜に再放送)

このブログには、中村祥子さん(SHOKO)で検索して来られる方も多いようなので、出演番組をご紹介します。

友達に教えてもらってNHK教育テレビの「テレビでドイツ語」をつけたら、ベルリンからの現地レポートで、中村祥子さんのコメント映像が出ていました。K-Balletで踊っている映像も少し流れたようです。私は最後の方しか見られなかったのですが、好きなドイツ語の言葉は「Toi toi toi」とのこと。これはドイツ語に限らず舞台人の間でも「Good Luck」的な意味合いでよく使われる言葉ですね。

「テレビでドイツ語」の再放送は、火曜日午前6:00~6:25です。見逃した方はぜひ。
http://www.nhk.or.jp/gogaku/german/tv/

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