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« 本日バットシェバダンスカンパニー「MAX」ほか放映/歌舞伎座さよなら公演放映 | トップページ | SWAN MAGAZINE Vol.20(2010夏号) »

2010/07/13

7/11「バレエの神髄」

文京シビックホールに行くのは久しぶり。1階後方と一番前くらいしか座ったことがなかったのだけど、前方は段差がなくて見にくいと聞いていたので10数列目の席を取ってみた。結果、大失敗。前に座っていた人が一般的にはそれほど座高が高いとは思えないのに、それでも視界が相当さえぎられてしまって、これは、悪評高いオーチャードホールよりもひどい。気持ちが少々盛り下がってしまった。この劇場だったらもう少し後ろ、中央通路よりも後ろ、もしくはサイドブロックに座った方がいいということだろうけど、今後はできるだけ避けたい会場となった。

それから、音響も悪かったし、テープの音質も悪かったのが残念。ガラの内容は良かっただけに、もったいないことであった。

第一部:
「眠りの森の美女」よりローズ・アダージョ
音楽:P.チャイコフスキー 振付:M.プティパ
 ナタリヤ・ドムラチョワ
 4人の王子:セルギイ・シドルスキー
       イーゴリ・ブリチョフ
       オレクシイ・コワレンコ
       チムール・アスケーロフ

ナタリヤ・ドムラチョワのオーロラは可愛くて溌剌としていて明るい。テクニックも正確なのだけどバランスを取る時間はほとんどなかった。その代わり、サポートつきピルエットは数え切れないくらいよく回っていた。ローズアダージオって、バランスをどれくらい決められるか、その緊張感が心地よい演目だと思うので、今回のようにバランスをあまり取らないダンサーにガラで踊らせるとあまり盛り上がらないような気がする。


「侍」   
音楽:鼓童 振付:M.ラブロフスキー
 岩田守弘

岩田さんは小柄なのに身体にすごいバネがあるのか、ずいぶんと高く跳んでいた。扇子を使った和風の演目だけど振付は岩田さんの師であるミハイル・ラヴロフスキーとのこと。岩田さんの気迫が良く伝わってきた。
 

「海賊」よりパ・ド・トロワ
音楽:R.ドリゴ 振付:M.プティパ/V.チャブキアーニ
 エレーナ・フィリピエワ
 セルギイ・シドルスキー
 ヴィクトル・イシュク

イシュクはやはり小柄で華奢なダンサーで、肉体美を見せる「海賊」のアリ役はそれほど似合っていないようだけど、テクニックは素晴らしい。軽やかなジャンプ、特にマネージュでのドゥーブル・アッサンブレが鮮やかに決まっていた。コーダのピルエット・ア・ラ・スゴンドはかつてアンヘル・コレーラがよく見せてくれていた、軸がプリエに沈み込みながら回転を続け再び上昇するという技でこれもお見事。ただこれを観ているとアンヘルのアリを急に思い出してしまって、この間METでの「ロミオとジュリエット」への出演をキャンセルしてしまったけど彼は元気なのだろうかと一瞬思ってしまった。
シドルスキーはコンラッド役を踊るにあたってひげを描いていてワイルドな感じを出そうとしていたけど、踊りは端正でエレガント。すらりとした長身のラインも美しく伸び、着地がまったく音がしていなかった。
そしてフィリピエワにはキラキラとしたオーラがあって、実に音楽的な踊りを見せてくれて美しかった~。円熟したバレリーナらではのなんともいえないニュアンスの美があって完成度が高い芸術品のようだった。グランフェッテもシングルできっちりと音に合わせて回ってくれていて余裕があった。彼女の素敵な舞台、これからも観られると嬉しいな。


「阿修羅」   ファルフ・ルジマトフ
音楽:藤舎名生 振付:岩田守弘
 ファルフ・ルジマトフ

私は比較的"和モノ"のバレエに抵抗があるのだけど、岩田さんがルジマトフに振付けたこの作品はかなり気に入っている。ルジマトフの透徹したストイックさ、哲学者のような佇まいと振付がマッチしていて、彼の魅力をよく伝えているし、音楽もかっこいい。ルジマトフの踊りには饒舌さとかナルシスティックなところがいっさいなく、いろいろなものをそぎ落とした上でたどり着いた境地を感じさせていて、彼のファンでなくてもここでの彼は実に魅力的だと思った。阿修羅像の姿の中にある、切れ味鋭い戦いの神の姿も感じさせていた。


「ディアナとアクティオン」(”エスメラルダ”より)
音楽:C.プーニ 振付:A.ワガノワ
 ナタリア・ドムラチョワ
 岩田守弘

溌剌&テクニック系のナタリアはこちらの方が似合っていたように思えた。そういえば5月の「マラーホフの贈り物」で同じ「ディアナとアクティオン」を踊ったヤナ・サレンコもキエフ・バレエ出身だったけど、ナタリアと同じ系統のダンサーだと感じた。岩田さんは気概溢れるあまり上半身に少々力が入っているように見えたけれども、跳躍はやっぱり高くて見事なものだった。


「ライモンダ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
音楽:A.グラズノフ 振付:M.プティパ
 吉田 都
 セルギイ・シドルスキー
 キエフ・バレエ

つい先日は14歳の女の子そのもののジュリエットを演じていた吉田都さんが、ここでは輝くばかりの姫オーラを放って「ライモンダ」を踊ってくれる、その幸福感といったら!また思い出話になってしまうけれども、都さんがイーサン・スティーフェルと新国立劇場に客演して踊った「ライモンダ」が、私のライモンダのデフォルトとなった。抑制されて精密にコントロールされた、気品溢れる上半身と滑らかなパ・ド・ブレ。「ライモンダ」で特に大好きなのがコーダなのだけど、ここでのゆっくりとパッセをする都さんの音のとり方が大好き。そして大仰さが微塵もなく愛らしく音を奏でる両腕!この都さんのライモンダを観るためだけに、もう一回この公演に行きたいなと思った。
ロバート・テューズリーの降板に伴い、急遽代役を務めたセルギイ・シドルスキー。「海賊」のコンラッド役での彼も良かったけど、ジャン・ド・ブリエンヌ役も素晴らしい。白タイツが良く似合う、すらりとしていて長い脚。音のしない着地。彼がコーダで後方へ連続して跳躍する時の、空中姿勢を綺麗に保っている姿には惚れ惚れした。もちろんテューズリーで観たかったけど、シドルスキーはエレガントでテクニックもあって良いダンサーだと実感した次第。

(続く)

第二部:
「シェヘラザード」
音楽:N.リムスキー=コルサコフ 振付:M.フォーキン
 エレーナ・フィリピエワ
 ファルフ・ルジマトフ
 オレグ・トカリ
 ルスラン・ベンツィアノフ
 ヴォロディミール・チュプリン
 キエフ・バレエ

ルジマトフのシェヘラザード、黄金の奴隷は何回も観ているけど、今回はぐっと抑えた表現だった。登場シーンでも大きく跳躍することはなく、以前の彼は豹のようだったけど、今回は蛇のようだったというべきか。ただ、この黄金の奴隷姿が彼以上に似合うダンサーは、今をもっていないだろう。美しく鍛えられた上半身、しなやかな身のこなしに漂う官能。彼はゾベイダにとても従順で忠誠心が強く、でも彼女の足元にまとわりつきながら見上げ、見つめるまなざしは熱い。少ない動きの中にどれだけ意味を込めることができるか、という領域へと彼の芸術は昇華し進化しているんだなと思った。

フィリピエワのゾベイダは、大きな瞳がさまざまなことを物語ってくれていて、それだけでとてもドラマティック。胸を覆うルビーのような真紅の衣装がよく似合い、妖艶で少しだけ哀しげ。誇り高い後宮の女王で、凛とした美しさを持ちながらもふと見せる寂しげな表情がたまらない。後宮の女性たちが奴隷たちを解き放った後、私はこの程度の男では満足しないわ、さあ、鍵を渡しなさいと宦官から鍵を取り上げて、嬉しそうに黄金の奴隷の檻を開ける姿が官能に燃えていて美しかった。あまりの存在感に、途中からルジマトフよりもフィリピエワのほうに目を奪われてしまったほど。狂乱の宴が終わり、帰ってきたシャリアール王らに一堂が虐殺される。黄金の奴隷も倒され、残されたのはゾベイダ一人。甘えるように「許して」と王にしなだれかかり、あの大きな瞳で見つめられて王は許してやろうかと心を動かされたところ、いかにも邪悪そうな王の弟が黄金の奴隷の死体を足蹴にする。するとゾベイダは剣を王から奪い、自分の誇りを守り抜くためにも自害をするのだった。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

naomi 様 こんにちは。

テューズリーの降板を会場で知ってショック、そして音の悪さに閉口でしたが、内容は素晴らしかったですよね!
シドルスキーも調子が良かったように見えましたし、代役だということをしばし忘れました:)
都さんの「ライモンダ」はとっても素晴らしくて、本当に観る人を幸せにするバレリーナだとしみじみ。まだまだたくさん踊り続けて欲しいです。
ルジマートフ&フィリピエワは、18禁なんじゃないでしょうか~という感じで、大変色っぽかったです。恒例のカーテンコールでの着物を着た女性の花束攻勢も微笑ましくて、来年もこういう企画があったらいいですね。

sandyさん、こんにちは。

テューズリーの降板や音の悪さはありましたけど、講演の内容はとても良いガラでしたね!シドルスキー、心配していたパートナーリングも私が観たのが3公演目だったということもあってか、まったく問題なく代役であることを忘れましたね!
そうなんです、都さんは観る人を幸せにするバレリーナだっていうことは本当にその通りだと思います♪彼女の輝くような笑顔も素敵だし、踊る喜びで満ち溢れている動きも素晴らしく、まだまだ見ていたいですよね。

「シェヘラザード」も見ごたえありました。やっぱり大人のダンサーに演じてほしい作品で、ルジマートフ&フィリピエワはそういう意味でもピッタリです。本当に来年もこの二人で「シェヘラザード」を踊ってほしい!

naomiさん

お久しぶりです。私も久しぶりにこの公演を見に行き、大満足しました!都さん、素敵でしたね。スティーフェルと新国立で踊られた都さんのライモンダ、私にもスタンダードです!あの時の都さんは今でも目に浮かぶくらいキラキラしてました。また都さんのライモンダが見られてとてもうれしかったです。もっとたくさん踊ってほしかったなあ。
ルジマトフとフィリピエワのシェヘラザードにも大満足。ルジマトフ以外の金の奴隷はちょっと見る気が起きないな~と改めて思わされました。DVDはないんでしょうかね。フィリピエワもルジマトフも官能的でエキゾチックで、おとぎ話の世界に誘い込んでくれました!いいペアでしたね!こういうのがバレエを見る楽しみだわとつくづく思いました。
ルジマトフの阿修羅に使われていたのはお能のお囃子でしたね。やっぱり緊迫感を高めるリズムを持ってるんだなとルジマトフの動きを見ながら思いました。彼はいまだに尋常ならざるオーラを発してますね~。すごい。。

Keyさん、こんばんは。

本当に満足の公演でしたね~。内容だけ見たら本当にお得でした!都さんのライモンダがデフォルトの方がいらっしゃって嬉しいです。本来ならロシア系のダンサーのライモンダがそうなんでしょうけどね。。(ロパートキナやアレクサンドロワのライモンダも本当に素晴らしいですけど)

ルジマトフとフィリピエワのシェヘラザードは以前YouTubeでアップされていたのを見たことがあるんですが、今もあるのかしら?ルジマトフの黄金の奴隷はザハロワと出ているものしかないのですが、フィリピエワかマハリナで映像化してほしいですよね、本当に。彼以上にこの役が似合う人は本当にいないですよね

阿修羅のルジマトフの存在感も尋常ならざるものがあって、たしかに以前のようなテクニックはないものの、人間国宝のような、唯一無二なところはますます研ぎ澄まされている気がしました。

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