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2010年7月

2010/07/28

ミハイロフスキー・バレエの芸術監督にナチョ・ドゥアトが就任?/7.28追記(正式決定!)

ナチョ・ドゥアトが芸術監督を今月末に辞任するスペイン国立ダンスカンパニーの公式Facebookにリンクされていたスペイン語の記事がありました。

Nacho Duato dirigirá el Ballet del Teatro Mijáilovski de San Petersburgo
http://www.europapress.es/cultura/noticia-nacho-duato-dirigira-ballet-teatro-mijailovski-san-petersburgo-20100727105219.html

ほかにもいろいろとスペインで記事になっています。

Nacho Duato dirigirá el Ballet del Teatro Mijáilovski de San Petersburgo
http://www.diariosigloxxi.com/texto-ep/mostrar/20100727105217

Nacho Duato dirigirá el teatro Mijáilovski de San Petersburgo
http://www.abc.es/20100727/cultura-arte/nacho-duato-201007271200.html

私の非常に拙いスペイン語力(大学の第二外国語)と英語への自動翻訳などをかけてみると、ロシアの新聞Kommersant紙に、ナチョ・ドゥアトがミハイロフスキー・バレエの芸術監督に来年から就任するようだと報じられているようです。

ミハイロフスキー・バレエはファルフ・ルジマトフが芸術監督を退任し、ミハイル・メッセレルが芸術監督を務めていて、ロンドン公演を成功裏に終わらせたばかりです。

スペイン国立ダンスカンパニーをクラシック・バレエのカンパニーへと変貌させようとする政府側の圧力に抵抗してドゥアトが同カンパニーを退任したわけですから、本当にミハイロフスキー・バレエの芸術監督に就任するということがありえるのでしょうか。古典に優れた今のダンサーたちは、ナチョの作品も踊れるでしょうけれども、レパートリーが突然変化するということになってしまいますよね。

まだオフィシャルの発表はないようですが、このような記事が出回っているというお知らせでした。

******
7/28 追記

ナチョ・ドゥアトが2011年1月1日よりミハイロフスキー劇場の芸術監督に就任することが、劇場のオフィシャルサイトで発表されました。任期は5年とのことです。

Eminent Choreographer Nacho Duato to Head Mikhailovsky Ballet
http://www.mikhailovsky.ru/en/events/eminent-choreographer-nacho-duato-to-head-mikhailovsky-ballet

これはなんとコメントしていいのか、非常に難しい事態ですね・・・。

ベルリン国立バレエの来日公演2011年1月 Staatsballett Berlin Japan Tour 2011/1

ウラジーミル・マラーホフ率いるドイツ最大のベルリン国立バレエ団2010年日本公演の公演日程が決定したとNBSのサイトに載っていました。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/2011-1.html

「シンデレラ」全2幕 Cinderella by Vladimir Malakhov

振付・演出:ウラジーミル・マラーホフ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
装置・衣裳:ヨルディ・ロイク
照明:フランツ・ペーター・ダヴィゥド
台本協力:セルジュ・オネゲル

1月15日(土)1:30p.m.
1月15日(土)6:00p.m.
1月16日(日)3:00p.m.

----------------------------------

「チャイコフスキー」全2幕 Tchaikovsky by Boris Eifman

振付・演出:ボリス・エイフマン
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
装置・衣裳:ヴァチェスラフ・オクネフ
照明:グレーブ・フィルシュテインスキー

1月20日(木)6:30p.m.
1月22日(土)3:00p.m.
1月23日(日)3:00p.m.

----------------------------------

ダンサー総出演。一夜限りのスペシャル・パフォーマンス!
<マラーホフ・ガラ> Malakhov Gala

1月18日(火)6:30p.m.

●会場:東京文化会館

●9月下旬より一斉発売開始予定!

来日予定ダンサー
プリンシパル ウラジーミル・マラーホフ、ベアトリス・クノップ、中村祥子、ナディア・サイダコワ、ヤーナ・サレンコ、ポリーナ・セミオノワ、ヴィスラウ・デュデク、ミハイル・カニスキン

ソリスト エリサ・カリッリョ・カブレラ、ライナー・クレンシュテッター、ディヌ・タマズラカル、マリアン・ワルター ほか

※各演目の配役、<マラーホフ・ガラ>の詳細は8月下旬に発表いたします。
※表記の情報は2010年7月26日現在の予定です。

来日予定プリンシパルの中にポリーナの兄のドミトリー・セミオノフや、5月のマラーホフの贈り物に出演したレオナルド・ヤコヴィーナの名前がないのがちょっと不思議ですが、中村祥子さんも来てくれるんですね。

(参考、本国オフィシャルサイトのダンサー一覧
http://www.staatsballett-berlin.de/ensemble/index.php?id_language=1

2010/07/23

ロイヤル・バレエ 吉田都さん&スティーヴン・マックレー主演「くるみ割り人形」DVD発売

Opus Arteからのお知らせメールで予約受付中作品の中にありました。英国では9月1日発売とのこと。OpusArteのサイトから購入することも可能です。

http://www.opusarte.com/en/the-nutcracker-live-2009.html?utm_source=Opus+Arte+Newsletter&utm_campaign=9ae7c5b9e8-Preorder_July_Proms_2010_A_B_split7_22_2010&utm_medium=email

Tchaikovsky THE NUTCRACKER (The Royal Ballet) [Live, Nov & Dec, 2009]
Expected release date: 01/09/2010

1 DISC SET

The Sugar Plum Fairy: Miyako Yoshida
Nephew/Nutcracker: Ricardo Cervera/Steven McRae
The Prince: Steven McRae
Drosselmeyer: Gary Avis

The Royal Ballet
The Orchestra of the Royal Opera House

Conductor: Koen Kessels
Director: Peter Wright
Choreography: Peter Wright after Lev Ivanov
Music: Pyotr Ilyich Tchaikovsky

Extra Features
Cast gallery
Rehearsing at White Lodge
Peter Wright tells the story of the Nutcracker

Recorded live at the Royal Opera House, Nov & Dec, 2009.

ハンス・ピーターがリカルド・セルヴェラ、ドロッセルマイヤーがギャリー・エイヴィスという魅力的なキャストです。

ちなみに、OpusArteのYouTubeオフィシャルチャンネルには、1分だけですがダイジェスト映像がアップされています。
http://www.youtube.com/watch?v=YBbH2xHxUDE

日本版はいつになったら発売になるのか、楽しみですね~。

2010/07/19

ABTの新作ラトマンスキー振付「くるみ割り人形」/「眠れる森の美女」「椿姫」スライドショー

ABTのメトロポリタン・オペラハウスでのシーズンは終了しました。そして秋の恒例のシティセンターでの公演は今年はありません。代わりに、12月より、アレクセイ・ラトマンスキー振付による新作「くるみ割り人形」が上演されます。上演されるのは、ブルックリンのブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック劇場(通称BAM)
http://www.bam.org/

まだ詳しい情報は載っていませんが、ABTのカレンダーを見ると、公演の日程ははっきりしています。
12月22日より1月2日まで。(12月25日、1月1日は休み)23日、24日、26日、29日、30日は一日2回公演です。

また、デザイン画が2点だけアップされていますね。
http://www.abt.org/performances/performance_display.asp?Event_ID=634


さて、ABTの上演作品でもデザインやプロダクションの評判が恐ろしく悪いのが、ケヴィン・マッケンジー版「眠れる森の美女」ですが、New York Timesでスライドショーを見ることができます。ゲストにアリーナ・コジョカル、そしてボリショイではまだオーロラを踊ったことがなかったナタリア・オシポワが迎えられたという豪華な公演もありました。アリーナ・コジョカルはこの公演の後、東京に飛んでロイヤルの「ロミオとジュリエット」を踊ったのですよね。

http://www.nytimes.com/slideshow/2010/06/20/arts/dance/20100621-sleeping-ss.html?ref=dance

この「眠れる森の美女」ですが、この週末にロサンゼルスでも上演され、この上演のスライドショーもLos Angeles Timesにアップされています。

http://www.latimes.com/entertainment/news/arts/la-et-0717-sleeping-beauty-pictures,0,410807.photogallery

元ABTのダンサーで、現在は写真家のマシュー・マーフィのブログでも、ABT「眠れる森の美女」コジョカル&カレーニョ、オシポワ&ホールバーグの写真がアップされています。ダニール・シムキンの「青い鳥」も。
http://www.rantingdetails.com/my_weblog/2010/07/beauty-and-the-beauty.html

こちらのマッケンジー版「眠り」は赤ずきちゃんやシンデレラの踊りなどがカットされ、さらにオーロラとデジレのヴァリエーションもないのが、悪評に拍車をかけているようでね。


スライドショーのついでに、お口直しで、こちらは美しい「椿姫」(ノイマイヤー振付)のスライドショーもご紹介します。ジュリー・ケントのマルグリットにロベルト・ボッレのアルマン。マノンにジリアン・マーフィ、デ・グリューにデヴィッド・ホールバーグとはなんと豪華なキャストなのでしょう。
http://www.nytimes.com/slideshow/2010/05/26/arts/dance/20100527-lady-ss.html?ref=dance

観にいきたかったです。

2010/07/16

ロイヤル・バレエ 蔵健太さんの連載「バレエの細道」

ロイヤル・バレエのソリスト、蔵健太さんは自身のブログを持っていらして、ロイヤル・バレエでの日々を生き生きと語っておられます。
http://kentakura.exblog.jp/

ロイヤル・バレエの日本公演の後、バルセロナでロイヤル・バレエの「眠れる森の美女」が上演されたのですが、ちょうどワールドカップでスペインが優勝した日にも公演があり、街中が大変盛り上がった様子を蔵さんは伝えてくれています。蔵さんはブルーバードを3日連続で踊られたのですね。

その蔵さんですが、「英国発ニュースダイジェスト」に「バレエの細道」という連載コラムを書いています。一番新しい第三回の記事が「「ロミオとジュリエット」の脳内イメージ(1)」というタイトル。

http://www.news-digest.co.uk/news/content/blogcategory/167/268/

6月28日の一日だけ、蔵さんがマキューシオを踊ったのですが、その際に芸術監督のモイカ・メイソンに「踊りのステップ、場所取りは教えるから、細かい演技は好きにしていい」と言われたそうです。そこで、中高時代からの親友二人をロミオとベンヴォーリオに見立てて演技のプランを作っていったとのことです。自分が過ごした10代の記憶と気持ちを大事にしていきながら役を作り上げていくという、そのプロセスが細かく書いてあって、大変面白く読むことができました。

感想が追いついていなくて書けていないのですが、蔵さんがマキューシオを踊った6月28日の「ロミオとジュリエット」を見ることができたので、ふむふむ、そういうことを考えて演技したのね、というのがよく判ったのです。蔵さんが伝えようとしていたマキューシオのイメージは、観客である私にも彼の意図どおり、よく伝わっていました。

蔵さんのマキューシオは、長身なのにすばしっこくて、お調子者で喧嘩っ早いけどちょっとかっこつけていて、舞台を見事にかき回していました。スピード感のあるテクニックも素晴らしく、他の日にマキューシオ役を踊ったダンサーたちよりも優れていました。今シーズン初めてこの役を演じたとのことですが、またいつか彼のマキューシオが観られるといいなって思います。蔵さんならロミオもいけるのでは、と思いました。

2010/07/14

SWAN MAGAZINE Vol.20(2010夏号)

SWAN MAGAZINE Vol.20が発売になっていました。

特集はパリ・オペラ座のエトワールが企画・出演する「エトワール・ガラ」。マチュー・ガニオのインタビューや過去公演のフォトアルバムなども紹介。というわけで、マチューの麗しいお姿が6ページにわたって掲載されています。先日のプロモーション来日で撮影された彼のポートレートの甘く美しいことといったら。いくつかの雑誌にマチューの写真は掲載されているし、Bunkamuraマガジンの表紙も飾っていますが、このSWAN MAGAZINEほど美しいマチューの写真は見たことがないかもしれません。

エトワール・ガラ第一回公演(2005年)のスタイリッシュなイメージ写真も載っていたりして懐かしいです。前回公演からの写真もたくさん紹介されています。

そして巻頭の連載企画「エトワールに夢中!」は、エトワール・ガラのプロデューサーであるバンジャマン・ペッシュが登場。なかなかこうやってまとまって彼が登場することはないので、嬉しいです。ガルニエを前にポーズをとったクールな写真、ガルニエの舞台の上で「牧神の午後」のポーズを私服姿で決めてくれたり、「エトワール・ガラ」で上演予定の新作「三銃士」をイメージし、蚤の市で買ったという帽子をかぶった姿。ちょいワルな雰囲気の中にも、人柄のよさも感じられるバンジャマンの魅力炸裂の7ページです。バンジャマン・ペッシュといえば、現在発売中のELLE DECOでは、自宅アパルトマンのインテリアを公開していますが、このお部屋がまさにインテリア雑誌から抜け出たような、クラシックモダンでかっこいい部屋なのですよね。

「モスクワ音楽劇場バレエ」来日公演の特集が10ページ載っていて、ナターリヤ・ソーモアとマリーヤ・セメニャチェンコのインタビューのほか、舞台写真やクラスレッスンの様子も載っていて、素晴らしかった彼らの公演を思い出してしばし感慨にひたりました。さらに、オープニング・ガラにゲスト出演して見事な踊りを見せてくれた金子扶生さんと奥村康祐さんのインタビューもあります。

「SWANモスクワ編」は、前号でリリアナとセルゲイエフ先生が婚約。今回ではウェディングドレスのサイズ合わせをしているリリアナが夢のように美しいです。そしてボリショイ劇場での「アグリー・ダック」のリハーサル、新作「春の祭典」の振付…。ストーリーの方は、ここから先が知りたい!と思ったところで次号に続く、となってしまっていて、本当に次号が待ち遠しいです。

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2010/07/13

7/11「バレエの神髄」

文京シビックホールに行くのは久しぶり。1階後方と一番前くらいしか座ったことがなかったのだけど、前方は段差がなくて見にくいと聞いていたので10数列目の席を取ってみた。結果、大失敗。前に座っていた人が一般的にはそれほど座高が高いとは思えないのに、それでも視界が相当さえぎられてしまって、これは、悪評高いオーチャードホールよりもひどい。気持ちが少々盛り下がってしまった。この劇場だったらもう少し後ろ、中央通路よりも後ろ、もしくはサイドブロックに座った方がいいということだろうけど、今後はできるだけ避けたい会場となった。

それから、音響も悪かったし、テープの音質も悪かったのが残念。ガラの内容は良かっただけに、もったいないことであった。

第一部:
「眠りの森の美女」よりローズ・アダージョ
音楽:P.チャイコフスキー 振付:M.プティパ
 ナタリヤ・ドムラチョワ
 4人の王子:セルギイ・シドルスキー
       イーゴリ・ブリチョフ
       オレクシイ・コワレンコ
       チムール・アスケーロフ

ナタリヤ・ドムラチョワのオーロラは可愛くて溌剌としていて明るい。テクニックも正確なのだけどバランスを取る時間はほとんどなかった。その代わり、サポートつきピルエットは数え切れないくらいよく回っていた。ローズアダージオって、バランスをどれくらい決められるか、その緊張感が心地よい演目だと思うので、今回のようにバランスをあまり取らないダンサーにガラで踊らせるとあまり盛り上がらないような気がする。


「侍」   
音楽:鼓童 振付:M.ラブロフスキー
 岩田守弘

岩田さんは小柄なのに身体にすごいバネがあるのか、ずいぶんと高く跳んでいた。扇子を使った和風の演目だけど振付は岩田さんの師であるミハイル・ラヴロフスキーとのこと。岩田さんの気迫が良く伝わってきた。
 

「海賊」よりパ・ド・トロワ
音楽:R.ドリゴ 振付:M.プティパ/V.チャブキアーニ
 エレーナ・フィリピエワ
 セルギイ・シドルスキー
 ヴィクトル・イシュク

イシュクはやはり小柄で華奢なダンサーで、肉体美を見せる「海賊」のアリ役はそれほど似合っていないようだけど、テクニックは素晴らしい。軽やかなジャンプ、特にマネージュでのドゥーブル・アッサンブレが鮮やかに決まっていた。コーダのピルエット・ア・ラ・スゴンドはかつてアンヘル・コレーラがよく見せてくれていた、軸がプリエに沈み込みながら回転を続け再び上昇するという技でこれもお見事。ただこれを観ているとアンヘルのアリを急に思い出してしまって、この間METでの「ロミオとジュリエット」への出演をキャンセルしてしまったけど彼は元気なのだろうかと一瞬思ってしまった。
シドルスキーはコンラッド役を踊るにあたってひげを描いていてワイルドな感じを出そうとしていたけど、踊りは端正でエレガント。すらりとした長身のラインも美しく伸び、着地がまったく音がしていなかった。
そしてフィリピエワにはキラキラとしたオーラがあって、実に音楽的な踊りを見せてくれて美しかった~。円熟したバレリーナらではのなんともいえないニュアンスの美があって完成度が高い芸術品のようだった。グランフェッテもシングルできっちりと音に合わせて回ってくれていて余裕があった。彼女の素敵な舞台、これからも観られると嬉しいな。


「阿修羅」   ファルフ・ルジマトフ
音楽:藤舎名生 振付:岩田守弘
 ファルフ・ルジマトフ

私は比較的"和モノ"のバレエに抵抗があるのだけど、岩田さんがルジマトフに振付けたこの作品はかなり気に入っている。ルジマトフの透徹したストイックさ、哲学者のような佇まいと振付がマッチしていて、彼の魅力をよく伝えているし、音楽もかっこいい。ルジマトフの踊りには饒舌さとかナルシスティックなところがいっさいなく、いろいろなものをそぎ落とした上でたどり着いた境地を感じさせていて、彼のファンでなくてもここでの彼は実に魅力的だと思った。阿修羅像の姿の中にある、切れ味鋭い戦いの神の姿も感じさせていた。


「ディアナとアクティオン」(”エスメラルダ”より)
音楽:C.プーニ 振付:A.ワガノワ
 ナタリア・ドムラチョワ
 岩田守弘

溌剌&テクニック系のナタリアはこちらの方が似合っていたように思えた。そういえば5月の「マラーホフの贈り物」で同じ「ディアナとアクティオン」を踊ったヤナ・サレンコもキエフ・バレエ出身だったけど、ナタリアと同じ系統のダンサーだと感じた。岩田さんは気概溢れるあまり上半身に少々力が入っているように見えたけれども、跳躍はやっぱり高くて見事なものだった。


「ライモンダ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
音楽:A.グラズノフ 振付:M.プティパ
 吉田 都
 セルギイ・シドルスキー
 キエフ・バレエ

つい先日は14歳の女の子そのもののジュリエットを演じていた吉田都さんが、ここでは輝くばかりの姫オーラを放って「ライモンダ」を踊ってくれる、その幸福感といったら!また思い出話になってしまうけれども、都さんがイーサン・スティーフェルと新国立劇場に客演して踊った「ライモンダ」が、私のライモンダのデフォルトとなった。抑制されて精密にコントロールされた、気品溢れる上半身と滑らかなパ・ド・ブレ。「ライモンダ」で特に大好きなのがコーダなのだけど、ここでのゆっくりとパッセをする都さんの音のとり方が大好き。そして大仰さが微塵もなく愛らしく音を奏でる両腕!この都さんのライモンダを観るためだけに、もう一回この公演に行きたいなと思った。
ロバート・テューズリーの降板に伴い、急遽代役を務めたセルギイ・シドルスキー。「海賊」のコンラッド役での彼も良かったけど、ジャン・ド・ブリエンヌ役も素晴らしい。白タイツが良く似合う、すらりとしていて長い脚。音のしない着地。彼がコーダで後方へ連続して跳躍する時の、空中姿勢を綺麗に保っている姿には惚れ惚れした。もちろんテューズリーで観たかったけど、シドルスキーはエレガントでテクニックもあって良いダンサーだと実感した次第。

(続く)

第二部:
「シェヘラザード」
音楽:N.リムスキー=コルサコフ 振付:M.フォーキン
 エレーナ・フィリピエワ
 ファルフ・ルジマトフ
 オレグ・トカリ
 ルスラン・ベンツィアノフ
 ヴォロディミール・チュプリン
 キエフ・バレエ

ルジマトフのシェヘラザード、黄金の奴隷は何回も観ているけど、今回はぐっと抑えた表現だった。登場シーンでも大きく跳躍することはなく、以前の彼は豹のようだったけど、今回は蛇のようだったというべきか。ただ、この黄金の奴隷姿が彼以上に似合うダンサーは、今をもっていないだろう。美しく鍛えられた上半身、しなやかな身のこなしに漂う官能。彼はゾベイダにとても従順で忠誠心が強く、でも彼女の足元にまとわりつきながら見上げ、見つめるまなざしは熱い。少ない動きの中にどれだけ意味を込めることができるか、という領域へと彼の芸術は昇華し進化しているんだなと思った。

フィリピエワのゾベイダは、大きな瞳がさまざまなことを物語ってくれていて、それだけでとてもドラマティック。胸を覆うルビーのような真紅の衣装がよく似合い、妖艶で少しだけ哀しげ。誇り高い後宮の女王で、凛とした美しさを持ちながらもふと見せる寂しげな表情がたまらない。後宮の女性たちが奴隷たちを解き放った後、私はこの程度の男では満足しないわ、さあ、鍵を渡しなさいと宦官から鍵を取り上げて、嬉しそうに黄金の奴隷の檻を開ける姿が官能に燃えていて美しかった。あまりの存在感に、途中からルジマトフよりもフィリピエワのほうに目を奪われてしまったほど。狂乱の宴が終わり、帰ってきたシャリアール王らに一堂が虐殺される。黄金の奴隷も倒され、残されたのはゾベイダ一人。甘えるように「許して」と王にしなだれかかり、あの大きな瞳で見つめられて王は許してやろうかと心を動かされたところ、いかにも邪悪そうな王の弟が黄金の奴隷の死体を足蹴にする。するとゾベイダは剣を王から奪い、自分の誇りを守り抜くためにも自害をするのだった。

2010/07/10

本日バットシェバダンスカンパニー「MAX」ほか放映/歌舞伎座さよなら公演放映

直前のお知らせになってしまいました。

バットシェバダンスカンパニーの公演は本当に面白かったのでお勧めです。
インパル・ピント・カンパニーも、とてもガーリーで摩訶不思議な世界が素敵。

◆プレミアムシアター

http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2010-07-10&ch=10&eid=9006

世界で活躍するコンテンポラリーダンスの振付家による優れた3つの舞台をお届けする 

「マックス」「オブセッション」「オイスター」ほか

BShi / 7月10日(土) / 午後10:45~11日午前2:45(240分)

<再放送 07/19(日) 24:40-28:40  NHK衛星第二

◇(10:45)イスラエルのバットシェバ舞踊団「マックス」 

◇(前0:22.30)勅使川原三郎による初のデュエット作品「オブセッション」 

◇(1:19.30)勅使川原三郎、作品世界を語る(聞き手 坂本美雨) 

◇(1:45.30)イスラエルのインバル・ピント&アヴシャロム・ポラック・カンパニー「オイスター」


日曜日には歌舞伎座さよなら公演の放送もあります。こちらも必見!

歌舞伎座さよなら公演テレビ放送

7/11(日)NHKBShi プレミアムシアター 24:40〜27:55 
◇歌舞伎「実録先代萩」「助六由縁江戸桜」
収録:平成22年4月23日東京・歌舞伎座

2010/07/08

ハンブルク・バレエの昇進発表 Hamburg Ballet Promotions

ハンブルク・バレエのオフィシャルサイトで、昇進の発表が行われていました。

http://www.hamburgballett.de/e/index.htm

Promotions for the season 2010/2011

Principal
Edvin Revazov

Soloists
Yuka Oishi
Alexandr Trusch
Kiran West

「ヴェニスに死す」や「パルジファル」でノイマイヤーに役を振付けてもらっていた長身金髪の美しいエドウィン・レヴァツォフがプリンシパルに昇進、そして嬉しいことに大石裕香さんがソリストに昇進したんですね。キーラン・ウェストは写真家としての才能もあって、ハンブルク・バレエのFacebookに素敵な舞台写真をたくさんアップしています。アレクサンドル・トラッシュは最近かなり主役を踊っている若いダンサーですね。みなさんおめでとうございます。

「バレエの神髄」出演者変更、ロバート・テューズリー降板

光藍社さんのガラ「バレエの神髄」が明日木曜日から始まりますが、出演者の変更が出ています。

http://www.koransha.com/news_performance/news/100706shinzui_change.html

ロバート・テューズリーは、公演直前の怪我により出演できなくなったとのことで、吉田都さんとの「ライモンダ」は、キエフ・バレエのセルギイ・シドルスキーが出演することになったとのこと。

ロバート・テューズリーのサイトにも、この出演のキャンセルについて書いてあります。
http://www.roberttewsley.com/news.html

このガラの直前まで、新国立劇場の「椿姫」に出演していたのですが、こちらの方は無事に踊ることはできていたようですね。「椿姫」は観にいかなかったのです。しばらくロバートを観ることができなくなってしまったのは本当に残念です。

でも、シドルスキーはとてもよいダンサーですし、以前キエフ・バレエの来日公演で「ライモンダ」のジャン・ド・ブリエンヌを踊っていたし、きっと万全の舞台を都さんと見せてくれるでしょう。「バレエの神髄」は日曜日に観にいく予定です。

2010/07/06

オーレリ・デュポン 輝ける一瞬に Aurelie Dupont l'espace d'un instant

パリ・オペラ座のエトワール、オーレリ・デュポンを映画監督のセドリック・クラピッシュが3年間追って撮影した58分間のドキュメンタリー。セドリック・クラピッシュといえば「猫が行方不明」「スパニッシュ・アパートメント」が代表作だけど、マリインスキー・バレエのエフゲーニャ・オブラスツォーワが出演した映画「ロシアン・ドールズ」でバレエファンにも知られている。

オーレリ・デュポンのダンサーとしての彼女の日常を追いかけることで、ダンサーとしてだけではなく一人の人間としての彼女の素顔の一端を間近に伝えている。

オーレリ12歳の頃、そして15歳の頃。オペラ座のバレエ学校でクロード・ベッシーの指導の下、レッスンに励むオーレリ。ほっそりとしていて子供らしい体型だけどこの頃からとても美人だ。

「ドン・キホーテ」のキトリ役でエトワールに任命された時の若々しい姿。

マニュエル・ルグリと「椿姫」のリハーサルに臨む。1幕パ・ド・ドゥでのリフトで、仰向けになったまま高々と持ち上げられると恐怖のために彼女は叫び声を上げる。男性ダンサーにリフトされることが多いバレリーナでも、リフトの名手とされるルグリ相手でも、あのようなリフトは怖いものなのだと知って、ちょっとだけ親しみがわく。

「椿姫」の舞台では、マルグリット役のバレリーナは10数回も衣装を着替える。舞台袖へとはけると、舞台上の優雅な姿とは裏腹に大勢のスタッフに囲まれて、大急ぎで衣装を着替える。衣装係やヘアメイクによって髪飾りやアクセサリーを替えさせられては再び舞台へと駆けて行く。華麗なバレエが多くの人々の手によって支えられていることを実感する描写。

臨月のはちきれそうなお腹でガルニエの同僚たちを訪ねるオーレリ。果たして元の体型に戻れて、以前のように踊れるのか不安を口にしては芸術監督のブリジット・ルフェーブルに励まされる。出産後復帰の舞台となったのは、大作「ライモンダ」。マチアス・エイマンとのリハーサル。重くて豪華な衣装を身につけて本当に踊り通すことができるのか、リハーサル中も不安を口にするオーレリだけど、幼い息子ジャックの存在が支えになっているよう。マチアスの怪我でパートナーがジョゼ・マルティネスに変更となったものの、復帰は成功する。

振付のアンジェラン・プレルジョカージュを交えての、ルグリとの「ル・パルク」のリハーサルの模様がとても面白い。「解放」のパ・ド・ドゥでのキスをしながら回転するのはこんな仕組みになっているんだ、というのがわかるし、なんともユーモラスなやりとりもある。ここでは、メートル・ド・バレエのローラン・イレールも登場する。

マニュエル・ルグリの「オネーギン」でのアデュー公演のカーテンコールでは、パートナーとして幾多の名舞台を作り上げたオーレリの姿もあった。オペラ座大通りを背にしたマリ=アニエス・ジロとオーレリ。二人とも、42歳半の引退年齢までそれほど長くはないことは意識しているようだ。でも、まだ舞台の上での人生は続いていく。

特典映像は、「椿姫」黒のパ・ド・ドゥと「ル・パルク」の解放のパ・ド・ドゥで両方ともこの映像作品のために撮影されたもの。「椿姫」はガルニエの舞台で撮影されているけれども、必要以上に凝ったアングルで撮影されているために、このパ・ド・ドゥの持つ情熱や複雑な感情のひだがあまり伝わってこなくて残念。「ル・パルク」はバスティーユのリハーサル室で衣装を着けて撮影されており、こちらのほうは、振付家の意図も伝わって来ているし、スタジオのがらんとした雰囲気が映像に寂寥感を与えていてとても素敵なものとなっている。

「ル・パルク」の特典映像だけでもこのDVDを買った価値はあったと思うけど、本編の方も、伝統を背負いながらも現代に生きる一人の女性の生き方を捉えたものとして大変面白い。


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2010/07/05

『オックスフォード バレエ ダンス事典』

プロフェッショナルのライターではない私でも、バレエやダンスについてのエントリを書く時には、一応調べ物をすることがある。今は検索エンジンという便利なものもあるけれども、バレエ/ダンスについてのオンラインの事典があるわけではないし、検索エンジンで引っかかった記事もどこまで正確なのかわからないことがある。

そんな私にとってもとても便利な1冊が発売された。『オックスフォード バレエ ダンス事典』である。筆者はタイムズ紙の批評家デブラ・クレーンとガーディアン紙の批評家ジュディス・マックレル。訳は監訳の鈴木晶氏をはじめ、赤尾雄人氏、海野敏氏、長野由紀氏。網羅的なダンス/バレエの事典の日本版が発売されるのは初めてのことであり、快挙である。

実はこの事典の原著である「The Oxford Dictionary of Dance」も持っているのだが、そちらは2000年に発行されたもの。今回発売された邦訳では、たとえば振付家やダンサーで現在までの間に亡くなった方がいれば没年月日も記述されているし、日本向けに、日本人のダンサーや振付家等の名前も追記されている。(上野水香や草刈民代まで載っているのはどうかともちょっと思うけど・・・)全部で2500項目もあるし、何よりも便利なのが巻末の「作品名欧和対訳表」で、本編に解説が収録されていない作品でも邦題と原題が並べてあって素晴らしい。原著にはない索引も掲載されてある。

振付家の名前を引くと代表的な作品の初演された年が書いてあるのが何よりも非常に便利だし、簡潔ながら要点を押さえた記述が平易でとても読みやすい。ダンサー、振付家、カンパニー名、テクニック用語だけでなく作曲家や美術家、"スウェーデン""インド"など各国のダンスの概況、"シェイクスピア原作のバレエ””アンナ・カレーニナを原作にしたバレエ”なんていう項目もあり、興味深い。最新の状況については少々足りない部分もあるが、原著が2000年なのでそれは致し方ないだろうけど、可能な限りの情報は追記してあるのが窺える。

索引まで含めると718ページもある大著だが、意外とコンパクトな上、紙質も軽く薄めの紙を使っているようなので、かさばらず軽くて持ち歩けるほど。ブログのエントリを書く時の調べものに役に立つだけでなく、暇つぶしとしてパラパラめくってみて、目に付いた項目を読んでみるだけでも知識が身につき、とても面白い。

バレエやダンスについていろいろな知識が必要だと思われた方、もっと網羅的に知りたいと思われた方は、ぜひ手にとってほしい1冊である。


オックスフォード バレエダンス事典オックスフォード バレエダンス事典
ジュディス・マックレル デブラ・クレイン 鈴木 晶

平凡社 2010-05-26
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6/24 英国ロイヤル・バレエ団「うたかたの恋」 The Royal Ballet Mayerling

最近発売されたDVDでこの日の上演と同じ主演の組み合わせで観ており、エドワード・ワトソンが演じたルドルフのキャラクター造形に強烈なインパクトを受けてチケットを買い足したのであった。DVDを観た後ではしばらく彼のルドルフ像が悪夢のようにまとわりついて、しばし鬱になってしまったほどだったのだ。

色白で華奢なエドワードのルドルフは、最初からプレッシャーに押しつぶされそうになっていて痛々しい、繊細で気弱な貴公子。結婚相手ステファニーの妹ルイーズと遊んでみたり、愛人の一人ラリッシュ伯爵夫人と意味ありげなやり取りをしてみたりするんだけど、それも軽薄さゆえにそんなことをしているのではなく、王室内での居場所のなさをまぎらわすための行為なのだ。母エリザベート皇后に甘えようとしてはクールに拒否されてどーんと落ち込むその姿の寄る辺なさ。一方ではハンガリー高官たちにストーカーのようにつきまとわれてじりじりと精神的に追い詰められていく様子も真に迫っていた。

1幕で強烈なのがステファニーとの初夜のパ・ド・ドゥ。カルロス・アコスタが演じるルドルフは銃と髑髏を持つ姿がかっこいいし、ヨハン・コボーは恍惚としていてナルシスティックかつ嬉しそうだったけど、エドワードの場合には神経をすり減らした結果どうしようもなく死に魅せられていて、その歪んだ思いをつい新妻にぶつけてしまったという痛ましさが感じられた。ステファニーを脅し怖がらせた挙句に暴力的に彼女を押し倒す、そうすることで彼は自分自身もひどく傷つけているように見えた。エドワードは手脚が長く、すばらしく柔軟な関節をしていて脚も高く上がってきれい。だけど惜しいことに、テクニック的には若干安定を欠いていて、サポートも必ずしもスムーズにはいかないところがあった。

2幕でルドルフは愛人の一人ミッツィ・カスパーと戯れるも、ここで唐突に銃を持ち出して心中を持ちかけては軽く一蹴される。その後のフランツ・ヨーゼフ皇帝の誕生会では、皇帝の愛人の歌手カタリーナ・シュラットの歌を聴かされ、その間にエドワードはもともとの色白に加えてさらに顔面が蒼白になっていく。一同が歌に聞き入っている間特に動きがないのに顔色を変化させる彼の演技力には思わず舌を巻いてしまう。舞台奥で花火が上がる中、今度はエリザベートが愛人ベイミードルトンとお戯れ。その様子にますますルドルフが虚無的な思いを募らせ苦しみが増していくのが伝わってきて見ているほうの胸も痛くなってくる。

やり手婆(というには若く美しい)のラリッシュ伯爵夫人が少女マリー・ヴェッツェラを彼に押し付けてきたのは、苦悩にさいなまれた彼にとってはあまりにも絶妙のタイミング。待ち望んだ死への片道切符を手に入れたも等しいこと。マリーとの最初のパ・ド・ドゥは、非常にエロティックなものであるはずなのだが、ルドルフの内面で死と欲望がせめぎ合う様子はステファニーとの1幕のパ・ド・ドゥ同様にとても歪んでおり、陶酔しきったマリーの姿とは裏腹に、彼にはエクスタシーがもたらすはずの解放感は無縁のものだった。彼の顔に浮かび上がっている絶望はもはや死相になって現れていた。

3幕冒頭の狩りでいきなり誤射事件を起こしてさらに窮地に追い込まれるルドルフ。彼を救おうとするラリッシュ伯爵夫人がエリザベートに追い出された後、またしても絶妙なタイミングでマリーが部屋に入ってくる。ルドルフが阿片を打つ姿はジャンキーそのもので憔悴しきっている。そして正直ここまでマリー・ヴェッツェラの印象があまり強くなかったのだが、ここから最後に二人が死を遂げるまでの、火花を散らしながら気持ちを一つにして突っ走っていく凄惨なパ・ド・ドゥは鮮烈だった。本当に運命的なものに導かれ、出会うべくして会ってしまったんだなと。最後にルドルフがマリーへ「行くよ」と目配せをすると、マリーが「行くわ」と答え、そして舞台奥の衝立へと消えていくと銃声が。二人の死が完全な合意の下でもたらされたということが良く伝わってくる幕切れだった。

生の舞台で接したエドワードのルドルフは予想を超えてさらに凄まじいものだった。4階席という離れた位置にも伝わってくる彼の苦しみ、そして心が壊れていく様子には胸がつぶれそうになった。だけど、最後にマリーとひとつになって命を燃やし尽くしたことが伝わってきていたので、後味は思ったほど重くなかった。そのエドワードと一体になっていくマーラ・ガレアッツィの演技も素晴らしかった。正直言って、DVDで観た時は、ヴィヴィアナ・デュランテが以前演じたたファム・ファタル的な美少女マリーの印象が強くてガレアッツィはヴィジュアル面で不利でどうしたものかと思っていたのだけど。実演の舞台を観ると彼女の実力のほどがよくわかった。サラ・ラムのラリッシュ伯爵夫人は、トランプ占いの時の正面を射抜くような目力の強さが忘れがたく、気高い美しさだけではなくしたたかさの中の哀しさを伝えて演技者として優れていた。ハンガリー高官の中心を踊ったセルゲイ・ポルーニンが鮮やかな連続トゥールザンレールを決めたところは会場も大いに沸き、華のあるところを魅せてくれた。ギャリー・エイヴィスが老けメイクを施して演じたフランツ・ヨーゼフは色っぽかった。

それから「マイヤリング」(「うたかたの恋」の原題)は、ニコラス・ジョージアディスによる舞台装置と美術が重厚でダークで素晴らしい。そのまま「怖い絵」に出てきそうな、ハプスブルグ家の歴代の皇帝の肖像画が下がっている様子が圧巻。エリザベートの寝室で、彼女の贅沢で倦んだ生活を象徴するようにドレスをまとったトルソーが並んでいる様子は異様ながら美しい。また、緞帳の陰にハンガリー高官が一人ずつ隠れては現われ、かぶりつきそうな勢いでルドルフに囁きかける演出には興奮させられた。心中事件の表現、二人が実際に死ぬシーンは衝立の向こうで行われて観客には見せず、想像力を働かせる表現も巧みだ。二度目の銃声の後に衝立が倒れてばったりとルドルフが崩れ落ち、マリーが横たわっているという立体的で映画を見ているようなドラマティックな演出手法にはぞくぞくした。

3日連続でこんな濃厚な舞台をたっぷりと見せられて、ひどく疲れたけれども満足感でいっぱい、舞台を観る幸せに満たされた。この興奮を追体験するために、DVDを再見したいと思いつつも、舞台の感動が上書きされないかちょっと心配でまだ見られないでいる。


ルドルフ:エドワード・ワトソン Edward Watson
(オーストリア=ハンガリー帝国皇太子)

男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ:マーラ・ガレアッツィ Mara Galeazzi
(ルドルフの愛人)

ステファニー王女:イオーナ・ルーツ Iohna Loots
(ルドルフの妻)

オーストリア=ハンガリー帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ:ギャリー・エイヴィス Gary Avis
(ルドルフの父)

エリザベート皇后:タラ=ブリギット・バフナニ
(ルドルフの母)

伯爵夫人マリー・ラリッシュ:サラ・ラム Sarah Lamb
(皇后付きの女官、ルドルフの元愛人)

男爵夫人ヘレナ・ヴェッツェラ:エリザベス・マクゴリアン Elisabeth MacGorian
(マリー・ヴェッツェラの母)

ブラットフィッシュ:ブライアン・マロニー Brian Maloney
(ルドルフの個人付き御者、人気者の芸人)

ゾフィー大公妃:ウルスラ・ハジェリ
(フランツ・ヨーゼフの母)

ミッツィ・カスパー:ラウラ・モレーラ Laura Morerra
(ルドルフの馴染みの高級娼婦)

ベイミードルトン大佐:平野亮一 Ryoichi Hirano
(エリザベートの愛人)

四人のハンガリー高官:セルゲイ・ポルーニン、蔵健太、アンドレイ・ウスペンスキー、トーマス・ホワイトヘッド
(ルドルフの友人)

カタリーナ・シュラット:フィオナ・キム
(独唱)

アルフレート・グリュンフェルト:ポール・ストバート
(ピアノ独奏)

エドゥアルド・ターフェ伯爵:アラステア・マリオット
(オーストリア=ハンガリー帝国の首相)

ホイオス伯爵:ヨハネス・ステパネク
(ルドルフの友人)

ルイーズ公女:ロマニー・パジャク
(ステファニーの妹)

コーブルグ公フィリップ:デヴィッド・ピカリング
(ルイーズの夫、ルドルフの友人)

ギーゼラ公女:サイアン・マーフィー
(ルドルフの姉)

ヴァレリー公女:フランチェスカ・フィルピ
(ルドルフの妹)

ヴァレリー公女の子供時代:リャーン・コープ

マリー・ヴェッツェラの子供時代:マーラ・ガレアッツィ

ロシュック:ミハイル・ストイコ
(ルドルフの従者)

ラリッシュ伯爵:ベネット・ガートサイド

その他、来客、メイド、娼婦、紳士、使用人、侍女など:英国ロイヤル・バレエ団


指揮:バリー・ワーズワース

演奏:東京フィルハーモニー交響楽団


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エドワード・ワトソン マーラ・ガレアッツィ イオーナ・ルーツ ケネス・マクミラン(振付) バリー・ワーズワース(指揮) コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団

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2010/07/01

6/29 ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」 The Royal Ballet Romeo and Juliet Miyako's Farewell

ロイヤル・バレエでの吉田都さんの舞台は、思い出に残る一夜となった。

まずは、英国ガーディアン紙に掲載された、この舞台の舞台裏のスライドショーをご紹介
http://www.guardian.co.uk/stage/gallery/2010/jun/30/royal-ballet-ballet

ロイヤルでの最後の舞台を飾るというのに、都さんは踊りも演技も抑制が効いていて、必要以上に自己主張しない。楚々としていて控え目な中に情感と共に音楽があふれ出すという、都さんの踊りの美点が現れた素敵な舞台となった。

登場シーンの都さんは、幼いといってもいいくらいのみずみずしい可愛らしさで、乳母に「胸もふくらんできたでしょう?」って触れられる時にも「えっ?私わからない!」って不思議な顔をしちゃう。大きな瞳を好奇心でキラキラさせながらも、パリスに引き合わされた時には結婚という実感もないものだから、恥らう中にも笑顔を見せてしまうのが可愛い。

マクミラン版の「ロミオとジュリエット」でとても好きなシーンがある。1幕のキャピュレット家での宴。ジュリエットがパリスとパ・ド・ドゥを踊り終わってロミオと初めて目が合って一瞬世界が立ち止まる時。そしてジュリエットがパリスらに促されて上手側へと歩いていくものの、二人は目を合わせたまま。「騎士たちの踊り」の重厚なテーマが一段と高鳴る中で、舞台の左と右に分かれた二人は、群衆の中にいるというのにまるで二人だけの世界にいるかのような瞬間。ふたりが運命的な恋におちたことが良く伝わってくる。

都さんのジュリエットは、あまりにも急速に恋に燃え上がる自分に戸惑い、ためらい、そしてほんの少し恥ずかしそうになる瞬間もあるのだけど、それでも湧き上がる恋心を抑えられず胸の高鳴りをそのまま身体の動きで表していた。大げさになることは一瞬もなく、スピード感があるわけではない。一つ一つの動きに無駄がなく、それでいて実のところは隅々まで神経が行き届いていて、音楽と一体化していてひたすら美しい。至福の時はバルコニーのシーンでやってきて、ふわりと滑らかに音楽を奏でるかのような都さんの踊りを観ていると、夢の中にいる気持ちになり、あまりの美しさにじわ~と涙があふれてきた。

結婚式での都さんは、ロミオと離れたくないという気持ちはあっても、乳母によって「そろそろ行かなくちゃ」と引き離される時には比較的従順で、激しく彼を求めているわけではない。だからこそ、3幕最初の別れの朝のパ・ド・ドゥが胸を締め付けるように目に映る。初めての朝を迎えてもジュリエットはまだ14歳の少女のままで、何で今彼と別れなければならないのか判らない、判りたくない。14歳の女の子の気持ちのままで、身を切り裂かれるような別れの悲しみに苦しんでいる。ロミオが朝の光の中へと消えていって一人残された時には、ほんの少し大人の玄関にたったかのようだったのに、両親やパリスが入ってくるとヤダヤダ、とまた子供に逆戻り。本能のままにパリスを拒否してベッドにもぐりこんでしまう。

パリスを拒んだことで父親に張り倒されたジュリエット。その瞬間にまた「騎士たちの踊り」の音楽が高まると場面は凍りつき、ジュリエットは14歳の女の子でありながらたった一人で世界に戦いを挑んでいることが実感されて、その孤立感に慄然としてしまう。

しかも、とても優雅で気品あふれる佇まい、優しげだったパリスが、思い通りにならないジュリエットに業を煮やして彼女を力づくでものにしようとするのだから、残酷な展開だ。彼の腕の中で、すでに命のない人形のように踊るジュリエット。そんな哀しく辛い場面でも美しい形を保ち、完璧なアティチュードでパリスに導かれジュリエットはプロムナードする。その隙のないプロムナードの中に、まだほんの少女なのに、自らの意思に沿わない結婚を強いられることの悲しみと息苦しさが伝わってくる。

一人になりベッドの上に座り正面を見据えた都さんは、悲しみの色が少しずつ和らぎ、やがて色づくかのように晴れやかな笑顔へと花開いてゆきロレンス神父の元へと駆けていく。まるで啓示を受けたかのように。これが恋を知ったことで彼女が獲得した強さなのだ。仮死状態になる薬を手にした時のジュリエットの慄き。ためらうあまりベッドの陰に隠れてしまうほどだけど、覚悟を決めて一思いに飲み干す。

目覚めた時、ジュリットは天を仰ぐように腕を伸ばして、しばらくしてようやく自分が暗い墓所にいることに気がつく。ロミオが横たわっているのを見つけてほんの一瞬だけ喜び、彼に触れ、揺さぶり、彼にもう命がないことに気がつくと小さく叫び声を上げる(決して鳴り響くような叫び声ではない)。ロミオが飲み干した毒薬の残りを飲もうとするも残っていないことが判ると、迷わず落ちていた短剣でお腹を一突きし、一度は倒れるものの最後の力を振り絞って彼の元へと這っていく。そして彼の手にようやく触れることができたところでジュリエットは天を仰ぎ、微笑をうかべて死んでいく。

日曜日に同じキャストで観た時に、ここでの都さんの演技に少々驚かされたのだけど、二度目に観て確信した。最後にジュリエットの目に映ったのは、天国で彼女を待っているロミオの姿だったことを。「ロミオとジュリエット」は悲劇ではあるけれども、死を乗り越えるほどの強い愛で結ばれたロミオに出会えたジュリエットは幸せだったのだ。その穏やかな微笑みは、やはり年若い少女のものだった。


一方、都さんのロイヤル・バレエさよなら公演のパートナーに選ばれたスティーヴン・マックレー。赤みがかった金髪の若々しい容姿の彼の持つ疾走感は、短い生涯を一瞬のうちに駆け抜けたロミオにぴったり。特にアレグロでの動きが素晴らしくて、コマのようにくるくるくるくるといつまでも回っている超高速シェネや、空間を切り裂くようなアントルラッセに連続ソ・ド・バスクも鮮やか。サポートも的確で、都さんが一番美しい体勢を保つことができるようにリフトをキープできていて、恋の高揚感をかもし出すのに成功していた。彼の演技は比較的あっさりしているものの、要所要所はしっかりと押さえていて、ロミオという青年の性格付けはくっきりと見せることができていた。冒頭でロザラインに迫るところの情熱的なところから始まり、ジュリエットと出会って恋を知った後ではなじみの娼婦につれなくしつつもおでこにチュっ!とキスしてみたり、ほんのりと甘さが漂っているところがいい。マキューシオとティボルトが剣を交える前に止めさせようとする演技などもしっかりと伝わってきた。気品とやんちゃさと甘さが同居していて、これから先どうやって成長していくかとっても楽しみ。同時に、ロイヤルの引退公演に若い彼をパートナーとして選んだ都さんは、次の世代へとバトンを渡したんだなと感慨に浸らせてくれた。

ロイヤル・バレエの舞台が見ごたえたっぷりなのは、脇役のダンサーの演技の充実が大きい。愛人を失った悲しみを絞り出すようなキャピュレット夫人を演じるジェネシア・ロサートの慟哭、執念だけで最後に立ち上がってロミオに襲い掛かろうとしていたトーマス・ホワイトヘッド演じるティボルトの気迫。厳しさの中にも娘への愛情が感じられるキャピュレット公ギャリー・エイヴィスの美丈夫ぶり。ロレンス神父や乳母、そして街の人々まで、貴族から娼婦まで一人一人が舞台の上でしっかりと息づいているのを感じられた。

そんな素晴らしい演技者、舞台人が揃ったロイヤル・バレエで踊り続けられた都さんの舞台人生は厳しくも幸せなものだっただろう。そして、これから先も都さんの舞台上の人生は続いていくし、ロイヤル・バレエも世代交代を重ねながらもしっかりと息づいていくのだと思った、歴史的な一晩だった。


うず高く詰まれた花束、舞台上に集結したダンサーたち(私服に着替えている人もいた)、そしてスタッフに祝福された都さんだけど、一歩脇に引いて彼らへも拍手を贈るようにと促している姿が印象的だった。エドワード・ワトソン、ジョナサン・コープ、ケヴィン・オヘア、そしてモニカ・メイソン芸術監督らにハグされ花束を渡されながらも、最後まで周囲を立てることを忘れない都さんの気配りが感じられて、立派な人ほど謙虚なんだな・・・って改めて思ったのだった。

東京公演最終日の模様はNBSのROH公式ブログでも
http://www.nbs.or.jp/blog/roh2010/contents/2010/07/post-48.html

ジュリエット:吉田都  Miyako Yoshida
ロミオ:スティーヴン・マックレー Steven McRae

マキューシオ:ブライアン・マロニー Brian Maloney
ティボルト:トーマス・ホワイトヘッド Thomas Whitehead
ベンヴォーリオ:セルゲイ・ポルーニン Sergei Polunin
パリス:ヨハネス・ステパネク Johannes Stepanek

キャピュレット公:ギャリー・エイヴィス Gary Avis
キャピュレット夫人:ジェネシア・ロサート Genesia Rosato
エスカラス(ヴェローナ大公):ベネット・ガートサイド Bennet Gartside
ロザライン:タラ=ブリギット・バフナニ
乳母:クリステン・マクナリー
僧ロレンス:アラステア・マリオット
モンタギュー公:アラステア・マリオット
モンタギュー夫人:ローラ・マッカロク

ジュリエットの友人:リャーン・コープ、べサニー・キーティング、イオーナ・ルーツ、
エマ=ジェーン・マグワイア、ロマニー・パジャク、サビーナ・ウエストコム
3人の娼婦:ラウラ・モレーラ、ヘレン・クロウフォード、フランチェスカ・フィルピ
マンドリン・ダンス:ホセ・マルティン、
ポール・ケイ、蔵健太、ミハイル・ストイコ、アンドレイ・ウスペンスキー、ジェームズ・ウィルキー
舞踏会の客、街人たち:英国ロイヤル・バレエ団


指揮:ボリス・グルージン
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

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