『オックスフォード バレエ ダンス事典』
プロフェッショナルのライターではない私でも、バレエやダンスについてのエントリを書く時には、一応調べ物をすることがある。今は検索エンジンという便利なものもあるけれども、バレエ/ダンスについてのオンラインの事典があるわけではないし、検索エンジンで引っかかった記事もどこまで正確なのかわからないことがある。
そんな私にとってもとても便利な1冊が発売された。『オックスフォード バレエ ダンス事典』である。筆者はタイムズ紙の批評家デブラ・クレーンとガーディアン紙の批評家ジュディス・マックレル。訳は監訳の鈴木晶氏をはじめ、赤尾雄人氏、海野敏氏、長野由紀氏。網羅的なダンス/バレエの事典の日本版が発売されるのは初めてのことであり、快挙である。
実はこの事典の原著である「The Oxford Dictionary of Dance」も持っているのだが、そちらは2000年に発行されたもの。今回発売された邦訳では、たとえば振付家やダンサーで現在までの間に亡くなった方がいれば没年月日も記述されているし、日本向けに、日本人のダンサーや振付家等の名前も追記されている。(上野水香や草刈民代まで載っているのはどうかともちょっと思うけど・・・)全部で2500項目もあるし、何よりも便利なのが巻末の「作品名欧和対訳表」で、本編に解説が収録されていない作品でも邦題と原題が並べてあって素晴らしい。原著にはない索引も掲載されてある。
振付家の名前を引くと代表的な作品の初演された年が書いてあるのが何よりも非常に便利だし、簡潔ながら要点を押さえた記述が平易でとても読みやすい。ダンサー、振付家、カンパニー名、テクニック用語だけでなく作曲家や美術家、"スウェーデン""インド"など各国のダンスの概況、"シェイクスピア原作のバレエ””アンナ・カレーニナを原作にしたバレエ”なんていう項目もあり、興味深い。最新の状況については少々足りない部分もあるが、原著が2000年なのでそれは致し方ないだろうけど、可能な限りの情報は追記してあるのが窺える。
索引まで含めると718ページもある大著だが、意外とコンパクトな上、紙質も軽く薄めの紙を使っているようなので、かさばらず軽くて持ち歩けるほど。ブログのエントリを書く時の調べものに役に立つだけでなく、暇つぶしとしてパラパラめくってみて、目に付いた項目を読んでみるだけでも知識が身につき、とても面白い。
バレエやダンスについていろいろな知識が必要だと思われた方、もっと網羅的に知りたいと思われた方は、ぜひ手にとってほしい1冊である。
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コメント
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naomiさん、お久しぶりです。ワトソンのマイヤリングの会場でおみかけしたのですが、声をかけそびれました。すべてのキャスティングでご覧になったのですね、すごいです。私は1日でかなりおなか一杯でした。
早速この辞典を購入されたのですね。私も原典を持ってはいるのですが、日本語版の方が情報が大分追加されているのでしょうか。このエントリーを読んで、書店で一度手にとってみようかと思いました。
投稿: ショコラ | 2010/07/06 08:54
ショコラさん、こんばんは。
エドワードのマイヤリングいらしていたんですね。私はけっこうボーっとしていて気がつかないことがあって失礼してしまうことがあります。3日間も見たら本当にお腹がいっぱいで、ちょっともったいなかったと思いました。それぞれのキャスト、堪能しましたが。
原典って、私が持っているやつはマシュー・ボーンの白鳥の湖のアダム・クーパーが表紙なんですよね。日本語版は、日本のダンサーやカンパニーの情報を中心に、新しい情報も盛り込んであるのでお勧めですよん。
投稿: naomi | 2010/07/06 23:51