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2010/08/16

「小さな村の小さなダンサー」 MAO'S LAST DANCER

1961年に山東省の貧しい村で7人兄弟の6番目の息子として生まれたリー・ツンシンは、11歳のときに国中の子供たちの中から選ばれて親元を離れ、北京の舞踊学校に入学する。当時毛沢東の文化政策による英才教育が進められており、毛沢東夫人の江青が権勢を振るっていた。北京を訪れたヒューストン・バレエのベン・スティーヴンソンの目に留まったツンシンは、文化交流のためアメリカでのバレエ研修に参加することになる。初めて海外の自由な世界に触れたツンシンは、やがて、ある重大な決意をする…。国際的に活躍したバレエ・ダンサー、リー・ツンシンの実話を映画化。

http://chiisanadancer.com/index.html

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©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

昨年の9月に原作「毛沢東のバレエダンサー」(感想はこちら)を読んで大感動した。バーミンガム・ロイヤル・バレエのツァオ・チー主演で映画化されると聞いてから、この映画を観るのをとても楽しみにしていたところ、公開前に見せて頂く幸運にあずかった。(前売り券も買ったけど!)

劇場公開は8月28日からBunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座ほかにて。


初めてアメリカの土を踏んだツンシンが新しい世界との出会いに驚き戸惑いながらもわくわくする様子と、故郷での少年時代からの道程をたどっていくところを行き来する構成がとても巧みだ。当時の最先端のアメリカの消費社会と、貧しい寒村での親子の暖かい触れ合いを対比させることによって、それぞれの良さを際立たせることに成功している。特にツンシンを北京の舞踊学校へ送り出すときの、父母が彼に向ける愛情には心打たれる。母親役を演じるジョアン・チェンが優しくも強い母親像を見事に作り上げていることが、後半のツンシンの激動の人生と感動のクライマックスをさらに盛り上げることに結びついている。バレエ学校の教師とのエピソードも、厳しい訓練の日々の中でふっと心温まるものだ。

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©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

なんといってもこの映画は、ツンシン役に一流のバレエダンサーであるツァオ・チーを起用し、彼の青年時代を演じるのもオーストラリア・バレエのグオ・チャンウ、さらにオーストラリア・バレエのマドレーヌ・イーストー(10月のバレエ団来日公演にも主演予定)がツンシンのパートナー役を演じるなどオーストラリア・バレエの全面協力を得てバレエシーンを本物そのものとして再現しているのが素晴らしい。江青による芸術への思想統制を表現するのにバレエを用いたり、ツンシンとエリザベスがうまく行かなくなってしまうシーンには、グレアム・マーフィ版の「白鳥の湖」のクライマックスを挿入してダンスに心境を代弁させている。

何より、一つ一つのダンスシーンに見ごたえがある。青年時代に江青の前で踊った「ジゼル」のペザントから、研修中に頭角を現すきっかけとなった「ドン・キホーテ」でのツァオ・チーの超絶技巧、そしてマーフィ版の現代的な「白鳥の湖」(あのダイアナ妃の悲劇をバレエ化した話題のプロダクション!)。さらにクライマックスではやはりグレアム・マーフィが振付けた「春の祭典」。ここでは圧倒的なスペクタクルを見せてくれて、バレエってすごい芸術だってことを、バレエを良く知らない人にも教えてくれている。華やかな舞台に立つことができるまでの、バレエ学校での厳しい猛特訓の様子も非常にリアルだ。(「ドン・キホーテ」のグラン・パ・ド・ドゥでの跳躍でスローモーションを使っているのは、ダンサーの実際の踊りを見たいと思う立場からはちょっと残念、と思ってしまった。それ以外のダンスシーンについては編集も撮影も踊りそのものの魅力を良く伝えていると思う)

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©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

家族のことを常に想いながらもひとつのことに打ち込んできた青年。彼が新しい世界からいろいろなことを貪欲に吸収し、初めて知った自由の眩しさに目が眩みつつも、芸術家として自身が求めていたことこそが自由である気がついて、葛藤しながらも大きな決断をする。その決断には大きな代償があり、傷ついた人間もいたことを描いている。そこに人間の真実というものがあり、実話であるが故の重みを感じさせてくれる。ツンシン本人、彼の家族、エリザベスやベンなど周囲の人々、それぞれの苦悩があったからこそ、クライマックスでは思わず涙がこぼれてしまう感動がより大きなものになっていた。小さな村から旅立った小さなダンサーは、さまざまな障害を乗り越えて、大きく世界へと羽ばたいていったのだ。

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©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

前回のバーミンガム・ロイヤル・バレエの来日公演でも「美女と野獣」に主演したトップダンサーであるツァオ・チー。彼の演技が巧みかつ自然で、中国から初めての海外にやってきた朴訥な青年を見事に演じていることに驚かされた。「センターステージ」に主演していたアマンダ・シュルが恋人エリザベス役で久しぶりにスクリーンに登場しているのも嬉しい。また、「ツイン・ピークス」「ブルー・ベルベット」のカイル・マクラクランが弁護士役でクライマックスのひとつを担っていることも、作品に大きな説得力を持たせてくれる。

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©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

バレエ愛好家にはもちろんのこと、バレエのことは知らない人にとっても、この作品の持つドラマ性とダンスの躍動感に感動するに違いない。原作のエッセンスを見事にすくい上げているといえる。お勧め。

スタッフ
監督: ブルース・ベレスフォード
製作: ジェーン・スコット
原作: リー・ツンシン
脚本: ジャン・サーディ
撮影監督: ピーター・ジェームズ
プロダクションデザイン: ハーバート・ピンター
編集: マーク・ワーナー
衣装デザイン: アンナ・ボーゲーシ
音楽: クリストファー・ゴードン
ダンス場面振り付け: グレアム・マーフィー
英題: MAO'S LAST DANCER

キャスト
ツァオ・チー(リー・ツンシン)
ジョアン・チェン(ツンシンの母)
ブルース・グリーンウッド(ベン・スティーヴンソン)
アマンダ・シュル(エリザベス)
カイル・マクラクラン(フォスター)
グオ・チャンウ(青年時代のツンシン)
ホアン・ウェンビン(少年時代のツンシン)
ジャック・トンプソン(判事ウッドロウ)
マドレーヌ・イーストー(ローリー)


ツァオ・チーのコメント動画も見られる、フィガロ・オンラインのインタビュー記事
http://news.madamefigaro.jp/culture/post-460.html

ChacottのDance Cubeでのツァオ・チーのインタビュー
http://www.chacott-jp.com/magazine/interview-report/interview/interview1008b.html

朝日新聞には、リー・ツンシン本人のインタビューも
http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY201008090096.html

小さな村の小さなダンサー (徳間文庫)小さな村の小さなダンサー (徳間文庫)
リー・ツンシン 井上 実

徳間書店 2010-07-02
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映画」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
毎日、暑いですがいかがお過ごしですか。
この映画は、行きたいと思っていました。内容もかなり良いですね。
早速、前売りを買いに走りたいと思います。

全日本コンクールの会場にフライヤーが置いてありました。
バレエに関する人には是非見て欲しい映画ですね。

くみさん、こんにちは。
本当に毎日暑いですね・・・オフィスの冷房と外の気温差にやられてしまいます。
この映画、本当にバレエシーンも盛りだくさんだし、ダンサーも最高だし、ドラマティックでお勧めです。前売り特典でクリアファイルももらいました。

フライヤー、ニコラのボレロの会場にも置いてありました。バレエの訓練のシーンは本当に厳しくつらそうな感じでしたが、ひとつのことをやりぬく大切さが良く伝わってきたし、芸術の持つ力も感じられたので、バレエを学んでいる人にはぜひ見て欲しいです。

記事とは直接関係ありませんが、バレエダンサーを目指す子供たちの様子を描いていて、バーミンガム・ロイヤル・バレエと関係のある、ということでこちらにお邪魔します。
先日、BBCウェールズでエルムハースト・バレエ学校の生徒5人の一年間を追ったドキュメンタリー"Ballet School"第1回が放送されました。4回シリーズだそうです。
xfs.jp/MPsHZ

'In pictures Ballet School'でググると5人の生徒たちが紹介されているページがあります。

rednalさん、こんばんは。

早速ダウンロードしてきました。バレエ学校のドキュメンタリーってパリ・オペラ座やペルミバレエ学校等のがありますが、とても面白いですよね。高い目標に向かって頑張っている子を見ていると眩しいです。シリーズものということは、けっこうリアルタイムで追っているって感じなんでしょうかね。

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