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« ミハイロフスキー・バレエの芸術監督にナチョ・ドゥアトが就任?/7.28追記(正式決定!) | トップページ | バレエダンサーがつま先立ちで世界記録 Breaking a Ballet Record in Central Park »

2010/08/04

7/28 & 8/1 エトワール・ガラAプロ Etoile Gala Program A

すっかり夏バテしてしまって、感想を書くのが遅くなってしまいました。個人的にはAプロよりずっとBプロの方が魅力的だったので、Aプロの感想を書く筆が進まなくって困ったものです。


「シルヴィア」第1幕より 振付:J.ノイマイヤー 音楽:L.ドリーブ "Sylvia" John Neumeier (1997)
出演:シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ Azzoni/Riabko

小柄で可憐な印象の強いシルヴィア・アッツォーニが金髪をなびかせ、勇ましい戦乙女の衣装を身に着けて凛々しくポーズをとる。その奔放な姿が意外にもさまになっていてカッコ良かった。クリーム色のオーバーオール姿のアレクサンドル・リアブコの、正確な音取りによる微細なステップと床に吸い付くようなつま先と着地も美しい。ノイマイヤー振り付けの「シルヴィア」はパリ・オペラ座で収録されたDVDの印象が強いので、ハンブルク・バレエのこのペアで見るのは新鮮だった。


「カルメン」よりパ・ド・ドゥ "Carmen" Roland Petit (1949)
 振付:R.プティ 音楽:G.ビゼー
 出演:エレオノラ・アバニャート、マチュー・ガニオ Abbagnato/Ganio

プティの「カルメン」を上演するというから、ドン・ホセのソロを楽しみにしていたのに、それがなかったのが残念。エレオノラのカルメン、可愛いのだけどこの役に必要なファム・ファタルらしさに欠けていた。マチューはとても麗しいドン・ホセで、上半身と下半身のバランスも絶妙なのだけど、美しいあまりそれ以外の印象に残る部分が少なかった。
  

「天井桟敷の人々」よりスカルラッティ・パ・ド・ドゥ "Scarlatti - pas de deux" José Martinez (2009)
 振付:J.マルティネス 音楽:D.スカルラッティ
 出演:ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト Gilbert/Hoffalt

逆光の中浮かび上がる二人のシルエット。無音の中パ・ド・ドゥが始まる。アニエス・ルテステュがデザインをしたという衣装は映画「天井桟敷の人々」のフィルムをモチーフにしたモノクロームのスタイリッシュなもの。音がない分、ドロテとジョシュアの一つ一つの精密な動きに視線が吸い寄せられる。二人のエレガントな動きと、バランスの取れた身体のラインが描く美しい弧にうっとりする。ジョシュアのピルエットの回転が抑制されていながらも、コントロールが見事で、この人には真のエレガンスがあるって実感させられた。終わり際がまた無音の中で、二人でゆったりと動いていくところに余韻があって、振り付けのジョゼ・マルティネスのセンスのよさを感じさせる。


「フェリーツェへの手紙」(世界初演)""Jiri Bubenicek (2010)
 振付:J.ブベニチェク 音楽:H.I.F.フォン・ビーバー
 演奏:寺神戸亮(バロック・ヴァイオリン)
 出演:イリ・ブベニチェク Bubenicek

バロック・ヴァイオリストの寺神戸さんの生演奏で踊られるという豪華な趣向。カフカが恋人フェリーツェに何通も何通も(実際に送ったのは500通だったらしい)手紙を書いては受け取る。上手のテーブルで手紙を書いては受け取るイリ。舞台袖からは、にょきっと別の人の手が現れては手紙を落としていくのだけど、多分これはアレクサンドル・リアブコの手。一通だけ、赤い紙の手紙がはらりと落ちてくる。通い合わぬ想いに苦悶して、激しく、だがしなやかに雄弁に踊るイリ。彼の身体の表現力の肥沃さには言葉を失いそうになる。がっちりとした身体なのに、なんでこんな風に動くんだろう。破かれた手紙と思しき紙片がボタン雪のように舞い落ちる。下手には、カフカがしたためた手紙が壁に映し出されている。最後にまた赤い手紙が表れ、そしてイリはそれをゆっくりと引き裂いていく。一人の人間が、(ヴァイオリン演奏を伴っているとはいえ)たった一人でこれだけの物語性を紡ぐことができるとは。イリの才能に驚嘆する。


「人魚姫」第1幕より "Little Mermaid" John Neumeier (2005)
 振付:J.ノイマイヤー 音楽:L.アウアーバッハ
 出演:シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ Azzoni/Riabko

シルヴィア・アッツォーニの人魚姫は、先ほどの凛とした女戦士シルヴィアと同じ人が演じているとは思えないほどの変貌ぶりで、彼女のとてつもない才能が光を放っていた。独特のメイクを施して、足先までもすっぽりと覆ってしまう長い袴をまとっているその姿を見ると、舞台の上に存在しているのが人間の女性とは思えないし、舞台の上は深い海の底にしか思えなくなる。海に落ちてしまった人間の王子を見て好奇心に瞳を輝かせ、不思議な微笑を浮かべる海の姫君。長い長い袴を巧みに自在に操って、人ならざる者、その中でも海を制覇した者だけが持つオーラをまとっていた。「人魚姫」の王子役を演じるのは初めてだというリアブコは、シルヴィアを見事にサポートして、海水の中でゆらゆらと揺らめく様子までも表現。去年の来日公演で何度も観てしまった全幕を再び観たくなった。ガラの中での短い抜粋の中ででも、観客を作品の中へと引き込んでしまう、魔術的な力を持つこのペアはバレエ界の至宝と言ってもいいのではないだろうか。
 

「アルルの女」よりパ・ド・ドゥ " L'Arlésienne" Roland Petit (1974)
 振付:R.プティ 音楽:G.ビゼー
 出演:エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ Abbagnato/Pech

この作品のフレデリ役でエトワールに昇進したというバンジャマン・ペッシュ。それだけに役への思い入れの強さ、気合がビシビシ伝わってきた。狂気すら感じさせるその瞳に映るのは、傍らにいる婚約者ヴィヴェットではなく、姿すら見せぬ、遠くにいるアルルの女。幻の女に恋した男の熱病のような想いが、ファランドールの音楽に乗せて加速していく。肉体全体が、狂おしい情熱に駆り立てられるかのように疾走する。幻の女をついに見つけたのか、それとも見失ったのか、正面を見据えた彼は覚悟を決めて、舞台奥の窓へとダイブする。バンジャマンの一連の演技、視線一つ一つから指先、つま先の動きに至るまで強い説得力があった。恋人の心を取り戻そうとすがりつくも叶えられず、静かに苦しむヴィヴィエットを悲痛に演じたエレオノラ。いつもの華やかな彼女のイメージとは違った素朴さ、純情さがいとおしく感じられた。
「カルメン」「アルルの女」と観ていくうちに(そしてBプロの「プルースト」も加えて)、プティの作品というのはもはや現代の古典なのだと感じられてきた。


「三銃士」全1幕(世界初演)"Les Trois Mousquetaires" Pierre Lacotte (2010)
 振付・衣装・舞台装置:P.ラコット 音楽:M.ルグラン
 出演
 ミレディ:マリ=アニエス・ジロ
 リシュリュー:バンジャマン・ペッシュ
 コンスタンス:エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
 ダルタニアン:マチアス・エイマン
 アンヌ王妃:ドロテ・ジルベール
 ルイ13世(国王):マチュー・ガニオ
 三銃士:イリ・ブベニチェク、アレクサンドル・リアブコ、ジョシュア・オファルト
Gillot, Pech, Obraztsova, Heymann, Gilbert, Ganio, Hoffalt, Bubenicek, Riabko

今回のガラ総出演者11人のうち9人が出演しているという超豪華キャストで、しかもこのガラのためにラコットが振付けた新作。結果はというと、多くの人が語っているように、贅沢な学芸会といったところ。もともと駄作の多いラコット、その振り付けそのものがとても単調で適当に回転やジャンプを入れていてメリハリがなかった。その上、75分に三銃士の物語を押し込めたダイジェスト版になっているので、平板この上なし。場面転換の数ばかりが多くて、舞台装置を作る余裕もなかったためか、背景は写真をスクリーンに大写ししていたのには萎えた。

一方で、ダンサーたちがとても楽しんで踊っているのは伝わってきて、観ている側も幸せな気持ちになった。特に三銃士の3人、中でもイリなどは、先ほどの深刻な役柄が嘘のように楽しそうに跳んだりはねたりしているし、ダルタニアンのマチアスは、あの羽が生えたような軽やかな跳躍をひょいひょいとたっぷりと見せてくれて実に幸福感いっぱい。エフゲーニヤ・オブラスツォーワの男装の美少女ぶり、マントにフリフリの白い貴公子衣装がこれ以上似合う人はいないと思われるマチュー・ガニオの麗しさ、と配役はぴったりで、目の保養になるところはたくさん。ダルタニヤンが最初三銃士に決闘を申し込まれてしまったくだりから、王党派側に間違えられて縛り首になりそうになったところを助けられたり、といった顛末の脱力したくなるようなお笑い部分はとっても微笑ましかった。

こういう作り手みんなが楽しんでいるお遊び的な作品もたまにはいい。でも次回のエトワール・ガラはできればクオリティのほうに力を入れてほしいなと思ったのも事実。Bプロの恐ろしいほどのハイクオリティな上演と比較すると、Aプロは結果的には満足度が低かった。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

こんばんわ。

日程的にAプロしか行けなかったのは、とても残念でした。
3階の後ろの方で見たのですが、上手前方は4列くらいまでブロックで空いていました。後ろの方に張り付いているようにかたまって入っていて、どういう売り方?と思いました。

三銃士、豪華な学芸会、すばらしい表現!そのとおりでした。眼福でしたけど。

毎回、暑い暑い渋谷っていうのが、印象にのこります。

よしのっちさん、こんばんは。

豪華な学芸会でしたね~。スターが楽しそうに踊っていて、眼福ではあったけれども。

エトワール・ガラの期間中、本当に暑かったですよね!今でももちろん暑いんだけど。
オーチャードホールの3階後方席って、見づらいこのホールの中では特等席だと思います。多分その3階の後ろのほうに張り付いているところがB席だと思うのですが、費用対効果では一番お得だと思うし、早々に売り切れた席種だと思います。私は近くで見たいと前方の席をとった日があって、とても後悔しました・・・やっぱり見づらいですもの。
それから、3階席の一番前の列は手すりが視界をさえぎってとても邪魔だし、上手、下手ブロックはバルコニーが視界に入ってやはり邪魔なのです。早く改装して少しでもまともなハコにしてほしいですよね。

naomiさん
こんばんは。御久し振りです。
sakuraです。

エト・ガラ、相変わらずの豪華キャストで凄かったですね~♪
こんなにのめり込んだ公演は久し振りです♪
終わってしまってものすごい寂しい…気が抜けてしまいました(TT)

Aプロ、イリの圧巻のソロが凄くて…。
もっと見たかったです。以前のエト・ガラ、1月の来日も素晴らしかったのですが、今回はさらに急上昇☆
現地まで見に行きたくなりました!
現地で踊るイリはどれだけ素晴らしいのか…(≧≦)

三銃士は好きなお話なので、期待していたのですが…(^^;)あはは…な感じで。
ただ、お祭感満載で私もナオミさんと同感。微笑みがこぼれてしまいました。
特にイリは本当に楽しそうで…(^人^)はじけてましたね♪あんなにおちゃめな姿、初めて見ました!満面の笑顔で、私まで幸せな気持ちになりました!

もっともっと日本で踊って欲しいです…(>_<)

sakuraさん、こんばんは。

エトワール・ガラ、楽しかったですね!水曜日から日曜日までと期間は短かったけど、終わってしまって本当にさびしかったです。私はほかに夏の公演のチケットはあまり取っていないので、夏が終わってしまった気がしました。。。

「フェリーツェへの手紙」のイリのソロ、凄かったですよね。彼は本当に毎回新しい面を見せてくれる気がします。私もまだ彼を現地で観たことがないのですが、ハンブルク・バレエで来たときの「ニジンスキー」も凄かったですしね。

確かに「三銃士」はあははsweat01って感じの作品でしたが、微笑ましくありましたよね。バレエフェスのおまけからお笑い要素を抜いたような感じでしょうか。でも、ホントにイリは特に楽しそうに踊っていて、彼のことがますます好きになったのはsakuraさんと同じです!ホント、これからももっと来てほしいですね~。

Naomiさん、こんにちわ!
今回Bプロ相当良かったみたいですね~
私自身はAしか観て無いのですが、シルヴィア・アッツォーニ、イリ・ブベニチェクが観られただけで大満足です!
前回アッツォーニを始めて観て、(確かロミジュリとベラ・フィギュラ)そのふり幅にびっくりしたのですが今回もそれと再確認されました、、本当に別人みたいになりますね。
しかしイリブベニチェクのソロは良かった!!!!もう一度是非観たい!
たった数分で心をわしづかみにされてしまいました、思い出しても切なくなる。。
春に埼玉でやったドレスデンの時も良かったし、もっと日本で踊って欲しいものです。

三銃士は、、、、楽しかったですねdash
「学芸会」という表現がツボにはまりました(笑)

TGIFさん、こんばんは。

本当にAプロはシルヴィア・アッツオーニとイリ・ブベニチェクが断然光っていたというのに同意です!(アレクサンドル・リアブコはAプロは割りとサポート担当でしたからね)この二人が見られただけでも超ラッキーって思いました。

そうだ、前回の公演ってシルヴィアは「ベラ・フィギュラ」と「ロミオとジュリエット」だったんですよね!これもそんなに前のことではなかったけど、もう一度あの演目でも観たいな~って思いました。そしてイリ!彼の体の動きって独特で、ほんとうにどうしてこんなに肉体に表現力があるのって思います!またあのドレスデンの公演もやってほしいですよね!(ブベニチェク&フレンズって公演をオットーらとやっているみたいなので、これもぜひ)

三銃士は、すごいダンサーたちが学芸会のノリで新作を楽しく作ってみました~って感じで、それはそれでゴージャスで楽しかったですよね

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