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2010年8月

2010/08/30

8/29 小林紀子バレエシアター「コンチェルト」「チェックメイト」「パキータ」Noriko Kobayashi Ballet Theatre "Concerto""Checkmate""Paquita"

「コンチェルト」"Concerto"
 [振付]ケネス・マクミラン
 [ステイジド・バイ]ジュリー・リンコン
 [作曲]ドミトリー・ショスタコーヴィチ
     (ピアノ協奏曲第2番 ヘ長調 作品102)
 [美術]デボラ・マクミラン

First movement:真野琴絵 八幡顕光
Second movement:島添亮子 デヴィッド・ホールバーグ Akiko Shimazoe David Hallberg
Third movement: 高橋怜子
Three couples:萱嶋みゆき 秦信世 荒木恵理
          中尾充宏 佐々木淳史 冨川直樹

溌剌とした最初の真野さん、八幡さんカップルの踊りも良かったけど、この作品の素晴らしさは2番目のカップルのパ・ド・ドゥにある。ショスタコーヴィッチのピアノコンチェルト2番の叙情的なメロディに乗せて、バーレッスンするかのような動きを見せる島添さん、ポール・ド・ブラ、ロンドゥジャンブ、ピルエット、アラベスクそれぞれの動きがとても繊細でかつクリアで美しい。島添さんを時にはバーのようにサポートし、リフトし、プロムナードし、一つ一つの動きに寄り添うようなデヴィッド・ホールバーグとの間に漂う空気感にはなんともいえないエモーションがあって、目が離せない。バレエのスタジオをイメージしたような空間で、後方では3組のカップルが同様にバーレッスンを行っているけれども、メーンのカップルには特別な美しさがある。マクミランのパ・ド・ドゥの中でも最も美しいもののひとつと言われるのも納得できるし、今回理想的なカップルを得て忘れがたい素敵な上演となったといえる。

(この美しい作品「コンチェルト」を収めたロイヤル・バレエの「マクミラン・トリプルビル」のDVD/Blu-Rayが10月に発売になるとのことで、とても楽しみ。最初のカップルが崔由姫さんとスティーヴン・マックレー、2番目のカップルがマリアネラ・ヌニェスとルパート・ペネファーザーだとのこと)

「チェックメイト」"Checkmate"
 [振付]ニネッタ・ド・ヴァロワ
 [オリジナル・ステイジド・バイ]パメラ・メイ
 [ステイジド・バイ]ジュリー・リンコン
 [作曲]アーサー・ブリス
 [美術]E・マックナイト・カウファー

愛:高橋由貴乃
死:西岡正弘
黒の女王:喜入依里
赤の女王:萱嶋みゆき
赤の王 :澤田展生
赤の第一騎士:冨川祐樹
赤の第二騎士:アンダーシュ・ハンマル
黒の騎士  :中尾充宏/冨川直樹

冒頭で「愛」と「死」がチェス盤を囲み、チェス盤を回す象徴的なシーンがとても印象的。チェスの戦いをバレエで表現したこの作品は1937年初演で、黒の女王の勝利をナチスの台頭になぞらえている作品。ポアントを突き刺すような動きが象徴的な動きがかっこいい黒の女王役は、最近このカンパニーでリラの精を踊ったりして急成長している喜入依里さん。威厳と怖さは良く出ていたけれども、前回この作品が上演されたときの黒の女王、大森結城さんの切れ味鋭くカリスマ性たっぷりで冷酷な女王の印象が鮮烈すぎた。黒の女王を倒すチャンスを得ながら彼女に魅せられてしまって逆に倒されてしまう赤の騎士には富川祐樹さん。そして老いて弱っている赤の王を演じた澤田さんは演技が細かくて大熱演。アンサンブルには乱れがあったところもあり、上演時間が長く感じられてしまったのが残念。土曜日の上演では大和さんが黒の女王だったとのことで、こちらも見てみたかった。


「パキータ」”Paquita"
 [振付]マリウス・プティパ
 [プロダクション]小林紀子
 [作曲]レオン・ミンクス
 [美術]ピーター・ファーマー
 [美術コーディネート]マイケル・ブラウン

アダージョ:島添亮子/デヴィッド・ホールバーグ Akiko Shimazoe David Hallberg
第1ヴァリエーション:大和雅美
第2ヴァリエーション:大森結城
第3ヴァリエーション:萱嶋みゆき
第4ヴァリエーション:高橋怜子
第5ヴァリエーション:デヴィッド・ホールバーグ
第6ヴァリエーション:島添亮子

マリインスキーあたりが上演する「パキータ」とは全然雰囲気が違っていて、おっとりとしていて温かみのある「パキータ」。明るいオレンジ色の上品なチュチュ、濃いオレンジ色の幕を使ったピーター・ファーマーの美術もその温かさに一役買っている。その中で一人、白いチュチュを着たエトワールの島添さんはまばゆいばかりに輝いていた。特にプロポーション的に恵まれているわけでもないのに、正確なテクニックにずば抜けた音楽性と気品。音符と戯れ、自由自在に操っているかのようだった。コーダでのフェッテも余裕を感じさせて実に素晴らしかった。デヴィッド・ホールバーグは芸術的なアーチを描いた長く美しい脚、光り輝くエレガンスでプリンスそのもの。彼の柔らかいプリエと音のしない着地、高いルルヴェ、全体的なラインの優雅さ、圧倒的なバレエの美を体現していた。ヴァリエーションではやはり大和さんの安定感、大森さんの凛とした佇まいがとても素敵で、この二人は島添さんと並んでカンパニーの宝だと改めて思ったのだった。
ひとつ残念なことは、この作品の上演のときのオーケストラの音のバランスが著しく悪く、金管楽器ばかりが目立ってしまって全体の旋律が耳に入りにくかったこと。若干集中力をそがれてしまったので、改善を要望したい。

[指揮]ポール・ストバート
[演奏]東京ニューフィルハーモニック管弦楽団
[ピアノ独奏]中野孝紀(《コンチェルト》)

2010/08/26

レニングラード国立バレエ来日公演「ドン・キホーテ」にオブラスツォーワ出演/ 追記 DVD発売情報

光藍社さんのサイトでレニングラード国立バレエ(ミハイロフスキー劇場)東京公演の主演キャスト発表がされていました。

http://www.koransha.com/ballet/leningrad_ballet2010-11/index.html#cast

1月6日、7日の「ドン・キホーテ」のルジマトフの相手役は、エフゲーニャ・オブラスツォーワ(マリインスキー劇場)がゲスト出演だそうです。

2010年12月8日(水) 18:30 東京文化会館 ロミオとジュリエット ペレン/コリパエフ
2010年12月9日(木) 18:30 東京文化会館 ロミオとジュリエット ヤパーロワ/モロゾフ
2010年12月23日(木・祝) 12:30 東京国際フォーラム(A) くるみ割り人形 ヤパーロワ/ヤフニューク
2010年12月23日(木・祝) 16:30 東京国際フォーラム(A) くるみ割り人形 シェスタコワ/シヴァコフ
2010年12月25日(土) 12:30 東京国際フォーラム(A) くるみ割り人形 ロマチェンコワ/プローム
2010年12月27日(月) 18:30 Bunkamuraオーチャードホール ジゼル ペレン/ルジマトフ
2010年12月28日(火) 18:30 Bunkamuraオーチャードホール ジゼル シェスタコワ/ルジマトフ
2011年1月4日(火) 12:00 東京国際フォーラム(A) 白鳥の湖 ボルチェンコ/プハチョフ
2011年1月4日(火) 17:00 東京国際フォーラム(A) 白鳥の湖 ペレン/ルジマトフ
2011年1月6日(木) 18:30 Bunkamura オーチャードホール ドン・キホーテ  オブラスツォーワ ルジマトフ
2011年1月7日(金) 18:30 Bunkamuraオーチャードホール ドン・キホーテ  オブラスツォーワ ルジマトフ
2011年1月8日(土) 13:00 東京国際フォーラム(A) 白鳥の湖 シェスタコワ/プハチョフ
2011年1月9日(日) 13:00 東京国際フォーラム(A) 白鳥の湖 ペレン/ルジマトフ

前にNBAバレエ団のゲストでエフゲーニャがキトリを踊ったのを観ましたが、本当に可愛らしくておっとりとしながらも、しっかりと踊っていて素敵でした。ルジマトフとのパートナーシップがどんなものになるか、楽しみですね。


追記:レニングラード国立バレエ(正しくはサンクトペテルブルグ・オシポワ・バレエですが、レニングラード国立バレエのダンサーが多数出演している)の「ドン・キホーテ」のDVDが発売になるようです。2010年10月20日発売予定。

【収録情報】(HMVより)
・『ドン・キホーテ』全3幕
 キトリ:エレーナ・エフセーエワ(マリインスキー・バレエ)
 バジル:ミハイル・シヴァコフ(レニングラード国立バレエ)
 森の女王:イリーナ・コシェレワ(レニングラード国立バレエ)
 キトリの友人:エルビラ・ハビブリナ(レニングラード国立バレエ)
 オルガ・アクマトーワ(マリインスキー・バレエ)
 ドン・キホーテ:アナトーリ・カトゥルスキ
 サンチョ・パンサ:ラシッド・マーミン、他
 サンクトペテルブルク・オシポワ・バレエ

 原振付:マリウス・プティパ
 振付・演出:ナタリア・オシポワ
 音楽:レオン・ミンクス

 収録時期:2009年7月
 収録場所:ブリュッセル、シルク・ロイヤル劇場(ライヴ)


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2010/08/25

ABTの新作ラトマンスキー振付「くるみ割り人形」のキャスト Cast of ABT World Premiere of Alexei Ratmansky's "Nutcracker"

ABTのオフィシャルサイトに、アレクセイ・ラトマンスキーが振付ける新作「くるみ割り人形」のキャストが発表されていました。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=318

12月23日にブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック(BAM)で初演されるこの「くるみ」、初日のキャストはジリアン・マーフィとデヴィッド・ホールバーグとのことです。

その前に22日と23日マチネでプレビュー公演があり、22日はヴェロニカ・パルトとマルセロ・ゴメス、23日マチネは新ソリストのヒー・セオとコール・ドのアレクサンドル・ハムジ(大抜擢!)が主演します。

12月24日マチネ(11時)は加治屋百合子さんとダニール・シムキン、24日マチネ(15:30)はパロマ・ヘレーラとコリー・スターンズ、12月30日はシオマラ・レイエスとエルマン・コルネホが主演します。

キャストを改めて掲載すると、以下の通りです。大体1キャストが2回もしくは3回踊る計算になっていますね。個人的にはアレクサンダー・ハムジの主役デビューがとてもうれしいです。加治屋百合子さんがABTで全幕の主演をするのも初めてではないでしょうか?


FIRST WEEK
Wed. Eve.,12/22, 7 P.M.    THE NUTCRACKER (Preview #1) Part*,Gomes*
Thurs. Mat., 12/ 23, 2 P.M. THE NUTCRACKER (Preview #2) Seo*, Hammoudi*
Thurs. Eve., 12/23, 6:30 P.M. THE NUTCRACKER (World Premiere) Murphy*, Hallberg*
Fri., 12/24, 11:00 A.M.     THE NUTCRACKER Kajiya*, Simkin*
Fri., 12/24, 3:30 P.M.     THE NUTCRACKER Herrera*, Stearns*
Sat., 12/25           CHRISTMAS DAY 休演
Sun. Mat., 12/26, 1:00 P.M .  THE NUTCRACKER Kajiya, Simkin
Sun., 12/ 26, 5:30 P.M. THE NUTCRACKER Part, Gomes

SECOND WEEK
Mon. Eve., 12/27, 7 P.M.  THE NUTCRACKER Seo, Hammoudi
Tues. Eve., 12/28, 7 P.M.  THE NUTCRACKER Murphy, Hallberg
Wed. Mat., 12/29, 2 P.M.  THE NUTCRACKER Kajiya, Simkin
Wed. Eve.,12/ 29, 7 P.M.  THE NUTCRACKER Herrera, Stearns
Thurs. Mat.,12/30, 1 P.M.  THE NUTCRACKER Part, Gomes
Thurs. Eve., 12/30, 5:30 P.M.  THE NUTCRACKER Reyes,* Cornejo*
Fri. Mat., 12/ 31, 2 P.M.  THE NUTCRACKER Murphy, Hallberg
Sat., 1/ 1 NEW YEAR's DAY  休演
Sun. Mat.,1/ 2, 1:00 P.M.  THE NUTCRACKER Herrera, Stearns
Sun. Eve.,1/ 2, 5:30 P.M.  THE NUTCRACKER Reyes, Cornejo

チケットは今週の水曜日から発売するとのことです。


追記;今日(8月25日)の朝日新聞に加治屋百合子さんのインタビューが載っています。記事はasahi.comで読めます。
http://www.asahi.com/showbiz/stage/theater/TKY201008250265.html

ここでも、ABTの来年7月の来日公演は、「ドン・キホーテ」「ロミオとジュリエット」などを予定している、と書いてありますね。

「ぼくのエリ 200歳の少女」 Let the Right One In

ぼくのエリ 200歳の少女  Let the Right One In
監督 トーマス・アルフレッドソン
出演 カーレ・ヘーデブラント/リーナ・レアンデション/ペール・ラグナル

http://www.bokueli.com/
http://www.imdb.com/title/tt1139797/

ストックホルム郊外に住む12歳のオスカーは、金髪の美しい少年だが、学校では執拗ないじめを受けている。両親は離婚し母親と暮らす。陰鬱な日々に息が詰まり木にナイフを向けることでしか鬱憤を晴らすことができない。そんな彼が、アパートの隣の部屋に父親らしき中年男と引っ越してきた少女エリと知り合う。夜にしか姿を現さない青ざめた顔のエリは、いじめっ子たちに反撃することをオスカーに教え、二人の間には友情が芽生える。一方、町では吊るされて血を抜かれた死体が発見されたり、噛み付かれて殺される奇怪な事件が起きる。やがてオスカーは、エリの正体は12歳のまま200年以上も生きているヴァンパイアであることを知る…。


(ネタばれがあります)


今ちょうど「ミレニアム」シリーズを読んでいることもあって、高福祉国家として知られているスウェーデンのダークサイドに触れたところ。閉塞感が漂う郊外の町では、中高年たちが店に集まっては酒を飲み肩を寄せ合っている。昼間の時間が極端に短くて夜が長く、雪に閉ざされていて空気がひんやりとしているのが伝わってくる。そんな環境の中で、友達が一人もいなくて学校では3人組の同級生にひどくいじめられ、家でも母親とのコミュニケーションもほとんどないオスカーの日々は果てしなく孤独で痛ましい。たまに会う父親にも受け入れられない彼の孤独な魂にまるで寄り添うように、エリが現れる。二人が隣の部屋同士のやり取りのためにモールス信号を使うところがなんとも痛切である。

「私のこと好き?」「私のことを受け入れてくれる?」「私が女の子じゃなくても好きになってくれる?」と何度も繰り返し聞くエリ。夜の闇の中でしか現れず、がらんとして何もない暗い部屋に住んでいて、血に飢えると匂いを放ち、時には老女のように疲れた表情を見せるエリ。エキゾチックで美しいけど見るからに異様なエリを好きになって、「血の契りをしよう」とオスカーが手をナイフで切って血を流す。すると、エリは地面に落ちた血に獣のようにむしゃぶりつく。少しずつ、エリが吸血鬼であることに気がつくオスカーだけど、彼のエリを想う気持ちは幾多の試練も乗り越えていく。

彼女の正体に気がついて部屋に光を入れようとした男を、エリはオスカーの目の前で噛み殺す。血にまみれたエリとオスカーとのファーストキス。プールでオスカーを待ち伏せしたいじめっ子軍団を待ち受ける残酷な結末。いくつもの血の洗礼をくぐり抜けて、オスカーとエリとの絆は堅いものとなる。エリとともに生きていくことを決意したオスカーの、無邪気な微笑みが忘れがたい。まだ幼い彼の未来は、エリのために人を殺して血を集め続け、エリのために死んだあの中年男の姿なのか、それともエリと同じく12歳のままで永遠に年をとらないままヴァンパイアとなる運命なのか。町を出て行く電車の中で太陽の光を浴びながら、隠れているエリにモールス信号を送るオスカー。幸せそうな微笑を浮かべた輝くばかりの美しい少年。ラストシーンでのオスカーを見るにつけ、実は第3のハッピーエンドがあるんじゃないかとひそかな希望を抱いてしまう。

凄惨で荒っぽい殺しの場面の数々や、エリに噛み付かれた被害者が光を浴びて炎に包まれるシーン、血の涙を流す血まみれのエリ、そしていじめっ子たちの最期と衝撃的な絵柄が続出する。だが、全体としては静謐で抑制されたトーンになっているため、北欧の冷たく澄んだ空気の中での残酷な悲劇が一層美しい寓話として輝き、心の中に刻み付けられた。吸血鬼を必要以上に美化することなく、耽美に流れすぎないところも良い。オスカー役カーレ・ヘーデブラントの痛ましいほど無垢で繊細な美少年ぶり、エリを演じるリーナ・レアンデショの演技の達者さも特筆もの。


ところで、何度も繰り返される「私は女の子じゃないから」「私が女の子じゃなくても好きになってくれる?」というエリのせりふ。一瞬だけエリが陰部を見せるシーンがあるが、国内公開版ではぼかしによってそこに何があるのかを見ることはできない。実は本当にエリは女の子ではなく、性器を切り取られた男の子であるとのこと(原作「モールス」でもそのような設定になっているとのことである)。オスカーにとって、エリが女の子じゃなくても、ヴァンパイアであっても、そんなことは彼には踏み絵にすらならなかったいうことを示す象徴的なせりふであり、場面であったのだ。

だから邦題の「200歳の少女」は実は間違いなのである。原題の「Let the Right One In」とは、吸血鬼は招かれない限り人の部屋に入ってはいけないという法則のことを示しており、「血を吸って永遠を生きるヴァンパイアであり、しかも女の子ではない私を受け入れて」というエリの想いと、それに応えたオスカーのことも表している。なお、本作はハリウッドでのリメイクが決定しているとのこと。


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2010/08/24

ベルリン国立バレエ来日公演のキャスト Berlin Staatsoper Ballett Japan Tour Cast

NBSより、バレエの祭典会員向けに、鑑賞日お伺いのアンケートが来ていました。(9月7日必着)
それによると、キャストは以下の通りです。


『シンデレラ』 (マラーホフ振付・演出) 全2幕

2010年1月15日(土) 1:30pm、16日(日) 3:00pm
シンデレラ: ポリーナ・セミオノワ
ゲスト・ダンサー/王子: ミハイル・カニスキン
甘いモノ好きのバレリーナ: ウラジーミル・マラーホフ
アル中のバレリーナ: フェデリコ・スパリッタ
元プリマ/仙女: ベアトリス・クノップ

2010年1月15日(土) 6:00pm
シンデレラ: ヤーナ・サレンコ
ゲスト・ダンサー/王子: マリアン・ヴァルター
甘いモノ好きのバレリーナ: ライナー・クレンシュテッター
アル中のバレリーナ: フェデリコ・スパリッタ
元プリマ/仙女: エレーナ・プリス


『チャイコフスキー』 (エイフマン振付・演出) 全2幕

2010年1月20日(目) 6:30pm、22日(土) 3:00pm
チャイコフスキー: ウラジーミル・マラーホフ
分身/ドロッセルマイヤー: ヴィスラウ・デュデク
フォン・メック夫人: ベアトリス・クノップ
チャイコフスキーの妻: ナディア・サイダコワ
王子(若者/ジョーカー): ディヌ・タマズラカル
少女: ヤーナ・サレンコ

2010年1月23日(日) 3:00pm
チャイコフスキー: ウラジーミル・マラーホフ
分身/ドロッセルマイヤー: イブラヒム・ウェーナル
フォン・メック夫人: エリサ・カリッロ・カブレラ
チャイコフスキーの妻: ナディア・サイダコワ
王子(若者/ジョーカー): マリアン・ヴァルター
少女: セブネム・ギュルゼッカー


<マラーホフ・ガラ>

2010年1月18日(火) 6:30pm
ベルリン国立バレエ団ダンサー総出演

予定される主な来日メンバー
<プリンシパル>
ウラジーミル・マラーホフ(芸術監督)、ベアトリス・クノップ、中村祥子、ナディア・サイダコワ、ポリーナ・セミオノワ、ヴィスラウ・デュデク、ミハイル・カニスキン
<ソリスト>
エリサ・カリーロ・カブレラ、ゼブネム・ギュルゼッカー、エリーナ・プリス、ミカエル・バンツァフ、ライナー・クレンシュテッター、イブラヒム・ウェーナル、ディヌ・タマズラカル、マリアン・ワルター

NBSのサイトの更新はまだ無しです。
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/2011-1.html

なお、来日メンバー(8月20日現在)には、中村祥子さんの名前も入っていましたが、K-Balletでのお知らせを見る限りでは彼女の来日は難しそうですね。


追記:NBSオフィシャルにも予定キャストが掲載されました。
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/2011-2.html
こちらからは中村祥子さんの写真が外れています。

8/25追記
びわ湖ホールのサイトに、「シンデレラ」のキャストが発表されていました。

http://www.biwako-hall.or.jp/topics/detail.php?id=90

シンデレラ:ヤーナ・サレンコ
ゲスト・ダンサー/王子:ライナー・クレンシュテッター
甘いもの好きのバレリーナ:ウラジーミル・マラーホフ
アル中のバレリーナ:フェデリコ・スパリッタ
元プリマ/仙女:エレーナ・プリス

※この予定キャストは2010年8月25日現在の予定です。

2010/08/23

K-Ballet, 中村祥子さんの産休と康村和恵さんゲストに、樋口ゆりさん退団

K-Ballet Companyのダンサーブログで、いくつかのダンサーの動静のお知らせがありました。

樋口ゆりさんが退団されます。
http://www.k-ballet.co.jp/blog/013/01/

康村和恵さんが、第一線を退きゲストダンサーとなります。
http://www.k-ballet.co.jp/blog/009first_principal/05/

中村祥子さん(SHOKO)が、産休に入られるとのことです。復帰の時期は未定
http://www.k-ballet.co.jp/blog/011/020shoko/

お知らせページにも休団について載っています。
http://www.k-ballet.co.jp/topics/performance.html#100823

実力派として活躍しK-Balletには欠かせなかった樋口さんの退団は残念です。また、「ロミオとジュリエット」で素晴らしいジュリエットを見せてくれていた康村さんが第一線を退くことは、カンパニーにとっても大きな損失でしょう。

中村祥子さんが産休にはいられるのは、とてもおめでたいことですが、来年1月のベルリン国立バレエの来日公演にも出演されないということになりますね。感想を書けていないのですが、「ローザンヌ・ガラ」で観たとき、祥子さんは心なしかふっくらされていましたね。


追記:この件で思い出したのですが、NBAバレエ団に所属していた秋元康臣さんが、K-Balletに移籍したようですね。まだK-Balletのサイトには発表がないのですが、クララの最新号の目次で、「きれいを作るバレエごはん Kバレエカンパニーの秋元康臣さんと、お母さまが登場!」と出ています。まだNBAバレエ団のサイトに秋元さんのプロフィールが掲載されているのですが。

8/20 東京バレエ団「ドン・キホーテ」 Tokyo Ballet "Don Quixote" with Daniil Simkin

東京バレエ団
「ドン・キホーテ」(全2幕プロローグ付5場)

去年の世界バレエフェスティバル全幕プロ「ドン・キホーテ」での清清しく輝かしいダニール・しムキンのバジルを観ていたものの、同じ東京バレエ団での「ドン・キホーテ」だし一年でそんなに変化はないよね、って思ってしまって、実は直前までは行くかどうか迷っていてチケットも取っていなかった。東京バレエ団の「ドン・キホーテ」を今まで何回も観過ぎていてちょっと飽きていたということもあった。でも、やっぱりちょっとスカッとする舞台が観たいなと思って、なんとかチケットを入手。ところが平日公演しか手に入らなくて、仕事で6時半の開演には間に合わず。本当にちょっとの差で冒頭のドン・キホーテたちのシークエンスを見逃しちゃって、それからこの版での長い一幕の間ずっと立って観る羽目に。このワシリエフ版は、夢の場面までもが1幕に含まれていて、休憩まで80分もあるのだ!それでも、この舞台を見ることができて良かった、って心から思った。

ダニール・シムキンは、舞台上では天使のように輝いていて、ふんわりとすべてが軽やかだ。方向転換しながらの開脚ジャンプやグラン・テカール、540などの超絶技巧を挿入していても、それはごく自然に簡単にやってのけられており、クラシックのエレガンスを保っている。ピルエットの回転数は多いんだけど、軸がしっかりしているし余裕を持ってスピードを緩め、ぴたっとフィニッシュさせているので「いっぱい回っています~」とはならなくて美しい。跳躍は猫のようにしなやかで音がしないし、空中で浮かんでいるかのようなクペ・ジュテ・アン・トゥールナンは圧巻だった。何よりも彼の踊りを特徴付けているのが背中の驚異的な柔らかさで、1幕の、キトリの友人2人とのパ・ド・トロワでのランベルセの角度は、人間の身体とは思えないほどよく曲がっていて目を疑うほどだ。

ダニールの去年の世界バレエフェスティバルのときとの違いは、ピルエットの回転数などを抑え目にしていたり、これ見よがしにテクニックを見せ付けるようなところが減っているところ。彼が、超絶技巧派ではないパートナーとのバランスを考え、パートナーを立てることを意識しているというのがわかって好感度がさらに増した。去年共演したマリア・コチェトコワのようなハイ・テクニックなバレリーナとの火花散る舞台もまた観たいとも思うが。

華奢でやんちゃな少年そのもののダニールと、さすがにダニールと並ぶとしっかりもののお姉さんって感じはするけれども可愛らしいキトリの小出さん。二人の身長のバランスも良く、とっても微笑ましいカップルで見ていて思わず目尻が下がり、頬が緩む。パートナーシップでは、フィッシュ・ダイブや酒場のシーンなどでサポート系で苦労しているところも見られたけれども、ゲスト公演なのでいたし方ないところだろう。そんなことは気にならないほど、このペアの醸し出す幸福感は圧倒的だった。

出産後全幕の主役としては復帰公演となった小出さん。少しだけ踊りが重いところはあったものの、ブランクを感じさせない好調ぶり。1幕のカスタネットのソロも思い切り良く歯切れ良く踊っていたし、グランフェッテもオールシングルで、軸がしっかりとしていてきっちりと危なげなく決めていた。小出さんが素晴らしいバレリーナだなと思ったのは、夢の場面のドゥルシネア姫のシーン。夢の中のお姫様にふさわしく、鷹揚で柔らかく優雅で美しく、正統派のバレエを見ることの幸せを感じさせてくれた。

夢のシーンといえば、キューピッド役の高村さんが愛らしく、軽やかでお茶目でキューピッドそのもので最高だった。彼女以上のキューピッドは少なくとも日本にはいないだろうな、って思ってしまうほど。

キトリの友達役の西村さん、佐伯さんもすごく良かった。西村さんは3幕のヴァリエーションでちょっとだけ安定を欠いたけれども、上半身の動きが本当に美しくて惚れ惚れする。佐伯さんも正統派クラシックバレエの美しさを見せてくれた。一方キャラクターダンス系ではなんといっても吉岡さんのジプシー娘が激しくもすさまじくて、何かに取り付かれたような狂気すら感じさせる情念の踊りは鮮烈だった。

東京バレエ団は女性陣がこのようにとても優れているのに、男性陣がソリスト、群舞含め振るわないのがなんとも歯がゆいところである。男性の踊りで迫力を感じたのはジプシーの踊りくらいであったのが残念。キャラクター系は、サンチョ・パンサ役の高橋さんが身体能力の高さを感じさせながらもユーモラスだったし、平野さんのガマーシュのおとぼけぶりが楽しかった。フィナーレでのサンチョ・パンサとガマーシュの踊り対決は見ていてめちゃめちゃ楽しい。ドン・キホーテの森川さんやロレンツォの永田さんも良かった。エスパーダや闘牛士たちがもう少しピリッとした踊りを見せてくれれば、全体としても相当ハイレベルの舞台だっただろうに惜しい。

ダニール・シムキンが彗星のように現れあっという間にスターになったのが良くわかる舞台であった。次回日本で彼の全幕を観る時には、「ドン・キホーテ」以外の作品で観たい。「真夏の夜の夢」のパックはぜひ観てみたい。来年のABTの来日公演演目が「ドン・キホーテ」「ロミオとジュリエット」とガラ公演とのことであるが、「ロミオとジュリエット」のマキューシオで観られるといいな。

 演出・振付/ウラジーミル・ワシリーエフ
 音楽/ルートヴィッヒ・ミンクス

 <主な配役>
 キトリ/ドゥルシネア姫:小出領子
         バジル:ダニール・シムキン
     ドン・キホーテ:森川茉央
    サンチョ・パンサ:高橋竜太
       ガマーシュ:平野玲
       メルセデス:奈良春夏
       エスパーダ:後藤晴雄
       ロレンツォ:永田雄大

 【第1幕】
   2人のキトリの友人:西村真由美、佐伯知香
         闘牛士:松下裕次、梅澤紘貴、柄本弾、安田峻介、柄本武尊、岡崎隼也
    若いジプシーの娘:吉岡美佳
    ドリアードの女王:田中結子
    3人のドリアード:吉川留衣、渡辺理恵、川島麻実子
    4人のドリアード:森志織、村上美香、岸本夏未、阪井麻美
      キューピッド:高村順子

【第2幕】
   ヴァリエーション1:佐伯知香
   ヴァリエーション2:西村真由美

 指揮:ヴァレリー・オブジャニコフ
 演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
 協力:チャイコフスキー記念 東京バレエ学校

会場で販売されていたダニール・シムキンの写真満載の本。パンフレットとどっちを買おうか迷って、結局値段があまり変わらなかったのでこの本を購入。子供時代の写真などもたくさんあるしインタビューも面白い。若いのに考え方はしっかりしているのね。

ダニール・シムキン 奇跡のバレエ・ダンサーダニール・シムキン 奇跡のバレエ・ダンサー
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2010/08/22

ブルノンヴィル生誕205年でデンマークのGoogleのロゴが「ラ・シルフィード」

2010年8月21日はデンマークの振付家オーギュスト・ブルノンヴィルの205歳の誕生日です。ブルノンヴィルは1805年8月21日生まれというわけですね。

そういうわけで、本日のデンマークのGoogleのトップページのロゴ(doodle)は、「ラ・シルフィード」の冒頭のシーンを使っています。バレエがテーマになったロゴは、チャイコフスキーの誕生日のときの「白鳥の湖」以来かしら。ジェームズのつま先がめっちゃ伸びていて綺麗ですね。

http://www.google.dk

Bournonville10hp


2010/08/19

ダニール・シムキンが8/21(土)NHK海外ネットワークに登場

Twitterで教えていただきましたが、東京バレエ団の「ドン・キホーテ」にゲスト出演するために来日中のダニール・シムキンが8/21(土)18:10~NHK総合テレビのNHK海外ネットワークに登場するとのことです。

http://www.nhk.or.jp/worldnet/

「ワールドトレンド」のコーナーで、「バレエ界のホープ来日」とあって上記サイトで写真入で紹介されています。

「ドン・キホーテ」のチケットも完売のようで、彼は本当に大旋風を巻き起こしていますね~。

ナタリー・ポートマン主演の新作映画「Black Swan」の予告編

かねてから話題となっている映画「Black Swan」。バレエ界を舞台としたスリラーで、主演はナタリー・ポートマン。監督は「レクイエム・フォー・ア・ドリーム」や「レスラー」のダレン・アロノフスキー。9月1日のヴェネチア国際映画祭のオープニングを飾る作品にも選ばれたというわけで、期待が膨らみます。全米公開は12月1日の予定。

この作品の予告編が製作会社FOX Searchlightのサイトにアップされていました。とてもスリリングでセクシーな雰囲気があります。NYで撮影されたとのことで、メトロポリタン・オペラハウスがちょっと映っていますね。

ナタリー・ポートマンは12歳までバレエを学んでいたとのことですが、ダンスシーンの吹き替えはABTのサラ・レーンが行っているそうです。ライバルのバレリーナを演じるミラ・クニスの吹き替えは同じくABTのマリア・リチェットとのこと。また、この作品で指導や振付を担当したベンジャミン・ミルピエ(NYCBのプリンシパル)とナタリー・ポートマンとの間にロマンスが生まれたことでも、話題になっているようです。

出演は他に、引退間近のバレリーナ役でウィノナ・ライダー、芸術監督役にはヴァンサン・カッセルが出演しているとのことです。ヴェネチア映画祭でのプレミア後の第一報が待ち遠しいですね。

The Ballet Bagのこのエントリで、今までにわかっている情報のまとめがあります。

2010/08/16

ハンブルク・バレエ「マタイ受難曲」他バレエ関連DVD発売予定

吉田都さんとスティーヴン・マックレーが主演したロイヤル・バレエの「くるみ割り人形」のDVDが発売されることはすでにお知らせしてありますが、OpusArteのサイトだけでなく、Amazon.co.ukからも予約が可能であると、いつもDVD情報では大変お世話になっているSide B-alletのゆう様に教えていただきました。

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併せて、同じくAmazon.co.ukからはジョン・ノイマイヤー振付、ハンブルク・バレエの「マタイ受難曲」のDVDが発売になるという超貴重な情報もSide B-allet様からいただきました。Amazonのサイトで拡大画像で見られるジャケットの裏面によると、2005年にバーデンバーデンの祝祭劇場で収録された映像だそうで、キリストを演じるのはノイマイヤー自身。3枚組で211分、リージョンALLのNTSCです。他に出演はシルヴィア・アッツオーニ、エレーヌ・ブーシェ、ジョエル・ブーローニュ、ヘザー・ユルゲンセン、アンナ・ポリカルポヴァ、ティアゴ・ボァディン、服部有吉、カーステン・ユング、ロイド・リギンス、アレクサンドル・リアブコと、収録当時の主要なダンサーはほぼ全員出演しています。

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上記2枚とも、8月31日に発売とのことなので、Amazon.co.ukに予約しました。ポンドのレートが安くなっていて今なら結構お得なんですよね。しかも「くるみ割り人形」については、DVDよりもBlu-rayの方が値段が安いのです。私はまだBlu-rayは買っていないんですが。

なお、まだAmazonには出ていなくて、OpusArteのサイトに出ているだけなのですが、10月1日には、ロイヤル・バレエのマクミラン・トリプルビル(「エリート・シンコペーション」「ジューダス・ツリー(ユダの木)」「コンチェルト」)が発売されます。こちらもSide B-allet様に詳しい情報が載っていますので、そちらをぜひご覧ください。OpusArteでの詳細は、DVDBlu-rayそれぞれのリンク先にて。


******
さて、日本国内発売のDVDもいくつかあって、まずは、昨日紹介した映画「小さな村の小さなダンサー」にも登場するグレアム・マーフィ振付の「白鳥の湖」(オーストラリア・バレエ)が8月18日に発売されます。出演はオデットに(やはり「小さな村の小さなダンサー」に出演している)マドレーヌ・イーストー、そして王子にロバート・カラン、ロットバルト男爵夫人にダニエル・ロウです。10月にはこのプロダクションによるオーストラリア・バレエの来日公演があるので、予習に最適ですよね。前回の来日でこの作品を観ましたが、今までの「白鳥の湖」のイメージを一新する、現代的で斬新、美しい作品です。これも予約済み。

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9月22日には、ロイヤル・バレエの「ペンギン・カフェ」と「火の鳥/結婚」の国内版が発売されます。「ペンギン・カフェ」はデヴィッド・ビントレーの振付作品で、10月に新国立劇場で上演されますね。

「火の鳥/結婚」は輸入盤は今でも買うことができるのですが、フォーキン振付の「火の鳥」はリヤーン・ベンジャミンとジョナサン・コープ主演、ニジンスカ振付の「結婚」はゼナイダ・ヤノウスキーとデヴィッド・ピッカリング主演です。考えてみれば「火の鳥」も10月の新国立劇場で上演されるのでした。「結婚」は最近マリインスキー・バレエで収録されてテレビ放映されたけれども、「Stravinsky's Ballet Russes」のDVDにはなぜか収録されませんでした。したがって、ニジンスカ振付による傑作のDVD映像はこちらのロイヤル・バレエのものしかなくて、とても貴重です。花嫁役のゼナイダ・ヤノウスキーがとても美しいんですよね。

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10月27日には、当サイトでも輸入盤を紹介したオランダ国立バレエの「ジゼル」の国内盤が発売されます。この「ジゼル」は主演のアンナ・ツィガンコワの繊細な役作りもさることながら、プロダクション・デザインの幻想的な美しさには思わず目を瞠らされる素晴らしい1枚なので、お勧めです。

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「小さな村の小さなダンサー」 MAO'S LAST DANCER

1961年に山東省の貧しい村で7人兄弟の6番目の息子として生まれたリー・ツンシンは、11歳のときに国中の子供たちの中から選ばれて親元を離れ、北京の舞踊学校に入学する。当時毛沢東の文化政策による英才教育が進められており、毛沢東夫人の江青が権勢を振るっていた。北京を訪れたヒューストン・バレエのベン・スティーヴンソンの目に留まったツンシンは、文化交流のためアメリカでのバレエ研修に参加することになる。初めて海外の自由な世界に触れたツンシンは、やがて、ある重大な決意をする…。国際的に活躍したバレエ・ダンサー、リー・ツンシンの実話を映画化。

http://chiisanadancer.com/index.html

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©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

昨年の9月に原作「毛沢東のバレエダンサー」(感想はこちら)を読んで大感動した。バーミンガム・ロイヤル・バレエのツァオ・チー主演で映画化されると聞いてから、この映画を観るのをとても楽しみにしていたところ、公開前に見せて頂く幸運にあずかった。(前売り券も買ったけど!)

劇場公開は8月28日からBunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座ほかにて。


初めてアメリカの土を踏んだツンシンが新しい世界との出会いに驚き戸惑いながらもわくわくする様子と、故郷での少年時代からの道程をたどっていくところを行き来する構成がとても巧みだ。当時の最先端のアメリカの消費社会と、貧しい寒村での親子の暖かい触れ合いを対比させることによって、それぞれの良さを際立たせることに成功している。特にツンシンを北京の舞踊学校へ送り出すときの、父母が彼に向ける愛情には心打たれる。母親役を演じるジョアン・チェンが優しくも強い母親像を見事に作り上げていることが、後半のツンシンの激動の人生と感動のクライマックスをさらに盛り上げることに結びついている。バレエ学校の教師とのエピソードも、厳しい訓練の日々の中でふっと心温まるものだ。

Photo
©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

なんといってもこの映画は、ツンシン役に一流のバレエダンサーであるツァオ・チーを起用し、彼の青年時代を演じるのもオーストラリア・バレエのグオ・チャンウ、さらにオーストラリア・バレエのマドレーヌ・イーストー(10月のバレエ団来日公演にも主演予定)がツンシンのパートナー役を演じるなどオーストラリア・バレエの全面協力を得てバレエシーンを本物そのものとして再現しているのが素晴らしい。江青による芸術への思想統制を表現するのにバレエを用いたり、ツンシンとエリザベスがうまく行かなくなってしまうシーンには、グレアム・マーフィ版の「白鳥の湖」のクライマックスを挿入してダンスに心境を代弁させている。

何より、一つ一つのダンスシーンに見ごたえがある。青年時代に江青の前で踊った「ジゼル」のペザントから、研修中に頭角を現すきっかけとなった「ドン・キホーテ」でのツァオ・チーの超絶技巧、そしてマーフィ版の現代的な「白鳥の湖」(あのダイアナ妃の悲劇をバレエ化した話題のプロダクション!)。さらにクライマックスではやはりグレアム・マーフィが振付けた「春の祭典」。ここでは圧倒的なスペクタクルを見せてくれて、バレエってすごい芸術だってことを、バレエを良く知らない人にも教えてくれている。華やかな舞台に立つことができるまでの、バレエ学校での厳しい猛特訓の様子も非常にリアルだ。(「ドン・キホーテ」のグラン・パ・ド・ドゥでの跳躍でスローモーションを使っているのは、ダンサーの実際の踊りを見たいと思う立場からはちょっと残念、と思ってしまった。それ以外のダンスシーンについては編集も撮影も踊りそのものの魅力を良く伝えていると思う)

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©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

家族のことを常に想いながらもひとつのことに打ち込んできた青年。彼が新しい世界からいろいろなことを貪欲に吸収し、初めて知った自由の眩しさに目が眩みつつも、芸術家として自身が求めていたことこそが自由である気がついて、葛藤しながらも大きな決断をする。その決断には大きな代償があり、傷ついた人間もいたことを描いている。そこに人間の真実というものがあり、実話であるが故の重みを感じさせてくれる。ツンシン本人、彼の家族、エリザベスやベンなど周囲の人々、それぞれの苦悩があったからこそ、クライマックスでは思わず涙がこぼれてしまう感動がより大きなものになっていた。小さな村から旅立った小さなダンサーは、さまざまな障害を乗り越えて、大きく世界へと羽ばたいていったのだ。

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©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

前回のバーミンガム・ロイヤル・バレエの来日公演でも「美女と野獣」に主演したトップダンサーであるツァオ・チー。彼の演技が巧みかつ自然で、中国から初めての海外にやってきた朴訥な青年を見事に演じていることに驚かされた。「センターステージ」に主演していたアマンダ・シュルが恋人エリザベス役で久しぶりにスクリーンに登場しているのも嬉しい。また、「ツイン・ピークス」「ブルー・ベルベット」のカイル・マクラクランが弁護士役でクライマックスのひとつを担っていることも、作品に大きな説得力を持たせてくれる。

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©Last Dancer Pty Ltd and Screen Australia

バレエ愛好家にはもちろんのこと、バレエのことは知らない人にとっても、この作品の持つドラマ性とダンスの躍動感に感動するに違いない。原作のエッセンスを見事にすくい上げているといえる。お勧め。

スタッフ
監督: ブルース・ベレスフォード
製作: ジェーン・スコット
原作: リー・ツンシン
脚本: ジャン・サーディ
撮影監督: ピーター・ジェームズ
プロダクションデザイン: ハーバート・ピンター
編集: マーク・ワーナー
衣装デザイン: アンナ・ボーゲーシ
音楽: クリストファー・ゴードン
ダンス場面振り付け: グレアム・マーフィー
英題: MAO'S LAST DANCER

キャスト
ツァオ・チー(リー・ツンシン)
ジョアン・チェン(ツンシンの母)
ブルース・グリーンウッド(ベン・スティーヴンソン)
アマンダ・シュル(エリザベス)
カイル・マクラクラン(フォスター)
グオ・チャンウ(青年時代のツンシン)
ホアン・ウェンビン(少年時代のツンシン)
ジャック・トンプソン(判事ウッドロウ)
マドレーヌ・イーストー(ローリー)


ツァオ・チーのコメント動画も見られる、フィガロ・オンラインのインタビュー記事
http://news.madamefigaro.jp/culture/post-460.html

ChacottのDance Cubeでのツァオ・チーのインタビュー
http://www.chacott-jp.com/magazine/interview-report/interview/interview1008b.html

朝日新聞には、リー・ツンシン本人のインタビューも
http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY201008090096.html

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2010/08/15

8/14 ニコラ・ル=リッシュの「ボレロ」 Bejart's "Bolero" by Nicolas Le Riche

当初この公演は観に行く予定ではなかったのだけど、急に時間が空いて、「ボレロ」は個人的に2階席前方で見るのが一番良いと思っていているのだが、その席のチケットを手に入れることができたので、行くことにした。ニコラ・ル=リッシュのボレロを観たかったので。

「ボレロ」は最初は手だけに照明が当たっていて暗闇に浮かび上がる演出なのだが、他でも指摘されていた方がいたけれども光の絞り方が甘いのか、周囲が明るすぎるのか、手以外の部分が見えてしまっていたのが少々残念だった。

ニコラのメロディは大きい。身長もそうだけど上半身の横幅が広く、腕がとても長くて手が大きい。もちろん動きも非常に大きいので円卓からはみ出るのではないかと思えるほどの迫力がある。最初はややクールで、強靭さがありながら、いい意味で力が抜けていて余裕たっぷりに踊っている。リズムの4人が立ち上がってくるところから次第に躍動し熱を帯びてくるけれども、それでもまだまだ余裕。ルルヴェも高いし、アティチュードでプロムナードするときのポーズが決まっていてかっこいい。

ニコラは終盤になってようやく力が入ってくるが、左右に2回ずつ大きく跳ぶときの跳躍が高くて空中での形が美しく保たれていた。台の上でスプリッツをしながら肘をついて正面を見る表情は心なしか悪戯っぽい。ニコラのメロディはきわめて人間的で、何かが憑依したり神がかり的になったりすることはなく、自己陶酔もまったく感じさせない。ただ地に足をつけて、力いっぱい、周囲を鼓舞するのみ。彼のメロディは力強く雄雄しく、人々のリーダー的な存在ではあるけれども、一方で兄貴的とも言えるような親しみやすさがあるところが魅力的だった。終盤には彼の肌の色が赤く染まっていき、一気にエネルギーレベルが最高潮に達したところで、幕。

ふと思った。ニコラが「スパルタクス」を踊るところを観てみたい、と。

2010/08/13

吉田都さんの「スーパー・バレエ・レッスン」9月より再放送

NHKクラシック トピックスのサイトに掲載されていた情報ですが、

http://www.nhk.or.jp/classic-blog/100/57079.html

「スーパー・バレエ・レッスン ~ロイヤル・バレエの精華 吉田都~」が9月24日(金)から全14本、教育テレビでアンコール放送されるとのことです。

<本放送>は(金)22:25-22:50、<再放送>は(金)5:35-6:00 なので、これなら録画しそびれることもありませんね。(詳しい放送日時は、リンク先をご覧ください)

また、気になるのが、
「尚、来年の1月からは、新しいシリーズも予定していますので、こちらもお楽しみに!」
との記述があること。
「スーパーバレエレッスン」の新しいシリーズを放送するってことで、誰が指導者で生徒役は誰なのか、楽しみですね。

それから、マニュエル・ルグリがパリ・オペラ座の生徒に指導を行った最初の「スーパーバレエレッスン」のシリーズの再放送もぜひお願いしたいところです。

****
同じNHKクラシック トピックスにあった別の記事にも思わず注目してしまいました。

世界初!バイロイト音楽祭 2010 TV生放送決定!!
http://www.nhk.or.jp/classic-blog/100/52761.html

バイロイト音楽祭2010から 楽劇「ワルキューレ」(ワーグナー)
・8月21日(土)午後10:50~午前5:10【BShi】
・8月30日(月)午前 0:40~午前5:00【BS2】

NHKってやっぱり凄いですね。

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2010/08/12

2011年のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートはジョゼ・マルティネスが振付

ダンソマニのフランス語版で、ジョゼ・マルティネスの公式サイトがリニューアルされたとのこと、そしてその中で、2011年のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートはジョゼ・マルティネスが振付を行うとのニュースが載っていました。

ジョゼ・マルティネスのサイトでの、ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートについてのお知らせ

http://www.josecarlosmartinez.com/1blog/projets/concert-du-nouvel-an-2011-vienne/

Concert du nouvel an 2010
Vienna Philharmonic Orchestra – Musikverein – 1 janvier 2011

Chef d’orchestre: Franz Welser-Möst
Chorégraphie: José Martinez
Costumes: Johan Engels
Solistes et Corps de ballet du «Wiener Staatsballett»
Enfants de l’école du «Wiener Staatsballett»
TV Director: Brian Large

リニューアルされたジョゼ・マルティネスの公式サイトのデザインはかっこよく、また情報についてはブログ形式となっているので、情報収集もしやすくなって便利になりました。

彼の今後の予定についてのブログ
http://www.josecarlosmartinez.com/category/1blog/projets/

2010/08/11

7/30 & 31エトワール・ガラ2010 Bプロ  Etoile Gala Program B

気がつけばエトワールガラが終わって一週間。その間、夏ばてなのか体調がすぐれなくてなかなか感想も書けませんでした。

「コッペリア」第2幕より Coppélia
振付:J.ギヨーム・バール、音楽:L.ドリーブ Jean-Guillaume Bart (1997)
 ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト Gilbert/Hoffalt

純白の衣装が眩しい若い二人、踊りのほうもキラキラ感いっぱいでトップバッターにふさわしい華やかさ。ジャン=ギョーム・バールが振付けた「コッペリア」の日本初演ということだけど、装飾的なパを入れたり、足を入れ替えてのフェッテなどでテクニック的に難しそうになっているくらいしか違いがわからなかった。軽やかで脚先がすっきりと美しいジョシュア。ドロテは初日ではフェッテで踵がついてしまったところがあったけどすばやく立ち直るところが、根性を感じさせて逆に好印象。


「ロミオとジュリエット」よりバルコニーのシーン Roméo et Juliette
振付:K.マクミラン、音楽:S.プロコフィエフ Kenneth MacMillan (1965)
 エフゲーニヤ・オブラスツォーワ、マチュー・ガニオ Obraztsova/Ganio

甘くロミオにぴったりの容姿のマチュー、小柄で愛らしいエフゲーニャと外見的にはロミオとジュリエットそのもののふたり。二人が作り上げる恋の高揚感は客席にも伝わってきて、幸福感に包まれる。マチューはしなやかな肉体の作り上げるラインは美しいのだけど、ポーズの決めが甘く、またヴァリエーションを本来のマクミランのものより省略していたり、膝をついてのサポートが不安定になったりといった瑕疵があったけど、役を生きるという意味ではしっかりとロミオが息づいていると感じられた。
一方のエフゲーニャは、もう可愛くて可愛くて。でも女優バレリーナとしてもすでに名高い彼女らしく、ジュリエットがそこにいて、呼吸をしていて恋をしているってことが感じられた。彼女のしなやかで繊細な上半身の動きはオペラ座から参加しているダンサーとはやはり違う。1ヶ月前に4回もロイヤル・バレエでマクミラン版の「ロミオとジュリエット」を観てしまった後だと、彼女の演技はマクミラン版ではなくラヴロフスキー版の表現なんだな、とも感じられる。だけど、そんなことは、このマチュー&エフゲーニャという組み合わせでの「ロミオとジュリエット」バルコニーシーンを見られたことの幸せと比較するとどうでも良くなってしまう。マクミラン財団のしっかりとした振り付け指導をしてもらった上での、この二人の「ロミオとジュリエット」の全幕が観たいって思う。


「フラジル・ヴェッセルFragile vessels」 Fragile vessels
振付:J.ブベニチェク、音楽:S.ラフマニノフ Jiri Bubenicek (2001)
 シルヴィア・アッツォーニ、イリ・ブベニチェク、アレクサンドル・リアブコ Azzoni/Riabko/Bubenicek

ラフマニノフのピアノ協奏曲2番の第2楽章が流れる中、イリ・ブベニチェクとアレクサンドル・リアブコの二人に高くリフトされるシルヴィア・アッツォーニ、この三人が構造物というかまるで建築であるかのような斬新な造形として屹立している。二人に巻きつくように降りていくシルヴィア。3人によるパ・ド・トロワは「三位一体」という言葉を思わせるほど完璧なバランスが成り立っていくところもあるが、シルヴィアが地上に降りた後では2対1というアンバランスになったりするなど、題名どおり「フラジャイル(壊れやすい)」危うさも感じさせる。中でも、シルヴィアがリアブコと踊っているところに割り込んでいってシルヴィアを連れ去ってしまうイリの暴力的なまでの強引さを感じさせて衝撃的でもあった。独創性に富んでいて、アブストラクトな中にも想像力を刺激し、物語性も感じさせるこの作品、イリの振付家としての才能は本物だと思う。


「プルースト~失われた時を求めて」より囚われの女 La prisonnière (extrait de Proust ou les intermittences du coeur )
振付:R.プティ Roland Petit (1974)
音楽:C.サン=サーンス
 エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ Abbagnato/Pech

「プルースト」のDVDでエルヴェ・モローが踊った美しいソロが入るかな、と思ったけどそれがなかったのはちょっと残念。だが、愛する女性の夢の仲間でも支配したいというダークな感情、狂気すら感じさせる支配欲を感じさせたバンジャマンの演技は良かった。特に時折キラリと光る瞳の中に宿る暗い熱情には、ぞくりとさせられた。眠ったまま夢見心地で踊り続けるエレオノラは、ドリーミーな中にも、男の支配欲から自由になりたいという苦悩を覗かせる表現に哀しみを感じさせた。いつも思うんだけど、ラスト、横たわる女の下に薄い幕がはらりと落ちるときのドレープが絶妙で思わず息を呑んでしまう。


「ディーヴァ」 Diva
振付:C.カールソン、音楽:U.ジョルダーノ Carolyn Carlson (1998)
 マリ=アニエス・ジロ Gillot

マリア・カラスの「アンドレア・シェニエ」のアリアが流れる中、帽子を目深にかぶり、黒いゆったりとしたドレスにショールをかけてポーズをした姿で現れるマリ=アニエス。手袋を脱ぎ、ショールを外すと、彼女の広い肩がむき出しになって、ここがマリ=アニエスだよな、って思う。露わになった背中の表現力、堂々とした存在感はディーヴァそのもので、粋でカッコよいけど女らしい。


「薔薇の精」 Le spectre de la rose
振付:M.フォーキン、音楽:C.M.フォン・ウェーバー Mikhail Fokine (1911)
 エフゲーニヤ・オブラスツォーワ、マチアス・エイマン Obraztsova/Heymann

エフゲーニャの少女役が、これがまた反則でしょうって思うくらいフリフリの衣装が似合っていて、夢見る少女そのものの、砂糖菓子のような愛らしさ。マチアスの薔薇の精を観るのはテレビで放映されたオペラ座のバレエ・リュス・プロを入れれば3回目。前2回に比べればずっと薫り高く、しなやか。まだ健康的なところが勝っているけれども、ほのかな妖艶さも出てきた。繰り広げられる跳躍は驚くばかりに高く、翼が生えているかのよう。これでもう少し"人間じゃなくて妖精"的なところが出てきたら完璧だ。マチアスはただの凄い若手ではなくて、ひょっとしたら後世まで語り継がれるダンサーになるのかもしれないと思わせるパフォーマンスだった。


「瀕死の白鳥」(日本初演)
振付:D.ウォルシュ、音楽:C.サン=サーンス
 マリ=アニエス・ジロ

ステージの上には灰皿の載った小さなテーブル。街の喧騒のようなざわめきの効果音が続き、客席にスポットライトが上がったかと思ったら、そのスポットライトにはマリ=アニエス・ジロが。切り裂いたように大きく背中が開いた白いドレスにハイヒール、盛装した姿。舞台に上がった彼女はグラスを片手に、もう片方の手には煙草。パーティの会場の中で、誰かを探しているかのようだけど、その人は見つからない。美しいけど孤独な姿。「瀕死の白鳥」のメロディが流れ始め、背中を向けた彼女は煙草とグラスをテーブルに置き、左手の動きと背中だけで死を迎えようとしている白鳥の姿を表現する。たった一つの動きだけで、それが白鳥だとわかるところが凄い。ドレスのスリットから脚を覗かせて、ほんの一瞬だけ(このときだけ白鳥の正体を現したというべきか)激しく動いたかと思うと、音楽の終わりとともに静かに会場を立ち去る。「ディーヴァ」もそうだけど、長身で凛とした美しさと堂々とした存在感を持つマリ=アニエスだからこそなしえた表現ではあるけれども、この作品の発想は面白い。「瀕死の白鳥」は数え切れないほど多くの振り付けが作られていると思うけど、この作品と似ているものはおそらくないだろう。踊りといえる部分が一瞬しかないのに、その一瞬だけですべてを語ることができる秀逸な表現だった。


「牧神の午後」よりプレリュード(世界初演) Prélude à l’après-midi d’un faune
振付:D.ボンバナ、音楽:C.ドビュッシー Davide Bombana (2010)
 エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ Abbagnato/Pech

金髪を一本のお下げにまとめ、迷彩柄かアニマルプリントのような柄のユニタードを着たエレオノラが牧神、シャツに短パンのバンジャマンがニンフと男女を逆転させた、ポップでアヴァンギャルドな「牧神の午後」。牝猫のようにしなやかでワイルドなエレオノラがなんともエロティックでキュート。バンジャマンとエレオノラはとても息が合っていて、動きのシンクロ具合の絶妙さと共鳴加減もエロティックだ。途中でバンジャマンがシャツを脱ぎ捨てて上半身裸になり、そして去っていく。残されたシャツをエレオノラが頭にかぶり、果てる。この表現はごく抑制されたものであっただけに、かえってセクシーな感じが高まっていて良かった。


「幻想~“白鳥の湖”のように」第1幕より "Illusions – like 'Swan Lake'"
振付:J.ノイマイヤー John Neumeier (1976)
音楽:P.I.チャイコフスキー
 シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ Azzoni/Riabko

プログラムには、このパ・ド・ドゥは王の親友アレクサンドルとその恋人クレア姫とのパ・ド・ドゥとあるけれども、これは間違い。(この作品のDVDでは、確かにシルヴィアとサーシャはその役を演じていて、そのPDDを観ることができる) ルートヴィヒ2世そっくりに髪型を整えて口ひげを蓄えたサーシャには、すっかりあの狂王が憑依してしまって、痛々しいほどである。彼は確か、「幻想~“白鳥の湖”のように」の王役はまだ踊ったことがないはずだというのに。
そしてシルヴィアが演じるのは、彼の婚約者であるナタリア姫。王に自分を受け入れてほしいと懇願しているのに、白鳥に魅入られ自分を見失っている王は、ついには彼女の思いを受け入れることはなかった。狂気へと落ちていく王と、彼になんとか振り向いてもらいたいと願って彼の手にそっと自分の額を重ねる健気なナタリアのすれ違いの悲しみが胸に痛く、去っていくシルヴィアの姿に思わず落涙。物語バレエの一シーンを切り取っただけだというのに、すっかりこの二人の作り上げる濃密な世界へと連れて行かれてしまった。そして、「幻想~"白鳥の湖"のように」のDVDをまた観たくなった。もちろん、いつかこの作品をハンブルク・バレエの舞台で観るのが私の夢なのだけど。


「プルースト~失われた時を求めて」よりMorel et St Loup (extrait de Proust ou les intermittences du coeur )
モレルとサンルー
振付:R.プティ Roland Petit (1974)
音楽:G.フォーレ
 マチュー・ガニオ、ジョシュア・オファルト Ganio/Hoffalt

白天使サン=ルーの役を「プルースト」のDVDでも演じていたマチューと、彼と同い年のジョシュアが演じる黒天使モレル。冒頭のマチューのソロは痛切で美しい。特に軸足をルルヴェにしたアラベスクには息を呑んでしまうほど。マチューとほぼ同じ体格ながら、少しだけ背が高くて、プロポーション的にはさらに恵まれているジョシュアの踊りも美しい。合わせ鏡のように対をなすようにアラベスクする二人の脚のラインは本当にうるわしい。
ビジュアル的にも完璧な二人なのだけど、ちょっと物足りないと感じたのは、ジョシュアに悪の香りがあまりしないからだ。今までこのパ・ド・ドゥで観た組み合わせ-DVDのマチューとステファン・ビュヨン、マッシモ・ムッルとイーゴリ・コールプ、ギョーム・コテとデヴィッド・ホールバーグ・・・みなモレル役のダンサーは白天使を背徳の道へと引きずり込む悪魔だったのだ。善と悪の微妙なバランスが生み出す危うさをもっと観たい。マチューのほうの切迫感も、DVDのときのほうがあったように思えた。とはいいつつ、やはり美しい肢体を持つ二人の才能あふれるダンサーががっぷり四つに組んで火花を散らす様子には興奮させられたのは事実。


「アパルトマン」よりグラン・パ・ド・ドゥ Appartement
振付:M.エック、音楽:フレッシュ・カルテット Mats Ek (2000)
 マリ=アニエス・ジロ、イリ・ブベニチェク Gillot/Bubenicek

奇妙で、ちょっと笑えて、少し物悲しい「アパルトマン」のパ・ド・ドゥ、実は結構好きだったりする。去年の世界バレエフェスティバルでは、ニコラ・ル=リッシュとシルヴィ・ギエムが踊っていたけど、踊る人によって全然違った肌触りの作品となるのが面白い。今回のマリ=アニエスとイリは、骨太で、よりユーモラスでパワフルな表現になっていた。それにしても、手がニョキっと出てきたりするあの不思議な扉は魅力的だ。最後には脚が出てきて、マリ=アニエスがその脚に連れて行かれたかと思ったら、目の錯覚なのかもしれないけどイリの方がマリ=アニエスに乗っかっておんぶされて、バタバタと走り去ったような気がした。この二人のコンビってすごく大人っぽくて、センスがあって素敵だなって思う。


「スターズ アンド ストライプス」 Stars and Stripes
振付:J.バランシン、音楽:J.P.スーザ George Balanchine (1958)
 ドロテ・ジルベール、マチアス・エイマン Gilbert/Heymann

パリ・オペラ座のダンサーが中心となったエトワール・ガラの最後の演目が、星条旗を背景にしたバランシンの「スターズ・アンド・ストライプス」でいいのか、って気はする。男性ダンサーがブーツの踵をバチバチって鳴らす振付が可愛くて好きなので、それがなかったのは残念。だがマチアスとドロテのパフォーマンスを見ると、そんなことはどうでもよく思えてきた。おもちゃの兵隊姿が本当に良く似合うマチアス、もう凄いことになっていた!足先をフレックスにしたままでの連続アントルシャの高さと滞空時間といったら、もう口がぽかんと開いてしまうくらいの驚異的なもの。あんなに高く跳べたら本当に楽しいだろうな。彼の良い点は、超絶技巧も決して技を競っているって感じにはなっていなくて、クラシックとしての美しさが保たれた上で、余裕のある遊び心が加えられていることなのだと思う。観ている間は圧倒的な幸福感に包まれた。マチアスののびのびと楽しいパフォーマンスに引っ張られるような感じで、ドロテも複雑なテクニックを楽々と繰り広げていってさらに幸せを増幅させてくれた。これが正しいバランシンなのかどうかはわからない。でも観る人誰もが「楽しかった!」とニコニコ顔で会場を後にできる二人のパワーとエンターテイナーぶりは素晴らしい。マチアスとドロテがこれからのパリ・オペラ座の新しい伝説を築いていてくれるのだろうと、彼らの輝かしい未来への期待感で胸がいっぱいになった。

****

古典は「コッペリア」だけで、バランシンのネオクラシック、プティやマクミランの"現代の古典"的な作品、そしてノイマイヤーやエックの現在形から、ボンバナやウォルシュ、ブベニチェクといった新進気鋭の振付家まで、現代のバレエ界のエッセンスを上手く具体化したプログラミングが見事だった。中でも「バレエ・リュスへのオマージュ」と題しながらも実際のバレエ・リュスの作品はフォーキンの「薔薇の精」だけで、ほかの2作品は日本初演と世界初演という新しく大胆な作品を持ってきてくれたのがうれしいところ。これだけのダンサーと作品を集められたバンジャマン・ペッシュのプロデュースの才能は見事としか言いようがない。

苦言をあえて言うとしたら、ひとつはやはりオーチャードホールは見づらい会場であるということ。Bunkamuraが主催者に入っており、チケットの値段も抑え目になっているのでえ致し方ないことではある。が、この会場で見やすい席を見つけるのは本当に至難の業であり、見やすい席でないとせっかくの作品を100%楽しめないということも事実である。Bunkamuraあってこその企画ではあるので、実現の可能性の高い次回のエトワールガラは、オーチャードホールの改装も終わっていて観やすい会場での開催になっていることを祈りたい。

土日の公演の終演後に、写真集購入者にサイン会のサービスを行うのは、ファンにとってはありがたいことではある(たとえ500円増しであろうとも)。しかし、土曜日になっての開催告知で、初日に写真集を買ったリピーターにはサイン会に参加する資格がなかったり、ダンサーを二手に分けて全員分のサインが欲しければ2冊(=4000円)買わなければならないと仕向けるのはちょっと商売っ気ありすぎなのではないかと思った。たとえば写真集を買った人も500円足せばサイン会に参加できるとかすればいいのに、なんてちょっと思ったりして。サイン会に並ぶ長蛇の列を見て、公演後にこれだけの人数にサインするダンサーも大変だなあ、とも思ったり。

いずれにしても、エトワール・ガラは本当に素晴らしい企画であり、日本のバレエファンだけがこれを楽しめるとはなんて幸せなことだろうってしみじみ感じたのであった。次の開催の実現を心から楽しみにしている。


リハーサルや舞台裏の写真が満載の、フランス版オフィシャルサイト
http://web.me.com/icavalcanti/Etoiles_Gala/Etoiles_Gala_2010.html

2010/08/09

パリ・オペラ座の2009-2010シーズンを振り返るフォトアルバム

最近ちょっと疲れておりまして、なかなかエトワールガラの感想の続きが書けません。あまりに疲れているので、数日夏休みをとることにしました。

こんな時に眺めるには最適の素敵なパリ・オペラ座の舞台写真がオフィシャルサイトにアップされていました。(The Ballet Bag 経由)

http://www.operadeparis.fr/cns11/live/onp/

上記サイトを少しスクロールして、「album souvenir」と書いてある文字の下のBalletをクリックすると、61枚にもわたる、2009-2010シーズンを振り返るフォトスライドショーを見ることができます。言葉を失うような美しさの「輝夜姫」から、カール・パケット、ステファン・ビュヨンのエトワール・ノミネの瞬間、学校公演やベジャール・バレエ客演の写真まで。素晴らしいクオリティの舞台写真を見て、夏の疲れを癒しましょう。

2010/08/06

バレエダンサーがつま先立ちで世界記録 Breaking a Ballet Record in Central Park

AFPオンラインの記事から
http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2745755/6040052

米ニューヨーク(New York)・セントラルパーク(Central Park)の野外劇場バンドシェル(Bandshell)で2日、全米各地から集まったバレエダンサー約230人が、1分間つま先立ちで立ち続ける「Most Ballerinas En Pointe(世界最多バレリーナ数でのつま先立ち)」のギネス世界記録(Guinness World Record)に挑戦し、1分7秒の記録を達成した。記録は、ギネス世界記録に登録される。

ということで、8月2日に行われたこのイベントは、ABTのオフィシャル写真などで知られるバレエ写真家のGene Schiavoneさんが提案したもので、Facebookを通じて参加者を募りました。当日はABTのプリンシパル、ミシェル・ワイルズと、ソリストのクレイグ・サルスタインも参加して指導にあたりました。さらに人気アニメ「アンジェリーナはバレリーナ」のアンジェリーナも登場して賑やかなものになったようです。下の動画を見ると、231人の中には男の子もいますね。

もうひとつ動画(NY POSTから)

このイベントで集められた寄付金は、"Angelina Ballerina Stars of Tomorrow Program"が支援するKips Bay Boys and Girls Club dance programに寄付されたとのことです。

こちらのサイトでも、イベントの楽しげなスライドショーを見ることができます。
http://www.dnainfo.com/20100803/upper-east-side/hundreds-of-ballet-dancers-break-guinness-world-record-central-park

ちなみに、この記録が達成される前の「ポワントで立っているバレエダンサーの数」の記録は、昨年のYAGPで達成されたものだそうです。
http://pointemagazine.com/blogs/news/breaking-ballet-record-central-park

2010/08/04

7/28 & 8/1 エトワール・ガラAプロ Etoile Gala Program A

すっかり夏バテしてしまって、感想を書くのが遅くなってしまいました。個人的にはAプロよりずっとBプロの方が魅力的だったので、Aプロの感想を書く筆が進まなくって困ったものです。


「シルヴィア」第1幕より 振付:J.ノイマイヤー 音楽:L.ドリーブ "Sylvia" John Neumeier (1997)
出演:シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ Azzoni/Riabko

小柄で可憐な印象の強いシルヴィア・アッツォーニが金髪をなびかせ、勇ましい戦乙女の衣装を身に着けて凛々しくポーズをとる。その奔放な姿が意外にもさまになっていてカッコ良かった。クリーム色のオーバーオール姿のアレクサンドル・リアブコの、正確な音取りによる微細なステップと床に吸い付くようなつま先と着地も美しい。ノイマイヤー振り付けの「シルヴィア」はパリ・オペラ座で収録されたDVDの印象が強いので、ハンブルク・バレエのこのペアで見るのは新鮮だった。


「カルメン」よりパ・ド・ドゥ "Carmen" Roland Petit (1949)
 振付:R.プティ 音楽:G.ビゼー
 出演:エレオノラ・アバニャート、マチュー・ガニオ Abbagnato/Ganio

プティの「カルメン」を上演するというから、ドン・ホセのソロを楽しみにしていたのに、それがなかったのが残念。エレオノラのカルメン、可愛いのだけどこの役に必要なファム・ファタルらしさに欠けていた。マチューはとても麗しいドン・ホセで、上半身と下半身のバランスも絶妙なのだけど、美しいあまりそれ以外の印象に残る部分が少なかった。
  

「天井桟敷の人々」よりスカルラッティ・パ・ド・ドゥ "Scarlatti - pas de deux" José Martinez (2009)
 振付:J.マルティネス 音楽:D.スカルラッティ
 出演:ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト Gilbert/Hoffalt

逆光の中浮かび上がる二人のシルエット。無音の中パ・ド・ドゥが始まる。アニエス・ルテステュがデザインをしたという衣装は映画「天井桟敷の人々」のフィルムをモチーフにしたモノクロームのスタイリッシュなもの。音がない分、ドロテとジョシュアの一つ一つの精密な動きに視線が吸い寄せられる。二人のエレガントな動きと、バランスの取れた身体のラインが描く美しい弧にうっとりする。ジョシュアのピルエットの回転が抑制されていながらも、コントロールが見事で、この人には真のエレガンスがあるって実感させられた。終わり際がまた無音の中で、二人でゆったりと動いていくところに余韻があって、振り付けのジョゼ・マルティネスのセンスのよさを感じさせる。


「フェリーツェへの手紙」(世界初演)""Jiri Bubenicek (2010)
 振付:J.ブベニチェク 音楽:H.I.F.フォン・ビーバー
 演奏:寺神戸亮(バロック・ヴァイオリン)
 出演:イリ・ブベニチェク Bubenicek

バロック・ヴァイオリストの寺神戸さんの生演奏で踊られるという豪華な趣向。カフカが恋人フェリーツェに何通も何通も(実際に送ったのは500通だったらしい)手紙を書いては受け取る。上手のテーブルで手紙を書いては受け取るイリ。舞台袖からは、にょきっと別の人の手が現れては手紙を落としていくのだけど、多分これはアレクサンドル・リアブコの手。一通だけ、赤い紙の手紙がはらりと落ちてくる。通い合わぬ想いに苦悶して、激しく、だがしなやかに雄弁に踊るイリ。彼の身体の表現力の肥沃さには言葉を失いそうになる。がっちりとした身体なのに、なんでこんな風に動くんだろう。破かれた手紙と思しき紙片がボタン雪のように舞い落ちる。下手には、カフカがしたためた手紙が壁に映し出されている。最後にまた赤い手紙が表れ、そしてイリはそれをゆっくりと引き裂いていく。一人の人間が、(ヴァイオリン演奏を伴っているとはいえ)たった一人でこれだけの物語性を紡ぐことができるとは。イリの才能に驚嘆する。


「人魚姫」第1幕より "Little Mermaid" John Neumeier (2005)
 振付:J.ノイマイヤー 音楽:L.アウアーバッハ
 出演:シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ Azzoni/Riabko

シルヴィア・アッツォーニの人魚姫は、先ほどの凛とした女戦士シルヴィアと同じ人が演じているとは思えないほどの変貌ぶりで、彼女のとてつもない才能が光を放っていた。独特のメイクを施して、足先までもすっぽりと覆ってしまう長い袴をまとっているその姿を見ると、舞台の上に存在しているのが人間の女性とは思えないし、舞台の上は深い海の底にしか思えなくなる。海に落ちてしまった人間の王子を見て好奇心に瞳を輝かせ、不思議な微笑を浮かべる海の姫君。長い長い袴を巧みに自在に操って、人ならざる者、その中でも海を制覇した者だけが持つオーラをまとっていた。「人魚姫」の王子役を演じるのは初めてだというリアブコは、シルヴィアを見事にサポートして、海水の中でゆらゆらと揺らめく様子までも表現。去年の来日公演で何度も観てしまった全幕を再び観たくなった。ガラの中での短い抜粋の中ででも、観客を作品の中へと引き込んでしまう、魔術的な力を持つこのペアはバレエ界の至宝と言ってもいいのではないだろうか。
 

「アルルの女」よりパ・ド・ドゥ " L'Arlésienne" Roland Petit (1974)
 振付:R.プティ 音楽:G.ビゼー
 出演:エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ Abbagnato/Pech

この作品のフレデリ役でエトワールに昇進したというバンジャマン・ペッシュ。それだけに役への思い入れの強さ、気合がビシビシ伝わってきた。狂気すら感じさせるその瞳に映るのは、傍らにいる婚約者ヴィヴェットではなく、姿すら見せぬ、遠くにいるアルルの女。幻の女に恋した男の熱病のような想いが、ファランドールの音楽に乗せて加速していく。肉体全体が、狂おしい情熱に駆り立てられるかのように疾走する。幻の女をついに見つけたのか、それとも見失ったのか、正面を見据えた彼は覚悟を決めて、舞台奥の窓へとダイブする。バンジャマンの一連の演技、視線一つ一つから指先、つま先の動きに至るまで強い説得力があった。恋人の心を取り戻そうとすがりつくも叶えられず、静かに苦しむヴィヴィエットを悲痛に演じたエレオノラ。いつもの華やかな彼女のイメージとは違った素朴さ、純情さがいとおしく感じられた。
「カルメン」「アルルの女」と観ていくうちに(そしてBプロの「プルースト」も加えて)、プティの作品というのはもはや現代の古典なのだと感じられてきた。


「三銃士」全1幕(世界初演)"Les Trois Mousquetaires" Pierre Lacotte (2010)
 振付・衣装・舞台装置:P.ラコット 音楽:M.ルグラン
 出演
 ミレディ:マリ=アニエス・ジロ
 リシュリュー:バンジャマン・ペッシュ
 コンスタンス:エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
 ダルタニアン:マチアス・エイマン
 アンヌ王妃:ドロテ・ジルベール
 ルイ13世(国王):マチュー・ガニオ
 三銃士:イリ・ブベニチェク、アレクサンドル・リアブコ、ジョシュア・オファルト
Gillot, Pech, Obraztsova, Heymann, Gilbert, Ganio, Hoffalt, Bubenicek, Riabko

今回のガラ総出演者11人のうち9人が出演しているという超豪華キャストで、しかもこのガラのためにラコットが振付けた新作。結果はというと、多くの人が語っているように、贅沢な学芸会といったところ。もともと駄作の多いラコット、その振り付けそのものがとても単調で適当に回転やジャンプを入れていてメリハリがなかった。その上、75分に三銃士の物語を押し込めたダイジェスト版になっているので、平板この上なし。場面転換の数ばかりが多くて、舞台装置を作る余裕もなかったためか、背景は写真をスクリーンに大写ししていたのには萎えた。

一方で、ダンサーたちがとても楽しんで踊っているのは伝わってきて、観ている側も幸せな気持ちになった。特に三銃士の3人、中でもイリなどは、先ほどの深刻な役柄が嘘のように楽しそうに跳んだりはねたりしているし、ダルタニアンのマチアスは、あの羽が生えたような軽やかな跳躍をひょいひょいとたっぷりと見せてくれて実に幸福感いっぱい。エフゲーニヤ・オブラスツォーワの男装の美少女ぶり、マントにフリフリの白い貴公子衣装がこれ以上似合う人はいないと思われるマチュー・ガニオの麗しさ、と配役はぴったりで、目の保養になるところはたくさん。ダルタニヤンが最初三銃士に決闘を申し込まれてしまったくだりから、王党派側に間違えられて縛り首になりそうになったところを助けられたり、といった顛末の脱力したくなるようなお笑い部分はとっても微笑ましかった。

こういう作り手みんなが楽しんでいるお遊び的な作品もたまにはいい。でも次回のエトワール・ガラはできればクオリティのほうに力を入れてほしいなと思ったのも事実。Bプロの恐ろしいほどのハイクオリティな上演と比較すると、Aプロは結果的には満足度が低かった。

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