8/29 小林紀子バレエシアター「コンチェルト」「チェックメイト」「パキータ」Noriko Kobayashi Ballet Theatre "Concerto""Checkmate""Paquita"
「コンチェルト」"Concerto"
[振付]ケネス・マクミラン
[ステイジド・バイ]ジュリー・リンコン
[作曲]ドミトリー・ショスタコーヴィチ
(ピアノ協奏曲第2番 ヘ長調 作品102)
[美術]デボラ・マクミラン
First movement:真野琴絵 八幡顕光
Second movement:島添亮子 デヴィッド・ホールバーグ Akiko Shimazoe David Hallberg
Third movement: 高橋怜子
Three couples:萱嶋みゆき 秦信世 荒木恵理
中尾充宏 佐々木淳史 冨川直樹
溌剌とした最初の真野さん、八幡さんカップルの踊りも良かったけど、この作品の素晴らしさは2番目のカップルのパ・ド・ドゥにある。ショスタコーヴィッチのピアノコンチェルト2番の叙情的なメロディに乗せて、バーレッスンするかのような動きを見せる島添さん、ポール・ド・ブラ、ロンドゥジャンブ、ピルエット、アラベスクそれぞれの動きがとても繊細でかつクリアで美しい。島添さんを時にはバーのようにサポートし、リフトし、プロムナードし、一つ一つの動きに寄り添うようなデヴィッド・ホールバーグとの間に漂う空気感にはなんともいえないエモーションがあって、目が離せない。バレエのスタジオをイメージしたような空間で、後方では3組のカップルが同様にバーレッスンを行っているけれども、メーンのカップルには特別な美しさがある。マクミランのパ・ド・ドゥの中でも最も美しいもののひとつと言われるのも納得できるし、今回理想的なカップルを得て忘れがたい素敵な上演となったといえる。
(この美しい作品「コンチェルト」を収めたロイヤル・バレエの「マクミラン・トリプルビル」のDVD/Blu-Rayが10月に発売になるとのことで、とても楽しみ。最初のカップルが崔由姫さんとスティーヴン・マックレー、2番目のカップルがマリアネラ・ヌニェスとルパート・ペネファーザーだとのこと)
「チェックメイト」"Checkmate"
[振付]ニネッタ・ド・ヴァロワ
[オリジナル・ステイジド・バイ]パメラ・メイ
[ステイジド・バイ]ジュリー・リンコン
[作曲]アーサー・ブリス
[美術]E・マックナイト・カウファー
愛:高橋由貴乃
死:西岡正弘
黒の女王:喜入依里
赤の女王:萱嶋みゆき
赤の王 :澤田展生
赤の第一騎士:冨川祐樹
赤の第二騎士:アンダーシュ・ハンマル
黒の騎士 :中尾充宏/冨川直樹
冒頭で「愛」と「死」がチェス盤を囲み、チェス盤を回す象徴的なシーンがとても印象的。チェスの戦いをバレエで表現したこの作品は1937年初演で、黒の女王の勝利をナチスの台頭になぞらえている作品。ポアントを突き刺すような動きが象徴的な動きがかっこいい黒の女王役は、最近このカンパニーでリラの精を踊ったりして急成長している喜入依里さん。威厳と怖さは良く出ていたけれども、前回この作品が上演されたときの黒の女王、大森結城さんの切れ味鋭くカリスマ性たっぷりで冷酷な女王の印象が鮮烈すぎた。黒の女王を倒すチャンスを得ながら彼女に魅せられてしまって逆に倒されてしまう赤の騎士には富川祐樹さん。そして老いて弱っている赤の王を演じた澤田さんは演技が細かくて大熱演。アンサンブルには乱れがあったところもあり、上演時間が長く感じられてしまったのが残念。土曜日の上演では大和さんが黒の女王だったとのことで、こちらも見てみたかった。
「パキータ」”Paquita"
[振付]マリウス・プティパ
[プロダクション]小林紀子
[作曲]レオン・ミンクス
[美術]ピーター・ファーマー
[美術コーディネート]マイケル・ブラウン
アダージョ:島添亮子/デヴィッド・ホールバーグ Akiko Shimazoe David Hallberg
第1ヴァリエーション:大和雅美
第2ヴァリエーション:大森結城
第3ヴァリエーション:萱嶋みゆき
第4ヴァリエーション:高橋怜子
第5ヴァリエーション:デヴィッド・ホールバーグ
第6ヴァリエーション:島添亮子
マリインスキーあたりが上演する「パキータ」とは全然雰囲気が違っていて、おっとりとしていて温かみのある「パキータ」。明るいオレンジ色の上品なチュチュ、濃いオレンジ色の幕を使ったピーター・ファーマーの美術もその温かさに一役買っている。その中で一人、白いチュチュを着たエトワールの島添さんはまばゆいばかりに輝いていた。特にプロポーション的に恵まれているわけでもないのに、正確なテクニックにずば抜けた音楽性と気品。音符と戯れ、自由自在に操っているかのようだった。コーダでのフェッテも余裕を感じさせて実に素晴らしかった。デヴィッド・ホールバーグは芸術的なアーチを描いた長く美しい脚、光り輝くエレガンスでプリンスそのもの。彼の柔らかいプリエと音のしない着地、高いルルヴェ、全体的なラインの優雅さ、圧倒的なバレエの美を体現していた。ヴァリエーションではやはり大和さんの安定感、大森さんの凛とした佇まいがとても素敵で、この二人は島添さんと並んでカンパニーの宝だと改めて思ったのだった。
ひとつ残念なことは、この作品の上演のときのオーケストラの音のバランスが著しく悪く、金管楽器ばかりが目立ってしまって全体の旋律が耳に入りにくかったこと。若干集中力をそがれてしまったので、改善を要望したい。
[指揮]ポール・ストバート
[演奏]東京ニューフィルハーモニック管弦楽団
[ピアノ独奏]中野孝紀(《コンチェルト》)
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コメント
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Naomiさん
こんにちは!ニコラのボレロのに魂抜かれていたので(*^^*)集中できるかしら・・・と行く前は思っていたのですが終わってみたら楽しい公演でした。
一見正反対なタイプに思える島添さんとホールバーグの二人PDD・・・雰囲気が素敵でうっとりとしました。ときどき交わす視線もいい感じで・・・ふわりと高~くリフトされる島添さんが輝いていましたね!
コンチェルトとパキータの2演目で見られて嬉しかったです。
来年のABTの公演でのホールバーグが楽しみです!!
まだまだ暑さが続きそうですので、お体お大事に・・・
投稿: エミリー | 2010/08/31 11:22
エミリーさん、こんばんは。
先日はお会いできて楽しかったです~。私も果たしてどうかな、と思ったら「コンチェルト」にもデヴィッド君が出演するということで得した気分にもなりました。
島添さんとデヴィッドのPDD、意外にもとてもよく合っていて素敵でしたね。そう、視線もいい感じでした!
来年のABT公演でのロミオとエスパーダが楽しみですね。例年通りだとまたここで大散財しそう。
本当にまだまだ暑さが続きますね。お互い、体に気をつけて乗り切りましょう!
投稿: naomi | 2010/08/31 23:54
こんにちは。お会いできて嬉しかったです。
公演に足を運んでいただきありがとうございました。
再演ばかりですが、キャストも変わってどうかなと思いましたが、無事に終えることが出来ました。
デヴィッドと島添さんの美しい「コンチェルト」2楽章は、良かったです。
3楽章はちょっと窮屈でかわいそうでしたが、「パキータ」の佇まいは前回以上の気品があり素敵でした。
9月になったとはいえ、まだまだ暑そうです。
身体に気をつけて過ごしましょうね。
投稿: くみ | 2010/09/01 10:53
くみさん、こんばんは。
私もお会いできてよかったです。今回は再演3つですが、このカンパニーならではの個性的なラインアップでしたよね。やっぱり見に来て良かったって思いました。
本当に島添さんとデヴィッドのコンチェルト第二楽章は素晴らしかったです~これを見られただけでも本当に幸せでした。ジュテの多い第三楽章はゆうぽうとの舞台だとちょっと狭いのかしら?
まだまだ暑い日が続きますので、お互い体には気をつけましょう!
投稿: Naomi | 2010/09/02 00:28